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エルモアの使者編
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しおりを挟む共感……なのかな?
「なんか、少し違うかも。共感してるって感じではないと思うんだけど……」
「そう? ノインは、選ばなかった方に共感しちゃってるように思えるけど。スキルを見て、この魔物はいらないって思ってる自分が嫌なんじゃないの?」
私はドキリとした。思いもよらなかった。完全に図星だ。
「僕は昔、使用人になる奴隷を選ばされたことがあったんだけどね、ノインと同じで選べなかったんだ。選ばれなかった奴隷のことを考えると、どうしてもね。なんていうか、自分だったら、いらないって言われたら辛いなって思っちゃってさ」
「いらない……」
私は、前世でよくそういった意味合いの言葉をぶつけられてきた。
なにくそって跳ねのけてきたけど『あれはない』とか『呼ばなくていい』とか言われてるのを聞くと、やっぱり傷ついた。
容姿以外でもそうだった。陸上競技で選手に選ばれたことも一度もなかった。
現世でも、三歳まではルリアナのせいで、いらない子扱いだった。
「そっか。私、自分が選ばれなかった方だから、切り捨てる側に回ってるのが納得できなかったみたい。無意識に、根に持っちゃってたのね……」
「え? 何? 選ばれなかったって? ノインが?」
「アハハ、ごめん、気にしないで。独り言」
私は慌てた。思わず口に出しちゃってたわ。
急いで魔物図鑑をめくって、誤魔化す。そこで手が止まる。
「あ……決まった、かも」
私が手を止めたのは、最初に『いらない』と除外した魔物の頁。
この世界で最も弱く、他の魔物の餌になるしかない魔物。
素材に用途がなく、それでいて繁殖力だけはあるから、大発生すると餌を求めた他の魔物を集める厄介者。人からは凄く嫌われていて、常に駆除対象になっている。
ルシウスが、私の開いた頁を見て渋い顔をする。
「ノイン、いくらなんでも、その魔物は駄目だよ。戦力の拡充にはならない」
「ううん、いいの。ルシウスの顔を見たら、心が決まっちゃった」
「何それ? どういうこと?」
「だって、これまで私のすることに反対したことなかったでしょ?」
私は魔物図鑑を閉じ、フォークを手に取った。
そうと決まれば、あとは見つけて交渉するだけ。
「ノインって、天邪鬼なんだね。しばらくアデル先生と戦えないよ」
「それは大丈夫。ルシウスが一緒に戦ってくれればいいだけだもの」
ルシウスが口をぽかんと開けるのを見て、私は笑う。
次の仲間は、通称『役立たず』のウインドゼリーフィッシュ。
腹が減ってはなんとやら。あんまりお腹は減ってないけど、私は目の前にある早めの昼食をもりもり食べた。薄味だけど、素朴な味つけで美味しかった。
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