上 下
60 / 117
エルモアの使者編

鍾乳洞からの脱出(2)

しおりを挟む
《ちょっとー? なんで止まるの?》

《分からん。ルシウスが》

 ルシウスはノインをアスラから降ろし、壁際に背をもたれさせるようにして座らせた。それからシクレアを手招きし、ノインを指差した。

《うんうん、分かった。守れってことね》

 シクレアが頷いてノインの側で空中浮揚する。ルシウスはそれを見届けると、今度はアスラを手招きして、今しがた通って来た道を指差した。

《まさか、迎え討つのか?》

 アスラが訊くと、ルシウスは指をちょいちょいと二度曲げ、地面を示した。
 そしてアスラの体を軽く叩いて、元来た道を駆け出した。

《興味深いわね。どういうこと?》

《分からん。が、ついてこいということだろう。ノイン様を頼む》

《分かったわ》

 アスラがルシウスについていくと、地面に転がった三本の槍が目に入った。
 ルシウスはそれらを収納魔法で回収し、一本だけを手にして、アスラに手振りで投げることを伝えた。アスラは自分のするべきことを覚り、頷いて見せた。

 ルシウスとアスラがその遣り取りを済ませたところで、マーマンが三体、ペタペタと水掻きを鳴らして掛けてきた。顔は牙だらけの魚で、全身が櫛鱗に覆われた人という姿の魔物。肩幅が広く、上背があり、体は筋肉で引き締まっている。

 ルシウスはその姿を確認すると、槍を振って挑発した。マーマンが奇声を発して駆ける速度を上げると、ある程度引きつけてから槍を投擲。それがマーマンに突き刺さるのを視認すると、すぐに収納魔法から次の槍を取り出し投擲した。

 二本目に投げた槍が、別のマーマンに突き刺さる。
 そこでルシウスはアスラの胴体を軽く叩いた。

《見事としか言えんな!》

 アスラは体に刺さった槍を引き抜こうとしているマーマンに襲い掛かり、素早く首筋を噛み千切り突き飛ばした。マーマンは傷から血を噴出させながら、最後尾を走っていた無傷のマーマンにぶつかり転倒。アスラはその機を見逃さずに追い討ちを掛け、あっという間に二体のマーマンを仕留めた。

 残るは、最初の一匹。そのマーマンは、体から引き抜いた槍を構え、アスラの背後に忍び寄っていた。アスラが向き直ると、マーマンの体にまた槍が突き刺さった。ルシウスが投擲した三本目の槍。アスラはニヤリと笑い、残る一匹にもトドメを刺した。

「うわちゃ、血塗れになっちゃったね」

 ルシウスはアスラを水魔法で洗い、マーマンの死骸を収納魔法に収めるなどした後で鍾乳洞を脱出。ノインと共に、ガーランディア城へと帰還した。
 
 
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

幼馴染 百合

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:1

奴隷を解放したのに出ていきません

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:63pt お気に入り:691

旦那の横でひとりでする話

大衆娯楽 / 完結 24h.ポイント:21pt お気に入り:1

さぁ、僕の世界征服を始めよう

ファンタジー / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:9

【完結】忘れられた王女は獣人皇帝に溺愛される

恋愛 / 完結 24h.ポイント:78pt お気に入り:174

クーニャンさんの恋するレシピ。

ライト文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

「月の裏側で待ってる」約束の夜、二人の距離

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:0

婚約破棄を告げられたあの夜に

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:3

男は仲間の前で己の無力さと甘い快楽に苛まれる

BL / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:5

私は貴方を許さない

ライト文芸 / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:7

処理中です...