公爵様のバッドエンドを回避したいだけだったのに、なぜか溺愛されています

六花心碧

文字の大きさ
11 / 36
本編

10、パートナーは誰だ

しおりを挟む
 先日のシャンデリア落下事件以来、エドワード殿下は気を遣ってくださって、私の部屋の前には常に護衛騎士が配置されることになった。

 その騎士は、あの任命式の日に私がぶつかってしまったロジャーの部下である彼で、ミラはとっても嬉しそうだ。

 彼をはじめとして、王宮の騎士様たちは本当にみんなイケメンだものね。
 顔で選んでいるんじゃないかと思うくらい。

 あの事件の直後はロジャーまでもが私の元へ訪れて、色々と心配をしてくれた。
 こんなにみんなに心配してもらって、私はなんだか少し申し訳ない気持ちになる。

 だって、狙われているのは私ではなくメアリー様だということを、小説を読んだ私は知っているから。

 もちろんエドワード殿下は、お妃様候補であるメアリー様への危害を想定して、そちらの警備も十分に強化したようだ。


 リビングで紅茶を飲みながらくつろいでいると、ミラがふと思い出したように言った。
「そういえばもうすぐ夜会ですね。お嬢様のパートナーはどうされるんですか?」

 そうだった。王宮で開かれる夜会の招待を先日受けたのを忘れていた。

 パートナーかあ。

 前回の夜会は両親と一緒だったから特に気にしてなかったけど、貴族令嬢は普通、夜会にはパートナーが必要よね。

 うーん、と考えあぐねている私に、ミラは囁くように言う。

「公爵様にお願いしたらどうですか?」
「え?」
「あのご様子なら、きっと承諾してくれますわ」
 そう言ってミラは目をキラキラ輝かせている。

「っていうか、お誘いがあったりして……! きゃあ」

 もう、ミラったら相変わらず妄想が激しいんだから。
 あの様子ってどんな様子よ。

「そんなわけないじゃない。どうしてこの国唯一の公爵様が、しがない子爵令嬢の私なんかをパートナーに選ぶのよ」

 ミラは私の言葉が耳に入っていないかのように、頬を紅潮させて捲し立てる。

「ふわふわの長い茶色髪にピンク色の瞳の愛くるしいお嬢様と、鍛え上げられた精悍な身体と美しい顔がなんともいえない色気を持つ公爵様! お二人が並んでいる姿を想像するだけで……ああなんてお似合いなんでしょう!」

 ――……いつも思うけど、ミラとはものすごくシンパシーを感じるのよね。
 推しの愛で方が似ているというか。

 興奮気味に語るミラに何と返事をしていいのか分からず、いたたまれなくなった私は一人で図書館に出向いた。

 本でも読んで、気分転換しよう。

 特に当てもなく図書館の中をふらふらしていると、ロジャーとばったり会った。
 彼は私を見つけるとにっこりと微笑みながらこちらへやってくる。

「ああ、レイラ嬢。ちょうどお部屋を訪ねようと思っていました」
「どうかしましたか?」
「ええ、まあ」

 そう言ってロジャーは何かを言いづらそうにもじもじしている。

「?」
「あ、その……」
「はい」
「あの、今度の夜会、僕と一緒に行ってくれませんか?」
「えっ?!」

 ええ?!ロジャーが私と?!

 想像もしていなかった提案に思考がついていかない。
 驚きで固まっていると、彼は落ち込んだような表情で言う。

「もうパートナーはお決まりでしたか?」
「い、いえ、そういうわけではないのですが」

 なんでロジャーが私を誘うの?!ヒロインでもないのに……。

 突然の彼の申し出に頭がパニックを起こす。
 何も言わない私の様子を見て、ロジャーは意を決したように息を吸って言い放った。

「君は僕のタイプそのものなんだ!」

 えっ…………?!タイプ?!

 そういえば、小説の中でエリック様の女性のタイプは事細かに描写があったけど、ロジャーの女性のタイプの描写なんて見たことなかったかも。

 そりゃそうだよね。だってすぐにヒロインと恋に落ちるのだもの、必要ないはずだよね。

 なのに、この展開って何?!

「それに、初めて会った時の私の部下を庇う優しさに惹かれたんだ」
 ロジャーはそう言って、頬を若干赤くしている。

 ど、どうしよう、何て答えたらいいんだろう。
 っていうかこれじゃあ小説の内容が大幅に変わってしまうのでは………?!


 ………いや、でも待って。

 よくよく考えてみたら、私がロジャーと夜会に行けばヒロインとくっつく可能性はゼロに近くなるということよね。

 それは、ヒロインとエリック様の幸せと、なによりも平和な結末に向かうためにとても良いことだ。

 うーん、夜会のパートナーかあ。
 私は改めてそう思いながら、エリック様の美しい顔を思い浮かべる。

 あ、あれ?私なんで今エリック様のことをこんな風に思い出しているんだろう。
 こんな状況を前に、エリック様のことばかり考えてしまう自分に慌てる。

 ロジャーに返事をしないと……!

 そう思い直して、ロジャーに向き直り口を開こうとした瞬間だった。

「ここにいたのか」
 横から声が響いてきたので反射的に顔を向けると、そこには冷たさの感じる表情で立っているエリック様の姿があった。

 心なしか少し不機嫌そうに見える。

 今の、誰に言ったんだろう。

「約束してただろ」
 エリック様は私に向かって無表情で言う。

 えっ?私?約束??してたっけ?

 そんなことを考えてぼーっとしていると、エリック様はカツカツと歩み寄り私の手首を掴んで歩き出した。

「えっ、ちょっと……」

 エリック様に引きずられるように歩き出した私にロジャーは大きな声で言った。
「先ほどの返事はいつでもいいですから!」

 私はかろうじて頷き、ロジャーに合図した。


 一体、何がどうなっちゃったの?!

 そんなパニックに陥る私には、この一部始終を険しい形相のエリザが見ていたことなんて知る由もなかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

次期騎士団長の秘密を知ってしまったら、迫られ捕まってしまいました

Karamimi
恋愛
侯爵令嬢で貴族学院2年のルミナスは、元騎士団長だった父親を8歳の時に魔物討伐で亡くした。一家の大黒柱だった父を亡くしたことで、次期騎士団長と期待されていた兄は騎士団を辞め、12歳という若さで侯爵を継いだ。 そんな兄を支えていたルミナスは、ある日貴族学院3年、公爵令息カルロスの意外な姿を見てしまった。学院卒院後は騎士団長になる事も決まっているうえ、容姿端麗で勉学、武術も優れているまさに完璧公爵令息の彼とはあまりにも違う姿に、笑いが止まらない。 お兄様の夢だった騎士団長の座を奪ったと、一方的にカルロスを嫌っていたルミナスだが、さすがにこの秘密は墓場まで持って行こう。そう決めていたのだが、翌日カルロスに捕まり、鼻息荒く迫って来る姿にドン引きのルミナス。 挙句の果てに“ルミタン”だなんて呼ぶ始末。もうあの男に関わるのはやめよう、そう思っていたのに… 意地っ張りで素直になれない令嬢、ルミナスと、ちょっと気持ち悪いがルミナスを誰よりも愛している次期騎士団長、カルロスが幸せになるまでのお話しです。 よろしくお願いしますm(__)m

もう長くは生きられないので好きに行動したら、大好きな公爵令息に溺愛されました

Karamimi
恋愛
伯爵令嬢のユリアは、8歳の時に両親を亡くして以降、叔父に引き取られたものの、厄介者として虐げられて生きてきた。さらにこの世界では命を削る魔法と言われている、治癒魔法も長年強要され続けてきた。 そのせいで体はボロボロ、髪も真っ白になり、老婆の様な見た目になってしまったユリア。家の外にも出してもらえず、メイド以下の生活を強いられてきた。まさに、この世の地獄を味わっているユリアだが、“どんな時でも笑顔を忘れないで”という亡き母の言葉を胸に、どんなに辛くても笑顔を絶やすことはない。 そんな辛い生活の中、15歳になったユリアは貴族学院に入学する日を心待ちにしていた。なぜなら、昔自分を助けてくれた公爵令息、ブラックに会えるからだ。 「どうせもう私は長くは生きられない。それなら、ブラック様との思い出を作りたい」 そんな思いで、意気揚々と貴族学院の入学式に向かったユリア。そこで久しぶりに、ブラックとの再会を果たした。相変わらず自分に優しくしてくれるブラックに、ユリアはどんどん惹かれていく。 かつての友人達とも再開し、楽しい学院生活をスタートさせたかのように見えたのだが… ※虐げられてきたユリアが、幸せを掴むまでのお話しです。 ザ・王道シンデレラストーリーが書きたくて書いてみました。 よろしくお願いしますm(__)m

【完結】モブ令嬢としてひっそり生きたいのに、腹黒公爵に気に入られました

22時完結
恋愛
貴族の家に生まれたものの、特別な才能もなく、家の中でも空気のような存在だったセシリア。 華やかな社交界には興味もないし、政略結婚の道具にされるのも嫌。だからこそ、目立たず、慎ましく生きるのが一番——。 そう思っていたのに、なぜか冷酷無比と名高いディートハルト公爵に目をつけられてしまった!? 「……なぜ私なんですか?」 「君は実に興味深い。そんなふうにおとなしくしていると、余計に手を伸ばしたくなる」 ーーそんなこと言われても困ります! 目立たずモブとして生きたいのに、公爵様はなぜか私を執拗に追いかけてくる。 しかも、いつの間にか甘やかされ、独占欲丸出しで迫られる日々……!? 「君は俺のものだ。他の誰にも渡すつもりはない」 逃げても逃げても追いかけてくる腹黒公爵様から、私は無事にモブ人生を送れるのでしょうか……!?

前世の記憶を取り戻した元クズ令嬢は毎日が楽しくてたまりません

Karamimi
恋愛
公爵令嬢のソフィーナは、非常に我が儘で傲慢で、どしうようもないクズ令嬢だった。そんなソフィーナだったが、事故の影響で前世の記憶をとり戻す。 前世では体が弱く、やりたい事も何もできずに短い生涯を終えた彼女は、過去の自分の行いを恥、真面目に生きるとともに前世でできなかったと事を目いっぱい楽しもうと、新たな人生を歩み始めた。 外を出て美味しい空気を吸う、綺麗な花々を見る、些細な事でも幸せを感じるソフィーナは、険悪だった兄との関係もあっという間に改善させた。 もちろん、本人にはそんな自覚はない。ただ、今までの行いを詫びただけだ。そう、なぜか彼女には、人を魅了させる力を持っていたのだ。 そんな中、この国の王太子でもあるファラオ殿下の15歳のお誕生日パーティに参加する事になったソフィーナは… どうしようもないクズだった令嬢が、前世の記憶を取り戻し、次々と周りを虜にしながら本当の幸せを掴むまでのお話しです。 カクヨムでも同時連載してます。 よろしくお願いします。

やけに居心地がいいと思ったら、私のための愛の巣でした。~いつの間にか約束された精霊婚~

小桜
恋愛
ルディエル・アレンフォードは森に住む麗しの精霊守。 そんな彼が、いよいよ伴侶を迎えようと準備を始めているらしい。 幼馴染という関係に甘んじていたネネリア・ソルシェは、密かにショックを受けていた。 そろそろ彼との関係も終わらせなければならないけれど、ルディエルも精霊達もネネリアだけに優しくて――? 「大丈夫。ずっと居たいと思えるような場所にしてみせるから」 鈍感なネネリアと、一途で奥手なルディエル。 精霊に導かれた恋は、本人だけが気づかない。

異世界から来た娘が、たまらなく可愛いのだが(同感)〜こっちにきてから何故かイケメンに囲まれています〜

恋愛
普通の女子高生、朱璃はいつのまにか異世界に迷い込んでいた。 右も左もわからない状態で偶然出会った青年にしがみついた結果、なんとかお世話になることになる。一宿一飯の恩義を返そうと懸命に生きているうちに、国の一大事に巻き込まれたり巻き込んだり。気付くと個性豊かなイケメンたちに大切に大切にされていた。 そんな乙女ゲームのようなお話。

【完結】転生したら脳筋一家の令嬢でしたが、インテリ公爵令息と結ばれたので万事OKです。

櫻野くるみ
恋愛
ある日前世の記憶が戻ったら、この世界が乙女ゲームの舞台だと思い至った侯爵令嬢のルイーザ。 兄のテオドールが攻略対象になっていたことを思い出すと共に、大変なことに気付いてしまった。 ゲーム内でテオドールは「脳筋枠」キャラであり、家族もまとめて「脳筋一家」だったのである。 私も脳筋ってこと!? それはイヤ!! 前世でリケジョだったルイーザが、脳筋令嬢からの脱却を目指し奮闘したら、推しの攻略対象のインテリ公爵令息と恋に落ちたお話です。 ゆるく軽いラブコメ目指しています。 最終話が長くなってしまいましたが、完結しました。 小説家になろう様でも投稿を始めました。少し修正したところがあります。

【完結】断りに行ったら、お見合い相手がドストライクだったので、やっぱり結婚します!

櫻野くるみ
恋愛
ソフィーは結婚しないと決めていた。 女だからって、家を守るとか冗談じゃないわ。 私は自立して、商会を立ち上げるんだから!! しかし断りきれずに、仕方なく行ったお見合いで、好みど真ん中の男性が現れ・・・? 勢いで、「私と結婚して下さい!」と、逆プロポーズをしてしまったが、どうやらお相手も結婚しない主義らしい。 ソフィーも、この人と結婚はしたいけど、外で仕事をする夢も捨てきれない。 果たして悩める乙女は、いいとこ取りの人生を送ることは出来るのか。 完結しました。

処理中です...