35 / 117
はじめてのおでかけ編
5
しおりを挟む
「すごい。もう着いちゃったよ」
「早かったにぇ」
正直、目が回った。ルシウスもヘロヘロ。アスラとディーヴァは楽しかったようで、超がつくほど機嫌が良い。いやもう、かなり速かったわ。
というわけで、夕方には宿場町に着いた。街道沿いに木造家屋が建ち並ぶだけの町。
町を囲っているのは脆そうな木柵だけ、かなり造りが簡単な印象を受けた。
「ねぇ、ルチウちゅ、ここ、だいじょうびゅにゃにょ? まみょにょに、おちょわりぇたりゃ、しゅぐ壊れちゃうんじゃにゃい?」
「魔物とか、荒くれ者が喧嘩して壊したりするから、変に頑丈に作ってないみたいだよ。最初から直しやすいようにできてるんだって」
なるほど納得。壊される前提だからボロボロなわけね。
でも頑丈に作っちゃえば、そんなことする必要もないのに。
それとも、頑丈に作っても壊しちゃうような奴が襲ってくるとか?
ああ、駄目ね。おかしなことを考えるのはやめましょう。
景色でも眺めて気持ちを切り替えなきゃね。旗が立っちゃうからね。
あちこち商人っぽい人の馬車なんかが止まってる。厩舎もあるわ。女の人たちが宿の前で客引きしてる。たぶん、夜のお仕事のお姉さんたちね。
宿場町っていうから、もっと閑散としてると思ってたんだけど、思ってたより人がいてちょっと驚く。こんなに人を見たことがなかったから尚のことかもしれない。
それはそうとして、やっぱり浮いてるわね……。
薄汚れた格好で、柄の悪い感じの人が多い。そんな中、私とルシウスの身なりの良さは非常に違和感がある。人目につかないはずがない。
だけど、大丈夫なのよね、これが。
「アスラの隠身があってよかったよ」
「ほんとにぇ」
アスラとディーヴァは、宿場町に入る前に私の中に入ってもらっている。
でも、アスラのスキルはしっかり効いている。
アスラが言うには、私の体の中からでも効果を発揮するのだそうだ。私自身と、私に触れている者までが対象になるとのこと。
なので、私とルシウスは宿場町で手つなぎデートを楽しんでいる。きっと楽しんでいるのは私だけなのだろうけど、完璧皇子様のルシウスはそれを感じさせないのよね。
手をつないで歩くときは、必ず私に歩幅を合わせてくれるし、よちよち歩きしながら隣を見上げると、白い歯を見せて微笑んでくれるんだもの。
もう、鼻血ものよっ!
なんてハァハァしてるうちに、ルシウスが「ここだよ」と言って足を止めた。
用がある店に着いたみたいね。
看板にはルーイー雑貨店の文字。扉を開けて中に入る。狭い店内には、先客が二人いた。フード付きのローブを着た二人のエルフ――。
「あっ!」
私は声を上げて跳び上がってしまった。
いえ、私だけじゃなくて、中にいた二人も。
ロディとアリーシャ。
まさかもまさか。私はたった一週間で、二人の暗殺者と再会してしまった。
二人の様子を見る限り、隠身も効果を発揮しなかったらしい。
「早かったにぇ」
正直、目が回った。ルシウスもヘロヘロ。アスラとディーヴァは楽しかったようで、超がつくほど機嫌が良い。いやもう、かなり速かったわ。
というわけで、夕方には宿場町に着いた。街道沿いに木造家屋が建ち並ぶだけの町。
町を囲っているのは脆そうな木柵だけ、かなり造りが簡単な印象を受けた。
「ねぇ、ルチウちゅ、ここ、だいじょうびゅにゃにょ? まみょにょに、おちょわりぇたりゃ、しゅぐ壊れちゃうんじゃにゃい?」
「魔物とか、荒くれ者が喧嘩して壊したりするから、変に頑丈に作ってないみたいだよ。最初から直しやすいようにできてるんだって」
なるほど納得。壊される前提だからボロボロなわけね。
でも頑丈に作っちゃえば、そんなことする必要もないのに。
それとも、頑丈に作っても壊しちゃうような奴が襲ってくるとか?
ああ、駄目ね。おかしなことを考えるのはやめましょう。
景色でも眺めて気持ちを切り替えなきゃね。旗が立っちゃうからね。
あちこち商人っぽい人の馬車なんかが止まってる。厩舎もあるわ。女の人たちが宿の前で客引きしてる。たぶん、夜のお仕事のお姉さんたちね。
宿場町っていうから、もっと閑散としてると思ってたんだけど、思ってたより人がいてちょっと驚く。こんなに人を見たことがなかったから尚のことかもしれない。
それはそうとして、やっぱり浮いてるわね……。
薄汚れた格好で、柄の悪い感じの人が多い。そんな中、私とルシウスの身なりの良さは非常に違和感がある。人目につかないはずがない。
だけど、大丈夫なのよね、これが。
「アスラの隠身があってよかったよ」
「ほんとにぇ」
アスラとディーヴァは、宿場町に入る前に私の中に入ってもらっている。
でも、アスラのスキルはしっかり効いている。
アスラが言うには、私の体の中からでも効果を発揮するのだそうだ。私自身と、私に触れている者までが対象になるとのこと。
なので、私とルシウスは宿場町で手つなぎデートを楽しんでいる。きっと楽しんでいるのは私だけなのだろうけど、完璧皇子様のルシウスはそれを感じさせないのよね。
手をつないで歩くときは、必ず私に歩幅を合わせてくれるし、よちよち歩きしながら隣を見上げると、白い歯を見せて微笑んでくれるんだもの。
もう、鼻血ものよっ!
なんてハァハァしてるうちに、ルシウスが「ここだよ」と言って足を止めた。
用がある店に着いたみたいね。
看板にはルーイー雑貨店の文字。扉を開けて中に入る。狭い店内には、先客が二人いた。フード付きのローブを着た二人のエルフ――。
「あっ!」
私は声を上げて跳び上がってしまった。
いえ、私だけじゃなくて、中にいた二人も。
ロディとアリーシャ。
まさかもまさか。私はたった一週間で、二人の暗殺者と再会してしまった。
二人の様子を見る限り、隠身も効果を発揮しなかったらしい。
0
あなたにおすすめの小説
偉物騎士様の裏の顔~告白を断ったらムカつく程に執着されたので、徹底的に拒絶した結果~
甘寧
恋愛
「結婚を前提にお付き合いを─」
「全力でお断りします」
主人公であるティナは、園遊会と言う公の場で色気と魅了が服を着ていると言われるユリウスに告白される。
だが、それは罰ゲームで言わされていると言うことを知っているティナは即答で断りを入れた。
…それがよくなかった。プライドを傷けられたユリウスはティナに執着するようになる。そうティナは解釈していたが、ユリウスの本心は違う様で…
一方、ユリウスに関心を持たれたティナの事を面白くないと思う令嬢がいるのも必然。
令嬢達からの嫌がらせと、ユリウスの病的までの執着から逃げる日々だったが……
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
病弱が転生 ~やっぱり体力は無いけれど知識だけは豊富です~
於田縫紀
ファンタジー
ここは魔法がある世界。ただし各人がそれぞれ遺伝で受け継いだ魔法や日常生活に使える魔法を持っている。商家の次男に生まれた俺が受け継いだのは鑑定魔法、商売で使うにはいいが今一つさえない魔法だ。
しかし流行風邪で寝込んだ俺は前世の記憶を思い出す。病弱で病院からほとんど出る事無く日々を送っていた頃の記憶と、動けないかわりにネットや読書で知識を詰め込んだ知識を。
そしてある日、白い花を見て鑑定した事で、俺は前世の知識を使ってお金を稼げそうな事に気付いた。ならば今のぱっとしない暮らしをもっと豊かにしよう。俺は親友のシンハ君と挑戦を開始した。
対人戦闘ほぼ無し、知識チート系学園ものです。
疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?
お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~
みつまめ つぼみ
ファンタジー
17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。
記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。
そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。
「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」
恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!
溺愛最強 ~気づいたらゲームの世界に生息していましたが、悪役令嬢でもなければ断罪もされないので、とにかく楽しむことにしました~
夏笆(なつは)
恋愛
「おねえしゃま。こえ、すっごくおいしいでし!」
弟のその言葉は、晴天の霹靂。
アギルレ公爵家の長女であるレオカディアは、その瞬間、今自分が生きる世界が前世で楽しんだゲーム「エトワールの称号」であることを知った。
しかし、自分は王子エルミニオの婚約者ではあるものの、このゲームには悪役令嬢という役柄は存在せず、断罪も無いので、攻略対象とはなるべく接触せず、穏便に生きて行けば大丈夫と、生きることを楽しむことに決める。
醤油が欲しい、うにが食べたい。
レオカディアが何か「おねだり」するたびに、アギルレ領は、周りの領をも巻き込んで豊かになっていく。
既にゲームとは違う展開になっている人間関係、その学院で、ゲームのヒロインは前世の記憶通りに攻略を開始するのだが・・・・・?
小説家になろうにも掲載しています。
半竜皇女〜父は竜人族の皇帝でした!?〜
侑子
恋愛
小さな村のはずれにあるボロ小屋で、母と二人、貧しく暮らすキアラ。
父がいなくても以前はそこそこ幸せに暮らしていたのだが、横暴な領主から愛人になれと迫られた美しい母がそれを拒否したため、仕事をクビになり、家も追い出されてしまったのだ。
まだ九歳だけれど、人一倍力持ちで頑丈なキアラは、体の弱い母を支えるために森で狩りや採集に励む中、不思議で可愛い魔獣に出会う。
クロと名付けてともに暮らしを良くするために奮闘するが、まるで言葉がわかるかのような行動を見せるクロには、なんだか秘密があるようだ。
その上キアラ自身にも、なにやら出生に秘密があったようで……?
※二章からは、十四歳になった皇女キアラのお話です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる