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寮に戻りましょう
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陛下とリリー様が王宮へお帰りになり、残った私たちはというと、昼食を摂りに戻るよう
学園長に促されて学園長室を出た。
「ええと……僕たちは寮の食堂があるサロン棟に向かうんだけど、クリステアたちは特別寮に戻るんだよね?」
お兄様が私をエスコートしながら質問してきた。
「ええ、私たちは他の生徒と接触しないようにと言われて、寮内の食堂で食事をしていましたから。そういえば、入学式後はどうするのかしら……」
ニール先生からは特に今後は他の生徒と一緒に食事をするようには言われてないので多分このままなんだろうなぁ。
まあ、その方が食べたいものも食べられるから気楽でいいけど。
でも、他の生徒との交流がないというデメリットもある。
友達をたくさん作る計画が早くも暗礁に乗り上げてしまったよね……うぐぐ。
……あれ? ニール先生といえば、式の間先生の姿が見えなかったけど……どこにいたのかしら。
「そういえば、ニール先生をお見かけしませんでしたが、先生はどちらに……?」
そうだよ、ニール先生憧れの聖獣レオン様が学園内にいたっていうのに、姿が全く見えなかったのってどういうこと?
そんな私の疑問にレイ殿下が答えてくださった。
「ああ……ニール先生なら、クリステア嬢が来るよりも前に講堂を出ていたな。連れていた使役獣が騒ぎ出して式どころじゃなくなったから、大人しくなるまで学園内を見回りするようにと他の先生に追い出されていたぞ」
「そ、そうなのですか……」
多分、あのお猿さんが一緒だったんだろうなぁ。レオン様がいらっしゃって、その気配に怯えて騒いだところを追い出されたってわけか……ニール先生、ついてないね。
この調子じゃあ、レオン様に会える日は来ないかもしれない……はは。
それから私とセイはお兄様たちに特別寮まで送っていただいた。
お兄様たちは食堂で昼食を摂り、午後からは授業に向かうそうだ。
私たち新入学生は明日の適正検査に向けて予習するなどしてゆっくり休むようにと言われている。
適正検査は、魔力量や属性を調べたり、学力を診断するための筆記試験などがあるそうだ。
学園に入る前にそういうのってするもんじゃないの? と思うのだけれど、入学資格は推薦状があればいいのだそう。
貴族はもともと高い魔力持ちが多いから、親の申請があれば大丈夫だし、平民は教会や領主の推薦があれば入学資格が得られ、入学後に適正を調べてその人に合う進路を勧めるそうな。
基本的に初めに貴族も平民も一緒に基礎的な学力を身につけてから専門的なことを学ぶために科目を選択することになる。
貴族は社交を学ぶために貴族科や、騎士になるための騎士科などを選ぶし、平民は手に職をつけるために薬師科や魔導具科、執事やメイドになるための家政科などに進むことが多いみたい。
平民でも、剣術に長けていれば騎士科に進む子がいるそうだけど、貴族と違って色々と大変なんですって。
そんな進路を決めるための試験が明日行われるのだ。
私は入学前から家庭教師がいたし、どんな試験でも問題なく解けるだろうとのお墨付きもいただいているので、多分大丈夫だろう。
前世の受験戦争を乗り越えた身としては、児童が受けるような試験なんて恐るるに足りず。わっはっは。
それよりも、明日は他の生徒と一緒に試験を受けるってことにドキドキするよ……
寮の玄関の前でお兄様たちを見送っていると、お兄様が思い出したように振り返った。
「そういえば、テアたちは今まで寮から出ていないから、校内の説明を受けていないだろう? 明日の試験後に僕が校内を案内するから、それまで出歩かないようにね」
「えっ? ……は、はい。ありがとうございます」
そっか、他の生徒はもう校内を案内されているんだ。いいなぁ。
まあ、今日の入学式で私やセイが聖獣契約者であることが知られちゃったし、絡まれても困るから下手に出歩くつもりはないけど……
「おっ、俺も一緒に案内するぞ! 任せておけ!」
えっ、レイ殿下も⁉︎ 悪目立ちしそうだから辞退してもいいでしょうか⁉︎
「……殿下は生徒会の仕事でお忙しいのですから、僕だけで大丈夫です」
お兄様がにっこり笑って言った。
……笑顔なのにちょっと怖い。レイ殿下もちょっとだけ怯んだ様子を見せた。
「い、忙しいのはお前だって同じだろう⁉︎」
「僕が忙しいのは殿下のサポートもしているからですよ? 殿下は僕が抜ける分、そちらを頑張ってください」
わーお……お兄様強い。
「くっ……いや! 俺も同行するぞ! 絶対だ!」
えええ……レイ殿下、そんなに仕事サボりたいの? お兄様大変だなぁ……
「……はあ、仕方ないですね。その代わり、今日の放課後は頑張っていただきますよ?」
お兄様が渋々といった様子で答えた。
お兄様、甘い! 甘々だよ!
レイ殿下は未来の国王になる身なんだから、ビシバシいかないと!
そうじゃないと、お兄様が将来苦労しちゃうじゃないの!
「お、おう……わかった! じゃあ明日楽しみにしてるからな! ……じゃない、楽しみにしてろよ!」
レイ殿下は嬉しそうに手を振って寮に戻っていった。
まったく、お仕事サボれるのがそんなに嬉しいのか……お兄様、苦労してるなぁ。
お兄様には、今度労いの気持ちを込めてお菓子を差し入れしようっと。
「クリステア嬢、寮に入ろう」
お兄様たちを一緒に見送っていたセイに声をかけられ、私は寮に戻ったのだった。
その後は、昼食を摂るために皆と食堂に移動した。
ニール先生は結局戻ってこなかったので、今回はインベントリからオーク汁にだし巻き卵、炊き込みご飯を出して皆に振る舞った。
「おお! やっぱオーク汁うめぇな!」
「本当ですわね……この卵もふんわりと柔らかくて、お味も上品でたまりませんわぁ」
「うむ、やはり主の料理は絶品だな」
「うん、このたきこみごはんもいろんなあじがしておいしいよ!」
くいしんぼ聖獣の皆さんが次々とおかわりをする中、セイは箸が進まない様子なのが気になった。
「セイ、どうしたの? 食欲がない?」
「ああ、いや……明日の適正検査が気になって。魔力量とか属性とか言われてもピンとこなくてな」
セイは元々魔法が使えるわけではなく、ドリスタン王国で言うところの魔力にあたる神力は持っていたらしいけれど、実際に魔法らしきものをちゃんと使えるようになったのは、四神獣でいらっしゃる皆様の加護を得てからなのだそう。
「それまでは武家の子として武道だけを仕込まれていたし、市井に神力を使える者がいないからどう使えばいいのかわからなかったんだ。神力があるとわかれば皆神職に就くために神官見習いになっていたから……」
幼い頃は神力が膨れ上がって熱を出していたため、病弱と思われていたそうだ。
その頃も女の子の格好をしていたんだって。
前世でもそういう風習ってあったものね。
「神力が魔力と同じものかはわからないから、明日の適正検査でどのような結果になるのか……」
セイが不安そうにしていると、白虎様がお代わりしたオーク汁の最後の一杯を平らげて言った。
「んな心配しなくたって大丈夫だって。お前は留学生の立場なんだしさ。それに、過去にも帝候補が留学してたことだってあるから学園側もそのへんわかってっだろ」
「えっ? 過去にも⁉︎」
それは初耳だ。
「ああ、俺たちもそいつに護衛としてついてきてたからな。そんで、その外遊してる間に黒銀や真白の親に出会ってたってわけだ」
なるほど、それが縁で黒銀たちを紹介してくれたのね。
「お主と出会ったのは相当前の話だろう」
「そうだなぁ、何代前の帝の頃だったかな?」
そんな昔に出会ってたの?
そういえば、どうやってドリスタン王国とヤハトゥールの聖獣が出会ったのか、その経緯を聞いたことなかったわ。
黒銀にその頃の話を聞いてみたいけど、話してくれるかしら?
白虎様に聞くほうが早いかもしれないわね。
「まあ、過去にも事例があったから留学も受け入れられたんだし、大丈夫だって」
ニカッと笑う白虎様を見て、セイは気が抜けたのか「ああ、そうだな」と言って笑った。
それから私たちは皆で夕食の準備をして、ニール先生がヘトヘトになって戻ってきてから一緒に食事をしたのだった。
学園長に促されて学園長室を出た。
「ええと……僕たちは寮の食堂があるサロン棟に向かうんだけど、クリステアたちは特別寮に戻るんだよね?」
お兄様が私をエスコートしながら質問してきた。
「ええ、私たちは他の生徒と接触しないようにと言われて、寮内の食堂で食事をしていましたから。そういえば、入学式後はどうするのかしら……」
ニール先生からは特に今後は他の生徒と一緒に食事をするようには言われてないので多分このままなんだろうなぁ。
まあ、その方が食べたいものも食べられるから気楽でいいけど。
でも、他の生徒との交流がないというデメリットもある。
友達をたくさん作る計画が早くも暗礁に乗り上げてしまったよね……うぐぐ。
……あれ? ニール先生といえば、式の間先生の姿が見えなかったけど……どこにいたのかしら。
「そういえば、ニール先生をお見かけしませんでしたが、先生はどちらに……?」
そうだよ、ニール先生憧れの聖獣レオン様が学園内にいたっていうのに、姿が全く見えなかったのってどういうこと?
そんな私の疑問にレイ殿下が答えてくださった。
「ああ……ニール先生なら、クリステア嬢が来るよりも前に講堂を出ていたな。連れていた使役獣が騒ぎ出して式どころじゃなくなったから、大人しくなるまで学園内を見回りするようにと他の先生に追い出されていたぞ」
「そ、そうなのですか……」
多分、あのお猿さんが一緒だったんだろうなぁ。レオン様がいらっしゃって、その気配に怯えて騒いだところを追い出されたってわけか……ニール先生、ついてないね。
この調子じゃあ、レオン様に会える日は来ないかもしれない……はは。
それから私とセイはお兄様たちに特別寮まで送っていただいた。
お兄様たちは食堂で昼食を摂り、午後からは授業に向かうそうだ。
私たち新入学生は明日の適正検査に向けて予習するなどしてゆっくり休むようにと言われている。
適正検査は、魔力量や属性を調べたり、学力を診断するための筆記試験などがあるそうだ。
学園に入る前にそういうのってするもんじゃないの? と思うのだけれど、入学資格は推薦状があればいいのだそう。
貴族はもともと高い魔力持ちが多いから、親の申請があれば大丈夫だし、平民は教会や領主の推薦があれば入学資格が得られ、入学後に適正を調べてその人に合う進路を勧めるそうな。
基本的に初めに貴族も平民も一緒に基礎的な学力を身につけてから専門的なことを学ぶために科目を選択することになる。
貴族は社交を学ぶために貴族科や、騎士になるための騎士科などを選ぶし、平民は手に職をつけるために薬師科や魔導具科、執事やメイドになるための家政科などに進むことが多いみたい。
平民でも、剣術に長けていれば騎士科に進む子がいるそうだけど、貴族と違って色々と大変なんですって。
そんな進路を決めるための試験が明日行われるのだ。
私は入学前から家庭教師がいたし、どんな試験でも問題なく解けるだろうとのお墨付きもいただいているので、多分大丈夫だろう。
前世の受験戦争を乗り越えた身としては、児童が受けるような試験なんて恐るるに足りず。わっはっは。
それよりも、明日は他の生徒と一緒に試験を受けるってことにドキドキするよ……
寮の玄関の前でお兄様たちを見送っていると、お兄様が思い出したように振り返った。
「そういえば、テアたちは今まで寮から出ていないから、校内の説明を受けていないだろう? 明日の試験後に僕が校内を案内するから、それまで出歩かないようにね」
「えっ? ……は、はい。ありがとうございます」
そっか、他の生徒はもう校内を案内されているんだ。いいなぁ。
まあ、今日の入学式で私やセイが聖獣契約者であることが知られちゃったし、絡まれても困るから下手に出歩くつもりはないけど……
「おっ、俺も一緒に案内するぞ! 任せておけ!」
えっ、レイ殿下も⁉︎ 悪目立ちしそうだから辞退してもいいでしょうか⁉︎
「……殿下は生徒会の仕事でお忙しいのですから、僕だけで大丈夫です」
お兄様がにっこり笑って言った。
……笑顔なのにちょっと怖い。レイ殿下もちょっとだけ怯んだ様子を見せた。
「い、忙しいのはお前だって同じだろう⁉︎」
「僕が忙しいのは殿下のサポートもしているからですよ? 殿下は僕が抜ける分、そちらを頑張ってください」
わーお……お兄様強い。
「くっ……いや! 俺も同行するぞ! 絶対だ!」
えええ……レイ殿下、そんなに仕事サボりたいの? お兄様大変だなぁ……
「……はあ、仕方ないですね。その代わり、今日の放課後は頑張っていただきますよ?」
お兄様が渋々といった様子で答えた。
お兄様、甘い! 甘々だよ!
レイ殿下は未来の国王になる身なんだから、ビシバシいかないと!
そうじゃないと、お兄様が将来苦労しちゃうじゃないの!
「お、おう……わかった! じゃあ明日楽しみにしてるからな! ……じゃない、楽しみにしてろよ!」
レイ殿下は嬉しそうに手を振って寮に戻っていった。
まったく、お仕事サボれるのがそんなに嬉しいのか……お兄様、苦労してるなぁ。
お兄様には、今度労いの気持ちを込めてお菓子を差し入れしようっと。
「クリステア嬢、寮に入ろう」
お兄様たちを一緒に見送っていたセイに声をかけられ、私は寮に戻ったのだった。
その後は、昼食を摂るために皆と食堂に移動した。
ニール先生は結局戻ってこなかったので、今回はインベントリからオーク汁にだし巻き卵、炊き込みご飯を出して皆に振る舞った。
「おお! やっぱオーク汁うめぇな!」
「本当ですわね……この卵もふんわりと柔らかくて、お味も上品でたまりませんわぁ」
「うむ、やはり主の料理は絶品だな」
「うん、このたきこみごはんもいろんなあじがしておいしいよ!」
くいしんぼ聖獣の皆さんが次々とおかわりをする中、セイは箸が進まない様子なのが気になった。
「セイ、どうしたの? 食欲がない?」
「ああ、いや……明日の適正検査が気になって。魔力量とか属性とか言われてもピンとこなくてな」
セイは元々魔法が使えるわけではなく、ドリスタン王国で言うところの魔力にあたる神力は持っていたらしいけれど、実際に魔法らしきものをちゃんと使えるようになったのは、四神獣でいらっしゃる皆様の加護を得てからなのだそう。
「それまでは武家の子として武道だけを仕込まれていたし、市井に神力を使える者がいないからどう使えばいいのかわからなかったんだ。神力があるとわかれば皆神職に就くために神官見習いになっていたから……」
幼い頃は神力が膨れ上がって熱を出していたため、病弱と思われていたそうだ。
その頃も女の子の格好をしていたんだって。
前世でもそういう風習ってあったものね。
「神力が魔力と同じものかはわからないから、明日の適正検査でどのような結果になるのか……」
セイが不安そうにしていると、白虎様がお代わりしたオーク汁の最後の一杯を平らげて言った。
「んな心配しなくたって大丈夫だって。お前は留学生の立場なんだしさ。それに、過去にも帝候補が留学してたことだってあるから学園側もそのへんわかってっだろ」
「えっ? 過去にも⁉︎」
それは初耳だ。
「ああ、俺たちもそいつに護衛としてついてきてたからな。そんで、その外遊してる間に黒銀や真白の親に出会ってたってわけだ」
なるほど、それが縁で黒銀たちを紹介してくれたのね。
「お主と出会ったのは相当前の話だろう」
「そうだなぁ、何代前の帝の頃だったかな?」
そんな昔に出会ってたの?
そういえば、どうやってドリスタン王国とヤハトゥールの聖獣が出会ったのか、その経緯を聞いたことなかったわ。
黒銀にその頃の話を聞いてみたいけど、話してくれるかしら?
白虎様に聞くほうが早いかもしれないわね。
「まあ、過去にも事例があったから留学も受け入れられたんだし、大丈夫だって」
ニカッと笑う白虎様を見て、セイは気が抜けたのか「ああ、そうだな」と言って笑った。
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