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28、はっきりわかった恋心
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な、長かった……!!
私はやっと目的地に着いて止まったらしき馬車から降りて、腰を労る。
ああ、しんどかった……。
ほぼ丸一日。
休みもそこそこに走り続けた馬車は、壮大な自然の広がる森の中にひっそりと佇む邸宅の前で止まった。
初めて足を踏み入れた場所なのに、不思議と懐かしい。
馬車の中で何度も読んだ使用人契約書と紹介状の名前を今一度確認して、門前の騎士様に名前を伝えた。
程なくして、私は屋敷に通されて男爵家の執事とメイド長と面談した。
公爵邸での出来事を引きずっていたために思わず身構えるが、手続きは淡々と進み使用人部屋へと案内される。
「こっちです」
私を案内してくれるのは、茶色の髪をした小柄な青年だった。
明るい笑顔に少し安心感を覚える。
えーと確かさっきテオって言ってたよね。
同じような扉が続く廊下のひとつの扉の前について、テオが指差す。
「ここがあなたの過ごす部屋になります。えーと同部屋のメイドは確か……」
えっ?同部屋?
まさか、他のメイドさんと一緒なの?!
公爵邸では一人部屋だったけど……。
そうか、ここは公爵邸とは違うもの、普通はそれが当たり前よね。
ラバドゥーン公爵家が特別だっただけだ。
そういえば私が入ったばかりの頃は本当に使用人が足りてなくて人数が少なかったものね。
後から入って来た人の中には共同で部屋を使っているメイドたちもいたことを思い出す。
だけど、今の私に他のメイドと一緒に寝食を共にすることは、とてつもなくハードルが高い。
あんなことがあったばかりだから、怖いよ~!!
また、あんな風に同僚が豹変したらどうしよう。
考えると心臓がバクバクしてきた。
その瞬間、扉が開いてメイド服姿の女性が顔を出す。
「!!!」
驚く私の隣でテオが思い出したように言う。
「ああ、ポピーだったね」
ポピーと呼ばれた女の子は、私と同じくらいの年頃で、橙色の髪をした小柄な女の子だった。
私たちを見て一瞬ポカンとした表情をしてから、思い出したように手を打った。
「あ! 新しい人が来るってメイド長がおっしゃってたわね。いらっしゃい! 私はポピーです」
そう元気に言って、ポピーと名乗った女の子は笑顔でこちらに手を差し出した。
これは、ちゃんと応えた方がいいよね。
「は、初めまして、アリシア・ルリジオンと申します……」
言いながらおずおずと手を差し出して握手をした。
「やだ! そんなに固くならないで。ポピーって気楽に呼んでね! 私もアリシアって呼んでいいかな?」
明るくハキハキと言う彼女につられて思わず頷いた。
「う、うん」
「よろしくね、アリシア!」
その様子を見届けてからテオは『じゃあ、よろしくね』と言い仕事に戻って行った。
ポピーの案内で部屋に入り、割り当てられたベッドと棚に荷物を置いて整理をした。
一通りの整理が終わって息をつくと、ポピーがこちらをキラキラとした瞳で見ているのが目に入る。
「あ、」
話しかけようと声を出したものの、何と言っていいのかわからない。
「ねえ、アリシアはラバドゥーン公爵領から来たのでしょう?!」
あ、よく知ってるのね。
公爵邸での出来事も聞いてたりするのだろうか。
「うん」
少し不安になるが、ポピーは私の様子に気づくこともなくワクワクとした様子で言った。
「勇敢な騎士がいるのでしょう?」
「え?」
「きっと、王都や公爵領には強くて有能な騎士様がたくさんいらっしゃるのよね!」
「うん、そうね」
「やっぱり! すごいなあ」
そう言ってポピーは嬉しそうに顔を輝かせた。
その様子が可愛いくて心がほぐれた私は質問してみる。
「騎士さんと恋したいの?」
「え? あ、う、うん。そうなの! へへへ」
やけに焦って取り繕うように言ったポピーに違和感を覚える。
ん?何だろう、この反応。
「あ、そんなことよりもアリシア。着いたばかりでまだお屋敷の中わからないでしょ? 案内するね!」
ポピーはそう言って私を連れ出したので、そのまま話は終わってしまった。
うーん、さっきの違和感は何だったんだろう?
ポピーに案内をしてもらって、説明が終わる頃にはちょうど夕食の時間となった。
食堂で夕食を摂って、部屋に戻る。
馬車に丸一日揺られたこともあって、寝支度が終わる頃にはドッと疲れが出てきた。
「おやすみ」
明るく言ったポピーが部屋の電気を消す。
「うん、おやすみ」
幸いポピーは気さくで話しやすく、到着したばかりのときに感じていた緊張もすっかり無くなっていた。
他のメイドや侍従達も、公爵家の雰囲気とは違ってのんびりとした人が多く居心地がよかった。
ベッドにもぐり、目を閉じると怒涛の日々が思い出される。
なんか最近は色々ありすぎたなあ。
展開が早すぎて、心がついていかない。
なんであんなことになってしまったのだろう。
マリーや他のメイド達とも仲良く過ごしていると思ってたのに。
そして、ミハイル様とも……。
いや、でもこれでよかったのかもしれない。
あのまま、優しいミハイル様と顔を突き合わせていたら、万が一ときめきの瞬間が来てしまうかもしれない。
そうしたら何度も前世で体験した“終わり”の瞬間がやってきて、二人とも命を落としてしまう可能性もある。
そんなの絶対に嫌。
ミハイル様にだって安全に過ごしていてほしい。
そう考えて心を落ち着かせた。
でも、次の瞬間――――
「……っ。っく……うう……」
ミハイル様の優しい笑顔や温かい大きな手。
彼の姿や温もりを、思い出せば出すほど涙が溢れた。
後から後から湧いてくる悲しみを流すように、声を押し殺して泣き続ける。
もう2度と会えない今、よく分かった。
私はミハイル様を好きになってしまってたんだ。
自分で思う以上に。
望み通り恋ができたけど、こんな気持ちは息苦しい。
人を好きになるってもっと楽しいことだと思ってたのに。
その日の夜は、いつまでたっても涙が止まらなかった。
私はやっと目的地に着いて止まったらしき馬車から降りて、腰を労る。
ああ、しんどかった……。
ほぼ丸一日。
休みもそこそこに走り続けた馬車は、壮大な自然の広がる森の中にひっそりと佇む邸宅の前で止まった。
初めて足を踏み入れた場所なのに、不思議と懐かしい。
馬車の中で何度も読んだ使用人契約書と紹介状の名前を今一度確認して、門前の騎士様に名前を伝えた。
程なくして、私は屋敷に通されて男爵家の執事とメイド長と面談した。
公爵邸での出来事を引きずっていたために思わず身構えるが、手続きは淡々と進み使用人部屋へと案内される。
「こっちです」
私を案内してくれるのは、茶色の髪をした小柄な青年だった。
明るい笑顔に少し安心感を覚える。
えーと確かさっきテオって言ってたよね。
同じような扉が続く廊下のひとつの扉の前について、テオが指差す。
「ここがあなたの過ごす部屋になります。えーと同部屋のメイドは確か……」
えっ?同部屋?
まさか、他のメイドさんと一緒なの?!
公爵邸では一人部屋だったけど……。
そうか、ここは公爵邸とは違うもの、普通はそれが当たり前よね。
ラバドゥーン公爵家が特別だっただけだ。
そういえば私が入ったばかりの頃は本当に使用人が足りてなくて人数が少なかったものね。
後から入って来た人の中には共同で部屋を使っているメイドたちもいたことを思い出す。
だけど、今の私に他のメイドと一緒に寝食を共にすることは、とてつもなくハードルが高い。
あんなことがあったばかりだから、怖いよ~!!
また、あんな風に同僚が豹変したらどうしよう。
考えると心臓がバクバクしてきた。
その瞬間、扉が開いてメイド服姿の女性が顔を出す。
「!!!」
驚く私の隣でテオが思い出したように言う。
「ああ、ポピーだったね」
ポピーと呼ばれた女の子は、私と同じくらいの年頃で、橙色の髪をした小柄な女の子だった。
私たちを見て一瞬ポカンとした表情をしてから、思い出したように手を打った。
「あ! 新しい人が来るってメイド長がおっしゃってたわね。いらっしゃい! 私はポピーです」
そう元気に言って、ポピーと名乗った女の子は笑顔でこちらに手を差し出した。
これは、ちゃんと応えた方がいいよね。
「は、初めまして、アリシア・ルリジオンと申します……」
言いながらおずおずと手を差し出して握手をした。
「やだ! そんなに固くならないで。ポピーって気楽に呼んでね! 私もアリシアって呼んでいいかな?」
明るくハキハキと言う彼女につられて思わず頷いた。
「う、うん」
「よろしくね、アリシア!」
その様子を見届けてからテオは『じゃあ、よろしくね』と言い仕事に戻って行った。
ポピーの案内で部屋に入り、割り当てられたベッドと棚に荷物を置いて整理をした。
一通りの整理が終わって息をつくと、ポピーがこちらをキラキラとした瞳で見ているのが目に入る。
「あ、」
話しかけようと声を出したものの、何と言っていいのかわからない。
「ねえ、アリシアはラバドゥーン公爵領から来たのでしょう?!」
あ、よく知ってるのね。
公爵邸での出来事も聞いてたりするのだろうか。
「うん」
少し不安になるが、ポピーは私の様子に気づくこともなくワクワクとした様子で言った。
「勇敢な騎士がいるのでしょう?」
「え?」
「きっと、王都や公爵領には強くて有能な騎士様がたくさんいらっしゃるのよね!」
「うん、そうね」
「やっぱり! すごいなあ」
そう言ってポピーは嬉しそうに顔を輝かせた。
その様子が可愛いくて心がほぐれた私は質問してみる。
「騎士さんと恋したいの?」
「え? あ、う、うん。そうなの! へへへ」
やけに焦って取り繕うように言ったポピーに違和感を覚える。
ん?何だろう、この反応。
「あ、そんなことよりもアリシア。着いたばかりでまだお屋敷の中わからないでしょ? 案内するね!」
ポピーはそう言って私を連れ出したので、そのまま話は終わってしまった。
うーん、さっきの違和感は何だったんだろう?
ポピーに案内をしてもらって、説明が終わる頃にはちょうど夕食の時間となった。
食堂で夕食を摂って、部屋に戻る。
馬車に丸一日揺られたこともあって、寝支度が終わる頃にはドッと疲れが出てきた。
「おやすみ」
明るく言ったポピーが部屋の電気を消す。
「うん、おやすみ」
幸いポピーは気さくで話しやすく、到着したばかりのときに感じていた緊張もすっかり無くなっていた。
他のメイドや侍従達も、公爵家の雰囲気とは違ってのんびりとした人が多く居心地がよかった。
ベッドにもぐり、目を閉じると怒涛の日々が思い出される。
なんか最近は色々ありすぎたなあ。
展開が早すぎて、心がついていかない。
なんであんなことになってしまったのだろう。
マリーや他のメイド達とも仲良く過ごしていると思ってたのに。
そして、ミハイル様とも……。
いや、でもこれでよかったのかもしれない。
あのまま、優しいミハイル様と顔を突き合わせていたら、万が一ときめきの瞬間が来てしまうかもしれない。
そうしたら何度も前世で体験した“終わり”の瞬間がやってきて、二人とも命を落としてしまう可能性もある。
そんなの絶対に嫌。
ミハイル様にだって安全に過ごしていてほしい。
そう考えて心を落ち着かせた。
でも、次の瞬間――――
「……っ。っく……うう……」
ミハイル様の優しい笑顔や温かい大きな手。
彼の姿や温もりを、思い出せば出すほど涙が溢れた。
後から後から湧いてくる悲しみを流すように、声を押し殺して泣き続ける。
もう2度と会えない今、よく分かった。
私はミハイル様を好きになってしまってたんだ。
自分で思う以上に。
望み通り恋ができたけど、こんな気持ちは息苦しい。
人を好きになるってもっと楽しいことだと思ってたのに。
その日の夜は、いつまでたっても涙が止まらなかった。
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