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本編
31、反逆の証し
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「陛下! それを口にしてはいけません!!」
走って走ってようやく辿り着いた王宮で、例のお茶会が行われているという部屋になんとか駆け込み、今にも口をつけようとしていた国王陛下の持つグラスを落とした。
ふー。間に合ってよかった。
息切れするシエラを引っ張りながら走ってきた甲斐があったわ。
危なかった~!
私がやれやれと息をついていると、その場にいた国王陛下やエドワード殿下とメアリー様を始めとして、向かいに座るエリック様とヘレナ、そしてジェニエス侯爵と神官長、傍に立っていたロジャーまでもが唖然とした顔で私を見ていた。
次の瞬間、ジェニエス侯爵は顔色を変えて怒鳴り散らした。
「なんだお前は! 誰か! この女を縛り上げろ、反逆者だ!!」
侯爵は神官長を睨んだ後、ギリギリと音を出しそうな程悔しそうな顔をして私を睨みつけている。
目論見が失敗したんだもの、当然よね。ふんっ。
ロジャーは私の顔を見てオロオロしているばかり。
そんな様子を見ている騎士団員は皆、私の顔を見て「あれは、ロジャー様がお慕いしている……」などと囁き合いながら戸惑っている。
そんな混乱に乗じて、走りながらシエラから受け取り教えてもらった通り、陛下の手から落としたグラスの液体にベリルの葉を浸した。
その葉は赤と黒の縞模様に変化する。
「こ、これは! まさかベリルの異変か……?!」
変色した葉を凝視しながら叫ぶ国王陛下にみんなが驚きの表情を向ける。
「陛下のおっしゃる通り、これは古代呪術ベリルの異変に間違いありません」
「ええ、あの悪夢が繰り返されようとしていたのです。ジ、ジュノー伯爵家の名を以て証言いたしますわ」
私の言葉にシエラが続けてそう言った。
ここまで走りながら、シエラはベリルの異変が起こった当時、国王陛下の亡骸はその呪いから赤と黒の縞模様に変化したのだと教えてくれた。
それが、ベリルの葉と実の毒が起こす魂までもを消し去る呪いの証だったのだ。
それを知っているのは、当時ベリルの薬草を研究して呪いを解き明かしたジュノー伯爵家と王族だけである。
「ジュノー伯爵家の……。そうか」
国王陛下はシエラの言葉を受けて全てを理解したようだった。
今の体調不良の原因も、これから起きようとしていた悲劇も。
国王陛下のその姿を見つめながら、私は勇気を出して声を振り絞った。
「私は一昨日、ジェニエス侯爵と神官長が共謀して国王陛下にベリルの毒を飲ませようと計画していたことを聞いて閉じ込められていたところジュノー伯爵令嬢に助けられました」
その場にいたみんながジェニエス侯爵と神官長にハッと顔を向けた。
彼らは顔面蒼白で言葉を失い立ち尽くしている。
意を決して言葉を続ける。
「国王陛下はおろか、エドワード殿下とメアリー様、そしてエリック様までも毒草で操ろうとしていたのです! 神殿の薬草部屋に証拠品があります!」
「そんな……!」
メアリー様は肩を震わせている。
ヘレナは青ざめていた顔を上げて、私を睨みながら叫んだ。
「貴女、なんてことを言うの! 言いがかりも甚だしい」
それから大袈裟に顔を覆って悲しそうな声を出した。
「いくら公爵様に相手にされなくて悲しかったとはいえ、聖女になっただなんて嘘までついて……」
ヘレナは言いながらジェニエス侯爵と神官長をチラリと見て目配せをした。
途端にジェニエス侯爵はニヤリと笑って大声を出す。
「そうだ! それであの女は閉じ込められていたのだ! そうだろう神官長」
「あ……? ああ、そうですとも! 彼女は妄想を叫ぶようになったのです! 神殿にそんな嘘をつくなんて大罪だ!!」
「そう、全ては頭がおかしくなったこの女が考え出した茶番なのだ!」
ジェニエス侯爵は私に指を突きつけ叫んだ。
騎士団員やその場にいた侍従たちが一斉に私に険しい表情を向けてくる。
え?!ちょっと待って、なんか一気に形成が不利になった気がする!
慌てる私の視界の端に、ニヤリと笑ったヘレナがさっと薬草を取り出しテーブルに置かれていたランプでこっそりと燻すのが目に入った。
あ、あれは?!
先程、シエラが惑わし草をランプで燻していたことを思い出す。
まさか……?!
すぐに煙が充満したのを確認して、ヘレナは隣に座るエリック様にしなだれかかった。
「公爵様、あのような反逆の意思をもった女を野放しにしておくなんて、私怖いですわ」
ヘレナはエリック様の肩にもたれかかり、彼の胸に手をあてて甘えるように囁く。
「いつものように私のお願い聞いてくださるでしょう? こんなにも愛し合っている私たちの仲ですもの」
そう言って、今にも唇を寄せてしまいそうなほどの距離でエリック様を熱っぽく艶やかな表情で見つめている。
う、嘘でしょ……?!
やめて……!
私は二人のそんな姿を見るに耐えず、下を向いてぎゅっと目を閉じた。
「……そうだな」
エリック様の低い声が響いて、まるで私は心臓が掴まれたように息ができなかった。
「こんなことを企てる反逆者を野放しにはできない」
いやだ。
エリック様にだけは、そんな風に思われたくない。
いくら惑わし草のせいだとしても……そんなの絶対に嫌だ!!
走って走ってようやく辿り着いた王宮で、例のお茶会が行われているという部屋になんとか駆け込み、今にも口をつけようとしていた国王陛下の持つグラスを落とした。
ふー。間に合ってよかった。
息切れするシエラを引っ張りながら走ってきた甲斐があったわ。
危なかった~!
私がやれやれと息をついていると、その場にいた国王陛下やエドワード殿下とメアリー様を始めとして、向かいに座るエリック様とヘレナ、そしてジェニエス侯爵と神官長、傍に立っていたロジャーまでもが唖然とした顔で私を見ていた。
次の瞬間、ジェニエス侯爵は顔色を変えて怒鳴り散らした。
「なんだお前は! 誰か! この女を縛り上げろ、反逆者だ!!」
侯爵は神官長を睨んだ後、ギリギリと音を出しそうな程悔しそうな顔をして私を睨みつけている。
目論見が失敗したんだもの、当然よね。ふんっ。
ロジャーは私の顔を見てオロオロしているばかり。
そんな様子を見ている騎士団員は皆、私の顔を見て「あれは、ロジャー様がお慕いしている……」などと囁き合いながら戸惑っている。
そんな混乱に乗じて、走りながらシエラから受け取り教えてもらった通り、陛下の手から落としたグラスの液体にベリルの葉を浸した。
その葉は赤と黒の縞模様に変化する。
「こ、これは! まさかベリルの異変か……?!」
変色した葉を凝視しながら叫ぶ国王陛下にみんなが驚きの表情を向ける。
「陛下のおっしゃる通り、これは古代呪術ベリルの異変に間違いありません」
「ええ、あの悪夢が繰り返されようとしていたのです。ジ、ジュノー伯爵家の名を以て証言いたしますわ」
私の言葉にシエラが続けてそう言った。
ここまで走りながら、シエラはベリルの異変が起こった当時、国王陛下の亡骸はその呪いから赤と黒の縞模様に変化したのだと教えてくれた。
それが、ベリルの葉と実の毒が起こす魂までもを消し去る呪いの証だったのだ。
それを知っているのは、当時ベリルの薬草を研究して呪いを解き明かしたジュノー伯爵家と王族だけである。
「ジュノー伯爵家の……。そうか」
国王陛下はシエラの言葉を受けて全てを理解したようだった。
今の体調不良の原因も、これから起きようとしていた悲劇も。
国王陛下のその姿を見つめながら、私は勇気を出して声を振り絞った。
「私は一昨日、ジェニエス侯爵と神官長が共謀して国王陛下にベリルの毒を飲ませようと計画していたことを聞いて閉じ込められていたところジュノー伯爵令嬢に助けられました」
その場にいたみんながジェニエス侯爵と神官長にハッと顔を向けた。
彼らは顔面蒼白で言葉を失い立ち尽くしている。
意を決して言葉を続ける。
「国王陛下はおろか、エドワード殿下とメアリー様、そしてエリック様までも毒草で操ろうとしていたのです! 神殿の薬草部屋に証拠品があります!」
「そんな……!」
メアリー様は肩を震わせている。
ヘレナは青ざめていた顔を上げて、私を睨みながら叫んだ。
「貴女、なんてことを言うの! 言いがかりも甚だしい」
それから大袈裟に顔を覆って悲しそうな声を出した。
「いくら公爵様に相手にされなくて悲しかったとはいえ、聖女になっただなんて嘘までついて……」
ヘレナは言いながらジェニエス侯爵と神官長をチラリと見て目配せをした。
途端にジェニエス侯爵はニヤリと笑って大声を出す。
「そうだ! それであの女は閉じ込められていたのだ! そうだろう神官長」
「あ……? ああ、そうですとも! 彼女は妄想を叫ぶようになったのです! 神殿にそんな嘘をつくなんて大罪だ!!」
「そう、全ては頭がおかしくなったこの女が考え出した茶番なのだ!」
ジェニエス侯爵は私に指を突きつけ叫んだ。
騎士団員やその場にいた侍従たちが一斉に私に険しい表情を向けてくる。
え?!ちょっと待って、なんか一気に形成が不利になった気がする!
慌てる私の視界の端に、ニヤリと笑ったヘレナがさっと薬草を取り出しテーブルに置かれていたランプでこっそりと燻すのが目に入った。
あ、あれは?!
先程、シエラが惑わし草をランプで燻していたことを思い出す。
まさか……?!
すぐに煙が充満したのを確認して、ヘレナは隣に座るエリック様にしなだれかかった。
「公爵様、あのような反逆の意思をもった女を野放しにしておくなんて、私怖いですわ」
ヘレナはエリック様の肩にもたれかかり、彼の胸に手をあてて甘えるように囁く。
「いつものように私のお願い聞いてくださるでしょう? こんなにも愛し合っている私たちの仲ですもの」
そう言って、今にも唇を寄せてしまいそうなほどの距離でエリック様を熱っぽく艶やかな表情で見つめている。
う、嘘でしょ……?!
やめて……!
私は二人のそんな姿を見るに耐えず、下を向いてぎゅっと目を閉じた。
「……そうだな」
エリック様の低い声が響いて、まるで私は心臓が掴まれたように息ができなかった。
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いやだ。
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