聖女は傭兵と融合して最強唯一の魔法剣士になって好き勝手に生きる

ブレイブ31

文字の大きさ
20 / 60
設立編

—第11章:機械技師リオ2

しおりを挟む
「もっと買ってもいいんだけど、これ以上欲しいものがないのよ。大量に買っても持って帰れないし」

それを聞いて店員はある提案をした。

「そんなに金が余ってるなら、機械オタクのリオのところに行って、何か買ってあげればいい」

「リオ?誰よそれ」

「ずーっと一人でこもってる機械オタクさ。わけのわからない機械をいつも発明しているんだけど、たまに使えそうな発明もするんだ。ただ値段が法外に高かったり、『特許が~』とかめんどくさいから、結局誰も相手にしてないんだよ」

「へ~」

正直そこまで機械に興味はないが、暇だし、話を聞く感じでは面白そうだ。少し覗いてみるか。

店員からリオという名の人物の家の場所を教えてもらい、歩いていく。

商店街から外れ、5分ほど坂を登ると、ぽつんと一つだけ建っている家を見つけた。

庭には機械なのかガラクタなのか、よくわからないものが散乱している。

「明らかにあの家ね」

店員から大まかな家の場所を聞き、「あとは見たまんまでわかる」と言われた。

機械に詳しくないのに「見たまんま」とは困ると言ったが、見たまんまでしかないとの返答だった。

その意味が今では完全に理解できた。明らかに他の家とは異様なのだ。庭もそうだが、窓からも何らかの機械が顔を覗かせている。

まさしく「機械の家」といった感じだ。

玄関までたどり着き、ノックする。

反応がない。耳を澄ますとかすかに寝息が聞こえてくる。

—おやすみ中のようですね。しょうがないので出直しましょう。

マリアが言い終わる前に、ヴェルヴェットはダンダンダンと大きな音でノックを始める。

—ちょっと、迷惑ですってやめましょうよ

焦ったマリアがヴェルヴェットを静止しようと声を上げるが、聞く耳を持たない。

さらにドアノブをガチャガチャと回し始め、鍵がかかっていないようなのでズカズカと家の中へと入っていく。

「鍵をかけてないってことは、入ってもいいってことでしょ?」

当然とばかりにヴェルヴェットが言う。聖王国でも民はみんなこうだったのかと、だんだんマリアは自信がなくなってくる。

廊下を進むと、小部屋がいくつもあるが、どの部屋も紙と機械のようなものが散乱している。

とても生活空間とは思えない。いや、汚すぎる。

傭兵稼業は汚いイメージがつきものだが、あたしは割と綺麗好きだ。物が少ないのもあるが、武器や防具の手入れは生死に直結するので怠らない。

野宿することもあるため料理も自然とできるようになり、家事も一通りこなせるので、自分の部屋は小綺麗に保っている。

ズカズカと入ってきたはいいが、見るに耐えない部屋の様子に少し後悔してきた。しかしここまで来たら、会ってしまおう。

一番奥まで行くと、他の部屋より幾分か広い部屋に出た。

この部屋も紙と機械が散乱しているが、中央に机が置かれている点と、端にベッドがある点が他の部屋と異なっていた。

ベッドには毛布がかぶさり、少し膨らみがある。

「ねぇ」

そう声をかけた瞬間、

「さっきからうるさいんだよ!」

怒鳴り声とともに片手が毛布から顔を出し、その手には片手で持つ機械が握られていた。

パンパンと音がし、その瞬間、機械から何か鉛のような球が発射される。

軽く体を捻って球を避ける。機械から発射された球はかなりのスピードだったが、戦場で四方八方から攻撃されるのとは違い、どこから来るかがわかっている攻撃などいくら速くても高が知れている。

ふっと鼻で笑った瞬間、大きなガシャーンという音が後ろから響いた。

「ああ!」

毛布にくるまっていた人物は、大声とともに飛び起き、大きな音を立てて倒れた機械に駆け寄る。

「うわああ!もうちょっとで完成だったシュピーゲル13世が…」

見ると、長方形の機械の中央に大きな鏡がつけられている機械だった。しかし、鏡のど真ん中に先ほどの球が命中し、プスプスという音と共に煙が出ている。

少し申し訳ない気持ちと同時に、思ったより威力があるんだな、と感じる。自分ではない誰かが食らったらどうなっていたか。

少し訝しげな顔で、その人物に声をかける。

「ねぇ、ちょっと話を聞きたいんだけど」

すると、こちらを振り向いてきた。

彼は明るいオレンジ色のショートヘアで、前髪が少し長めにしてあり、額にかかる部分がある。深い緑色の目をしていた。

ステッチが目立つ白いシャツの上に軽やかな青色のベストを着ている。ベストにはたくさんのポケットがあり、道具やガジェットが入っていた。

ズボンはシンプルなカーキ色のパンツで、動きやすそうだ。手首には機械の腕輪のようなものをつけており、かすかにカチカチと音が鳴っているようだった。

そして、その目には涙が浮かんでいた。

「弁償しろよ」

「は?」

「は?じゃないでしょ!あなたが壊したんだから弁償してよ!」

いや、壊したのは球を撃ってきた自分自身だろう。そう思いつつも、彼が怒り心頭の様子なので話ができそうにない。

「いくらなの?」

「3万ギア」

法外だ。先ほどのポーションはいくつかで30ギアだったので、明らかに法外な値段である。

先ほどの店員の言葉が頭をよぎる。「リオはたまに法外な値段を吹っかけてくる」と。

少し迷ったが、今の自分なら払えないこともない。所詮、自分が稼いだ金ではなく泡銭だ。しかし、金は金だ。

一度渡して話を聞き、もし良さそうな機械があれば、それもこの代金に含んでもらえばいい。

「ほら」

袋から金色の硬貨を1万ギアを3枚取り出す。

「え?」

リオの手を取ってそこに3枚の硬貨を手渡す。

「3万…本物だ…」

リオは窓に近づき、もらった硬貨を日光に当てながらキラキラと輝く硬貨をじっと見つめる。

「これで文句ないでしょ」

やれやれと思いつつ、もう文句を言わないように釘を刺す。

「え、あ、はぁ…」

まさか本当に3万ギアを払うとは思わなかったリオは心の中で驚く。

よく見ると、ヴェルヴェットはかなり上等な服を着ており、容姿も整っている。

そして、ポンと3万ギアを渡せるような人間。間違いなく貴族だ、と。

同時に訝しげな顔でヴェルヴェットを見る。

貴族が一体何の用なのか。街でもリオは「いつも変なものを作っている」と馬鹿にされている。機械を売り込みに行っても大抵は鼻であしらわれ、買ってもらえても小遣い程度の金額でしかない。

本来なら数万ギアしてもいいはずなのに、誰もその価値を理解しないのだ。

過去の思い出が頭をよぎり、いつもならこんなふうに思っていただろう。しかしチラリと手に持っている硬貨を眺めると、それが本物の1万ギア硬貨だと改めて確認した。

この貴族は偏見もなく純粋に自分の発明した機械を買いに来たのだろうか。

そう思った矢先、感動で少し涙が出そうになるのを両手でこすって拭き取った。

「あんた、かなり幼いわね。歳はいくつ?」

「12歳…です」

年齢を答えるとき、貴族に対して生意気な口を叩くと後が面倒になることがわかっているため、言葉を選んでいた。

それを聞いたヴェルヴェットは目を丸くして驚く。

たしかエミールが10歳だった。あれはあれでしっかりとしているが、このリオは見たところ一人で住み、自立して生計を立てているようだ。

あたしも小さいころからそうだったため、小さな子供が一人で生きていく大変さは身に染みて理解している。だから、リオが人一倍一生懸命に生きていることも自然とわかる。

さっき「部屋が汚くて帰ろうか」と思った自分がひどく情けなく感じた。

「あたしの名前はヴェルヴェット。あんたの名前は聞いている、リオでしょ」

「あ、はい。そうです」

「まずは掃除からね」

「え?」

腕まくりをして、強引に散乱した紙や機械をどけ、掃除を始める。

リオは勝手に物を動かされる嫌悪感以上に、貴族が自分の家の掃除を始めたことにひどく困惑していた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

追放された【才能鑑定】スキル持ちの俺、Sランクの原石たちをプロデュースして最強へ

黒崎隼人
ファンタジー
人事コンサルタントの相馬司が転生した異世界で得たのは、人の才能を見抜く【才能鑑定】スキル。しかし自身の戦闘能力はゼロ! 「魔力もない無能」と貴族主義の宮廷魔術師団から追放されてしまう。 だが、それは新たな伝説の始まりだった! 「俺は、ダイヤの原石を磨き上げるプロデューサーになる!」 前世の知識を武器に、司は酒場で燻る剣士、森に引きこもるエルフなど、才能を秘めた「ワケあり」な逸材たちを発掘。彼らの才能を的確に見抜き、最高の育成プランで最強パーティーへと育て上げる! 「あいつは本物だ!」「司さんについていけば間違いない!」 仲間からの絶対的な信頼を背に、司がプロデュースしたパーティーは瞬く間に成り上がっていく。 一方、司を追放した宮廷魔術師たちは才能の壁にぶつかり、没落の一途を辿っていた。そして王国を揺るがす戦乱の時、彼らは思い知ることになる。自分たちが切り捨てた男が、歴史に名を刻む本物の英雄だったということを! 無能と蔑まれた男が、知略と育成術で世界を変える! 爽快・育成ファンタジー、堂々開幕!

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

処理中です...