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本編
2、中庭の密会
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かくして、小説の世界に転移してしまったという驚きの事実を私は難なく受け入れて、王宮の夜会へと向かう準備に勤しんでいた。
先ほどやってきたメイド、ミラのおかげもあって、私レイラは大層美しい令嬢に仕立て上げられた。
姿見で眺める自分に思わず見惚れてしまう。
ああ、これが可愛いじゃなくて、色気のある女性だったらもっと良かったのに……。
そんな贅沢なことを考えていると、王宮へ向かう馬車の用意ができたことをミラから告げられた。
馬車へ乗り込んでみると、両親と共に会場へと向かうようだった。
レイラのお父様とお母様はとても仲が良く、優しい人たちだったので私も違和感なく自然と溶け込めた。
幸いレイラの経験したことや記憶は、頭に流れ込むように感じ取れるため、この国で過ごすために必要なことは自然と振る舞えているようだ。
えーと、小説の内容を思い出してみると、今日の夜会でエリック様はヒロインと出会うことになっているはず。
確か、夜会に退屈したエリック様が中庭に出るときに通った渡り廊下で、会場への道に迷ったヒロインと出くわしてダンスに誘うシーン。
その場面をこっそり覗かせてもらっちゃおう。
そう考えていると、私はなんだか楽しくなってきてしまって、この目で実際に推しを見れるワクワクに胸が高鳴っていた。
王宮に着いて会場へ入ると、もうすでに沢山の人が集まり熱気に包まれていた。
国王陛下と王太子殿下が入場して音楽の演奏が始まると、その場はさらに華やかさを増す。
私は煌びやかな貴族の世界に圧倒された。
わあ、本当に小説の中の世界に来たんだなあ。
お父様とお母様は貴族の人たちへの挨拶で忙しそうだ。
その隙をついて、私は大事なシーンを見逃さないように、早速エリック様とヒロインが出会う渡り廊下へ向かうことにした。
――――――
で、渡り廊下はどこ…………?!
さっきから3、40分ほどぐるぐると歩き回っているけど、見つからない。
さらには、なぜか渡り廊下を見つける前に、中庭へと出てしまったのだ。
この中庭、広すぎだよ~!
暗いから怖いし、早く戻りたい……。
泣きそうな思いで必死に会場へ戻る道を探していると、植え込みの向こうから急に人の声が響いてきて私はビクッと動きを止めた。
「今度こそ、私と一緒に夜を過ごしてください!」
び、びっくりしたあ。
心臓が止まりそうになるのを堪えた私は、植え込みの陰からこっそりと声のする方を覗いた。
見ると貴族令嬢らしき女性が、東屋の柵に軽く腰掛けている背の高い男性に話しかけているところだった。
男性はとても気怠げな様子で、この距離からでも相当な美青年であることが見て取れる。
「俺のものになりたいのか?」
そう言った男性の高価そうで気品のある身なりをした装いと、妖しげな言葉のギャップに思わず目が釘付けになってしまう。
「公爵様と一夜を共にできるなら何でもいたしますわ」
な、なんて会話なのかしら。
聞いているこっちが赤面してしまうほど、生々しい会話だ。
こんなことしてないで早くここを去らなくては。
人様の恋愛事情を覗き見するなんてマナー違反よね。
そーっと音を立てないように彼らに背を向けて歩き出そうとした瞬間、草木のガサガサッという大きな音と共に後ろから肩を掴まれて引き寄せられ、私はまた心臓が止まりそうになった。
「っ!!!!!」
思わず声にならない声を出して仰ぎ見ると、そこには先ほどの会話をしていた背の高い美青年がいて、私の肩を掴んでこちらを見下ろしていた。
え?何?!これは一体どういう状況??
何が起きているのか理解できず、瞬きも忘れて美青年に見入った。
そのまま彼は私の肩を抱き寄せながら、貴族令嬢に向き直る。
「悪いが今日は先約があるんだ」
そう言って肩を抱いた反対の手で私の髪を一房掬い取り、彼のその形の良い唇を当てながら、見せつけるかのように私の目を甘やかに熱っぽく見つめる。
こちらを見つめる艶やかなアイスグレー色の瞳から思わず目が離せなくて、私は頭がクラクラした。
いきなり何なの?!この人は?!
……あれ?でも、このアイスグレー色の瞳って――。
「ひどいですわ!」
貴族令嬢はそう言って、泣きながら走り去ってしまった。
……………………。
辺りは突如静けさに包まれる。
私は思い切って声を出した。
「あの…………離してもらえますか」
「ああ、助かった」
そう言って彼は私からサッと手を引いた。
アイスグレー色の瞳を持ち公爵様と呼ばれる人物はこの王国には一人しかいないはず。
そう思いながらじっと彼を見つめていると、彼は苦笑しながらふと呟いた。
「さすがに夫のいる女と一晩過ごす趣味はないのでな」
ええ?!あの女性は既婚者なの?!
なんと大胆な……。
しかし、彼の言い方だと独身の令嬢なら誰でもいいってことなのかしら。
まあ、小説の中でもヒロインに出会うまでは女性関係には奔放だったものね。
私はまじまじと彼を眺めた。
後ろで一つに結ったサラサラで漆黒の長い髪は、月明かりに照らされて深いロイヤルブルーに輝き、正装の上からでも分かる鍛え抜かれた肉体。
美しすぎるその顔のせいなのか、完璧なスタイルのせいなのか、漂う不思議な色香。
これがロラン公爵家の若き当主、エリック・ロランなのね。
うん、この精悍な美しさを目の当たりにしたら、一夜を添い遂げたいと熱望してしまうのはしょうがないよね……。
彼に見惚れながらそんなことを思ってしまう。
え?!違うちがう!!
やだ、私ったらなんてことを!
それに、こんな形で彼に会いたかったわけじゃないのに~!!
ここはどこ?!ヒロインはどこにいるんだろう。
最愛の推しに会えたにも関わらず、小説にはなかった展開に私の頭は少しパニックを起こしている。
あっ、そうか!ここにヒロインを連れて来ればいいんだ。
咄嗟に思いつき、私はエリック様へ唐突に尋ねた。
「あの! 渡り廊下はどっちですか?!」
彼は一瞬驚いたような表情を浮かべてから優雅に答えた。
「あっちだ」
「ありがとうございます!」
私はお礼を言って、彼の指差した方向へ急いで向かった。
しばらく歩くと渡り廊下が見えて来た。
近づいてみると、人影が見える。
あ、あそこにいるのはもしかして!
見覚えのある、いや、正確には描写に覚えのある女性がいた。
ショートボブの金髪に水色の花の髪飾りをつけた小柄な美しい女性。
彼女こそ小説のヒロイン、隣国の王女メアリー・フラートンだ。
そばにいる貴族男性と話していたようだったけど、お邪魔だったかな?
そんなことを思っていると、その貴族男性は近づいた私を見て険しい表情を向ける。
「なんだ、さっさと行けよ」
む。なんだか乱暴な言葉遣いね。
この国の貴族にしてはちょっと異質のように感じるし、不穏な空気が漂っているような……。
そう思いながら様子を伺うと、王女様の表情も困惑しているし明らかに私に助けを求めている。
私は一瞬悩んだものの、思い切って王女様に話しかけた。
「王女様、お待たせしてすみません」
彼女はホッとしたような表情で私に答える。
「ええ、大丈夫よ。それではいきましょうか」
「おい、ちょっと待てよ! 人が話してる途中に失礼だろ!」
私たちが歩き出そうとすると、男が脅すような口調で怒鳴りつけてくる。しかも、相当にお酒臭い。
それにしてもダメだ。私こういうの本当に頭に血が上っちゃう。
「何ですか?! あなたこそレディーに対して失礼ではありませんか」
私も思わず声を荒げる。
次の瞬間、男はさらに表情を変えて怒鳴った。
「邪魔をするな!」
なんと、そう言いながら、手を振り上げたのだ。
や、やばい!打たれる!
私は咄嗟に王女様の前に立ちはだかり、そのまま動けず観念して目を瞑った。
パシッと小さな音がするが、痛くない。
恐る恐る目を開けて見てみると、その男の腕を掴んで動きを止めているエリック様が立っていた。
「女性には優しく振る舞うのが男の務めではないのか?」
エリック様は背筋がゾクッとするような冷たい微笑みを浮かべながら、その男を見下ろして言った。
男はエリック様の顔を見て震え上がり、小さく叫んだ。
「こ、公爵様……! 申し訳ありません!」
エリック様がバッと手を離すと、男は逃げ去るように走って行った。
ふう、助かった。
「ありがとうございました」
私はエリック様にお辞儀する。
「先ほどの礼だ」
エリック様はさっきよりも穏やかで、でもまだ少し冷たい感じのする笑みを浮かべて言いながらすぐに去って行った。
あ、あれ?ちょっと!ここにヒロインがいますよー?!
私の心の叫びも虚しく、彼は振り返ることなく歩いて行ってしまう。
なんでだろう。ここが出会いの場所のはずなのに。
そんなことを考えてぼーっとしていた私は、思い出したように慌てて王女様に向き直った。
「大丈夫ですか?」
「ありがとうございます。道に迷っていた所さっきの男性に出くわしてしまってどうしたらいいのか困っていたの。貴族のようだから邪険にするのも気が引けて」
王女様は心底安堵したという風に言った。
なるほど、タチの悪い酔っ払いに絡まれてたのね。
「あなた、お名前は?」
王女様は気さくな様子で尋ねてくる。
「あ、私はレイラ・リンゼイと申します」
「まあ、リンゼイ子爵家のお嬢様ね。レイラと呼んでも?」
王女様は人懐っこく美しい笑顔で言った。
す、すごい。さすがは妃候補の王女様。
シャルダン王国の貴族の名前はしっかり頭に入っているようだ。
「もちろんです」
私は笑顔で答えながら感心していた。
これが、王族の知性なのね…………凄すぎる!
「本当に助かったわ。ねえ、私まだ来たばかりでこの国のこと全然わからないの。レイラ、仲良くしてくださらない?」
王女様はとびきりの笑顔で私にそう言った。
「はい、喜んで! ぜひよろしくお願いいたします」
私も笑顔で応えた。
わーい、早速ヒロインと仲良くなれちゃった!
先ほどやってきたメイド、ミラのおかげもあって、私レイラは大層美しい令嬢に仕立て上げられた。
姿見で眺める自分に思わず見惚れてしまう。
ああ、これが可愛いじゃなくて、色気のある女性だったらもっと良かったのに……。
そんな贅沢なことを考えていると、王宮へ向かう馬車の用意ができたことをミラから告げられた。
馬車へ乗り込んでみると、両親と共に会場へと向かうようだった。
レイラのお父様とお母様はとても仲が良く、優しい人たちだったので私も違和感なく自然と溶け込めた。
幸いレイラの経験したことや記憶は、頭に流れ込むように感じ取れるため、この国で過ごすために必要なことは自然と振る舞えているようだ。
えーと、小説の内容を思い出してみると、今日の夜会でエリック様はヒロインと出会うことになっているはず。
確か、夜会に退屈したエリック様が中庭に出るときに通った渡り廊下で、会場への道に迷ったヒロインと出くわしてダンスに誘うシーン。
その場面をこっそり覗かせてもらっちゃおう。
そう考えていると、私はなんだか楽しくなってきてしまって、この目で実際に推しを見れるワクワクに胸が高鳴っていた。
王宮に着いて会場へ入ると、もうすでに沢山の人が集まり熱気に包まれていた。
国王陛下と王太子殿下が入場して音楽の演奏が始まると、その場はさらに華やかさを増す。
私は煌びやかな貴族の世界に圧倒された。
わあ、本当に小説の中の世界に来たんだなあ。
お父様とお母様は貴族の人たちへの挨拶で忙しそうだ。
その隙をついて、私は大事なシーンを見逃さないように、早速エリック様とヒロインが出会う渡り廊下へ向かうことにした。
――――――
で、渡り廊下はどこ…………?!
さっきから3、40分ほどぐるぐると歩き回っているけど、見つからない。
さらには、なぜか渡り廊下を見つける前に、中庭へと出てしまったのだ。
この中庭、広すぎだよ~!
暗いから怖いし、早く戻りたい……。
泣きそうな思いで必死に会場へ戻る道を探していると、植え込みの向こうから急に人の声が響いてきて私はビクッと動きを止めた。
「今度こそ、私と一緒に夜を過ごしてください!」
び、びっくりしたあ。
心臓が止まりそうになるのを堪えた私は、植え込みの陰からこっそりと声のする方を覗いた。
見ると貴族令嬢らしき女性が、東屋の柵に軽く腰掛けている背の高い男性に話しかけているところだった。
男性はとても気怠げな様子で、この距離からでも相当な美青年であることが見て取れる。
「俺のものになりたいのか?」
そう言った男性の高価そうで気品のある身なりをした装いと、妖しげな言葉のギャップに思わず目が釘付けになってしまう。
「公爵様と一夜を共にできるなら何でもいたしますわ」
な、なんて会話なのかしら。
聞いているこっちが赤面してしまうほど、生々しい会話だ。
こんなことしてないで早くここを去らなくては。
人様の恋愛事情を覗き見するなんてマナー違反よね。
そーっと音を立てないように彼らに背を向けて歩き出そうとした瞬間、草木のガサガサッという大きな音と共に後ろから肩を掴まれて引き寄せられ、私はまた心臓が止まりそうになった。
「っ!!!!!」
思わず声にならない声を出して仰ぎ見ると、そこには先ほどの会話をしていた背の高い美青年がいて、私の肩を掴んでこちらを見下ろしていた。
え?何?!これは一体どういう状況??
何が起きているのか理解できず、瞬きも忘れて美青年に見入った。
そのまま彼は私の肩を抱き寄せながら、貴族令嬢に向き直る。
「悪いが今日は先約があるんだ」
そう言って肩を抱いた反対の手で私の髪を一房掬い取り、彼のその形の良い唇を当てながら、見せつけるかのように私の目を甘やかに熱っぽく見つめる。
こちらを見つめる艶やかなアイスグレー色の瞳から思わず目が離せなくて、私は頭がクラクラした。
いきなり何なの?!この人は?!
……あれ?でも、このアイスグレー色の瞳って――。
「ひどいですわ!」
貴族令嬢はそう言って、泣きながら走り去ってしまった。
……………………。
辺りは突如静けさに包まれる。
私は思い切って声を出した。
「あの…………離してもらえますか」
「ああ、助かった」
そう言って彼は私からサッと手を引いた。
アイスグレー色の瞳を持ち公爵様と呼ばれる人物はこの王国には一人しかいないはず。
そう思いながらじっと彼を見つめていると、彼は苦笑しながらふと呟いた。
「さすがに夫のいる女と一晩過ごす趣味はないのでな」
ええ?!あの女性は既婚者なの?!
なんと大胆な……。
しかし、彼の言い方だと独身の令嬢なら誰でもいいってことなのかしら。
まあ、小説の中でもヒロインに出会うまでは女性関係には奔放だったものね。
私はまじまじと彼を眺めた。
後ろで一つに結ったサラサラで漆黒の長い髪は、月明かりに照らされて深いロイヤルブルーに輝き、正装の上からでも分かる鍛え抜かれた肉体。
美しすぎるその顔のせいなのか、完璧なスタイルのせいなのか、漂う不思議な色香。
これがロラン公爵家の若き当主、エリック・ロランなのね。
うん、この精悍な美しさを目の当たりにしたら、一夜を添い遂げたいと熱望してしまうのはしょうがないよね……。
彼に見惚れながらそんなことを思ってしまう。
え?!違うちがう!!
やだ、私ったらなんてことを!
それに、こんな形で彼に会いたかったわけじゃないのに~!!
ここはどこ?!ヒロインはどこにいるんだろう。
最愛の推しに会えたにも関わらず、小説にはなかった展開に私の頭は少しパニックを起こしている。
あっ、そうか!ここにヒロインを連れて来ればいいんだ。
咄嗟に思いつき、私はエリック様へ唐突に尋ねた。
「あの! 渡り廊下はどっちですか?!」
彼は一瞬驚いたような表情を浮かべてから優雅に答えた。
「あっちだ」
「ありがとうございます!」
私はお礼を言って、彼の指差した方向へ急いで向かった。
しばらく歩くと渡り廊下が見えて来た。
近づいてみると、人影が見える。
あ、あそこにいるのはもしかして!
見覚えのある、いや、正確には描写に覚えのある女性がいた。
ショートボブの金髪に水色の花の髪飾りをつけた小柄な美しい女性。
彼女こそ小説のヒロイン、隣国の王女メアリー・フラートンだ。
そばにいる貴族男性と話していたようだったけど、お邪魔だったかな?
そんなことを思っていると、その貴族男性は近づいた私を見て険しい表情を向ける。
「なんだ、さっさと行けよ」
む。なんだか乱暴な言葉遣いね。
この国の貴族にしてはちょっと異質のように感じるし、不穏な空気が漂っているような……。
そう思いながら様子を伺うと、王女様の表情も困惑しているし明らかに私に助けを求めている。
私は一瞬悩んだものの、思い切って王女様に話しかけた。
「王女様、お待たせしてすみません」
彼女はホッとしたような表情で私に答える。
「ええ、大丈夫よ。それではいきましょうか」
「おい、ちょっと待てよ! 人が話してる途中に失礼だろ!」
私たちが歩き出そうとすると、男が脅すような口調で怒鳴りつけてくる。しかも、相当にお酒臭い。
それにしてもダメだ。私こういうの本当に頭に血が上っちゃう。
「何ですか?! あなたこそレディーに対して失礼ではありませんか」
私も思わず声を荒げる。
次の瞬間、男はさらに表情を変えて怒鳴った。
「邪魔をするな!」
なんと、そう言いながら、手を振り上げたのだ。
や、やばい!打たれる!
私は咄嗟に王女様の前に立ちはだかり、そのまま動けず観念して目を瞑った。
パシッと小さな音がするが、痛くない。
恐る恐る目を開けて見てみると、その男の腕を掴んで動きを止めているエリック様が立っていた。
「女性には優しく振る舞うのが男の務めではないのか?」
エリック様は背筋がゾクッとするような冷たい微笑みを浮かべながら、その男を見下ろして言った。
男はエリック様の顔を見て震え上がり、小さく叫んだ。
「こ、公爵様……! 申し訳ありません!」
エリック様がバッと手を離すと、男は逃げ去るように走って行った。
ふう、助かった。
「ありがとうございました」
私はエリック様にお辞儀する。
「先ほどの礼だ」
エリック様はさっきよりも穏やかで、でもまだ少し冷たい感じのする笑みを浮かべて言いながらすぐに去って行った。
あ、あれ?ちょっと!ここにヒロインがいますよー?!
私の心の叫びも虚しく、彼は振り返ることなく歩いて行ってしまう。
なんでだろう。ここが出会いの場所のはずなのに。
そんなことを考えてぼーっとしていた私は、思い出したように慌てて王女様に向き直った。
「大丈夫ですか?」
「ありがとうございます。道に迷っていた所さっきの男性に出くわしてしまってどうしたらいいのか困っていたの。貴族のようだから邪険にするのも気が引けて」
王女様は心底安堵したという風に言った。
なるほど、タチの悪い酔っ払いに絡まれてたのね。
「あなた、お名前は?」
王女様は気さくな様子で尋ねてくる。
「あ、私はレイラ・リンゼイと申します」
「まあ、リンゼイ子爵家のお嬢様ね。レイラと呼んでも?」
王女様は人懐っこく美しい笑顔で言った。
す、すごい。さすがは妃候補の王女様。
シャルダン王国の貴族の名前はしっかり頭に入っているようだ。
「もちろんです」
私は笑顔で答えながら感心していた。
これが、王族の知性なのね…………凄すぎる!
「本当に助かったわ。ねえ、私まだ来たばかりでこの国のこと全然わからないの。レイラ、仲良くしてくださらない?」
王女様はとびきりの笑顔で私にそう言った。
「はい、喜んで! ぜひよろしくお願いいたします」
私も笑顔で応えた。
わーい、早速ヒロインと仲良くなれちゃった!
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