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媚薬騒動編
17 ○○のピンチに覚醒する男
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飛び散る瓦礫と舞い上がる砂埃がはれて目を開くと、保管庫は半壊の状態にあり、俺の目の前に居たはずの男達は消えて居なくなっていた。代わりに、ゆらりと俺の前にたつ男の影がある。
「か、いり」
「るーく、せんぱい」
先程まで眠らされていた影響でかカイリも完全に覚めてはいない、甘えるような声で俺の名前を呼び近づいてくる。
思考が巡らない中で俺を見つめるカイリの顔を見るが、今彼がどんな表情をしているのかも視界が上手く定まらずわからない。
「せんぱ――――」
「これはどういう事です!皆さん無事ですか?」
「ルーク様!!」
半壊となった保管庫の入り口だった場所から、魔法薬学の教師そしてモグリソンの姿が見えた。教師はまだしもモグリソンの奴、やはりこっそり俺の後をつけてきていたのか。
だが、この場に第三者の介入が出来るということは、無事今回のこのイベントは通常ルートへとカイリは選択できたらしい。魔力封じが施された部屋を破壊するこれだけの魔力を覚醒させたのだから。
「かいり、よかったな」
バッドエンド回避となった事を確信し、安心すると媚薬にもたらされている熱と緊張の糸が切れた事により俺は再び意識を手放した。
ゴロツキの男2人組はどうやら生きてはいるらしい。
てっきりカイリがやり過ぎて木っ端微塵に消したんだと思っていたが、保管庫外へと吹き飛んでいただけで後々警備隊に捕らえられ今後の取り調べにより処遇が決まって行くだろう。まぁ、モニカやカイリは兎も角貴族の俺に手を出したのだから厳しい処罰が下ることだろう。
俺はあれから、俺のストーカー兼忠犬のモグリソンに抱えられ医務室に運ばれ媚薬を抜く治療が施された。
医務員からは「アルバンベルトさん最近よく会いますね」と医務室を出る際に優しい笑顔を向けられたが、その笑顔には「仕事を増やすな」という意味も含んでいるように感じるのは物事の行間を読みすぎてしまう日本人だからであろうか。
「ルーク先輩、本当にご無事で良かったです」
そう話すのは、保管庫にて共に過ごしたヒロインの1人であるモニカである。
媚薬の効果を完全に抜く為、俺は昨日に続き医務室へ通い今もベッドにて寝て点滴を受けているところなのだが、モグリソンと入れ替わる形でモニカがお見舞いにとやってきてくれた。
気弱な印象である彼女だが、俺を気遣い鎮痛効果のある薬と菓子を差し入れに持って現れた。そしてなにより、俺が気を失ってからの話を律儀に俺に伝え教えてくれたのはこのモニカである。
「モニカも疲れただろう、見舞いなんて良いから部屋に戻れ」
「いいえ先輩。……私、カイリくんや先輩の何の役にも立たなかったんです。少しだけお世話させてください」
「うひょぉ……」
「うひょ?」
「ゲフン、なんでもない。持病みたいなものだ」
「先輩、頭を強く打たれてましたものね。何かあれば直ぐおっしゃってください」
……可愛い女の子に看病して貰える我が人生捨てたものではない。
カイリとモニカは俺が気を失ってモグリソンに回収されてからも、現場に残り教師や警備隊からの事情聴取に対応していたようだ。モニカは昨日のうちに解放されたらしいがカイリの方は男らを撃退した当人であり、保管庫を半壊にした事もあってより詳しい調査が本日も入っているようだ。まぁ、これは原作の通常ルートでもあった流れであるから直にカイリも解放されるだろう。
『るーく、せんぱい』
流れは違ったが、原作でもある通りヒロインのピンチにより力を覚醒させたカイリであるが、結果的に俺も助けてくれた。
カイリと会うことがあれば改めて礼を言うべきだろう。少しだけ、あのもはや狂気すら感じる無邪気光属性男の事を労ってやろうではないか。
「(しかし――)」
俺が媚薬で頭が回らず身体全体が火照っている中で、砂埃がはれて再び現れたカイリは俺を真っ直ぐ見ていた。
そこで、俺はしっかりと見ていた。
「(あいつ、勃起してたよなー……)」
カイリの中心部であるソコに不自然な膨らみがあったことを。
薬を嗅がされ眠らされていた中での起きてすぐだから、アレは朝立ちのうちに入るのだろうか。朝立ち状態で強力な魔法をぶっ放すカイリの絵は中々に面白い。……うん、面白い。
あの時、性的興奮状態で俺を呼び俺を見つめるカイリの姿を思い出して助けて貰ったというのに俺は少しだけ恐怖に似た何かの感情が芽生えた。
あのとき、教師やモグリソンが現れなければ、モニカがあの場にいなければカイリは何をしたのだろうか。俺に、何かをしたのだろうか。
「……んなわけないか。」
奴はエロゲーの主人公である。ヒロインがよりどりみどりで、悪役である俺にそういう興奮を覚えるわけがない。ただの偶然である。男ってたまにあるよね、ムスコの誤作動。俺も前世の高校生の時、授業中に突然立ち上がるムスコを何度沈めた事か。
後輩の朝立ち姿なんてとっとと忘れてやることにしよう。
「先輩、やはりなにか……?」
「あ、いやなんでもない」
「医者にもう少し見て頂きましょうか。頭とか」
「モニカ?それって言葉以上の意味ないよな?」
大人しく今は、心底心配そうに見つめる後輩女子の言葉の真意についてにでも悩んでおくことにしよう。
そうしよう。
-媚薬騒動編 終-
「か、いり」
「るーく、せんぱい」
先程まで眠らされていた影響でかカイリも完全に覚めてはいない、甘えるような声で俺の名前を呼び近づいてくる。
思考が巡らない中で俺を見つめるカイリの顔を見るが、今彼がどんな表情をしているのかも視界が上手く定まらずわからない。
「せんぱ――――」
「これはどういう事です!皆さん無事ですか?」
「ルーク様!!」
半壊となった保管庫の入り口だった場所から、魔法薬学の教師そしてモグリソンの姿が見えた。教師はまだしもモグリソンの奴、やはりこっそり俺の後をつけてきていたのか。
だが、この場に第三者の介入が出来るということは、無事今回のこのイベントは通常ルートへとカイリは選択できたらしい。魔力封じが施された部屋を破壊するこれだけの魔力を覚醒させたのだから。
「かいり、よかったな」
バッドエンド回避となった事を確信し、安心すると媚薬にもたらされている熱と緊張の糸が切れた事により俺は再び意識を手放した。
ゴロツキの男2人組はどうやら生きてはいるらしい。
てっきりカイリがやり過ぎて木っ端微塵に消したんだと思っていたが、保管庫外へと吹き飛んでいただけで後々警備隊に捕らえられ今後の取り調べにより処遇が決まって行くだろう。まぁ、モニカやカイリは兎も角貴族の俺に手を出したのだから厳しい処罰が下ることだろう。
俺はあれから、俺のストーカー兼忠犬のモグリソンに抱えられ医務室に運ばれ媚薬を抜く治療が施された。
医務員からは「アルバンベルトさん最近よく会いますね」と医務室を出る際に優しい笑顔を向けられたが、その笑顔には「仕事を増やすな」という意味も含んでいるように感じるのは物事の行間を読みすぎてしまう日本人だからであろうか。
「ルーク先輩、本当にご無事で良かったです」
そう話すのは、保管庫にて共に過ごしたヒロインの1人であるモニカである。
媚薬の効果を完全に抜く為、俺は昨日に続き医務室へ通い今もベッドにて寝て点滴を受けているところなのだが、モグリソンと入れ替わる形でモニカがお見舞いにとやってきてくれた。
気弱な印象である彼女だが、俺を気遣い鎮痛効果のある薬と菓子を差し入れに持って現れた。そしてなにより、俺が気を失ってからの話を律儀に俺に伝え教えてくれたのはこのモニカである。
「モニカも疲れただろう、見舞いなんて良いから部屋に戻れ」
「いいえ先輩。……私、カイリくんや先輩の何の役にも立たなかったんです。少しだけお世話させてください」
「うひょぉ……」
「うひょ?」
「ゲフン、なんでもない。持病みたいなものだ」
「先輩、頭を強く打たれてましたものね。何かあれば直ぐおっしゃってください」
……可愛い女の子に看病して貰える我が人生捨てたものではない。
カイリとモニカは俺が気を失ってモグリソンに回収されてからも、現場に残り教師や警備隊からの事情聴取に対応していたようだ。モニカは昨日のうちに解放されたらしいがカイリの方は男らを撃退した当人であり、保管庫を半壊にした事もあってより詳しい調査が本日も入っているようだ。まぁ、これは原作の通常ルートでもあった流れであるから直にカイリも解放されるだろう。
『るーく、せんぱい』
流れは違ったが、原作でもある通りヒロインのピンチにより力を覚醒させたカイリであるが、結果的に俺も助けてくれた。
カイリと会うことがあれば改めて礼を言うべきだろう。少しだけ、あのもはや狂気すら感じる無邪気光属性男の事を労ってやろうではないか。
「(しかし――)」
俺が媚薬で頭が回らず身体全体が火照っている中で、砂埃がはれて再び現れたカイリは俺を真っ直ぐ見ていた。
そこで、俺はしっかりと見ていた。
「(あいつ、勃起してたよなー……)」
カイリの中心部であるソコに不自然な膨らみがあったことを。
薬を嗅がされ眠らされていた中での起きてすぐだから、アレは朝立ちのうちに入るのだろうか。朝立ち状態で強力な魔法をぶっ放すカイリの絵は中々に面白い。……うん、面白い。
あの時、性的興奮状態で俺を呼び俺を見つめるカイリの姿を思い出して助けて貰ったというのに俺は少しだけ恐怖に似た何かの感情が芽生えた。
あのとき、教師やモグリソンが現れなければ、モニカがあの場にいなければカイリは何をしたのだろうか。俺に、何かをしたのだろうか。
「……んなわけないか。」
奴はエロゲーの主人公である。ヒロインがよりどりみどりで、悪役である俺にそういう興奮を覚えるわけがない。ただの偶然である。男ってたまにあるよね、ムスコの誤作動。俺も前世の高校生の時、授業中に突然立ち上がるムスコを何度沈めた事か。
後輩の朝立ち姿なんてとっとと忘れてやることにしよう。
「先輩、やはりなにか……?」
「あ、いやなんでもない」
「医者にもう少し見て頂きましょうか。頭とか」
「モニカ?それって言葉以上の意味ないよな?」
大人しく今は、心底心配そうに見つめる後輩女子の言葉の真意についてにでも悩んでおくことにしよう。
そうしよう。
-媚薬騒動編 終-
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