【本編完結】エロゲーの悪役令息に転生したら主人公からの求愛が止まらない

はかまる

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媚薬騒動編

16 ♡喘ぎをする男

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 気のせいか、身体を動かしただけで息が漏れて、なんだか文字に起こしたら語尾にハートがついていそうな媚びた声だったぞ。まさか今のって、俺の声なのか?

「な、にが♡急に、なんだって……ッ♡」
「せ、先輩のお声が、なんだかエッチですっ」
「え、えぇ……♡」

 恥ずかしい。ゲームで攻略したことのあるヒロインの前で♡喘ぎしてる自分が恥ずかしい。
 気絶する前、俺はふらついて棚にある薬品をいくつか被った。その薬品の効果が今頃出てきたのだろうか。自分の症状から嫌な予感がして、自分が被ったであろう薬品棚を再び確認した。そこには【2年 媚薬作成品】と札がかけてある。

「(媚薬……!)」

 最悪だ、主人公とヒロインが媚薬まみれになるイベントが俺のみに降りかかっている。
 この世界はエロゲーであるから、媚薬でエッチな気分になれば♡は乱舞するテキストまみれになる。だが、それは可愛い女の子のスチルがあるからこそであって、ガタイのそこそこ良い男の♡喘ぎなんて見てられない。今俺はとても見てられない状態にある。

 強盗達に捕らわれている真っ只中だというのに、眠るカイリ、怯えるモニカの中で、喘ぐルークは絵面的に情けなすぎる。
 俺が己の情けなさに絶望していたところで、男達の視線も俺に集まっている事に気づいた。

「坊ちゃん、そんな綺麗な顔で誘ってんのか?おいおいとんだ淫乱じゃねぇか」
「誘って、ない……ッ♡」
「そんな潤んだ瞳で睨んでも俺達を悦ばせるだけだぜ」

 この♡今すぐ消す方法無いですか。凄んでも、全然格好がつかないのですが。
 ゴクリと生唾を飲む大男の腕が俺へと伸びてくる。俺の頬を撫で、強引な力で顎を掴みあげ強制的に男と視線が絡む。俺は今どれほど情けない顔をしているのだろうか。媚薬のせいで強制的に発情させられている為、少し触れられるだけでソコに熱が集まり、頭がぼぅっとする。目の前の男の姿すらも、はっきり認識できなくなってきた。

「……っいいねぇ」
「オイオイ、そいつ男だぞ」
「こんだけ顔整っていれば挿れる穴さえあれば男も女も関係ねぇさ。すぐ終わる」

 べろりと男の舌が俺の頬を撫でる。俺よりも先にその様子に近くに居たモニカが「ヒッ」と短く悲鳴をあげた。
 男が触れる度にビリリと電気のような快感が全身を伝い、俺はその快感に反応するように声を漏らす。その反応を見て益々男達は笑みを深めた……気がした。媚薬が呼吸をする度に、体内で回っていっている気がして思考が回らず、力も入らなくなり捕縛された己の身をぐらりと男に預けるような形で傾いた。

「早漏が」
「馬鹿言うなお前も勃たたせてるくせに」

 ガチャガチャという音が、聞こえる。
 2人の男達が俺の目の前に立ち、これから己に行われるであろう事を察するが、今の俺にはなすすべが無い。なんだって俺はこの生きづらさマックスな世界に転生してしまったのだろうか。
 そう全てを諦めて、己の第2の人生と不運を恨みながら瞼を閉じる。

「――――」

 詠唱が、聞こえた。その声の主を確認する間もなく、直後に破壊音が轟いた。


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