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第20話「コスプレ」
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第20話「コスプレ」
3本目のワインが空いたところで、ふと蛍は凪の帰宅時間が気になった。
「凪君、もう帰らなあかん時間とちゃうの?お母さんと妹さん待ってるんやろ?」
凪が一瞬、言葉に詰まったが
「だ、大丈夫です。きょ、今日は妹がご飯作る日ですから、僕がいなくても全然、オッケーですよ。」
と返事した。(ん、今のドモリ方ってなんやろか?もしかして、お泊り希望なんかな?)
「凪君とこって門限とかあるの?あんまり遅くなったらお母さん心配するんとちゃうの?」
蛍が心配して言うと
「門限は無いです。バイトで遅番に当たると仕事終わる時間が12時過ぎることもあるんです。そんな時は、店の近くの先輩のところに泊まらせてもらって、そのまま学校に行く日もありますから。」
と蛍から目線を外して言った。
「ふーん、でも今日はタクシー代出してあげるから、きちんと帰りや。今から帰ったら、8時半には家につくやん。」
蛍が答えると、凪は涙目になって
「帰んなきゃダメですか…。」
と呟いた。(きゃー、何この「チワワ」感!あかん、泊めてしまうやん!ここは、心を鬼にして断らな…)と思い返事した。
「ええよ、泊っていくか?」
(ぎゃー、間違えた!大人の建前じゃなくって、本能の方を言ってしもた!あー、もう取り返しつけへん!どうしよう!)蛍は心の中で大慌てだった。
凪の表情が「ぱーっ」と明るくなった。
「えっ、泊らせてもらえるんですか?今、「泊っていくか?」って言いましたよね!今日は帰らないって、お母さんにライン入れますね!」
と蛍が心を整理する前に、凪がスマホに打ち込み、数秒後に「了解!」というスタンプが帰ってきた画面を蛍に見せた。(あー、やってしもた…。未成年略取誘拐の罪で有罪確定やな…。)
凪は先ほどまでと違い、明るい声で会話に戻った。話の流れで蛍の高校時代の話になった。凪がどうしても高校時代の蛍を見てみたいというので仕方なく高校の卒業アルバムを引っ張り出してきた。カウチに席を移し、凪と並んで座って表紙を開いた。3年1組だった蛍の写真は最初のページで出てきた。ショートカットで写る高校時代の蛍の写真と、横に座っている今の蛍を凪は何度も何度も交互に見た。
「凪君、今、「老けたなー」って思ったやろ!」
とふくれっ面で言うと、
「全然変わってないですよ!髪型が違うだけで全然変わってません。まさに今、アルバムから飛び出てきたって感じですよね。」
と真顔で言う言葉に再びキュンと来た。(もーどこまで本気なん?もうメロメロやわ…。)
クラブ紹介のページで、バスケットのユニフォーム姿の蛍を発見し、「かっこいい!」を繰り返し、文化祭でメイドカフェをした時の写真には「かわいい!」を連発した。悪い気がするはずもなく、凪が「写メ撮っていいですよね!」という希望に首を横に振ることはできなかった。
次のページを2枚重ねてめくろうとする不自然な蛍の態度に、
「螢さん、今なにか隠そうとしたでしょ!ダメですよ!全部見せてくださいよ!」
と凪は強く言った。蛍は頑なに拒もうとしたのだが、耳元に「ふっ」っと息を吹きかけられた瞬間に手を放してしまった。
すかさず凪がそのページを開いた。体育祭のページに、両手にポンポンを持ったチアリーダーのユニフォームを着た蛍が大写しになっていた。
「いやっ、恥ずかしいから見んとって!」
両手で顔を覆った蛍の横で凪はスマホのカメラで撮りまくっていた。(きゃー、もう顔から火が出てしまいそうや…。凪君、もう堪忍して…!)
アルバムを最後まで見終わった凪は「眼福」の表情を浮かべていた。修学旅行での浴衣姿や遠泳大会での水着姿もばっちりみられ、写真に撮られてしまった。凪は興奮を隠せずに、いきなり蛍の前で「土下座」した。
「螢さん、どうしても聞いてもらいたいお願いがあります!どうか僕の希望をかなえてください!」
「えっ、お願いってなに?ちょっと、土下座はやめてよ!」
と凪をなだめるが、「希望を聞いてくれるまでやめません」と頑なな凪に負け
「わかったから顔をあげてよ。土下座までする凪君の希望って何なん?」
「もし、このころの衣装や制服が残ってるんだったら、それを身につけた螢さんの写真を撮らせてください。できたら2ショットもお願いします!」
幸か不幸か、衣装はすべて保管してあった。そこから2時間のコスプレ撮影会が始まった。嬉しそうな凪を見ていると責める気にはならず、照れもいつしか吹き飛んで、夏冬の制服、体操服、スクール水着にバスケ部のユニフォーム、文化祭の手作りのメイド服、体育祭のチアガールと次々と凪の前で昔を懐かしみながら着替えては写真に撮られ、凪の持つ自撮り棒でツーショット写真に納まっていった。
「かわいいです」、「キュートです」、「清楚です」、「かっこいいです」、「色っぽいです」と機関銃のように連発する凪の称賛にいつしか蛍も笑顔になっていた。
3本目のワインが空いたところで、ふと蛍は凪の帰宅時間が気になった。
「凪君、もう帰らなあかん時間とちゃうの?お母さんと妹さん待ってるんやろ?」
凪が一瞬、言葉に詰まったが
「だ、大丈夫です。きょ、今日は妹がご飯作る日ですから、僕がいなくても全然、オッケーですよ。」
と返事した。(ん、今のドモリ方ってなんやろか?もしかして、お泊り希望なんかな?)
「凪君とこって門限とかあるの?あんまり遅くなったらお母さん心配するんとちゃうの?」
蛍が心配して言うと
「門限は無いです。バイトで遅番に当たると仕事終わる時間が12時過ぎることもあるんです。そんな時は、店の近くの先輩のところに泊まらせてもらって、そのまま学校に行く日もありますから。」
と蛍から目線を外して言った。
「ふーん、でも今日はタクシー代出してあげるから、きちんと帰りや。今から帰ったら、8時半には家につくやん。」
蛍が答えると、凪は涙目になって
「帰んなきゃダメですか…。」
と呟いた。(きゃー、何この「チワワ」感!あかん、泊めてしまうやん!ここは、心を鬼にして断らな…)と思い返事した。
「ええよ、泊っていくか?」
(ぎゃー、間違えた!大人の建前じゃなくって、本能の方を言ってしもた!あー、もう取り返しつけへん!どうしよう!)蛍は心の中で大慌てだった。
凪の表情が「ぱーっ」と明るくなった。
「えっ、泊らせてもらえるんですか?今、「泊っていくか?」って言いましたよね!今日は帰らないって、お母さんにライン入れますね!」
と蛍が心を整理する前に、凪がスマホに打ち込み、数秒後に「了解!」というスタンプが帰ってきた画面を蛍に見せた。(あー、やってしもた…。未成年略取誘拐の罪で有罪確定やな…。)
凪は先ほどまでと違い、明るい声で会話に戻った。話の流れで蛍の高校時代の話になった。凪がどうしても高校時代の蛍を見てみたいというので仕方なく高校の卒業アルバムを引っ張り出してきた。カウチに席を移し、凪と並んで座って表紙を開いた。3年1組だった蛍の写真は最初のページで出てきた。ショートカットで写る高校時代の蛍の写真と、横に座っている今の蛍を凪は何度も何度も交互に見た。
「凪君、今、「老けたなー」って思ったやろ!」
とふくれっ面で言うと、
「全然変わってないですよ!髪型が違うだけで全然変わってません。まさに今、アルバムから飛び出てきたって感じですよね。」
と真顔で言う言葉に再びキュンと来た。(もーどこまで本気なん?もうメロメロやわ…。)
クラブ紹介のページで、バスケットのユニフォーム姿の蛍を発見し、「かっこいい!」を繰り返し、文化祭でメイドカフェをした時の写真には「かわいい!」を連発した。悪い気がするはずもなく、凪が「写メ撮っていいですよね!」という希望に首を横に振ることはできなかった。
次のページを2枚重ねてめくろうとする不自然な蛍の態度に、
「螢さん、今なにか隠そうとしたでしょ!ダメですよ!全部見せてくださいよ!」
と凪は強く言った。蛍は頑なに拒もうとしたのだが、耳元に「ふっ」っと息を吹きかけられた瞬間に手を放してしまった。
すかさず凪がそのページを開いた。体育祭のページに、両手にポンポンを持ったチアリーダーのユニフォームを着た蛍が大写しになっていた。
「いやっ、恥ずかしいから見んとって!」
両手で顔を覆った蛍の横で凪はスマホのカメラで撮りまくっていた。(きゃー、もう顔から火が出てしまいそうや…。凪君、もう堪忍して…!)
アルバムを最後まで見終わった凪は「眼福」の表情を浮かべていた。修学旅行での浴衣姿や遠泳大会での水着姿もばっちりみられ、写真に撮られてしまった。凪は興奮を隠せずに、いきなり蛍の前で「土下座」した。
「螢さん、どうしても聞いてもらいたいお願いがあります!どうか僕の希望をかなえてください!」
「えっ、お願いってなに?ちょっと、土下座はやめてよ!」
と凪をなだめるが、「希望を聞いてくれるまでやめません」と頑なな凪に負け
「わかったから顔をあげてよ。土下座までする凪君の希望って何なん?」
「もし、このころの衣装や制服が残ってるんだったら、それを身につけた螢さんの写真を撮らせてください。できたら2ショットもお願いします!」
幸か不幸か、衣装はすべて保管してあった。そこから2時間のコスプレ撮影会が始まった。嬉しそうな凪を見ていると責める気にはならず、照れもいつしか吹き飛んで、夏冬の制服、体操服、スクール水着にバスケ部のユニフォーム、文化祭の手作りのメイド服、体育祭のチアガールと次々と凪の前で昔を懐かしみながら着替えては写真に撮られ、凪の持つ自撮り棒でツーショット写真に納まっていった。
「かわいいです」、「キュートです」、「清楚です」、「かっこいいです」、「色っぽいです」と機関銃のように連発する凪の称賛にいつしか蛍も笑顔になっていた。
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