【完結】エルモアの使者~突然死したアラフォー女子が異世界転生したらハーフエルフの王女になってました~

月城 亜希人

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静かな森の出会い編

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 ルシウスに声を掛けて、私たちはシャドウウルフと一緒に洞窟を出た。
 それで滝壺の方に向かおうとしたのだけど、そこには先客の姿があった。

 二匹は棍棒を持った小柄な緑色の人。ゴブリンね。
 一匹は赤い帽子を被っていて、手にはナイフを持っている。

《レッドキャップだ!》

「ノイン、下がって」

 シャドウウルフとルシウスが臨戦態勢をとる。
 私は小声で注意してくれたルシウスの背に隠れた。
 肩の上で、シクレアが跳ねる。

《酷い! あれじゃ水が駄目になっちゃうわ!》

 ゴブリンが二匹、滝壺に顔を突っ込んで、がぶがぶと水を飲んでいる。
 レッドキャップは周囲を警戒している。

 よく見ると、ナイフが紫色に染まっている。
 確か、レッドキャップって普通のナイフを持っているはずなんだけど。

《ねぇ、シャドウウルフ、あのナイフって何?》

《分からん。あれに斬りつけられて、俺のつがいは、あんな風になったんだ》

 シャドウウルフも分からないってことは、訊くしかないわね。
 だけど、どうしようかしら。
 私の目に映る光は赤が三つ。それも真っ赤。
 交渉しても大丈夫なのか分からない。

「ノイン、どうしたの?」

 私がどうしたものかと唸っていると、ルシウスが訊いてきた。

「あにょね、ナイフが変にゃの。毒がにゅられてるの」

「それなら、この辺りにいるポイズンワームを潰して塗ってるんだと思う。ゴブリンの中でも、一部はそういうことをする知恵があるって聞いたことがあるよ」

「そうにゃの⁉」

 ルシウスが「うん」と頷く。

「そういう敵は、危険だって聞いてる。ノインは魔物と話せるのかもしれないけど、そういうのは相手にしない方がいいよ。騙し討ちされちゃうと思うから」

「うん、わかっちゃ」

 今回、私の出番は、なしみたい。
 シャドウウルフとルシウスに任せることにした。

《おい、俺は行くぞ?》

《うん、頑張って!》

 シャドウウルフが、牙を剥いて素早く滝壺に向かい駆けていく。
 それを合図にするかのように、ルシウスも駆けていった。

《私も行くわね!》

 私の肩からシクレアが翅を広げて飛び立つ。そしてルシウスの隣に並んだ。
 シクレアに気づいたルシウスが自分から近づく。その肩に、シクレアが止まった。
 私は一度洞窟に戻って、手ごろな大きさの石を集めて出入口の側に運んだ。
 二個ずつ手に持って、蔓を除けて顔を出す。

 外を覗き見ると、レッドキャップとシャドウウルフが睨み合っていた。
 ゴブリン二匹の方は、ルシウスとシクレアのコンビと睨み合っている。

 任せようと思ったけど、やっぱり何もしないとウズウズしてくるものね。

 陸上で遠投もやってたし、石くらい投げて応援しましょうか。
 投石なんてやったことないけど、似たようなものでしょ。

 体は小さいけど、たぶん大丈夫なはず。
 私はドレスの袖をめくり上げ、ぐるぐると肩を回して調子を確認する。
 
 
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