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15‐1 国の秘密(前編)
しおりを挟む南の村の一件を解決しコンテナハウスへと戻った俺は、メリッサに淹れてもらったアイスコーヒーを飲みながら、腰掛けているソファの背もたれに身を預けてふと思う。
なかなか酷い光景だったな、と。
ジウルイを家から引きずり出し、村民の前で大剣を使った四肢切断の公開処刑。
『はい、まずは右腕からー』
『やめろ、やめろおっ! うぎゃあああああ!』
村民たちからは悲鳴が上がるどころか大歓声の拍手喝采。
斬り落としていくうちに恨みの怖ろしさってのを実感したよな。
薬で回復したあと賊と一緒に家の壁に立てかけるようにして並べたところ、ジウルイはあっという間に村民に棒で殴られ石を投げられしてぼっこぼこにされていた。
『ひぃいいい! もうやめてくれええええ!』
『うるせぇクソ野郎! 俺の女房を殺しやがってえ!』
『勘弁してくれえええ! 許してくださいいい!』
『まず謝りなさいよ! 許してもらえると思ってることが許せないわよおっ!』
そう言って泣きながら石を投げる女が印象的だったよなぁ。
まったくもってその通りだったからなぁ。
謝罪もせずに許しを請うのは厚顔無恥もいいとこだ。そもそも連中がしたことはそう易々と許されることではない。絶対に許されないと言っても過言ではない。
悪事を行った者にできるのは謝罪と償いだけ。
許す許さないは被害者が決めること。
だから命で償えるように仕込んできたんだよ。
許してもらえたとき、あるいは気が済んで飽きたときに殺されるように。
山の集落に向かう途中から一緒に行動していた村民の青年三人に『気が済むまで痛めつけていいぞ』と再生促進液とHP回復薬の入ったカプセル瓶を渡してきた。
薬の効果のほどは集落で女たちに使って知っているので、青年たちはすぐに言葉の意図を察して平伏した。村民たちも俺が皇帝の懐刀なんて言ったもんだから平伏しちゃって、居心地が悪いからロジン一行に声をかけてさっさと逃げ出してきた。
そういう訳で、現在はロジン一行もコンテナハウスにいる。
風呂に入ったので全員がツナギ姿。リャンキは俺と、ロジンはメリッサと体格が似通っているから特に問題ないがカイエンは筋肉達磨みたいだから少し窮屈そうだ。
とはいえ不満はないらしい。着替えもなく、清拭しかしていなかった為に気持ちが悪かったとのこと。ツナギとインナーの着心地は三人ともお気に召したようだった。
「参りました。セイジ殿には驚かされっぱなしですよ」
テーブルを挟んだ向かいのソファに座るロジンがコーヒーの入ったマグカップを手に苦笑する。真っ黒だし警戒するかと思ったがコーヒーも気に入ったらしい。
ロジンは思った以上に度量の広い人物のようだ。
俺の股の間にはリュウエン。隣にはメリッサと妖精型エレス。既に粗方の事情はロジンに伝え、俺とメリッサの推測についても話してある。ロジンの反応が先のそれだ。
ちなみにリャンキとカイエンはちょっと前に外に出て行った。馬車の見張りと周辺の警戒をしながら野営をするらしい。流石に寝泊まりさせるには狭いので助かる。
「それで、俺たちの推論は合ってるのか?」
確認すると、ロジンは目を細めマグカップの中に視線を落とした。
「大筋はそれで。違う点が幾つか」
「どこが違う?」
「陛下から水の精霊を抜いたのは私です。記憶を封じたのもまた私です」
「なっ⁉」
「うぐおっ!? がっ、ぐぅあぁはぁ……」
リュウエンが声を上げると同時に俺の股の間で跳ねやがったよ馬鹿たれが。
あれぇ? こんな痛かったっけかぁ? 全然痛みが引かないんだがぁ。
高校生のとき以来の男の苦しみに悶えてしまう。震えが止まらん。
「だ、大丈夫ですかな?」
「え、あっ!」と、リュウエンが振り向き驚いた顔をする。
「リュ、リュウエンよ、まだ警戒心があるようだから、ロジンの隣に、座らなかったのは、仕方ないに、してもだな、男の股の間で、跳ねていい理由には、ならんぞ」
「す、すみません!」
メリッサがエレスに通訳されて膝を叩いて笑ってやがるよ。
真面目な話をしてるってのにどうしてこうなるんだ。
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