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本編
11、遊び相手か婚約者か
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エリック様は私の手首を掴んだまま図書館を出て、しばらく歩いたところで止まった。
「あの……」
私が戸惑っていると、エリック様は私に向き直り呟いた。
「あいつと行くのか?」
少し怒りを含んだ口調で聞いてくる。
なんでこんなにも真剣な様子なのかが分からなくて返答に詰まった。
答えられずにいると、私の手首を掴んでいる手に力が入り身体が引き寄せられた。
私は間近で真剣な顔のエリック様を仰ぎ見る。
彼が次の言葉を発するように口を開きかけたとき、後ろから声が聞こえてきた。
「公爵様、こちらにいらしたのですか」
声の聞こえた方へ振り向くと、そこには美しい令嬢が立っていた。
扇子で口元が隠れているが、その色気までは隠し切れていない。
あ、この人はもしかして、ヘレナ・ジェニエス侯爵令嬢……?!
この国の宰相であるジェニエス侯爵の一人娘。
そして、ヘレナは小説の中でエリック様と一夜の深い関係を持つことになった令嬢だ。
ヒロインとのすれ違いに心を痛めたエリック様は、感情的になった勢いで彼女と一夜を共にしてしまう。
色白で血色のいい赤い唇にスタイルのいい妖艶な身体、腰まで伸びた赤い髪はその艶かしさをさらに引き立たせている美しい令嬢。
そう、彼女はまさに、エリック様の好みのタイプど真ん中なのだ。
私とはまるで正反対だわ……。なぜかとても残念な気持ちになる。
あれ?なんでこんな気持ちになってるんだろう。
ち、違う違う。私が嫌なんじゃなくて、ヒロインと結ばれなきゃダメだから残念なのよ。
そうじゃないと、バッドエンドになって命を落としてしまうのだから。
ヘレナは微笑みながら言う。
「お父様が会議の間に公爵様をお連れするようにと」
「ああ……もうそんな時間だったか。分かった」
そう言うとエリック様は力を緩め、私の腕を離して行ってしまった。
ヘレナはその場から動かず、私をじっと見ている。
な、何だろう。この不穏な空気は……。
「リンゼイ子爵令嬢ですわね?」
言いながら彼女は鋭い視線を送ってくる。
「は、はい」
「随分と公爵様に馴れ馴れしい態度ですわね。先日の夜会でもダンスを踊っていらしたように思いますけれど」
あ、あの時、彼女もいたのね。
あからさまな敵意を向けられて、的確な回答が浮かんでこない。
「まあ、それももうすぐできなくなるのだから公爵様は諦めることね」
「え……?」
「公爵様はもうすぐ私と婚約の話がまとまるわ」
ヘレナは意地悪な感じのする笑みを浮かべて言った。
「お父様が国王陛下に取り合ってくださっているところなの」
そこまで言って、ヘレナはカツカツとヒールを鳴らして私のすぐ傍までやってきた。
背の高い彼女は私を見下ろし、まるで私を脅かすようにパンッと音を鳴らして、持っていた扇子をもう片方の手のひらに叩きつけて畳む。
その扇子で私の顎を突き上げ、冷ややかな表情で私の目を見つめて言った。
「たかが子爵令嬢ごときが、公爵様に取り入ろうだなんて浅はかな考えはおやめなさい、」
そこで一度言葉を区切り、ゆっくりと言う。
「命が惜しかったらね」
そう言ってニヤリと笑うヘレナはゾクッとするほど恐ろしかった。
なんという迫力。この人ってこんなに悪女だったの………?!
でも……。こんな言い方はアレだけれど、元々の小説の展開だとヒロインと揉めた後に現れて、一晩だけで去って行くただの遊び相手のはずよね?!
エリック様とメアリー様は揉めた様子もないし、そもそもこの前の様子ではまだそこまで深い交流をしているようにも思えない。
だからヘレナとエリック様はまだ出会っていないはず。
それなのに、もうすでに二人は出会っていて、婚約の話まで出ているとは……。
青ざめた私の様子を見てヘレナは満足したのか、高らかに笑いながら去って行った。
なんでこんなことになったの?
私は、小説の展開とはどんどん離れて行くこの現状と、エリック様の婚約話に頭がパニックになって、しばらくの間その場所から動くことができなかった。
「あの……」
私が戸惑っていると、エリック様は私に向き直り呟いた。
「あいつと行くのか?」
少し怒りを含んだ口調で聞いてくる。
なんでこんなにも真剣な様子なのかが分からなくて返答に詰まった。
答えられずにいると、私の手首を掴んでいる手に力が入り身体が引き寄せられた。
私は間近で真剣な顔のエリック様を仰ぎ見る。
彼が次の言葉を発するように口を開きかけたとき、後ろから声が聞こえてきた。
「公爵様、こちらにいらしたのですか」
声の聞こえた方へ振り向くと、そこには美しい令嬢が立っていた。
扇子で口元が隠れているが、その色気までは隠し切れていない。
あ、この人はもしかして、ヘレナ・ジェニエス侯爵令嬢……?!
この国の宰相であるジェニエス侯爵の一人娘。
そして、ヘレナは小説の中でエリック様と一夜の深い関係を持つことになった令嬢だ。
ヒロインとのすれ違いに心を痛めたエリック様は、感情的になった勢いで彼女と一夜を共にしてしまう。
色白で血色のいい赤い唇にスタイルのいい妖艶な身体、腰まで伸びた赤い髪はその艶かしさをさらに引き立たせている美しい令嬢。
そう、彼女はまさに、エリック様の好みのタイプど真ん中なのだ。
私とはまるで正反対だわ……。なぜかとても残念な気持ちになる。
あれ?なんでこんな気持ちになってるんだろう。
ち、違う違う。私が嫌なんじゃなくて、ヒロインと結ばれなきゃダメだから残念なのよ。
そうじゃないと、バッドエンドになって命を落としてしまうのだから。
ヘレナは微笑みながら言う。
「お父様が会議の間に公爵様をお連れするようにと」
「ああ……もうそんな時間だったか。分かった」
そう言うとエリック様は力を緩め、私の腕を離して行ってしまった。
ヘレナはその場から動かず、私をじっと見ている。
な、何だろう。この不穏な空気は……。
「リンゼイ子爵令嬢ですわね?」
言いながら彼女は鋭い視線を送ってくる。
「は、はい」
「随分と公爵様に馴れ馴れしい態度ですわね。先日の夜会でもダンスを踊っていらしたように思いますけれど」
あ、あの時、彼女もいたのね。
あからさまな敵意を向けられて、的確な回答が浮かんでこない。
「まあ、それももうすぐできなくなるのだから公爵様は諦めることね」
「え……?」
「公爵様はもうすぐ私と婚約の話がまとまるわ」
ヘレナは意地悪な感じのする笑みを浮かべて言った。
「お父様が国王陛下に取り合ってくださっているところなの」
そこまで言って、ヘレナはカツカツとヒールを鳴らして私のすぐ傍までやってきた。
背の高い彼女は私を見下ろし、まるで私を脅かすようにパンッと音を鳴らして、持っていた扇子をもう片方の手のひらに叩きつけて畳む。
その扇子で私の顎を突き上げ、冷ややかな表情で私の目を見つめて言った。
「たかが子爵令嬢ごときが、公爵様に取り入ろうだなんて浅はかな考えはおやめなさい、」
そこで一度言葉を区切り、ゆっくりと言う。
「命が惜しかったらね」
そう言ってニヤリと笑うヘレナはゾクッとするほど恐ろしかった。
なんという迫力。この人ってこんなに悪女だったの………?!
でも……。こんな言い方はアレだけれど、元々の小説の展開だとヒロインと揉めた後に現れて、一晩だけで去って行くただの遊び相手のはずよね?!
エリック様とメアリー様は揉めた様子もないし、そもそもこの前の様子ではまだそこまで深い交流をしているようにも思えない。
だからヘレナとエリック様はまだ出会っていないはず。
それなのに、もうすでに二人は出会っていて、婚約の話まで出ているとは……。
青ざめた私の様子を見てヘレナは満足したのか、高らかに笑いながら去って行った。
なんでこんなことになったの?
私は、小説の展開とはどんどん離れて行くこの現状と、エリック様の婚約話に頭がパニックになって、しばらくの間その場所から動くことができなかった。
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