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ひたすらに!
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「……美味い……っ」
セイが用意していた料理をひとくち食べてしみじみと言った。
お、おう。そんなにか……
「このところ、味の濃い料理ばかりだったせいか、余計に美味く感じる。いや、それらが不味かったわけじゃないんだが、俺はこういう味付けの方に馴染みがあるからか、久々に食べられて嬉しい」
そ、そっかぁ……
スパイスの火付け役の一人としてなんかすまんかった。
「それに、あっさりとしているのに食べ応えがあってありがたい。騎士科の訓練後は食欲もないくらいへばっているんだが、夜中に猛烈に腹が減ってしまってな……」
セイが力なく笑った。
確かに、ここしばらくのセイはごはんもそこそこに自室へ戻ってしまい、お腹が空くかもしれないからと念のため夜食にとおにぎりを用意して作り置き用のマジックボックスに入れておいたら朝には綺麗さっぱり無くなっていたからね。
多めに作っていたから白虎様も食べている疑惑はあるけれど。
白虎様、わざとらしく視線を逸らすのやめてくださいます?
「騎士科の訓練は新入生と言えど大変なんですね……」
マリエルちゃんがいたわしそうにセイを見て言った。
新入生はまだ10歳を超えたばかりの子どもばかりなので、今は筋肉以前に持久力をつけているところらしい。
軽装とはいえ、胸当てなど簡単な武装をしてひたすらランニングとか、基本の剣の型をひたすら素振りとか。
私はマナー学のレティア先生のスパルタな日々を思い出してブルっと震えた。
貴族の人って、「ひたすら◯◯シリーズ」が好きすぎじゃない⁉︎
マナー学の時も背中に定規を入れて姿勢良く歩くとか、カーテシーの正しい型を覚えるまで何十秒、いや何分でも維持できるよう足をプルプルさせながら姿勢をキープしたりとかやったもん。
ああ……あれはしんどかったなぁ。
でも、そのおかげで今やマナー学はほぼ免除されているので、やった甲斐はあったのだと、レティア先生に感謝している。
実際、騎士になれば戦闘だってあるわけで。
その時に持久力がないがために打ち負けるなんてあってはならない。
そして剣の基本の型。
流派によって型はそれぞれ違うだろうけれど、その動きには意味があってのことのはず。
それをひたすら身体に覚え込ませるのは武道やスポーツの場においても大切なことだ。
その道の達人と呼ばれる人たちは、そういうことを怠らずに極めてきた人たちなのだし。
もちろん、ひたすらそればかりでは楽しくなくて脱落する生徒だっていると思う。
でも、自分が「こうなりたい」という目標があるのならばここが踏ん張り時だと常に前を向くしかないのだ。
そこが達人とまではいかずともその道のプロになれるかどうかのターニングポイントなのだと思う。
私は前世の記憶とか、公爵家の生まれだとか、魔力お化けというチートがあるから他の人から見れば何もかもイレギュラーに見えるだろうけれど、料理に関してはひたすら頑張って美味しいものが作れるよう努力したつもりだ。
むしろ公爵令嬢であることが足枷になっていた時期だってあるわけだし。
それを跳ね除けてでも美味しいものが食べたい、作りたい一心で頑張ってきたから今があるのだ。
ただ、その反面、それ以外の自分が興味ないことに関してはその道の達人には全く敵う気がしない。
そもそも私個人はちょっとだけ能力値が高いだけの器用貧乏だと思っているからね。
誰とは言わないれけど、極めすぎて変態じみた人もいるものの、一つのことに情熱を注いで昇華できるのって本当にすごいことだよね。
勢い余ってそういう話をすると、二人に「クリステア(嬢)(さん)はもう少し自分のことを冷静に判断したほうがいいと思う」って苦笑された。
……なんで⁉︎
その後、片付けを申し出たセイを無理矢理自室に帰らせた。
だって、食事の終わり頃にはすでに船を漕ぎ始めてたんだもの。
「すまない、この借りは必ず近いうちに返すから……」
と謝罪しつつ、白虎のおんぶをひたすら固辞してフラフラと自室へ戻るセイを見送り、残ったメンバーで後片付けをすませたのだった。
---------------------------
今回短めですが、キリがいいのでここまで。
いつもコメントやエール・いいねをポチッとありがとうございます( ´ ▽ ` ) vV
執筆の励みになっております~!
セイが用意していた料理をひとくち食べてしみじみと言った。
お、おう。そんなにか……
「このところ、味の濃い料理ばかりだったせいか、余計に美味く感じる。いや、それらが不味かったわけじゃないんだが、俺はこういう味付けの方に馴染みがあるからか、久々に食べられて嬉しい」
そ、そっかぁ……
スパイスの火付け役の一人としてなんかすまんかった。
「それに、あっさりとしているのに食べ応えがあってありがたい。騎士科の訓練後は食欲もないくらいへばっているんだが、夜中に猛烈に腹が減ってしまってな……」
セイが力なく笑った。
確かに、ここしばらくのセイはごはんもそこそこに自室へ戻ってしまい、お腹が空くかもしれないからと念のため夜食にとおにぎりを用意して作り置き用のマジックボックスに入れておいたら朝には綺麗さっぱり無くなっていたからね。
多めに作っていたから白虎様も食べている疑惑はあるけれど。
白虎様、わざとらしく視線を逸らすのやめてくださいます?
「騎士科の訓練は新入生と言えど大変なんですね……」
マリエルちゃんがいたわしそうにセイを見て言った。
新入生はまだ10歳を超えたばかりの子どもばかりなので、今は筋肉以前に持久力をつけているところらしい。
軽装とはいえ、胸当てなど簡単な武装をしてひたすらランニングとか、基本の剣の型をひたすら素振りとか。
私はマナー学のレティア先生のスパルタな日々を思い出してブルっと震えた。
貴族の人って、「ひたすら◯◯シリーズ」が好きすぎじゃない⁉︎
マナー学の時も背中に定規を入れて姿勢良く歩くとか、カーテシーの正しい型を覚えるまで何十秒、いや何分でも維持できるよう足をプルプルさせながら姿勢をキープしたりとかやったもん。
ああ……あれはしんどかったなぁ。
でも、そのおかげで今やマナー学はほぼ免除されているので、やった甲斐はあったのだと、レティア先生に感謝している。
実際、騎士になれば戦闘だってあるわけで。
その時に持久力がないがために打ち負けるなんてあってはならない。
そして剣の基本の型。
流派によって型はそれぞれ違うだろうけれど、その動きには意味があってのことのはず。
それをひたすら身体に覚え込ませるのは武道やスポーツの場においても大切なことだ。
その道の達人と呼ばれる人たちは、そういうことを怠らずに極めてきた人たちなのだし。
もちろん、ひたすらそればかりでは楽しくなくて脱落する生徒だっていると思う。
でも、自分が「こうなりたい」という目標があるのならばここが踏ん張り時だと常に前を向くしかないのだ。
そこが達人とまではいかずともその道のプロになれるかどうかのターニングポイントなのだと思う。
私は前世の記憶とか、公爵家の生まれだとか、魔力お化けというチートがあるから他の人から見れば何もかもイレギュラーに見えるだろうけれど、料理に関してはひたすら頑張って美味しいものが作れるよう努力したつもりだ。
むしろ公爵令嬢であることが足枷になっていた時期だってあるわけだし。
それを跳ね除けてでも美味しいものが食べたい、作りたい一心で頑張ってきたから今があるのだ。
ただ、その反面、それ以外の自分が興味ないことに関してはその道の達人には全く敵う気がしない。
そもそも私個人はちょっとだけ能力値が高いだけの器用貧乏だと思っているからね。
誰とは言わないれけど、極めすぎて変態じみた人もいるものの、一つのことに情熱を注いで昇華できるのって本当にすごいことだよね。
勢い余ってそういう話をすると、二人に「クリステア(嬢)(さん)はもう少し自分のことを冷静に判断したほうがいいと思う」って苦笑された。
……なんで⁉︎
その後、片付けを申し出たセイを無理矢理自室に帰らせた。
だって、食事の終わり頃にはすでに船を漕ぎ始めてたんだもの。
「すまない、この借りは必ず近いうちに返すから……」
と謝罪しつつ、白虎のおんぶをひたすら固辞してフラフラと自室へ戻るセイを見送り、残ったメンバーで後片付けをすませたのだった。
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