21 / 52
第19話「ワイン」
しおりを挟む
第19話「ワイン」
蛍に呼ばれ、凪はテーブルについた。明らかに蛍の食事のボリュームは少ない。蛍は、ワインのボトルをテーブルに置くと手際よくワインオープナーを使い抜栓し、蛍の席側のワイングラスに注いだ。
「凪君は18歳やから、お酒はあかんやろ。それとも今の子は18やったら、もう飲んでるんかな?」
といたずらっぽい目で尋ねた。
「はい、バイト先の先輩たちとチューハイくらいは飲むことはあります。まあ、法律違反ですけどね。」
と笑った。
「じゃあ、ちょっと飲んでみる?ロゼワインやから飲みやすいと思うで。14%あるから、もしあれやったら、ちょっとはちみつ入れてウォーターサーバーの水で割っても美味しいけどな。」
蛍が推めるので「お願いします」と頭を下げた。
グラスにはちみつを少し入れてウォーターサーバーで少量のお湯を入れはちみつを溶かすと冷水を三分の一まで注ぎ、その上にロゼワインを注ぎ、凪の前にサーブした。
「今日の凪君の頑張りと進化に乾杯!今日はいっぱい体力使ったんやから、どんどん食べてね!」
と蛍の茶化した乾杯の声掛けで食事が始まった。
凪は、進められるがままに料理を口に運んだ。ペンネも生春巻きもサーロのソテーのどれもが美味しかった。気になったのは、蛍は生春巻きを二本、ペンネは10センチほどの小皿だけで、どんどんとワインを飲んでいる。
凪も蛍が作ってくれたはちみつカクテルを口にした。ほのかに香るはちみつとロゼワインの甘い香りがまじりあい鼻をくすぐった。
楽しく話をしながらの食事は、凪が半分程食べた時点で蛍は箸を置いた。
「螢さん、いつも食事はそんな量なんですか?」
「うん、子供のころはよう食べててんけど、今はこんな感じやで。まあ、高校時代に「これ以上背が高くなったら困るわ」って食事の量を減らして、それからはずっとこんなもん。
親は「「螢」って名前があかんかったんかな。」って笑うんやで。ひどいよな、名前つけておいてそんなこと言うなんてな。カラカラカラ。」
と笑った。凪は意味が分からず蛍に尋ねた。
「螢さんの名前と、食事の量って何か関係があるんですか?」
蛍はワインをくっと空け、注ぎ直すと笑いながら言った。
「ホタルって幼虫時代は肉食でガンガン食べるんやって!ゲンジボタルの幼虫の好物は凪君やねんで。カラカラカラ。」
「ん?どういう意味ですか?」
「ゲンジボタルの幼虫は「カワニナ」が「主食」やねんな。カラカラカラ。そんで成虫になったら水飲むだけで物は食べへんねんて。まあ、私は少しは食べんと死んでしまうからな。ただごはんおかずよりお酒の方が好きやから「酒の食事」と書いて「酒食」やな。カラカラカラ。わかった?」
お酒が入り陽気になった蛍が笑いながら説明した。
凪は、笑顔の蛍に真面目に返した。
「よくわかりました。丁寧なお答えありがとうございました。「ホタル」って幼虫の間は「カワニナ」が主食なんですね。蛍さんはもう大人ですけど、これからも僕を食べてくださいね。僕も喜んで食べられますから。」
まっすぐ蛍の目を見つめる視線に急に心拍数が上がった。
「もう、凪君、女心を鷲掴みにするなぁ。めちゃくちゃお姉さんは嬉しいぞ!さあ、凪君ももっと飲むか?」
とワインを勧めてきた。凪も喜んでグラスを出した。
「それにしても、こんなに笑う螢さんって想像できませんでした。自宅だからですか?それともお酒が入ってるからですか?」
と聞いてくる凪に蛍は照れながら
「まあ、お酒が入ってるっていうのはあるけど、今日、凪君に5年ぶりに「女」に戻してもらったから、テンション上がっちゃってるからかな?
それとも凪君はもっとおしとやかな女の方がええかな?」
と答えた。
「いや、どんな螢さんも好きですよ。今日は、今までにない螢さんが見られて嬉しいです。ご飯もすごくおいしかったですし、螢さんと飲むお酒はバイト先で飲むのとは一味も二味も違ってますからね。本当に体も食事もごちそうになりました。」
と丁寧に頭を下げた。(その言葉と態度が私のハートを鷲掴みにしてしまうんよなぁ…。)
ふと時計を見ると8時を示していた。食事も終わり、二人とも高級チーズをアテに飲んでいる。ワインボトルは3本目に入っていた。
蛍に呼ばれ、凪はテーブルについた。明らかに蛍の食事のボリュームは少ない。蛍は、ワインのボトルをテーブルに置くと手際よくワインオープナーを使い抜栓し、蛍の席側のワイングラスに注いだ。
「凪君は18歳やから、お酒はあかんやろ。それとも今の子は18やったら、もう飲んでるんかな?」
といたずらっぽい目で尋ねた。
「はい、バイト先の先輩たちとチューハイくらいは飲むことはあります。まあ、法律違反ですけどね。」
と笑った。
「じゃあ、ちょっと飲んでみる?ロゼワインやから飲みやすいと思うで。14%あるから、もしあれやったら、ちょっとはちみつ入れてウォーターサーバーの水で割っても美味しいけどな。」
蛍が推めるので「お願いします」と頭を下げた。
グラスにはちみつを少し入れてウォーターサーバーで少量のお湯を入れはちみつを溶かすと冷水を三分の一まで注ぎ、その上にロゼワインを注ぎ、凪の前にサーブした。
「今日の凪君の頑張りと進化に乾杯!今日はいっぱい体力使ったんやから、どんどん食べてね!」
と蛍の茶化した乾杯の声掛けで食事が始まった。
凪は、進められるがままに料理を口に運んだ。ペンネも生春巻きもサーロのソテーのどれもが美味しかった。気になったのは、蛍は生春巻きを二本、ペンネは10センチほどの小皿だけで、どんどんとワインを飲んでいる。
凪も蛍が作ってくれたはちみつカクテルを口にした。ほのかに香るはちみつとロゼワインの甘い香りがまじりあい鼻をくすぐった。
楽しく話をしながらの食事は、凪が半分程食べた時点で蛍は箸を置いた。
「螢さん、いつも食事はそんな量なんですか?」
「うん、子供のころはよう食べててんけど、今はこんな感じやで。まあ、高校時代に「これ以上背が高くなったら困るわ」って食事の量を減らして、それからはずっとこんなもん。
親は「「螢」って名前があかんかったんかな。」って笑うんやで。ひどいよな、名前つけておいてそんなこと言うなんてな。カラカラカラ。」
と笑った。凪は意味が分からず蛍に尋ねた。
「螢さんの名前と、食事の量って何か関係があるんですか?」
蛍はワインをくっと空け、注ぎ直すと笑いながら言った。
「ホタルって幼虫時代は肉食でガンガン食べるんやって!ゲンジボタルの幼虫の好物は凪君やねんで。カラカラカラ。」
「ん?どういう意味ですか?」
「ゲンジボタルの幼虫は「カワニナ」が「主食」やねんな。カラカラカラ。そんで成虫になったら水飲むだけで物は食べへんねんて。まあ、私は少しは食べんと死んでしまうからな。ただごはんおかずよりお酒の方が好きやから「酒の食事」と書いて「酒食」やな。カラカラカラ。わかった?」
お酒が入り陽気になった蛍が笑いながら説明した。
凪は、笑顔の蛍に真面目に返した。
「よくわかりました。丁寧なお答えありがとうございました。「ホタル」って幼虫の間は「カワニナ」が主食なんですね。蛍さんはもう大人ですけど、これからも僕を食べてくださいね。僕も喜んで食べられますから。」
まっすぐ蛍の目を見つめる視線に急に心拍数が上がった。
「もう、凪君、女心を鷲掴みにするなぁ。めちゃくちゃお姉さんは嬉しいぞ!さあ、凪君ももっと飲むか?」
とワインを勧めてきた。凪も喜んでグラスを出した。
「それにしても、こんなに笑う螢さんって想像できませんでした。自宅だからですか?それともお酒が入ってるからですか?」
と聞いてくる凪に蛍は照れながら
「まあ、お酒が入ってるっていうのはあるけど、今日、凪君に5年ぶりに「女」に戻してもらったから、テンション上がっちゃってるからかな?
それとも凪君はもっとおしとやかな女の方がええかな?」
と答えた。
「いや、どんな螢さんも好きですよ。今日は、今までにない螢さんが見られて嬉しいです。ご飯もすごくおいしかったですし、螢さんと飲むお酒はバイト先で飲むのとは一味も二味も違ってますからね。本当に体も食事もごちそうになりました。」
と丁寧に頭を下げた。(その言葉と態度が私のハートを鷲掴みにしてしまうんよなぁ…。)
ふと時計を見ると8時を示していた。食事も終わり、二人とも高級チーズをアテに飲んでいる。ワインボトルは3本目に入っていた。
10
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
麗しき未亡人
石田空
現代文学
地方都市の市議の秘書の仕事は慌ただしい。市議の秘書を務めている康隆は、市民の冠婚葬祭をチェックしてはいつも市議代行として出かけている。
そんな中、葬式に参加していて光恵と毎回出会うことに気付く……。
他サイトにも掲載しております。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる