393 / 423
連載
早くも厄介事の予感……!
しおりを挟む
「頼む、オーウェンさんに会わせてくれないか」
「あ、俺も! 天才魔導具師に会ってみたい!」
「僕も!」
「え、あの、その……」
ロニー様が必死な表情で懇願してくるわ、便乗して他の生徒も次々と名乗りをあげるわでたじろいでいると、そこへお兄様が待ったをかけた。
「君たち、待ちたまえ。クリステアが困っているじゃないか」
「え、あ……す、すみません!」
ロニー様は自分が暴走していることに気づいたようで、サッと引いて謝罪した。
周囲で便乗してきた生徒たちも慌てて頭を下げた。
「レディに無体を働くような輩には大事な領民と引き合わせたくはないな」
「そ、そんな! 申し訳ありませんでした! あこがれの魔導具師であるオーウェンさんの行方がわかって、つい興奮してしまって……」
ロニー様が顔を青くさせて頭を下げたかと思うと、すぐに頬を赤く染めながら言った。
……あこがれ? 今、あこがれって言った?
え、ロニー様って、オーウェンさんのファンなのぉ⁉︎
ガルバノおじさまを通してだけど魔導具を発注してる私でもあの人は「この魔導具狂いめが……!」と疎ましがられるのが納得の人物なのだけど⁉︎
以前マリエルちゃんの護身用にも使えるようにとルビィの魔力を充電して攻撃魔法を発動できるステッキを製作していただいたけれど、とんでもない代物だったもの。
後で見せてもらったけど、そこかしこに術式が隠されてて、それがまた繊細かつ緻密に彫り込まれてて……「いややっぱり天才だけど変態だな⁉︎」って失礼ながら実感したのよねぇ……
そういえばロニー様は魔導具師としてのマーレン師にも憧れてたわけだから、例え変態と揶揄される天才でもオーウェンさんにあこがれるのはおかしなことでもないのかしらね。
うーん……紹介するのは別に構わないというか、本人は魔導具愛を語り合う同好の士に飢えているはずなので、むしろ喜ばれることは間違いない。
でも、あの魔導具を見たらいくら魔導具コースを選択してるとはいえドン引きすると思うのだけど。
もしくは、自信喪失しちゃわないかと心配になる。
私も魔導具が作れたらいいなって思ったりもしたけれど、アレを見ちゃったら「私には無理!」ってなっちゃったもの。
「このとおりです! 後学のために作品を見せてください! そしてせめて紹介状だけでもいただけませんでしょうか!」
ロニー様はめげずに食い下がっている。
足はガクブルしてるのに。
メンタル強いのか弱いのかわからないわ。
そんなロニー様の様子を見て、お兄様は少し考えてからいつもの優しい表情に戻った。
「……クリステアを困らせたりしないのであれば、僕から父に紹介状を頼んでもいいよ」
「ほ、本当ですか⁉︎ ありがとうございます!」
ロニー様や他の生徒たちがはしゃいでいると、お兄様は笑みを深めたけれど……目が、笑ってない。
「……本来なら父も僕もクリステアに害をなす者は領地に入ることすら許さないところだから、気をつけるようにね」
「は、はいっ!」
お兄様、冷気を出さないでください。
ロニー様たちが二重の意味で震え上がってますやん……
あ、そうだ。
冷気といえばオーウェンさんに作っていただいた飲み物がひんやりするコップ。
あれを見せてあげるのはどうかしら。
あの小さな器に精緻に彫り上げた術式はとても綺麗だったし、わかる人が見たら異常なのがわかるそうだから。
それに、頑張って食い下がったロニー様があまりにも不憫なので、私からもガルバノおじさま宛に紹介状を書いておこう。
ロニー様たちはその場でめちゃくちゃ盛り上がって、学園の夏休みに我が領地にツアー組んで訪問する計画まで立ててましたけど……
ロニー様たちがオーウェンさんのお店に入り浸りになるのか、オーウェンさんの魔導具愛語りから逃れられず、結界魔法が施された店舗に半監禁状態になるのか、怪しいところだわね。
行方不明として捜索願いが出される前に、様子を見に行く必要があるかもしれない。
夏休み前から面倒ごとが増えた気がするのは気のせいだろうか……⁉︎
---------------------------
キリが悪いので、短いですが今回はここまでとさせていただきます。
いつもコメントやエール・いいねをポチッとありがとうございます( ´ ▽ ` )
執筆の励みになっております~!
「あ、俺も! 天才魔導具師に会ってみたい!」
「僕も!」
「え、あの、その……」
ロニー様が必死な表情で懇願してくるわ、便乗して他の生徒も次々と名乗りをあげるわでたじろいでいると、そこへお兄様が待ったをかけた。
「君たち、待ちたまえ。クリステアが困っているじゃないか」
「え、あ……す、すみません!」
ロニー様は自分が暴走していることに気づいたようで、サッと引いて謝罪した。
周囲で便乗してきた生徒たちも慌てて頭を下げた。
「レディに無体を働くような輩には大事な領民と引き合わせたくはないな」
「そ、そんな! 申し訳ありませんでした! あこがれの魔導具師であるオーウェンさんの行方がわかって、つい興奮してしまって……」
ロニー様が顔を青くさせて頭を下げたかと思うと、すぐに頬を赤く染めながら言った。
……あこがれ? 今、あこがれって言った?
え、ロニー様って、オーウェンさんのファンなのぉ⁉︎
ガルバノおじさまを通してだけど魔導具を発注してる私でもあの人は「この魔導具狂いめが……!」と疎ましがられるのが納得の人物なのだけど⁉︎
以前マリエルちゃんの護身用にも使えるようにとルビィの魔力を充電して攻撃魔法を発動できるステッキを製作していただいたけれど、とんでもない代物だったもの。
後で見せてもらったけど、そこかしこに術式が隠されてて、それがまた繊細かつ緻密に彫り込まれてて……「いややっぱり天才だけど変態だな⁉︎」って失礼ながら実感したのよねぇ……
そういえばロニー様は魔導具師としてのマーレン師にも憧れてたわけだから、例え変態と揶揄される天才でもオーウェンさんにあこがれるのはおかしなことでもないのかしらね。
うーん……紹介するのは別に構わないというか、本人は魔導具愛を語り合う同好の士に飢えているはずなので、むしろ喜ばれることは間違いない。
でも、あの魔導具を見たらいくら魔導具コースを選択してるとはいえドン引きすると思うのだけど。
もしくは、自信喪失しちゃわないかと心配になる。
私も魔導具が作れたらいいなって思ったりもしたけれど、アレを見ちゃったら「私には無理!」ってなっちゃったもの。
「このとおりです! 後学のために作品を見せてください! そしてせめて紹介状だけでもいただけませんでしょうか!」
ロニー様はめげずに食い下がっている。
足はガクブルしてるのに。
メンタル強いのか弱いのかわからないわ。
そんなロニー様の様子を見て、お兄様は少し考えてからいつもの優しい表情に戻った。
「……クリステアを困らせたりしないのであれば、僕から父に紹介状を頼んでもいいよ」
「ほ、本当ですか⁉︎ ありがとうございます!」
ロニー様や他の生徒たちがはしゃいでいると、お兄様は笑みを深めたけれど……目が、笑ってない。
「……本来なら父も僕もクリステアに害をなす者は領地に入ることすら許さないところだから、気をつけるようにね」
「は、はいっ!」
お兄様、冷気を出さないでください。
ロニー様たちが二重の意味で震え上がってますやん……
あ、そうだ。
冷気といえばオーウェンさんに作っていただいた飲み物がひんやりするコップ。
あれを見せてあげるのはどうかしら。
あの小さな器に精緻に彫り上げた術式はとても綺麗だったし、わかる人が見たら異常なのがわかるそうだから。
それに、頑張って食い下がったロニー様があまりにも不憫なので、私からもガルバノおじさま宛に紹介状を書いておこう。
ロニー様たちはその場でめちゃくちゃ盛り上がって、学園の夏休みに我が領地にツアー組んで訪問する計画まで立ててましたけど……
ロニー様たちがオーウェンさんのお店に入り浸りになるのか、オーウェンさんの魔導具愛語りから逃れられず、結界魔法が施された店舗に半監禁状態になるのか、怪しいところだわね。
行方不明として捜索願いが出される前に、様子を見に行く必要があるかもしれない。
夏休み前から面倒ごとが増えた気がするのは気のせいだろうか……⁉︎
---------------------------
キリが悪いので、短いですが今回はここまでとさせていただきます。
いつもコメントやエール・いいねをポチッとありがとうございます( ´ ▽ ` )
執筆の励みになっております~!
1,427
あなたにおすすめの小説
婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました
kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」
王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
婚約破棄? そもそも君は一体誰だ?
歩芽川ゆい
ファンタジー
「グラングスト公爵家のフェルメッツァ嬢、あなたとモルビド王子の婚約は、破棄されます!」
コンエネルジーア王国の、王城で主催のデビュタント前の令息・令嬢を集めた舞踏会。
プレデビュタント的な意味合いも持つこの舞踏会には、それぞれの両親も壁際に集まって、子供たちを見守りながら社交をしていた。そんな中で、いきなり会場のど真ん中で大きな女性の声が響き渡った。
思わず会場はシンと静まるし、生演奏を奏でていた弦楽隊も、演奏を続けていいものか迷って極小な音量での演奏になってしまった。
声の主をと見れば、ひとりの令嬢が、モルビド王子と呼ばれた令息と腕を組んで、令嬢にあるまじきことに、向かいの令嬢に指を突き付けて、口を大きく逆三角形に笑みを浮かべていた。
【完結・全3話】不細工だと捨てられましたが、貴方の代わりに呪いを受けていました。もう代わりは辞めます。呪いの処理はご自身で!
酒本 アズサ
恋愛
「お前のような不細工な婚約者がいるなんて恥ずかしいんだよ。今頃婚約破棄の書状がお前の家に届いているだろうさ」
年頃の男女が集められた王家主催のお茶会でそう言ったのは、幼い頃からの婚約者セザール様。
確かに私は見た目がよくない、血色は悪く、肌も髪もかさついている上、目も落ちくぼんでみっともない。
だけどこれはあの日呪われたセザール様を助けたい一心で、身代わりになる魔導具を使った結果なのに。
当時は私に申し訳なさそうにしながらも感謝していたのに、時と共に忘れてしまわれたのですね。
結局婚約破棄されてしまった私は、抱き続けていた恋心と共に身代わりの魔導具も捨てます。
当然呪いは本来の標的に向かいますからね?
日に日に本来の美しさを取り戻す私とは対照的に、セザール様は……。
恩を忘れた愚かな婚約者には同情しません!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている
と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。