月の歌

ハルハル

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森と共に生きる者

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楓さん視点です。少し時間はさかのぼります。

「そう...。もう避けられないのね。」
私は力なく呟いた。
目の前でふわふわと漂う綿毛のような姿をしているのは仲間の木霊達だ。彼らは人間が山に住む精霊達を殺そうとしていることを知り真っ青になって私の所に飛んできたのだ。彼らから不安や恐怖、悲しみ、怒りの感情が流れ込んでくる。
私はこの山で一番の力を持つ木霊だ。だがそれでも月夜様には及ばない。
その月夜様と私の力をもってしてももうどうしようもない所まできていた。
人間達はもう止められない。戦う以外に道はない。
人間達は私や月夜様を探しだし殺そうとするだろう。他にも精霊を見つけたら殺すかも知れない。

おのれ、愚かな人間達敵共め!

ああどうして、人間達我が友よ...

私の心の中に浮かんだのはどうしようもないほど激しい怒りと、絶望にも似た悲しみだった。
私は途方もないくらい長い間この山に住み、人間や獣達を見守ってきた。
だからこそ悲しい。だからこそ辛い。
私は知らずのうちに拳を指先が青白くなるほど強く握りしめていた。

楓さま、貴女はそれでもいいのですか。
この山が人間達に破壊されても。
我らの場所がなくなっても。

精霊達が口々に聞いてくるが、答えはもちろん決まっている。
「良いわけないでしょう」
私は眉をつりあげた。
「この山は私達にとって大切な場所よ。誰にも無くさせないわ」
そう、ここは私の、私達の家だ。
たとえ人間達が集団で襲ってこようと、最後まで戦いぬいて見せよう。

精霊私達の怒りを思い知るがいい、人間達!



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