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24‐2 帰還(後編)
しおりを挟む風間さんが降りたのは奇しくも俺が降りたのと同じ無人島だった。
貴族に用意してもらった回復薬や再生促進液を詰めた背嚢と装備一式を身に着けていたので生活基盤を整えるのはさほど難しくはなかったらしい。
「いやいや、そうは言っても苦労したことは間違いないっしょ」
「それな。でも風間さんはほとんど苦労話をしなかったんだよ」
「苦労しすぎて老成円熟しちゃったんだろうねー」
「外見年齢は俺と変わらんがその通りだろうな」
風間さんはやがて筏と櫂を作り大陸へと渡った。だがもう間もなく大陸に着くというところで魔物に襲われ筏が壊れてしまったそうだ。
「大ピンチじゃないのさ」
「どうにか泳いで渡ったらしいぞ。大きな犠牲を払って」
「大きな犠牲? あー! 通信機失くしたのって海!?」
「そういうこと。通信機どころか背嚢ごとやられたって笑ってたよ」
「うわー笑い事にしちゃったかー。途方に暮れただろうにー」
「凄い人なんだよ。まだまだこんなもんじゃないぞ」
風間さんはめげなかった。生きる力を最優先にという考えからスキルは取らずにLV上げに勤しみ、能力値にのみSPを振って冒険と探索を続けたそうだ。
その結果、限定シークレットスキル〈ダンジョンマスター〉が開放されたという。開放条件は『洞窟探索の累計時間と討伐した魔物の種類が一定数あること』だとか。
つまり、ジルオラにダンジョンがあるのは風間さんが作ったからだった。元は洞窟しかなかった惑星に資源の宝庫をもたらし原住民の文明発達に寄与した訳だ。
「なにそれ、凄すぎでしょ……」
「だろ? 俺が良いこと尽くめって言った理由はな、風間さんとソウルメイト登録したからなんだよ。ダンジョンマスターと連絡が取れるって偉いことだぞ」
「具体的には?」
「それはカザマさんの能力を話した方が早いな」
風間さんが〈ダンジョンマスター〉シリーズ全取得後に得たのは〈ストレージ〉と〈言語理解〉、ダンジョン内限定の〈作成〉〈複製〉〈転移〉〈監視〉の四つ。
〈作成〉はダンジョンに関わる全てを作ることができる。外装内装は勿論のこと罠や魔物まで作れるらしい。ただし自分より強い魔物は作れないなど制限はあるとか。
「はー、ダンジョンに家があった理由はそれかー。魔力で作ってるの?」
「いや、DPって特殊なポイントを消費する必要があるって言ってたな。大気中の魔素を吸ったり、ダンジョンが自浄作用でゴミを呑み込んだりすると増えるってさ」
「ゴミって冒険者の死体とか?」
「それもあるが、人以外の生物も生命活動を終えたら呑み込むし、血液とか、汚い話だがトイレとかする奴もいるだろ? そういう汚物も対象だし装備品や道具もだな。他にも病原菌やバクテリアなんかは生きてても呑み込むって。あと毒物とかもな」
「至れり尽くせりだ。ダンジョンってジルオラで一番清潔なんじゃないかー?」
「そんな訳ないだろ。魔物も人も関係なく切った張ったしてんだぞ。冒険者には不衛生な奴も多いし、住む奴もいるから、めちゃくちゃ汚れて大変だってよ」
エリーゼが言っていた風間さんの『所用』の一つがこれ。つまり、お掃除。ゴミを呑み込むまでの時間を設定してあるらしいが、追いつかないことがあるそうだ。
「それを手動操作でポンと解決しに行くと」
「そんな簡単に……まさか作ったダンジョン全部に移動できるとか?」
「そうなんだよ。凄いよな」
風間さんが作ったダンジョンはジルオラの各地にあり、その全てを毎日管理して回っているから忙しいとのこと。そのときに使っているのが〈転移〉と〈監視〉だ。
〈転移〉は自作のダンジョン内であれば何処にでも瞬間移動が可能で、対象は自分を含めて十人まで設定できる。転移用のオブジェクトの設置もでき、ダンジョン最下層攻略者はそのオブジェクトを使って出入口まで帰還する仕組みなんだとか。
ちなみに、普段は攻略者を家に招くなんて真似はしないそうだ。エリーゼに攻略報酬のある部屋と転移用オブジェクトまで案内させて出入口に帰還させる流れらしい。
エリーゼは各ダンジョンで同時に映像外部出力が可能になっている上に並行作業も可能とのことで、混雑時にも問題なく対応可能なんだとか。やっぱ優秀サポートAI。
エレスも俺とメリッサの邪魔をしないように空気に徹してくれているし、どうなってんだろうな本当に。それで呼んだら出てくるんだから足向けて寝られねぇわ。
「んで、〈監視〉はホログラムディスプレイでダンジョンの様子が全て見通せる。俺が所持する〈踏破マップ〉みたいに、マップの切り替えで生物非生物問わず点と色で何がどこにいるか、またはあるかを確認することが可能らしい」
「なんか、お人好しっぽいし冒険者の手助けとかしてそうだねー」
「俺も同じこと訊いたわ。でも否定された。最初の頃はしてたらしいが、今はダンジョンの数が増えて忙しいから完全に不介入なんだと」
「あー、そういやリュウエンのことも助けてなかったか」
「それはまたちょっと事情が違ってな。風間さんにその話をしたら驚いてたよ」
「ん? なんで驚くんさ?」
「そりゃ〈複製〉の説明を聞けば理解してもらえると思うわ」
〈複製〉はMPを消費することでダンジョンに関わるものであればコピー可能。この『関わる』というのは、基本DPで〈作成〉したものを指すのだが──。
「まさか、自分自身もコピーできちゃう訳!?」
「そうらしい。つまり、エイゲンたちとパーティーを組んでいたのは風間さんのコピーだったんだよ。だから風間さん本人はリュウエンのことをほぼ知らんのだわ」
「てことは、コピーが殺されたことにも気づいてなかったとか?」
「いや、そこは流石に気づけるみたいだが、コピーの行動はダンジョンにいる間しか掴めんのだと。操作も不可能で他人を作ってるのと変わらんそうだ。たまに作って各地の情報収集やダンジョン攻略を命じてるらしいぞ。難易度調整とかの為に」
俺が聞いていたカザマ君の特徴が実際に会った風間さんと違ったのはその所為。〈複製〉で作られたカザマ君は召喚時の風間さんがコピー元のオリジナルとして固定されているので、青年とおじさんという差が生まれた訳だ。
「あのさ、素朴な疑問なんだけど、不老って年取らないんじゃないの?」
「俺もそう思ってたんだが、若い場合は働き盛りまで年齢が進行するみたいだな。そうじゃないと若い子がびっくりするだろ。いきなり年食ってるとか」
「あそっか。セイジは働き盛りを過ぎてたから少し若返ったんだね。そうじゃない場合はそのままなのか。そういや、あの女も若かったもんね」
「急に伊勢さんを思い出して不機嫌になるのやめい」
「不機嫌じゃないさー。セイジを独り占めしてんだからー」
メリッサが俺の胸に頭をぐりぐりと押しつける。痛ぇよ。
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