転生令嬢は庶民の味に飢えている

柚木原みやこ(みやこ)

文字の大きさ
398 / 423
連載

あっさりさっぱり、そして◯◯◯◯!

しおりを挟む
厨房に入った私たちはクリア魔法で身を清めてからいつもの割烹着を着用した。

「さて、と。それじゃあ始めますか」
「クリステアさん。あっさりしたものと言ってましたけど、何を作るんですか?」
マリエルちゃんがルビィおすすめのフリフリエプロンを身につけながら聞いてきた。

「うーん……そうねぇ」
私は冷蔵室にある食材を確認しつつ、メニューを考えることにした。

「あ、鶏のむね肉があるわね。これと、野菜を……」
ひょいひょいときゅうりやトマト、香味野菜などをチョイスして、黒銀くろがねたちに調理台へ運んでもらった。

「そういえば実家の畑のオクラを分けてもらってたんだったわ」
先日実家に帰った時、屋敷の裏手に作った畑で収穫したのを忘れていた。

素焼きして夏野菜カレーにでも入れようかなと思っていたけれど、使っちゃおう。

インベントリからオクラなど料理長から分けてもらった食材やシンにお願いして打ってもらった打ち立ての麺類を取り出し、調理開始!

「まずは、たっぷりのお湯でむね肉を茹でて……」
茹で上がるまで真白ましろに鍋の番をお願いしてその間に野菜をカットしていく。

きゅうりは細切りに、トマトは細めのくし切りに。
好みで大葉の千切りや細く刻んだ針生姜を。

「くりすてあー、ゆであがったみたいだよ?」
鍋の番をしてくれていた真白ましろが出来上がりを報告してくれた。

「ありがとう。じゃあ、肉を取り出して、粗熱が取れたら……ええと、少し冷めたら肉をほぐしてくれるかしら? あ、茹で汁は捨てないで取っておいてね」
「おやすいごよう」

真白ましろ器用に菜箸でむね肉を取り出し、魔法で粗熱を取ってからむしむしとむね肉をほぐし始めた。わわ、早い!

慌てて調味料の準備をする。
醤油、酢、砂糖、ごま油をよく混ぜ合わせて、ごまをフライパンで軽く炒ってからすり鉢ですりすり、と。

「我がやろう」
黒銀くろがねが私の手からすりこぎを取り上げたのでお願いする。

「くりすてあ、ほぐせたよ~」
「ありがとう」

真白ましろからほぐしたむね肉の入ったボウルを受け取り、そこへきゅうりの細切りを入れる。

先程は混ぜ合わせた調味料を入れてから混ぜ合わせて、味を馴染ませるために置いておく。

むね肉を茹でたのとは別の鍋でイディカ米を粉にして打ったフォーを茹で、冷水で締めてざるにあげる。

平皿にフォーを盛り、その上むね肉ときゅうりのを和えたのをのせてすりごまをパラパラと。刻み大葉とくし切りトマトをトッピングして、お好みで針生姜を添えて、と。

「まずは一品目完成!」
「わあ! これならさっぱりと食べられるのにお肉たっぷりだから物足りないなんてことないわね」

「でしょう? 春雨サラダの応用なんだけど、いけるんじゎないかなと思って。じゃあ二品目いくわよ!」

「え、これだけで充分だと思うけど?」
さっとインベントリに収納したのを名残惜しそうにマリエルちゃんが見ながら言う。

「いやいや。むね肉の茹で汁には疲労回復成分が溶け込んでるんだから活用しないとね」

残しておいた茹で汁を再び火にかけ、塩や醤油、お酒で味を調える。
同時進行で、別の鍋でうどんを茹でる。

「うーん、ちょっと味のアクセントが欲しいなぁ……あ」
私はインベントリから梅干しを取り出し、タネを抜いて包丁で叩いてペースト状にする。

鶏塩スープにたたき梅は相性いいと思うので、この組み合わせは昔からちょいちょい作っている。

とはいえ、梅干しの在庫には限りがあったのでそう頻繁には作れなかったけれど。
でも今年は大量の梅を手に入れられたおかげで梅干しを仕込んだからね! むふふ。

さて、うどんが茹で上がったに鶏塩スープを注いで完成。
梅干しが苦手な人には針生姜を入れてもらえばいいか。

「うわあ……見てるだけで生唾湧いてくるぅ……!」
「これ食欲ない時でもスルスル食べられるからおすすめよ。あ、オクラを使ってもう一品作るんだった」

「え? まだ作るんですかぁ?」
「試作なんだから、食べられる分だけ食べたらいいじゃないの」
「クリステアさんの料理は美味しいから、全部食べたいんです!」
「あ、そ、そう……」

嬉しいけれど、全部は多過ぎじゃないかしら?

気を取り直して、オクラの茎を少し切り落とし、ガクの黒っぽい部分をくろと剥き取る。
茹でる前に塩を擦り込んでそのまま湯の沸いた鍋にポイッとな。

オクラをひっくり返しながら約2分弱、ザルにあげて冷水に取り、冷めたら水を切って薄切り。
黒銀くろがねに続きをお願いして、他のミョウガ・ナス・きゅうり・山芋などをひたすら粗みじん切り。

山芋はこの前学園内の薬草採取で見覚えのある葉っぱを見かけたので土魔法で周囲の土をごっそり取り除いたら立派なのが発掘されたのよねぇ。

周囲にいっぱいあったから薬草の採取そっちのけで掘り起こしてしまったよ。

今度これでお好み焼きを作りたいなぁ。

でもとりあえず今回はさっぱりメニューに使っちゃう。
さっぱりしててもスタミナつけないとね。

……で、刻んだそれらをボウルにまとめて出し汁と醤油入れてまぜまぜして完成。
本当なら粘りが出る昆布を入れるといいんどけど、これはなんちゃって山形だしってことで。

「これは、ごはんにかけてかつおぶしをトッピングしてサラサラといただくといいわ。ざるうどんにも合うわね」

三品ともさっぱりandあっさりしつつも精がつく夏バテ回避メニューってところね。

「そういえば騎士科な鍛錬でバテ気味だってセイさんが言ってましたけど、このメニューならちょうど良さそうですね!」
「そうね。そろそろ居残り鍛錬から帰ってくるでしょうから食堂の準備をしましょうか」
「はい!」

「ただいま……手伝えなくてすまない……」
噂をすればなんとやらだ。

ちょうどセイがヘロヘロになりながら食堂はな入ってきたので、私たちは顔を見合わせてふふっと笑い、テーブルセッティングを急いだのだった。

---------------------------
いつもコメントやエール・いいねポチッとありがとうございます( ´ ▽ ` ) 
執筆の励みになっております~!٩( 'ω' )و

しおりを挟む
感想 3,547

あなたにおすすめの小説

婚約破棄された令嬢が記憶を消され、それを望んだ王子は後悔することになりました

kieiku
恋愛
「では、記憶消去の魔法を執行します」 王子に婚約破棄された公爵令嬢は、王子妃教育の知識を消し去るため、10歳以降の記憶を奪われることになった。そして記憶を失い、退行した令嬢の言葉が王子を後悔に突き落とす。

【完結】20年後の真実

ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。 マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。 それから20年。 マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。 そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。 おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。 全4話書き上げ済み。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。

Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。 そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。 そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。 これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。 (1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)

【完結・全3話】不細工だと捨てられましたが、貴方の代わりに呪いを受けていました。もう代わりは辞めます。呪いの処理はご自身で!

酒本 アズサ
恋愛
「お前のような不細工な婚約者がいるなんて恥ずかしいんだよ。今頃婚約破棄の書状がお前の家に届いているだろうさ」 年頃の男女が集められた王家主催のお茶会でそう言ったのは、幼い頃からの婚約者セザール様。 確かに私は見た目がよくない、血色は悪く、肌も髪もかさついている上、目も落ちくぼんでみっともない。 だけどこれはあの日呪われたセザール様を助けたい一心で、身代わりになる魔導具を使った結果なのに。 当時は私に申し訳なさそうにしながらも感謝していたのに、時と共に忘れてしまわれたのですね。 結局婚約破棄されてしまった私は、抱き続けていた恋心と共に身代わりの魔導具も捨てます。 当然呪いは本来の標的に向かいますからね? 日に日に本来の美しさを取り戻す私とは対照的に、セザール様は……。 恩を忘れた愚かな婚約者には同情しません!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
番外編を閲覧することが出来ません。
過去1ヶ月以内にレジーナの小説・漫画を1話以上レンタルしている と、レジーナのすべての番外編を読むことができます。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。