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設立編
—第9章:レオンの葛藤2
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「喜んでもらえてよかったよ。これは私の故郷の街の酒なんだ。いつも常備してるから、飲みたくなったら言ってくれ」
それを聞いたヴェルヴェットは嬉しそうに、「また次も頼むよ!」と楽しげに応える。
「ところで、聖王国の傭兵はみんなヴェルヴェットのように強いのか?」
これは探りではなく、騎士として純粋に興味が湧いてしまった。
「いや、あたしぐらいの腕はそこまではいない。アナスタシアから聞いているかもしれないけど、かなり小さいころから命懸けで剣術を磨いてきたからね。そこら辺のやつらとは覚悟も年季も違う」
「ただ、聖王国は長年悪魔の軍勢の侵攻を一番受けてきた国だから。他の国より段違いに実戦経験があるとは思うわ」
確かにレオンもその話は知っている。聖王国は長年悪魔の侵攻を受け、それをすべて跳ね除けてきた。騎士や傭兵の貢献が高いこともよく知っているが、最近は大悪魔の侵攻で大打撃を受けたとも聞いていた。
「そうか。聖王国の者たちはとても強いのだな。ただ、最近大悪魔の侵攻を受けたと聞いたが、それは大丈夫だったのか?」
ヴェルヴェットの体がピクリと動く。やはり、その話は本当のようだ。
するとヴェルヴェットは持っていたグラスの酒を飲み干して答えた。
「ええ、本当よ。かなりの悪魔たちと大悪魔が攻めてきてわ。
だけど、悪魔たちはばっさばっさと切り捨てて、大悪魔も地平線の彼方までぶっ飛ばしてやったよ」
ヴェルヴェットはニカリと笑って答える。
大悪魔をぶっ飛ばしたというのは冗談だろうが、悪魔たちを倒して致命的な事態にはならなかったのだろうと察した。
「だから、大切な国は守れたし傭兵仲間たちも守れたわ。逃げ遅れた親子もなんとか助けられたし、たまには感謝されるのも悪くないかなって。
傭兵してると感謝されるってことは少ないしね。賃金を払ってるから当然だ、っていうやつも多いし、あたしもそれに対して何も思わないけどさ」
レオンはそこでピタリと動きが止まり、焦点も定まらなくなる。
<<だから大切な国は守れたし>>
その言葉が延々と頭の中で繰り返されている。
大切な国を守れた。大切な…守れた。
自分はどうだ。大切な主君を守れたのか?いや、守れていない。主君を守ったのは今目の前にいるヴェルヴェットだ。
親衛騎士長ともあろう者が醜態、恥さらし、無能。あげくの果てには助けてくれた恩人のヴェルヴェットを疑っている始末だ。本来の目的を忘れ、今まで考えないようにしていた自分の不甲斐なさに吐き気さえ催してくる。
「ん、どうしたの?」
ヴェルヴェットが少し心配そうに覗き込んでくる。吐き気がする。頭がくらくらする。最悪な体調で、探るような知恵も回らず、思ったことをそのまま言ってしまう。
「私は主君を守れなかった。ヴェルヴェットがいなければ、おそらく主君は殺されていただろう。
私は騎士失格だ…あなたは傭兵でありながら多くの人を、国を守り抜いた。それなのに私は…」
自然とぼろぼろと涙が流れ、項垂れる。言葉に出すことで感情の抑制が効かなくなったかのように、まるで子供のように涙を流し、体を震わせる。ヴェルヴェットはそれを見てギョッとした。
「え…あんた、どうしたの…」
大の大人の男がぼろぼろと涙を流して泣くところなど見たことがない。理由もわからない。さっきレオンは何と言った?確か、「主君を守れなかった」だったか。
主君を守るなどそもそも一人でできるものではない。傭兵だってそうだ。護衛の任務でもそれぞれ役割が決まっていて、それでも失敗するときはある。自分の役割をしっかりと果たしていれば文句を言われる筋合いはない。絶対に守れるなどということはありえない。
しかし、このレオンの状態を見てそれを言うべきか、それとも別の言葉が必要か判断できない。呆然と見ていて口だけがパクパクと動くがなにを言えずにいた。
—ヴェルヴェットさん、少し変わってもらえますか?
マリアの声が聞こえる。
確かにこの状況はあまりにも気まずい。できることなら今すぐ帰りたい。あぁ、ここがあたしの部屋だった。
—心の中で私とバトンタッチする風景を思ってください。そうすれば体の所有権を交換できます。もちろん、話が終わればまたすぐに戻りますので。
少し迷ったが、レオンの姿があまりにも哀れに見えたので、心の中でマリアとタッチを交わす光景を想像する。すぅ、と意識が小さくなる感覚を覚える。
目を開くと先ほどと同じようにレオンを見ているのだが、声を出そうとしてもレオンには届いていない。まるで分厚いガラスを一枚隔てられているような感覚だ。入れ替わったマリアはレオンの両手を掴んで、ぎゅっと握って答えた。
「レオンさん、あなたの行いを恥じる必要はありません」
涙を流しながらレオンは頭を上げ、マリアをゆっくり見る。
「しかし、私はその場にいなかったのです。
他の任務に就いていたとはいえ、主君を危険に晒してしまったのです」
レオンはかぶりを振って否定する。
続け様にマリアは応える。
「あなたがいなかったのは、主君の命に従ってのこと。あなたが忠誠を尽くしていたからこそ、別の任務に赴いていたのです。神はあなたの努力を見ておられます。あなたが守るべきだったものは失われていない。主君はあなたの忠誠を知っておられるでしょう」
涙で潤んだレオンの瞳がマリアを凝視する。
「主君を守ることは、ただその場にいることだけが全てではありません。あなたの心が常に主君に捧げられている限り、神もまたあなたを見守ってくださるはずです」
レオンはその言葉に一層涙をこぼし、深い慈愛に満ちたものを感じる。
まるで女神に言われているかのように、その言葉がストンと胸に落ちていく。
「ありがとうございます、女神様…」
—女神様・・?こいつはなにをいってるんだ?
心の中でヴェルヴェットがレオンの言動に呆気に取られる。
レオンは今日までの疲れと緊張で体の力が抜けていく。
まるで天国にいるかのような感覚に包まれる…
倒れそうになるレオンを抱きしめ、マリアは続ける。
「あなたは誰よりも忠実です。
その忠誠があなたを導いてきたこと、そしてこれからも導くでしょう。
だから、自らを責める必要はありません。あなたの献身は、きっと主君に届いています」
安堵とも取れるような表情になり、そして…レオンは深い眠りについた。
それを聞いたヴェルヴェットは嬉しそうに、「また次も頼むよ!」と楽しげに応える。
「ところで、聖王国の傭兵はみんなヴェルヴェットのように強いのか?」
これは探りではなく、騎士として純粋に興味が湧いてしまった。
「いや、あたしぐらいの腕はそこまではいない。アナスタシアから聞いているかもしれないけど、かなり小さいころから命懸けで剣術を磨いてきたからね。そこら辺のやつらとは覚悟も年季も違う」
「ただ、聖王国は長年悪魔の軍勢の侵攻を一番受けてきた国だから。他の国より段違いに実戦経験があるとは思うわ」
確かにレオンもその話は知っている。聖王国は長年悪魔の侵攻を受け、それをすべて跳ね除けてきた。騎士や傭兵の貢献が高いこともよく知っているが、最近は大悪魔の侵攻で大打撃を受けたとも聞いていた。
「そうか。聖王国の者たちはとても強いのだな。ただ、最近大悪魔の侵攻を受けたと聞いたが、それは大丈夫だったのか?」
ヴェルヴェットの体がピクリと動く。やはり、その話は本当のようだ。
するとヴェルヴェットは持っていたグラスの酒を飲み干して答えた。
「ええ、本当よ。かなりの悪魔たちと大悪魔が攻めてきてわ。
だけど、悪魔たちはばっさばっさと切り捨てて、大悪魔も地平線の彼方までぶっ飛ばしてやったよ」
ヴェルヴェットはニカリと笑って答える。
大悪魔をぶっ飛ばしたというのは冗談だろうが、悪魔たちを倒して致命的な事態にはならなかったのだろうと察した。
「だから、大切な国は守れたし傭兵仲間たちも守れたわ。逃げ遅れた親子もなんとか助けられたし、たまには感謝されるのも悪くないかなって。
傭兵してると感謝されるってことは少ないしね。賃金を払ってるから当然だ、っていうやつも多いし、あたしもそれに対して何も思わないけどさ」
レオンはそこでピタリと動きが止まり、焦点も定まらなくなる。
<<だから大切な国は守れたし>>
その言葉が延々と頭の中で繰り返されている。
大切な国を守れた。大切な…守れた。
自分はどうだ。大切な主君を守れたのか?いや、守れていない。主君を守ったのは今目の前にいるヴェルヴェットだ。
親衛騎士長ともあろう者が醜態、恥さらし、無能。あげくの果てには助けてくれた恩人のヴェルヴェットを疑っている始末だ。本来の目的を忘れ、今まで考えないようにしていた自分の不甲斐なさに吐き気さえ催してくる。
「ん、どうしたの?」
ヴェルヴェットが少し心配そうに覗き込んでくる。吐き気がする。頭がくらくらする。最悪な体調で、探るような知恵も回らず、思ったことをそのまま言ってしまう。
「私は主君を守れなかった。ヴェルヴェットがいなければ、おそらく主君は殺されていただろう。
私は騎士失格だ…あなたは傭兵でありながら多くの人を、国を守り抜いた。それなのに私は…」
自然とぼろぼろと涙が流れ、項垂れる。言葉に出すことで感情の抑制が効かなくなったかのように、まるで子供のように涙を流し、体を震わせる。ヴェルヴェットはそれを見てギョッとした。
「え…あんた、どうしたの…」
大の大人の男がぼろぼろと涙を流して泣くところなど見たことがない。理由もわからない。さっきレオンは何と言った?確か、「主君を守れなかった」だったか。
主君を守るなどそもそも一人でできるものではない。傭兵だってそうだ。護衛の任務でもそれぞれ役割が決まっていて、それでも失敗するときはある。自分の役割をしっかりと果たしていれば文句を言われる筋合いはない。絶対に守れるなどということはありえない。
しかし、このレオンの状態を見てそれを言うべきか、それとも別の言葉が必要か判断できない。呆然と見ていて口だけがパクパクと動くがなにを言えずにいた。
—ヴェルヴェットさん、少し変わってもらえますか?
マリアの声が聞こえる。
確かにこの状況はあまりにも気まずい。できることなら今すぐ帰りたい。あぁ、ここがあたしの部屋だった。
—心の中で私とバトンタッチする風景を思ってください。そうすれば体の所有権を交換できます。もちろん、話が終わればまたすぐに戻りますので。
少し迷ったが、レオンの姿があまりにも哀れに見えたので、心の中でマリアとタッチを交わす光景を想像する。すぅ、と意識が小さくなる感覚を覚える。
目を開くと先ほどと同じようにレオンを見ているのだが、声を出そうとしてもレオンには届いていない。まるで分厚いガラスを一枚隔てられているような感覚だ。入れ替わったマリアはレオンの両手を掴んで、ぎゅっと握って答えた。
「レオンさん、あなたの行いを恥じる必要はありません」
涙を流しながらレオンは頭を上げ、マリアをゆっくり見る。
「しかし、私はその場にいなかったのです。
他の任務に就いていたとはいえ、主君を危険に晒してしまったのです」
レオンはかぶりを振って否定する。
続け様にマリアは応える。
「あなたがいなかったのは、主君の命に従ってのこと。あなたが忠誠を尽くしていたからこそ、別の任務に赴いていたのです。神はあなたの努力を見ておられます。あなたが守るべきだったものは失われていない。主君はあなたの忠誠を知っておられるでしょう」
涙で潤んだレオンの瞳がマリアを凝視する。
「主君を守ることは、ただその場にいることだけが全てではありません。あなたの心が常に主君に捧げられている限り、神もまたあなたを見守ってくださるはずです」
レオンはその言葉に一層涙をこぼし、深い慈愛に満ちたものを感じる。
まるで女神に言われているかのように、その言葉がストンと胸に落ちていく。
「ありがとうございます、女神様…」
—女神様・・?こいつはなにをいってるんだ?
心の中でヴェルヴェットがレオンの言動に呆気に取られる。
レオンは今日までの疲れと緊張で体の力が抜けていく。
まるで天国にいるかのような感覚に包まれる…
倒れそうになるレオンを抱きしめ、マリアは続ける。
「あなたは誰よりも忠実です。
その忠誠があなたを導いてきたこと、そしてこれからも導くでしょう。
だから、自らを責める必要はありません。あなたの献身は、きっと主君に届いています」
安堵とも取れるような表情になり、そして…レオンは深い眠りについた。
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