聖女は傭兵と融合して最強唯一の魔法剣士になって好き勝手に生きる

ブレイブ31

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設立編

—第19章:戦闘準備

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馬車が止まる。斥候から、前方にかなりの数の悪魔がいると報告があったのだ。ただ、様子を見たところ、悪魔たちは何か揉めているように見えるという。

馬車を囲んで作戦会議が始まる。斥候の報告を受けた後の選択肢として挙げられたのは、次の3つだった。

- 撤退
- 悪魔たちがいなくなるまで待つ
- 交戦

まず最初に検討されたのは「撤退」だ。この選択肢は、誰も犠牲を出さずに済むため、もっとも安全だ。安全を重視したい者たちからも多くの支持を集めた。

正直、あたしとしても賛成したい気持ちはあったが、ここで「撤退しよう」と声を上げるのは、後々に殲滅部隊のリーダーとして責任を取らされる事を危惧してしづらかった。

また、調査団の一部からは「もし敵が兵器などを所持している可能性がある場合、調査しないことは大きなリスクになる」という意見も上がった。メカストリアでは技術の発展が国全体の強みとされており、技術の脅威があるなら即座に把握しなければならない。それだけに、この意見も一定の説得力を持っていた。

次に検討されたのは「いなくなるまで待つ」という案だ。この案は、犠牲も出さず、敵が去るのを待つことで無駄な争いを避けつつ調査も可能になるため、一見してもっともメリットが高いように思える。しかし、この選択肢には重大な問題があった。

いつまで待てばいいのかがまったく分からないのだ。1時間で済むのか、1日なのか、それとも1週間か…。待機時間が長引けば、我々の持つ食料が尽きるリスクもあるし、敵が重要な物を持ち帰ってしまう可能性も否定できない。

また、待っている間に悪魔の数が増えてしまうという最悪のケースも考えられる。このため、「いなくなるまで待つ」は最も確実性に欠ける方法だった。

最後の案は「交戦」。これは極めてシンプルな作戦で、悪魔たちと一気に戦って殲滅し、その後に調査を行い、速やかに撤退するというものだ。幸い、こちらの人数は敵より多い。少数同士の混戦になれば、勝利の可能性は高いといえる。

斥候の報告通りに敵が揉めているのであれば、なおさらこちらが有利だ。さらに、近くに悪魔の援軍が来るとしても、ある程度の時間がかかるだろう。その間に調査を終わらせれば問題ない。血の気の多い傭兵たちも、この案には積極的に賛成している様子だった。

視線が集まる。殲滅部隊のリーダーである自分が判断を示す必要がある。傭兵や調査団たちの期待も感じつつ、交戦と決めた後に大きな声を出す。

「よ、よし、じゃあ行くぞ、おまえらー!」

少し大きめの声を出すと、傭兵や騎士、調査団たちが「うおおー!」と叫びながら意気揚々と山を駆け上がっていく。

「帰りたい…」

そう呟き、内心の動揺を隠しながらも、青ざめた顔で頂上を目指すことにした。

頂上付近まで来ると、皆慎重に足を運び始める。気づかれないように静かに進む中、まもなく斥候たちが確認した場所に到着した。ここでの最善の行動は、まずアモンの正確な位置を知ることだと考えた。身を低くし、少しずつ木の陰から覗き見る。

森の頂上に出ると、そこには地面が大きくえぐられたクレーターがあった。クレーターの下には大量の悪魔たちがいる。斥候が言っていたように、たしかに彼らは何か言い争っている様子だ。数匹のリーダーと思われる悪魔たちが円を描くようにして議論をしており、その周りを多くの悪魔が取り囲んでいる。

「いた、アモンだ…」

遠目で確認すると、アモンもその中にいることが分かった。だが、なにやら大声で叫んでいる。

「だからもういいじゃん!穴ありました!周り見て何もありませんでした!それでいいだろ!」

どうやらアモンは、他の悪魔たちと言い争っているというよりも、一方的にまくし立てているようだ。

「いや、それはぱっと見ただけだろ。地面の変化や何かの破片があるかもしれないし、命令されてきた以上、適当に済ませるわけにはいかないぞ」

「じゃあお前らが勝手に探せばいいだろ!俺様は疲れてるんだよ!下級悪魔の管理もして、人間たちとも戦って、名誉の負傷だってしてるんだ!」

アモンが足の傷を仲間の悪魔たちに見せている様子が見える。そう、あの傷はあたしに命乞いした際にふざけたせいで負ったものだった。

「いや、管理は俺たちも皆やっているだろ…足は確かに痛そうだが」

アモンの言い分に反論する悪魔もいるが、全体的に不毛なやり取りにしか見えない。このままアモンごと全員を片付けてしまいたくなるが…

—あ、ちょうどいい魔法がありますよ

マリアが上機嫌に囁いてきた。だが、冷静に却下する。

周囲の状況を改めて確認する。周りの部隊の仲間たちは緊張で手が震えていたり、息を荒くしている者もいる。隣にいた騎士が言う。

「ヴェルヴェット殿、悪魔たちはおそらく仲間割れをしています。中央にいるのは上級の悪魔のようですね。馬鹿なやつらです」

いや、中級悪魔です。仲間割れしてるのもアモン1匹だけだ…と内心でツッコむ。悪魔の内情を知らない者からすると、そう見えるのも仕方がないのだろう。

これ以上見ていても仕方がないことに気づく。あとは覚悟を決めるだけだ。幸い、アモンの位置は確認済みだし、今は仲間と争っている状況(実際にはアモンが一方的に怒っているだけだが)だ。こちらが突撃すれば、状況を察してうまく引いてくれるだろう。

戦闘を装って牽制しつつ、悪魔の軍勢を撤退させられれば、こちらの勝利だ。どちらが引くかの相談はできないが、アモンもあたしの力を知っているからおそらく引く選択をとるはずだ。撤退してもらえさえすれば、後は知らない森を理由に追撃しないように指示するだけで済む。完璧な作戦だ。

ふふっと不敵な笑みを浮かべ、殲滅部隊に突撃の命令を下す。
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