セイジ第二部~異世界召喚されたおじさんが役立たずと蔑まれている少年の秘められた力を解放する為の旅をする~

月城 亜希人

文字の大きさ
69 / 81

24‐1 帰還(前編)

しおりを挟む
 
 風間さんの家をお暇し、砂浜に戻った頃にはすっかりと日が暮れていた。
 エレスの案内でコンテナハウスの扉を開けると、居間のソファでくつろいでいたメリッサがさっとこちらに顔を向け、花が咲くような笑顔を見せて駆け寄ってきた。

「おかえりセイジー」

 出迎えの挨拶からの熱烈なハグとキス。なにこれすごい幸せ。

「ただいま。リュウエンは?」
「村に家を建ててもらったから、そっちで過ごすってさー」

 メリッサいわく、リュウエンはカイエンとリャンキと共に村の家で過ごすとのこと。食事も村でとると言って嬉しそうに出て行ったらしい。

 リュウエンと民との関係はどんどん良くなってるようだ。コンテナハウスの生活水準に慣れたら困ると思ってたが心配事が一つ減ったな。

「シーサーペントの首飾りはできたか?」
「まだー。セイジの方はどうだったんだ?」
「んー、長くなるから先に風呂入ってくるわ」
「お、じゃあ一緒に入っちゃう?」
「メリッサがいいならな」

 そんな流れでメリッサと一緒に風呂に入り、色々あって心も体もリフレッシュしたあと、俺はインナー姿で厨房に立った。たまには俺が料理しないとな。

 というのは建前でオーク肉を試したかった。試食しないと胸を張って提供できないからな。とにかく煮込めば大体美味くなるんだ肉なんてもんは。

 材料を切って鍋に放り込んでいるとメリッサが覗き込んできた。

「へー、セイジって料理もできたのか。これなんて料理?」
「角煮。使ってるのはオーク肉」
「い、オーク肉!? 天然物は結構な高級食材だよ!?」
「そうなのか? でもドロップアイテムだし、どうなんだろうな?」

 俺の話は既に聞こえていないようで、メリッサは「オーク肉」と歌うように繰り返しながら小躍りを始めた。風呂にいたときの大人の魅力が影も形もねぇな。

 なんか俺といるときだけ甘えっ子みたいになるよな。
 思わず笑んでしまう。可愛い奴だ。

 角煮はネギやショウガに似た野菜と各種調味料があるから問題なく仕込めた。俺は料理が下手だが、この程度ならやってやれないことはない。
 ドロップ時にダンジョンの地面に直置きされたが、ほんの僅かな間だし、接地面はトリミングして綺麗に洗い一度茹でこぼしたから問題ないだろう。

「よし、あとは煮込むだけ」
「んじゃ、出来上がるまではソファでゴロゴロしよ」
「ちょっと待った。タイマーセットしとかんと」

 メリッサに手を引かれ、ソファに連れて行かれそうになりながら慌ててタイマーをセットする。一時間でいいか。弱火にしたし、吹きこぼれる心配もないだろう。

「はいセイジ、寝転がってー」
「あいよー」

 ごろりとソファに仰向けになると、メリッサが上に乗ってくる。そしてポジションを調整していそいそと居心地の良い状態を探り始める。

「ふいー。ここがベストだなー」
「発見したかー」
「発見したぞー。セイジの長い話とやらを聞く準備は整ったー」
「よしよし。なら話すとするか。まずダンジョンは完全攻略した」
「ぶふっ、あははは、話終わったじゃん! 短いよ!」
「いや、それがまだ始まってないんだわ。あのな──」

 俺はダンジョン攻略後に風間さんと会い、家にお邪魔したことを話した。

「へー、生きてたんだ。良かったねセイジ」

「ああ、良いこと尽くめだ」

「どゆこと? てかね、なんで生きてたのかとか、どうしてダンジョンに家があるのかとかさー、疑問が山のように湧くんだけどもー?」

「待て待て、順を追って話すから。えぇと、俺がエルバレン商会に拾われたみたいに、風間さんはジルオラを所有してる貴族に拾われたらしいんだけどな──」

 三百五十年前、風間さんは保護してくれた貴族に随分と世話になったとのことで、なにか恩返しができないかと考えた結果ジルオラの開拓を自ら申し出たのだという。

 もっとも、それは若気の至りだったらしい。ただ単に異世界召喚された嬉しさと冒険心に振り回されて、思い上がっていたのだと風間さんは苦笑していた。

「悔やんでたんだ?」

「ああ、冒険を始めてすぐに連絡用の通信端末を失くしたらしくてな」

「うわ、最悪」

「だよな。若い頃のちょっとした不注意で、恩人の貴族とそれっきりになったことが未だに悔やまれるって言ってたよ。名前を思い出せなくなったこともな」

「なんか凄い気の毒。三百五十年だもんね。いくら恩人でも使わない名前なんて覚えてらんないわなー。あ、そうだ。良い機会だからセイジも覚えといてね。通信機と発信機って基本的にセットになってるから、壊れたならまだしも、失くすのはまずいよ」

「お、おう。でも俺は持ってないからな」

「念の為だよ。それでー? その後どうなったの?」

「ああ、一応通信機を失くした時点で降ろされた場所に向かおうとしたらしい。でも無謀だって諦めたんだと。捜索されてたとしてもわからなかったってさ」
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

帰国した王子の受難

ユウキ
恋愛
庶子である第二王子は、立場や情勢やら諸々を鑑みて早々に隣国へと無期限遊学に出た。そうして年月が経ち、そろそろ兄(第一王子)が立太子する頃かと、感慨深く想っていた頃に突然届いた帰還命令。 取り急ぎ舞い戻った祖国で見たのは、修羅場であった。

おっさん料理人と押しかけ弟子達のまったり田舎ライフ

双葉 鳴
ファンタジー
真面目だけが取り柄の料理人、本宝治洋一。 彼は能力の低さから不当な労働を強いられていた。 そんな彼を救い出してくれたのが友人の藤本要。 洋一は要と一緒に現代ダンジョンで気ままなセカンドライフを始めたのだが……気がつけば森の中。 さっきまで一緒に居た要の行方も知れず、洋一は途方に暮れた……のも束の間。腹が減っては戦はできぬ。 持ち前のサバイバル能力で見敵必殺! 赤い毛皮の大きなクマを非常食に、洋一はいつもの要領で食事の準備を始めたのだった。 そこで見慣れぬ騎士姿の少女を助けたことから洋一は面倒ごとに巻き込まれていく事になる。 人々との出会い。 そして貴族や平民との格差社会。 ファンタジーな世界観に飛び交う魔法。 牙を剥く魔獣を美味しく料理して食べる男とその弟子達の田舎での生活。 うるさい権力者達とは争わず、田舎でのんびりとした時間を過ごしたい! そんな人のための物語。 5/6_18:00完結!

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

はずれスキル念動力(ただしレベルMAX)で無双する~手をかざすだけです。詠唱とか必殺技とかいりません。念じるだけで倒せます~

さとう
ファンタジー
10歳になると、誰もがもらえるスキル。 キネーシス公爵家の長男、エルクがもらったスキルは『念動力』……ちょっとした物を引き寄せるだけの、はずれスキルだった。 弟のロシュオは『剣聖』、妹のサリッサは『魔聖』とレアなスキルをもらい、エルクの居場所は失われてしまう。そんなある日、後継者を決めるため、ロシュオと決闘をすることになったエルク。だが……その決闘は、エルクを除いた公爵家が仕組んだ『処刑』だった。 偶然の『事故』により、エルクは生死の境をさまよう。死にかけたエルクの魂が向かったのは『生と死の狭間』という不思議な空間で、そこにいた『神様』の気まぐれにより、エルクは自分を鍛えなおすことに。 二千年という長い時間、エルクは『念動力』を鍛えまくる。 現世に戻ったエルクは、十六歳になって目を覚ました。 はずれスキル『念動力』……ただしレベルMAXの力で無双する!!

異世界へ行って帰って来た

バルサック
ファンタジー
ダンジョンの出現した日本で、じいさんの形見となった指輪で異世界へ行ってしまった。 そして帰って来た。2つの世界を往来できる力で様々な体験をする神須勇だった。

神様の忘れ物

mizuno sei
ファンタジー
 仕事中に急死した三十二歳の独身OLが、前世の記憶を持ったまま異世界に転生した。  わりとお気楽で、ポジティブな主人公が、異世界で懸命に生きる中で巻き起こされる、笑いあり、涙あり(?)の珍騒動記。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

処理中です...