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設立編
—第9章:レオンの葛藤1
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騎士の宿舎にヴェルヴェットの部屋が作られた。
場所は宿舎に入って一番奥の部屋で、レオンの隣の部屋となる。
レオンはため息をついた。
何せ、この部屋決めをする際に猛烈に抗議されたからだ。
もともとこの宿舎は男しか住んでおらず、そこにあのような美人な女性が住むことになったのだ。
誰が隣に住むかで激論が交わされた。
「髪の色が近くて彼女が落ち着くだろうから自分の隣がいい」「大柄な男が隣では怖いから小柄な自分が隣に住むべき」「俺は数回彼女と話をしたから仲がいい」などと意見が飛び交った。
最終的に、一番奥のレオンの部屋の隣にすることで落ち着いた。いや、落ち着いたというより、ほぼ強制的にレオンが決めたのだ。
その時の隊員の顔は、「騎士長だからって何でも決めていいと思ってるのか?」「自分が寝込みを襲いに行く気じゃないだろうな」などと不満がありありだった。殺気じみた気配が漂っていた。
「さて、これからどうしたものか」
彼女の顔立ちや食事の席での会話から感じたものを素直に言えば、容姿端麗なお嬢様が庶民の暮らしをしたらこうなるだろうな、という印象だった。
とても人を殺すような人物には見えない。ましてや暗殺などという仕事をするだろうか?
結局、彼女も人を殺してはいるが、それは今回のように弱い人々を守るための行為だ。それは自分も時にそうすることがある。それを悪いと断ずる気にはなれなかった。
傭兵稼業についても同じだ。彼女は「胸糞悪い依頼は受けない」と言っていた。
となると、やはり彼女は白の可能性が高い。しかし、どうしても確信が持てずにいた。
頭の中が同じ思考でぐるぐるしているところに、さらに揉めた他の問題も思い出す。
騎士たちは規則正しい生活を送っている。食事の時間しかり、風呂の時間もだ。
ヴェルヴェットは騎士ではないので、朝起きて決まった時間に食事をするのを嫌がった。
職業柄や性格上、昼や夜もその時間に必ずいるとは限らない。決まった時間の食事体系が性に合わないのだろう。
ただ、それは別に取ってもらえばいいだけなので特に問題にはならない。
問題は風呂だ。
こればかりは「好きにしてくれ」とは言えない。
好きな時間に入っていいなどと言えば、つまりそれは混浴ということになる。
ヴェルヴェットが風呂に入ろうとするまで廊下で待機するような騎士が出てくるのは想像に難くない。
そこで、あらかじめ騎士たちの入浴時間を伝え、それ以外の時間に入るように伝えた。
残念そうな声を上げる兵士もいたが、当然だろう。そもそも本人の前で騎士ともあろう者が醜態をさらすとは何事か、と部下をぶん殴りたくなるのをぐっと堪えた。
こうして一区切りついたところで、なんとなく部屋を出た。
夜も更け、今日は基本的にやることはすべて終わったので、あとは自由な時間だ。
とはいえ、本当に好き勝手に動くつもりはなく、屋敷周りを散歩がてら巡回しようと思っていた。するとその時、ガチャッとした音とともにヴェルヴェットが廊下に出てきた。
先ほどのドレスとは違い、ネックレスもしていない。月明かりが窓辺から差し込み、彼女の姿を優しく照らしていた。彼女は静かに立ち、まるで白い幻のように柔らかなリネンのシュミーズがその身を包んでいる。シュミーズは薄手でありながら、その純白の布は彼女の肌に溶け込むかのように滑らかに流れ、肩から腰へと優美なラインを描いていた。サイズが少し合っていないのか、胸元が大胆に開いている。
レオンはドキッとして言葉を詰まらせた。少しの沈黙のあと、もともと抱いていた疑問を探れるいいチャンスだということに気づく。
「ヴェルヴェット、先ほどは食事の量が多くてあまり酒が飲めなかったのではないか?
部屋に上等な酒があるんだ。私個人としての礼も兼ねて、よかったら一緒にどうだ?」
酒を飲みつつ、警戒心を解いて何か失言がないか注意深く話を聞いてみよう。そうすれば胸の中にわだかまっていた疑念も解消されるかもしれない。
「お、いいわね。じゃあそっちの部屋に行って飲みましょ」
ヴェルヴェットの返答にぎょっとする。
あれだけ部下が言い争っていたのを半ば強制的に決定したばかりで、自分はその夜にその女性を部屋に連れ込むとは…!
まずい!どう考えてもまずい!こんなことがバレたら、部下たちからの信頼は地に落ち、下手をすれば食事に毒を盛られて暗殺されかねない。まさか、そこまではないだろうと思いつつも、先ほどの部下たちの問答時の殺気じみた目を思い出し身震いする。
「いや、待ってくれ!そちらに酒を持って行く。そちらの部屋で飲もう」
「そう?別にどっちでもいいけど、じゃあ待ってるから持ってきて」
そう言うと、ヴェルヴェットは自分の部屋に戻っていく。何を言ってるんだ自分は、何の解決にもなっていない…こんな夜更けに二人でいるところがばれる時点で問題だ。明らかに混乱している。
しかし、今日来たばかりのヴェルヴェットの部屋に、こんな夜遅い時間に訪れる者がいるだろうか?いや、来そうな気もする…。だが、自分が隣の部屋にいるから警戒してこない可能性のほうが高い。
とはいえ、すでに約束してしまったものは仕方がない。酒と簡単なつまみを持ってヴェルヴェットの扉をノックする。
「来たわね、こっちにどうぞ」
ヴェルヴェットは軽快にドアを開ける。中は自分たちの部屋と似たような造りだ。当然だ。昨日まで宿舎のただの空いている部屋だったのだから。部屋の真ん中にある無骨な木のテーブルに酒とつまみを置き、持ってきた二つのグラスに酒を注いでいく。
「乾杯」
「ああ、乾杯」
二人で酒を交わし、うまそうに飲む。
「この国の酒もおいしいわね。これがあればずっと住むってのも悪くないかもね」
本当においしそうに飲むヴェルヴェットの姿を見て、少し嬉しくなる。
誰でも、自分の国の酒や食事をうまいと喜んで飲み、食べてくれたら嬉しくなるものだ。
場所は宿舎に入って一番奥の部屋で、レオンの隣の部屋となる。
レオンはため息をついた。
何せ、この部屋決めをする際に猛烈に抗議されたからだ。
もともとこの宿舎は男しか住んでおらず、そこにあのような美人な女性が住むことになったのだ。
誰が隣に住むかで激論が交わされた。
「髪の色が近くて彼女が落ち着くだろうから自分の隣がいい」「大柄な男が隣では怖いから小柄な自分が隣に住むべき」「俺は数回彼女と話をしたから仲がいい」などと意見が飛び交った。
最終的に、一番奥のレオンの部屋の隣にすることで落ち着いた。いや、落ち着いたというより、ほぼ強制的にレオンが決めたのだ。
その時の隊員の顔は、「騎士長だからって何でも決めていいと思ってるのか?」「自分が寝込みを襲いに行く気じゃないだろうな」などと不満がありありだった。殺気じみた気配が漂っていた。
「さて、これからどうしたものか」
彼女の顔立ちや食事の席での会話から感じたものを素直に言えば、容姿端麗なお嬢様が庶民の暮らしをしたらこうなるだろうな、という印象だった。
とても人を殺すような人物には見えない。ましてや暗殺などという仕事をするだろうか?
結局、彼女も人を殺してはいるが、それは今回のように弱い人々を守るための行為だ。それは自分も時にそうすることがある。それを悪いと断ずる気にはなれなかった。
傭兵稼業についても同じだ。彼女は「胸糞悪い依頼は受けない」と言っていた。
となると、やはり彼女は白の可能性が高い。しかし、どうしても確信が持てずにいた。
頭の中が同じ思考でぐるぐるしているところに、さらに揉めた他の問題も思い出す。
騎士たちは規則正しい生活を送っている。食事の時間しかり、風呂の時間もだ。
ヴェルヴェットは騎士ではないので、朝起きて決まった時間に食事をするのを嫌がった。
職業柄や性格上、昼や夜もその時間に必ずいるとは限らない。決まった時間の食事体系が性に合わないのだろう。
ただ、それは別に取ってもらえばいいだけなので特に問題にはならない。
問題は風呂だ。
こればかりは「好きにしてくれ」とは言えない。
好きな時間に入っていいなどと言えば、つまりそれは混浴ということになる。
ヴェルヴェットが風呂に入ろうとするまで廊下で待機するような騎士が出てくるのは想像に難くない。
そこで、あらかじめ騎士たちの入浴時間を伝え、それ以外の時間に入るように伝えた。
残念そうな声を上げる兵士もいたが、当然だろう。そもそも本人の前で騎士ともあろう者が醜態をさらすとは何事か、と部下をぶん殴りたくなるのをぐっと堪えた。
こうして一区切りついたところで、なんとなく部屋を出た。
夜も更け、今日は基本的にやることはすべて終わったので、あとは自由な時間だ。
とはいえ、本当に好き勝手に動くつもりはなく、屋敷周りを散歩がてら巡回しようと思っていた。するとその時、ガチャッとした音とともにヴェルヴェットが廊下に出てきた。
先ほどのドレスとは違い、ネックレスもしていない。月明かりが窓辺から差し込み、彼女の姿を優しく照らしていた。彼女は静かに立ち、まるで白い幻のように柔らかなリネンのシュミーズがその身を包んでいる。シュミーズは薄手でありながら、その純白の布は彼女の肌に溶け込むかのように滑らかに流れ、肩から腰へと優美なラインを描いていた。サイズが少し合っていないのか、胸元が大胆に開いている。
レオンはドキッとして言葉を詰まらせた。少しの沈黙のあと、もともと抱いていた疑問を探れるいいチャンスだということに気づく。
「ヴェルヴェット、先ほどは食事の量が多くてあまり酒が飲めなかったのではないか?
部屋に上等な酒があるんだ。私個人としての礼も兼ねて、よかったら一緒にどうだ?」
酒を飲みつつ、警戒心を解いて何か失言がないか注意深く話を聞いてみよう。そうすれば胸の中にわだかまっていた疑念も解消されるかもしれない。
「お、いいわね。じゃあそっちの部屋に行って飲みましょ」
ヴェルヴェットの返答にぎょっとする。
あれだけ部下が言い争っていたのを半ば強制的に決定したばかりで、自分はその夜にその女性を部屋に連れ込むとは…!
まずい!どう考えてもまずい!こんなことがバレたら、部下たちからの信頼は地に落ち、下手をすれば食事に毒を盛られて暗殺されかねない。まさか、そこまではないだろうと思いつつも、先ほどの部下たちの問答時の殺気じみた目を思い出し身震いする。
「いや、待ってくれ!そちらに酒を持って行く。そちらの部屋で飲もう」
「そう?別にどっちでもいいけど、じゃあ待ってるから持ってきて」
そう言うと、ヴェルヴェットは自分の部屋に戻っていく。何を言ってるんだ自分は、何の解決にもなっていない…こんな夜更けに二人でいるところがばれる時点で問題だ。明らかに混乱している。
しかし、今日来たばかりのヴェルヴェットの部屋に、こんな夜遅い時間に訪れる者がいるだろうか?いや、来そうな気もする…。だが、自分が隣の部屋にいるから警戒してこない可能性のほうが高い。
とはいえ、すでに約束してしまったものは仕方がない。酒と簡単なつまみを持ってヴェルヴェットの扉をノックする。
「来たわね、こっちにどうぞ」
ヴェルヴェットは軽快にドアを開ける。中は自分たちの部屋と似たような造りだ。当然だ。昨日まで宿舎のただの空いている部屋だったのだから。部屋の真ん中にある無骨な木のテーブルに酒とつまみを置き、持ってきた二つのグラスに酒を注いでいく。
「乾杯」
「ああ、乾杯」
二人で酒を交わし、うまそうに飲む。
「この国の酒もおいしいわね。これがあればずっと住むってのも悪くないかもね」
本当においしそうに飲むヴェルヴェットの姿を見て、少し嬉しくなる。
誰でも、自分の国の酒や食事をうまいと喜んで飲み、食べてくれたら嬉しくなるものだ。
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