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え? 呼ぶの?
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黒銀と真白をここに……
私がまごついていると、レオン様がテーブルに出されたお菓子をひょいと摘まみながら言った。
「ま、いいんじゃね? どっちにしろあいつらを今後誰にも会わせないわけにゃいかねぇんだし? ほれ、呼んじまえよ」
レオン様はお菓子をパクリとひと口で食べ、咀嚼しながらニヤニヤと私たちを見ていた。
くっ……人ごとだと思って……!
私のことを庇ってくれたりしてレオン様かっこいい! とか思ってたのに台無しだよ!
……でもまあ、考えようによってはチャンスなのかもしれない。
ここで黒銀と真白がレオン様や王族に対して敵対の意思を見せなければ「ドリスタン王国にとって脅威ではない」ことのアピールになるんじゃない? そうだよね⁉︎ 私冴えてるぅ!
よおし、そうと決まれば二人を呼び出して……
「呼んだか?」
「くりすてあ、よんだ?」
「えっ⁉︎」
まだ呼んでないよ! 呼ぼうとはしたけど! 出てくるの早くないかな⁉︎
なぜか二人ともフライング気味に現れたよ? もしかして待ち構えていたとか⁉︎
何なの⁉︎ ストーカーなの?
……否定できなくてつらい!
『主、我らはいつなりと主の元へ馳せ参じる。主の近くに他の聖獣がいるのならば、尚更一刻も早く駆けつけようとするものだぞ』
黒銀が戸惑う私に念話で話しかけてきた。
え、そういうものなの?
まあ、基本やきもち焼きだからねぇ……
『くりすてあがよぶまでがまんしてるだけで、ほんとうはいつだってそばにいたいんだよ?』
そ、それはちょっと重いかな……⁉︎ 学園生活が始まるとべったりってわけにはいかないからね?
『二人とも、レオン様と仲良くしてね。喧嘩腰になっちゃダメだからね?』
『む……仕方あるまい、獅子の出方次第だが善処しよう』
『むぅ……くりすてあのために、がまんする』
本当、相変わらずやきもち焼きなんだよねぇ。白虎様たちと同じ寮で過ごすようになってから少しはマシになったかと思ってたけど、レオン様相手になると、どうも過剰に反応しているような気がするのよね……
「まあぁ、彼らがクリステアちゃんの契約獣なのね? レオン様とお揃いで人化できるのね、素敵ねぇ!」
リリー様が突然現れた二人を見て無邪気にはしゃいでいた。
「は、はい。黒銀と真白です」
リリー様と陛下は、二人が転移してきたことについてレオン様で慣れてるのか驚いた様子もなかった。
お兄様にレイ殿下、そして学園長は、不意打ちのように突然現れてきた二人にちょっと驚いていたみたいだけど、すぐに冷静な表情に戻った。さすが。
陛下もリリー様の隣で人の良さそうな笑顔で二人を見ているけれど、どうも私たちを観察してるように感じるのよね……
あのお父様が手を焼くくらいだもの、一筋縄じゃいかないってことよね。
「ふむ……クリステア嬢、レオンはあのように言ったが、ドリスタン王国の国民として其方は助力してもらえるだろうか?」
「え……」
それってまさか、私の助力と言いながら、有事の際は黒銀や真白を戦争に差し出せってこと?
そんなことさせたくないから今までなんとか秘密にしてきたのに、それじゃ意味ないじゃない!
「いやなに、我が国は聖獣レオンのお陰で他国からの脅威にさらされることなく平穏そのものだ。故にクリステア嬢が心配するようなことはない。寧ろ、さらに聖獣契約者がいることを知らしめることで、我が国の護りはさらに盤石なものになるだろう」
陛下は笑顔のままそう言うけれど、それって結局、何かあったらいいように使われるってことじゃないの?
黒銀と真白はいざとなったら私のために戦ってくれるといつも言ってくれるけれど、私がここで「もちろんです! お国のために頑張ります!」なんて答えたら、それを了承したことになってしまう……
私が答えに窮していると、レオン様がバン!とテーブルを叩いた。
「おい! こいつはまだガキだと言っただろう! なんの覚悟もないガキを利用するのはよせ! ガキ相手に言質をとるなんて、そんなくだらねぇ真似は許さねぇぞ!」
ひえぇ……すごい威圧!
普段のチャラい姿とは一変、レオン様からものすごいオーラのようなものを感じて、私は腰を抜かしそうになった。
側にいたお兄様と真白が咄嗟に支えてくれて、黒銀がサッと私たちの前に立ってくれたので事なきを得たけれど。
学園長室内が凍りついたような空気の中、リリー様がハァ……とため息をついて、陛下の二の腕をさすった。
「あなた。今回はあなたが悪いわよ。いくら貴族の令嬢とはいえ、学園に入学したばかりの幼い娘に覚悟を迫るなんて意地が悪いわ。クリステアちゃんに謝ってくださいな」
リリー様が陛下を嗜めるように仰った。
えっ? リリー様、陛下相手にそんなこと言っていいの⁉︎
「……そうだな。すまぬ、クリステア嬢。しかし、我が国の平和を願う故の頼みであることは理解してほしい」
陛下はリリー様の進言に従い、頭を下げた。
ひえええええ! 陛下に頭下げさせちゃったよおおおおぉ⁉︎ これって、やばくない⁉︎
「い、いえ! 陛下のお気持ちは理解できます! ですので頭を上げられてくださいませ‼︎」
慌てて答えると、レオン様が呆れた様子で私を見た。
「お前なぁ、俺がお前さんのために怒ってやってんだから、簡単に許してやんなよ?」
いやそれは無理でしょ⁉︎ だって国王陛下だよ? 国の一番偉い人だよ⁉︎
---------------------------
皆様、あけましておめでとうございます。
本年も「転生令嬢は庶民の味に飢えている」の連載をマイペースではありますが頑張りますので、よろしくお願いいたします!
私がまごついていると、レオン様がテーブルに出されたお菓子をひょいと摘まみながら言った。
「ま、いいんじゃね? どっちにしろあいつらを今後誰にも会わせないわけにゃいかねぇんだし? ほれ、呼んじまえよ」
レオン様はお菓子をパクリとひと口で食べ、咀嚼しながらニヤニヤと私たちを見ていた。
くっ……人ごとだと思って……!
私のことを庇ってくれたりしてレオン様かっこいい! とか思ってたのに台無しだよ!
……でもまあ、考えようによってはチャンスなのかもしれない。
ここで黒銀と真白がレオン様や王族に対して敵対の意思を見せなければ「ドリスタン王国にとって脅威ではない」ことのアピールになるんじゃない? そうだよね⁉︎ 私冴えてるぅ!
よおし、そうと決まれば二人を呼び出して……
「呼んだか?」
「くりすてあ、よんだ?」
「えっ⁉︎」
まだ呼んでないよ! 呼ぼうとはしたけど! 出てくるの早くないかな⁉︎
なぜか二人ともフライング気味に現れたよ? もしかして待ち構えていたとか⁉︎
何なの⁉︎ ストーカーなの?
……否定できなくてつらい!
『主、我らはいつなりと主の元へ馳せ参じる。主の近くに他の聖獣がいるのならば、尚更一刻も早く駆けつけようとするものだぞ』
黒銀が戸惑う私に念話で話しかけてきた。
え、そういうものなの?
まあ、基本やきもち焼きだからねぇ……
『くりすてあがよぶまでがまんしてるだけで、ほんとうはいつだってそばにいたいんだよ?』
そ、それはちょっと重いかな……⁉︎ 学園生活が始まるとべったりってわけにはいかないからね?
『二人とも、レオン様と仲良くしてね。喧嘩腰になっちゃダメだからね?』
『む……仕方あるまい、獅子の出方次第だが善処しよう』
『むぅ……くりすてあのために、がまんする』
本当、相変わらずやきもち焼きなんだよねぇ。白虎様たちと同じ寮で過ごすようになってから少しはマシになったかと思ってたけど、レオン様相手になると、どうも過剰に反応しているような気がするのよね……
「まあぁ、彼らがクリステアちゃんの契約獣なのね? レオン様とお揃いで人化できるのね、素敵ねぇ!」
リリー様が突然現れた二人を見て無邪気にはしゃいでいた。
「は、はい。黒銀と真白です」
リリー様と陛下は、二人が転移してきたことについてレオン様で慣れてるのか驚いた様子もなかった。
お兄様にレイ殿下、そして学園長は、不意打ちのように突然現れてきた二人にちょっと驚いていたみたいだけど、すぐに冷静な表情に戻った。さすが。
陛下もリリー様の隣で人の良さそうな笑顔で二人を見ているけれど、どうも私たちを観察してるように感じるのよね……
あのお父様が手を焼くくらいだもの、一筋縄じゃいかないってことよね。
「ふむ……クリステア嬢、レオンはあのように言ったが、ドリスタン王国の国民として其方は助力してもらえるだろうか?」
「え……」
それってまさか、私の助力と言いながら、有事の際は黒銀や真白を戦争に差し出せってこと?
そんなことさせたくないから今までなんとか秘密にしてきたのに、それじゃ意味ないじゃない!
「いやなに、我が国は聖獣レオンのお陰で他国からの脅威にさらされることなく平穏そのものだ。故にクリステア嬢が心配するようなことはない。寧ろ、さらに聖獣契約者がいることを知らしめることで、我が国の護りはさらに盤石なものになるだろう」
陛下は笑顔のままそう言うけれど、それって結局、何かあったらいいように使われるってことじゃないの?
黒銀と真白はいざとなったら私のために戦ってくれるといつも言ってくれるけれど、私がここで「もちろんです! お国のために頑張ります!」なんて答えたら、それを了承したことになってしまう……
私が答えに窮していると、レオン様がバン!とテーブルを叩いた。
「おい! こいつはまだガキだと言っただろう! なんの覚悟もないガキを利用するのはよせ! ガキ相手に言質をとるなんて、そんなくだらねぇ真似は許さねぇぞ!」
ひえぇ……すごい威圧!
普段のチャラい姿とは一変、レオン様からものすごいオーラのようなものを感じて、私は腰を抜かしそうになった。
側にいたお兄様と真白が咄嗟に支えてくれて、黒銀がサッと私たちの前に立ってくれたので事なきを得たけれど。
学園長室内が凍りついたような空気の中、リリー様がハァ……とため息をついて、陛下の二の腕をさすった。
「あなた。今回はあなたが悪いわよ。いくら貴族の令嬢とはいえ、学園に入学したばかりの幼い娘に覚悟を迫るなんて意地が悪いわ。クリステアちゃんに謝ってくださいな」
リリー様が陛下を嗜めるように仰った。
えっ? リリー様、陛下相手にそんなこと言っていいの⁉︎
「……そうだな。すまぬ、クリステア嬢。しかし、我が国の平和を願う故の頼みであることは理解してほしい」
陛下はリリー様の進言に従い、頭を下げた。
ひえええええ! 陛下に頭下げさせちゃったよおおおおぉ⁉︎ これって、やばくない⁉︎
「い、いえ! 陛下のお気持ちは理解できます! ですので頭を上げられてくださいませ‼︎」
慌てて答えると、レオン様が呆れた様子で私を見た。
「お前なぁ、俺がお前さんのために怒ってやってんだから、簡単に許してやんなよ?」
いやそれは無理でしょ⁉︎ だって国王陛下だよ? 国の一番偉い人だよ⁉︎
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皆様、あけましておめでとうございます。
本年も「転生令嬢は庶民の味に飢えている」の連載をマイペースではありますが頑張りますので、よろしくお願いいたします!
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