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学~前編~
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しおりを挟む振り返ると、案の定、女は三人に増えていた。
動きは速いが、道幅が狭く邪魔をしあっている。
俺は前を向く。更に速度を上げる気持ちで足を動かす。
確か、分岐点に近づくほど道幅が広がったはずだ。
そこまでどれだけ差を開けるかが勝負。
また振り返る。かなり距離が開いている。
何とかなるかもしれない。
そう思って前を向いた瞬間、ゴッ、と硬くて低い音がした。額に衝撃が走る。首から下だけが前に進んで、仰向けに浮く。落下。俺は背面すべてを地面に強打した。
激痛。声も出ない。きつく目を閉じて、歯を食い縛る。
両手で額を押さえて目を薄く開く。太い木の枝が道に突き出していた。
マジか――。
手と額に、ぬるりとした感触があった。
見ると、指が赤く濡れていた。どうやら血が出たようだ。
俺は仰向けになった体を反転させる。そして肘で体を持ち上げ、膝立ちになる。
鞘のストッパーを外し、ナイフを抜く。
手の甲で額から流れる血を拭い立ち上がる。
女たちはもうすぐそこまで迫っていた。
それでも、俺は覚悟を決めかねていた。
足が震える。目尻がしゃっくりしているみたいになる。
こんなんで、どうやって立ち向かえばいいんだ。
女たちが近づいてくる。俺は目を閉じ、大声を出して身を丸め、防御姿勢を取った。
だが、一向に襲われる気配がない。目を開ける。
「え?」
俺は唖然として呟く。
「何で?」
女たちは一気に攻め込んではこなかった。
三メートルくらい先で足を止めて、じぃっとこっちを見ている。
慎重に後ずさる。女たちは動かない。ただ俺を見つめている。
更に数歩後ずさる。すると、急に動いて即座に距離を詰めてくる。
「うわあっ、うわっ」
俺は身を守る為に両腕を顔の前で交差させる。
目の前まで詰め寄られて、襲われる――と思ったが、一メートルくらいの距離を残して女たちは止まった。
「マジで、マジで何だよ」
心臓が悲鳴を上げている。冷や汗が止まらない。
俺は女たちからなるべく視線を外さず、後退する。後ろと、足下を確認しながら、慎重に。離れて、迫られての生殺し状態が続く。
生殺しは、するのもされるのも嫌いだ。だが、助かる見込みがあるのなら話は別だ。
野締めで終わってたまるか。俺は、俺は足掻くぞ。
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