転生令嬢は庶民の味に飢えている

柚木原みやこ(みやこ)

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そんな目で見ないで⁉︎

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ランチの後は、午後の授業開始までにあまり時間がなかったこともあり、週末の出来事をざっくりと説明した。

「……晩餐会のメニューの引き継ぎをするだけのはずがどうしてそんなことに?」
セイが意味がわからんって顔で私を見ている。

うん、私もどうしてこうなった⁉︎ って思ってるよ……

「晩餐会を行う前に外交問題を解決した挙句むしろ優位に立っているのではありませんこと?」
アリシア様が呆れたように私を見て以下略。

ええまあ、不思議なことに……
おかしいな、晩餐会は数日後のはずなんですけどね?

「え、あの、もしかして、またうちのメイヤー商会が忙しくなるフラグでは……?」
マリエルちゃんが顔を引き攣らせて以下略。

ごめんねマリエルちゃん……
お父様にはメイヤー商会ががっつり儲かるよう取り計らってもらうから!

「「「……」」」
三人とも、チベスナみたいな表情でこっち見るのやめてもらっていいですか⁉︎
自分でも説明してて嘘くさいなって自覚はあるんですよ!

「相変わらずお嬢がなにかすっと面白いことになるよなぁ」
「そうですわねぇ。結果的には悪いことにはならないのが不思議なくらいですわね」
白虎様と朱雀様が愉快そうに笑う。

いや、私としては穏やかで平凡な暮らしが一番だと思っているので面白いこととか望んでないのですが。

「主は多少おせっかいだったりうっかりしているがゆえに騒動に巻き込まれがちだからな。まあ、何事も主の不利益にならぬよう我が護ればいいことだ」
「くりすてあになにがあってもおれがまもるし、わるいやつがきたらぷちっとやっつけるからもんだいない」
黒銀くろがね真白ましろは基本的に私のことは全肯定だからね……

ていうか、黒銀くろがねってばおせっかいとかうっかりとか何気にディスってないかな⁉︎
あと真白ましろ、ぷちっとって何⁉︎
物理でぷちっとしないでね⁉︎

最終的には「驚くことは驚いたけど、まあクリステアだからなぁ」って結論に達したのは解せぬ。

でも皆が「よく頑張ったね」って褒めてくれたのでよしとする。
褒められたらきっと伸びる子、クリステアです。

午後の授業には間に合うので、ミリアにサロン棟への連絡と荷物の整理を託して皆と特別寮を出た。

午後の授業は魔法薬の講義だった。
魔法薬は薬草を煮詰めたり魔力を加えたりと薬の目的に合わせたレシピ通りに加工をして作る。

私は薬草を刻んだり煮詰めたりは得意。
料理してるのと変わらないからね。

だけど、魔力を適量で注ぐのが苦手。
集中してないと、ついドバッと注ぎ込んでしまって、素材の方が耐えきれなくて効果がなくなったり半減したり、素材が良質で耐えうるものであれば逆に狙ったものより高い効果
の魔法薬が出来上がってしまう。

初めの頃より大分ましになってきたと思っていたけど、今日は魔力を注ぎすぎてしまって失敗ばかりしている。

「うーん、なんでだろ……」
いつもこのくらいかなって思っていたのより魔力が多めになっちゃうのよね。

「クリステアさん珍しいですね。最近は成功率上がってましたよね?」
マリエルちゃんが不思議そうに私の手元を見て言った。

「そうなのよね……」
いつものように朝ヨガで魔力循環の鍛錬をしていた時も、なんだか体内を巡る魔力の量が多かったような気がする。

おかしいな、まさか、また魔力過多になっちゃったとかじゃないわよね?
せっかく食の改善や魔力循環のトレーニングで魔力多めとはいえ普通の生活ができるようになったのに。

……ん? まって?
食の改善……て、あ!
「……チョコだ!」

「え? チョコ? あるんですか⁉︎」
マリエルちゃんがキョロキョロと私の机の上を探した。

さっき説明していた時も「チョコ⁉︎ えええいいなぁ食べたーい!」と反応してアリシア様に「マリエルさん? 媚薬を服用したいだなんてはしたないですわよ⁉︎」と真っ赤になってたしなめられたのを忘れたの?

巷ではエッチな気分になるヤバい薬として知られているのに机上に置いてるわけないじゃないの。
……インベントリ内にはあるけどね!

「ないに決まってるでしょ。あのね、私も試食したけど私は特に影響を感じてなかったのよ。でも、今の自分の状況を鑑みるに全く影響がなかったわけじゃなさそうだなって思ったのよ」
「ふえ? どういうことです?」

「今失敗したのは魔力の注ぎ過ぎが原因だと思うのだけど、いつも通りに注いだつもりだったのよ。でも、いつもより魔力が増加しているみたいで多めに注がれてしまったようなの。私はどうやら効きが悪いのかそれに気づいてなかったみたい」
「え? ク、クリステアさん、今媚薬が効いちゃってるってことですか?」
私の説明にマリエルちゃんがヒソヒソと聞いてきた。

「なに変なこと言ってるのよ⁉︎ あのね、魔力量が上がる効能があるって言ったでしょう? 私は耐性があるのかどうかわからないけど僅かに効果があるのかもってこと」
「あ、そっちですか……遅効性の媚薬とか、シチュエーションとして美味しいなと思って……」

マリエルちゃんは、なんだぁ……みたいな反応で私を見た。
いや何だシチュエーションって。

「クリステア君……今の話、詳しく聞かせてもらえるかな?」
「え? ……あ、先生……」
やば、聞かれてた⁉︎

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