「完結しました!」【R18】『イケメン男子高校生を飼っています。~アラサー女の欲望コンプリート日誌2024~』【こども食堂応援企画参加作品】

ぽよぽよ

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第48話「温泉寺の十一面観音像」

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第48話「温泉寺の十一面観音像」

 部屋のユニットバスでふたりで軽くシャワーを浴び、ふたりは浴衣に着替えるとホテルを出た。南柳通から木屋町通りと川沿いの道を歩いた。美男美女のカップルに、すれ違う人の視線が向けられた。
「みんな螢さんのことを見てますよ。「僕の螢さん」って思っていいんですよね。」
と囁く凪の言葉が耳にこそばかった。旅館、ホテルや外湯や土産物、飲食店を横目に歩くと、約10分でロープウェイの城崎温泉駅に着いた。
 チケットを買うと、すぐにロープウェイは発車し、山の斜面を登りだした。すぐに中間駅の「温泉寺」に着いた。

 温泉寺は養老4年(西暦720年)に城崎温泉を開いた道智上人により天平10年(西暦738年)に開創された古い寺との事だった。
 重要文化財に指定されている高さ2メートルの御本尊の十一面観音像の顔を見たとき、蛍と凪は顔を見合わせ、同時に声を上げた。
「あー、朝のお医者さんのおばちゃんや!」

 ふっくらとした顔立ちに細い目に福耳の優しい面立ちはまさに、心療内科医師そのものだった。左手に持った花瓶の角度は、1時間前の凪の「ぴー」の勃った時の角度に一致していると蛍は思った。(寺の娘って言ってたけど、このお寺の観音様やったんや!凪君、すっかり復活しました。本当にありがとうございました。)と蛍は深々と頭を下げた。
 「次は、螢さんの心を軽くしなきゃね。あなたは大人だから自分でできるわね。」と蛍は観音様から言われた気がした。(せやな…、後は、私の問題やな…。)再度、一礼して本堂を後にした。

 参拝を終わり、帰りはロープウェイを使わず、参道で降りて行った。手をつないで、どうでもいいことをおしゃべりしながら歩くだけでも楽しかった。山を下りた先の源泉でふたりで「温泉卵」を食べ、城崎スイーツ本店でジェラートと本わらび餅を食べた。かりんとう専門店の円山菓寮で、「かりんとう専門店ならではの黒糖カラメル」が美味しいと噂の「ゆらゆら湯上りプリン」を部屋食用に買い、途中の酒屋でワインとワイングラスを買い込み、早めの昼食を取りホテルに戻った。

 蛍はフロントで、連泊と、夜の貸し切り風呂を申し入れた。手続きが済むとふたりで部屋に戻り、一息ついた。
「あー、それにしても朝のおばちゃんが観音様やったとはなー!そりゃ、神様やったら、何でもござれやわな!神様にはかなわへんわ!カラカラカラ。」
「いや、僕にとっては、螢さんは「女神様」ですから、同じですよ。今まで、いろいろ僕のためにしてくれましたんで、今日、明日は何でも言いつけてください。螢さんの為なら何でもしますから。」
「じゃあ、まずは、北新地のホストみたいに、ワインの相手でもしてもらおか!」
「はい、喜んで!」
と冷蔵庫からさっき買ってきたワインとグラスを出すと、凪は蛍の持つワイングラスに注いだ。美味しそうにワインをたしなむ蛍を見ながら、凪が呟いた。
「僕、一生、蛍さんの傍にいさせて欲しいです。」

 蛍は、真っ赤になって、しどろもどろに答えた。
「な、凪君、ど、どさくさに紛れて、い、今のって「プロポーズ」か?うーん、本気にしてしまうで!」
 凪は、真剣な顔をして、
「僕は、本気です。もう、家を出てもいいと思ってます。螢さんの傍にいられるなら、高校もやめて働きます。だめでしょうか?」
と「ド直球」で返してきた。(うーん、そう言ってくれるんはうれしいねんけど…。碧姉ちゃんのこともあるし…。黒瀬社長との事も、凪君に話さなあかんよな…)蛍は、自分の状況を考えるとブルーになったが、それを凪に感じさせてはいけないと思い、努めて明るくお替りを要求し、返事ははぐらかした。

 蛍は飲んでいるうちに、昨晩、2時間半しか寝ていない疲れも出て、急に眠気が出てきた。時計を見ると午後1時だった。凪も少し眠そうにしているのを確認して、
「凪君、今日も晩御飯の後、一緒にお風呂入って、その後「いちゃいちゃ」するなら、ちょっとお昼寝しとこっか。」
との投げかけに、凪も賛成してくれたので、一枚の布団で一緒に手をつないで眠りに落ちた。

 「ピピピピピピ」。蛍のスマホがなった。(うーん、5時間も寝てしもてたんかな…。凪君もよう寝てるな。ん、スマホにメールと電話の着信が入ってるわ。ゲロゲロ、碧姉ちゃんとその弁護士からや。変な内容でなかったらええねんけど…。)
 蛍は、寝息を立てている凪を起こさないようにそっと布団を出ると、ユニットバスの中から、昨日から無視していた碧の弁護士の留守番電話を聞いた。「急ぎ、連絡ください。」との内容は、昨日と変わっていなかった。碧の携帯からのメッセージも弁護士からのものだった。(うーん、凪君のこともあるし、ここはいっちょ当たってみておくか。)と覚悟を決めて、指定の番号に折り返しの電話を入れた。弁護士事務所の受付から碧の主任弁護士に繋がれた。その3分後、蛍の予想外の申し出がなされた。(えっ、そんなことってありえんの…。信じられへんわ…。)蛍は返答に詰まった。



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