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31、王太子殿下の北部視察
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「王太子殿下が北部視察のためにここに滞在なさるんだって!」
リリアンは興奮して息を切らせている。
えっ?!
確かに大変だ!
これは大事件。
こんな片田舎の領地に王太子殿下が自らいらっしゃるなんて……!
これは準備が大変そうね。
それから数日の間は案の定、男爵家はてんやわんやの大騒ぎ。
旦那様や奥様を筆頭に、メイドを含めた使用人みんなで力を合わせて入念な準備に取り組んだ。
そのお陰もあってなんとか殿下到着までに完璧な受け入れ態勢が整った。
いよいよ殿下ご到着の知らせを受けて、私たち使用人一同はお屋敷の入り口でお迎えのために並んでいる。
遠くの方から御一行の行列が見え始め、徐々に近づいてくると王太子殿下の姿が確認できた。
初めて間近にお見かけする殿下は堂々として気品に溢れている。
わあ、凛々しくてご立派なお姿。
威風堂々とした佇まいの中に優しさを感じさせる微笑みを浮かべていた。
私も他のメイド達も殿下の笑顔に思わず和やかな空気が漂う。
王太子殿下の柔和なお人柄は、王国内の誰もが知っているのだ。
そういえば、ミハイル様は殿下と親しいんだったっけ……。
そんなことを思い出していたらついつい頭を下げ忘れて殿下に見入ってぼーっとしてしまった。
「アリシア……!」
隣にいるポピーが頭を下げながら慌てて私の脇腹を小突き小声で促す。
あ!!しまった!
殿下がこちらを見る前に、私はみんなと同じように頭を下げた。
旦那様と奥様が殿下をお迎えして、和やかに談笑しながら応接間へと向かう。
ふう、びっくりした。
しかし、実際に見る殿下は噂以上に気さくで優しいお方らしいことが分かった。
その後は、屋敷中の使用人が一丸となって対応に尽力していた。
私もポピーやテオと協力し合って業務にあたっている。
みんなの努力の甲斐あって、その日の晩餐まで無事に終えることができた。
すっかり安心し切っていた私たちは、明日に使用する食堂隣の応接間を整えていた。
もう既に殿下は部屋にお戻りになったらしいと聞いていたのだが――――――。
作業中にポピーがしまったというように声を出す。
「あちゃ~掃除道具がひとつ足りないや」
「じゃあ私ついでに持ってくるよ」
花瓶の水を換えようとしていた私はポピーにそう言って部屋を出た。
私が扉を出たすぐのところで、ポピーが叫ぶ。
「アリシアー! あとタオルも何枚か追加お願い!」
「はーい!」
ポピーの笑顔と元気のよさにつられて私も大きく答えた。
さーて、急いで取ってこよう。
そう思い、水場へ向かおうとしたそのとき、気配を感じたのでふと横を向いた。
なんと、そこには目を丸くして驚いた様子の王太子殿下がいたのだ。
わあああああ!!!
た、大変だ!
殿下の御前で大声で騒いじゃった!
いくら気づいていなかったとはいえ、絶対怒られるよね。
躾が行き届いていないと旦那様がお叱りを受けてしまうかもしれない。
だって、あんなに驚いた顔をしてらっしゃるもの……!
「も、申し訳ございません!!」
私は慌てて頭を下げて全力の謝罪をした。
直角に身体を折り曲げた私の頭上から、殿下の声が響いてくる。
「君……」
うう、怒られる。
「君、アリシアって名前なの?」
「……え?」
思ってもみなかった言葉が降って来て、私は思わず顔を上げて間抜けな声を出してしまう。
ポカンとした顔をしている私を殿下はじっと見つめてくる。
ちゃんと返事をしないといけないよね。
「あ、はい」
戸惑いながら答えると、殿下はこちらをまじまじと眺めて少し何かを考えてから言った。
「ちょっと僕の部屋に来てくれる?」
リリアンは興奮して息を切らせている。
えっ?!
確かに大変だ!
これは大事件。
こんな片田舎の領地に王太子殿下が自らいらっしゃるなんて……!
これは準備が大変そうね。
それから数日の間は案の定、男爵家はてんやわんやの大騒ぎ。
旦那様や奥様を筆頭に、メイドを含めた使用人みんなで力を合わせて入念な準備に取り組んだ。
そのお陰もあってなんとか殿下到着までに完璧な受け入れ態勢が整った。
いよいよ殿下ご到着の知らせを受けて、私たち使用人一同はお屋敷の入り口でお迎えのために並んでいる。
遠くの方から御一行の行列が見え始め、徐々に近づいてくると王太子殿下の姿が確認できた。
初めて間近にお見かけする殿下は堂々として気品に溢れている。
わあ、凛々しくてご立派なお姿。
威風堂々とした佇まいの中に優しさを感じさせる微笑みを浮かべていた。
私も他のメイド達も殿下の笑顔に思わず和やかな空気が漂う。
王太子殿下の柔和なお人柄は、王国内の誰もが知っているのだ。
そういえば、ミハイル様は殿下と親しいんだったっけ……。
そんなことを思い出していたらついつい頭を下げ忘れて殿下に見入ってぼーっとしてしまった。
「アリシア……!」
隣にいるポピーが頭を下げながら慌てて私の脇腹を小突き小声で促す。
あ!!しまった!
殿下がこちらを見る前に、私はみんなと同じように頭を下げた。
旦那様と奥様が殿下をお迎えして、和やかに談笑しながら応接間へと向かう。
ふう、びっくりした。
しかし、実際に見る殿下は噂以上に気さくで優しいお方らしいことが分かった。
その後は、屋敷中の使用人が一丸となって対応に尽力していた。
私もポピーやテオと協力し合って業務にあたっている。
みんなの努力の甲斐あって、その日の晩餐まで無事に終えることができた。
すっかり安心し切っていた私たちは、明日に使用する食堂隣の応接間を整えていた。
もう既に殿下は部屋にお戻りになったらしいと聞いていたのだが――――――。
作業中にポピーがしまったというように声を出す。
「あちゃ~掃除道具がひとつ足りないや」
「じゃあ私ついでに持ってくるよ」
花瓶の水を換えようとしていた私はポピーにそう言って部屋を出た。
私が扉を出たすぐのところで、ポピーが叫ぶ。
「アリシアー! あとタオルも何枚か追加お願い!」
「はーい!」
ポピーの笑顔と元気のよさにつられて私も大きく答えた。
さーて、急いで取ってこよう。
そう思い、水場へ向かおうとしたそのとき、気配を感じたのでふと横を向いた。
なんと、そこには目を丸くして驚いた様子の王太子殿下がいたのだ。
わあああああ!!!
た、大変だ!
殿下の御前で大声で騒いじゃった!
いくら気づいていなかったとはいえ、絶対怒られるよね。
躾が行き届いていないと旦那様がお叱りを受けてしまうかもしれない。
だって、あんなに驚いた顔をしてらっしゃるもの……!
「も、申し訳ございません!!」
私は慌てて頭を下げて全力の謝罪をした。
直角に身体を折り曲げた私の頭上から、殿下の声が響いてくる。
「君……」
うう、怒られる。
「君、アリシアって名前なの?」
「……え?」
思ってもみなかった言葉が降って来て、私は思わず顔を上げて間抜けな声を出してしまう。
ポカンとした顔をしている私を殿下はじっと見つめてくる。
ちゃんと返事をしないといけないよね。
「あ、はい」
戸惑いながら答えると、殿下はこちらをまじまじと眺めて少し何かを考えてから言った。
「ちょっと僕の部屋に来てくれる?」
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