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設立編
--第5章:死にかけの貴族1
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ヴェルヴェットは歩いている。
セレスティア聖王国から逃げ出し、隣国メカストリアの首都に向かって既に2日が経過した。他にも逃げる国はあったが、最終的にメカストリアを選んだ。
ある程度近い国はいくつかある。
魔王国:
複数の大悪魔と魔王が支配し、彼らを信仰する悪魔しか住んでおらず、人間を屠殺対象としている。邪悪な存在として人間から忌み嫌われているが、なぜ人間を屠殺対象としているのかは謎だ。昔、捕らえた悪魔に問いただしても「上位の存在の命令に従っているだけだ」と言われ、目的は謎に包まれている。
帝国主義国家ドミナス帝国:
この国は軍事力で他国を支配し、支配した国を取り込み勢力を拡大してきた歴史がある。帝国主義的な政策を行っている。宗教には無関心で、力と権力が最も重要とされている。かなり好戦的で、軍事力は一番高いだろう。
異教徒国家ヴァルシル:
多神教や異教信仰が深く根付いている国。多数の宗教が入り乱れているため、紛争が絶えない。一番混沌としている国だ。
まず、魔王国は論外だ。行けば殺されるだろう。
異教徒国家ヴァルシルも選択肢から外れる。紛争が続くため傭兵稼業としては金を稼げるが、隣にいる人間が実は敵だった、という状況が多々起こる。命がいくつあっても足りない。
帝国主義国家ドミナス帝国は軍人国家だ。傭兵もいなくはないが、人員は間に合っているため賃金も安く、雑用ばかりをやらされると聞く。そんな割に合わないところは願い下げだ。
そして、科学技術信仰のメカストリア。この国は治安が比較的安定している。魔王国とも隣接し、聖王国ほどではないが侵攻を受けているため、傭兵稼業もそこそこ稼げる。
戦闘技術がどれほどすごいのかはわからないが、日常生活がとても便利だという話も聞いたことがある。また、メカストリアは信仰が薄いため、信仰が高い聖王国とは仲が悪い。馬車での通行も国境の手前の小さな街、アルバリスまでしか行けない。
そこから歩いてメカストリア領内の馬車が出る街まで行き、馬車を探すしかない。民の入国が禁止されているわけではないが、聖王国から来る者はかなり少ない。裏を返せば、追手もなかなか来られないということになる。
聖王国領内の最西端の街アルバリス行きの馬車に乗るときに聞いたが、アルバリスからメカストリア領内の最東端の街クロックリッジに行くためには、歩いて森を通過しなければならない。
道はあまり整備されておらず、山賊も出没するときがあるという。
「まったく、歩きにくいわね」
ヴェルヴェットはチッと舌打ちしながら歩いている。整備されていないが、そこそこ歩きやすい道はあるのだが、山賊が出るため目立つわけにはいかない。
たまに通る貿易の商人は傭兵を雇って森を通過するらしいが、そんな金はない。ある程度の山賊風情なら傭兵として経験した戦闘技術があるので相手にもならないだろうが、確信はない。山賊にも強いやつはいるし、聖王国の近くにいた山賊とは毛色が違う可能性もある。
ここは危険を冒して馬鹿正直に道の真ん中を歩くわけにはいかない。正規のルートが見えるくらいの距離で、歩きづらい道を進む。かさかさと葉っぱが体に当たり、小枝にひっかかって擦り傷が多くなってきた。
マリアの声がする。
—もっと体を大事にしないと。
「うるさい!」
吐き捨てるように言い、無視して森の中を進んでいく。
……なにか声が聞こえてくる。体を伏せ、目を細めて遠くを見つめる。剣と剣が交わる音が聞こえる。明らかに誰かが戦っている、しかも複数人だ。
考える。
今のうちに通り過ぎてしまおう。他にも山賊がいるのかはわからないが、こいつらが注意を引いているうちに安全に森を抜けられる可能性が高い。ニヤリと笑みを浮かべて、横脇をするすると通り抜けていく。
—本当に見過ごして良いのでしょうか? 目の前に苦しむ人がいるのに、助けを差し伸べないことが、本当にあなたの選ぶ道ですか?
何を言っているんだ? 自分の命が大事に決まっているじゃないか。そして次に大事なのは金だ。それ以外に価値なんてない。
チラリと襲われている人たちに目をやる。既に剣が交わる音は消えていた。そこには、おそらく命を奪われた騎士たちが10人ほどいたのだろうか。結構な数の騎士が息絶えていた。
基本的に騎士というのは甲冑に身を包み、防御力が高く、剣技も優れている。そこらの山賊には負けることはない。だが、おそらく誤算があったのだろう。それは数だ。山賊は50人ほどいたようだ。
なぜ「いたようだ」なのか。それは騎士たちが数を減らしたからだ。今立っている山賊は20人ほどだ。騎士10人で山賊30人を倒したようだ。騎士1人に対して山賊3人分の力があると単純に計算しかけるが、よく見ると騎士の何人かの甲冑には燃えた跡がある。おそらく油をかけられて火をつけられたのだろう。
山賊は手段を選ばない。まあ、傭兵もそうだが。矢が刺さった跡も、甲冑の隙間に見える。剣だけの勝負なら騎士が勝ったかもしれないが、そんなことを考える意味はない。要するに、騎士がそういう状況を想定しなかった間抜けということだ。
山賊の前に生き残っている人が2人だけいた。
1人は、ふんだんに薔薇の刺繍が施された純白のドレスを纏っている貴婦人だ。頭には、同じく薔薇の刺繍があしらわれた大きな白い帽子をかぶっている。
彼女の隣には、10歳ほどの少年が貴婦人に抱きついて、体をガタガタと震わせている。彼もまた、仕立ての良い上品な服に身を包んでいる。クリーム色のシャツには、細かく折り目のついた襟が整い、胸元には小さなリボンタイが結ばれている。上からは、淡いベージュのベストと同じ色合いの短めのコートを羽織り、足元には光沢のある革靴がきっちりと履かれている
たぶん慰み者にされた後に殺されるか、身代金を要求されるだろう。
かわいそうな人生だ。特に、子供が殺されるところは見たことがあるが、正直いってかなり胸糞悪い。
セレスティア聖王国から逃げ出し、隣国メカストリアの首都に向かって既に2日が経過した。他にも逃げる国はあったが、最終的にメカストリアを選んだ。
ある程度近い国はいくつかある。
魔王国:
複数の大悪魔と魔王が支配し、彼らを信仰する悪魔しか住んでおらず、人間を屠殺対象としている。邪悪な存在として人間から忌み嫌われているが、なぜ人間を屠殺対象としているのかは謎だ。昔、捕らえた悪魔に問いただしても「上位の存在の命令に従っているだけだ」と言われ、目的は謎に包まれている。
帝国主義国家ドミナス帝国:
この国は軍事力で他国を支配し、支配した国を取り込み勢力を拡大してきた歴史がある。帝国主義的な政策を行っている。宗教には無関心で、力と権力が最も重要とされている。かなり好戦的で、軍事力は一番高いだろう。
異教徒国家ヴァルシル:
多神教や異教信仰が深く根付いている国。多数の宗教が入り乱れているため、紛争が絶えない。一番混沌としている国だ。
まず、魔王国は論外だ。行けば殺されるだろう。
異教徒国家ヴァルシルも選択肢から外れる。紛争が続くため傭兵稼業としては金を稼げるが、隣にいる人間が実は敵だった、という状況が多々起こる。命がいくつあっても足りない。
帝国主義国家ドミナス帝国は軍人国家だ。傭兵もいなくはないが、人員は間に合っているため賃金も安く、雑用ばかりをやらされると聞く。そんな割に合わないところは願い下げだ。
そして、科学技術信仰のメカストリア。この国は治安が比較的安定している。魔王国とも隣接し、聖王国ほどではないが侵攻を受けているため、傭兵稼業もそこそこ稼げる。
戦闘技術がどれほどすごいのかはわからないが、日常生活がとても便利だという話も聞いたことがある。また、メカストリアは信仰が薄いため、信仰が高い聖王国とは仲が悪い。馬車での通行も国境の手前の小さな街、アルバリスまでしか行けない。
そこから歩いてメカストリア領内の馬車が出る街まで行き、馬車を探すしかない。民の入国が禁止されているわけではないが、聖王国から来る者はかなり少ない。裏を返せば、追手もなかなか来られないということになる。
聖王国領内の最西端の街アルバリス行きの馬車に乗るときに聞いたが、アルバリスからメカストリア領内の最東端の街クロックリッジに行くためには、歩いて森を通過しなければならない。
道はあまり整備されておらず、山賊も出没するときがあるという。
「まったく、歩きにくいわね」
ヴェルヴェットはチッと舌打ちしながら歩いている。整備されていないが、そこそこ歩きやすい道はあるのだが、山賊が出るため目立つわけにはいかない。
たまに通る貿易の商人は傭兵を雇って森を通過するらしいが、そんな金はない。ある程度の山賊風情なら傭兵として経験した戦闘技術があるので相手にもならないだろうが、確信はない。山賊にも強いやつはいるし、聖王国の近くにいた山賊とは毛色が違う可能性もある。
ここは危険を冒して馬鹿正直に道の真ん中を歩くわけにはいかない。正規のルートが見えるくらいの距離で、歩きづらい道を進む。かさかさと葉っぱが体に当たり、小枝にひっかかって擦り傷が多くなってきた。
マリアの声がする。
—もっと体を大事にしないと。
「うるさい!」
吐き捨てるように言い、無視して森の中を進んでいく。
……なにか声が聞こえてくる。体を伏せ、目を細めて遠くを見つめる。剣と剣が交わる音が聞こえる。明らかに誰かが戦っている、しかも複数人だ。
考える。
今のうちに通り過ぎてしまおう。他にも山賊がいるのかはわからないが、こいつらが注意を引いているうちに安全に森を抜けられる可能性が高い。ニヤリと笑みを浮かべて、横脇をするすると通り抜けていく。
—本当に見過ごして良いのでしょうか? 目の前に苦しむ人がいるのに、助けを差し伸べないことが、本当にあなたの選ぶ道ですか?
何を言っているんだ? 自分の命が大事に決まっているじゃないか。そして次に大事なのは金だ。それ以外に価値なんてない。
チラリと襲われている人たちに目をやる。既に剣が交わる音は消えていた。そこには、おそらく命を奪われた騎士たちが10人ほどいたのだろうか。結構な数の騎士が息絶えていた。
基本的に騎士というのは甲冑に身を包み、防御力が高く、剣技も優れている。そこらの山賊には負けることはない。だが、おそらく誤算があったのだろう。それは数だ。山賊は50人ほどいたようだ。
なぜ「いたようだ」なのか。それは騎士たちが数を減らしたからだ。今立っている山賊は20人ほどだ。騎士10人で山賊30人を倒したようだ。騎士1人に対して山賊3人分の力があると単純に計算しかけるが、よく見ると騎士の何人かの甲冑には燃えた跡がある。おそらく油をかけられて火をつけられたのだろう。
山賊は手段を選ばない。まあ、傭兵もそうだが。矢が刺さった跡も、甲冑の隙間に見える。剣だけの勝負なら騎士が勝ったかもしれないが、そんなことを考える意味はない。要するに、騎士がそういう状況を想定しなかった間抜けということだ。
山賊の前に生き残っている人が2人だけいた。
1人は、ふんだんに薔薇の刺繍が施された純白のドレスを纏っている貴婦人だ。頭には、同じく薔薇の刺繍があしらわれた大きな白い帽子をかぶっている。
彼女の隣には、10歳ほどの少年が貴婦人に抱きついて、体をガタガタと震わせている。彼もまた、仕立ての良い上品な服に身を包んでいる。クリーム色のシャツには、細かく折り目のついた襟が整い、胸元には小さなリボンタイが結ばれている。上からは、淡いベージュのベストと同じ色合いの短めのコートを羽織り、足元には光沢のある革靴がきっちりと履かれている
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