30 / 60
設立編
—第18章:大きな誤算
しおりを挟む
馬車がゴトゴトと揺れる中で、両手を頭の上で組み、枕にしてぼーっとしている。
先日の王との謁見を思い出す。
<<いえ、そうではなくてですね…たぶん私たちが大悪魔ヘルマルクを滅ぼした際の痕跡です>>
もともとインチキがバレたんじゃないかと思いながらだったが、自分たちのせいだと知り完全に固まってしまった。しかし、よくよく考えればバレるはずがない。あのことを知っているのはあたしたちだけであり、森の跡はとても人間の仕業には見えないからだ。
むしろこれは幸運だと思っていい。勝手に森を破壊しただけであり、正体もわからない者が何かの実験をしたとかではないのだ。
誰もいないはずだ。つまり、自分は寝ているだけでいい。悪魔退治でインチキして豪遊しながら、さらに恩賞さえがっぽりもらえるのだ。これは高運以外の何物でもない。鼻歌でも歌いながら馬車に揺られる。
「アモンのやつも出かけてるし、ちょうどいいわね。あいつは偉い奴にこき使われてるだろうけど」
アモンが必死に仕事をしている様子を想像し、笑いが込み上げてくる。一応アモンが先に帰ってくることを予想して置き手紙はしてある。もし他の者が偶然読んでしまっても問題ないように「しばらく出かける」くらいしか書いていない。
まぁ、なんとなくの居場所もわかるし、帰ってきそうなタイミングになったら気づくだろう。などと思っていると、歩いている傭兵から声がかかる。
「お頭、調査団のやつらの話ですと、あと1時間ほどで着くらしいですぜ」
「そう、ご苦労様」
そう言って手をひらひらとさせて答える。今に至るまでやったことといえば、このくらいだ。最初こそ編成について指示されたが、「バランスよく散らばれ」と言っただけで、あとは馬車に寝転がって、たまに来る連絡をこうして聞くだけだ。
人間、やる気がなくなるととことんやらないものだなと思いながら、惰性を貪る。
先ほど仕事関係でアモンのことを思い出し、意識を集中させてみる。思った以上に近い位置にいるようだ。
「結構距離はあるけど、思ったより近くにいるわね。まぁ、こちらは魔王国に近づいてるんだし、そうなるか」
特に気にもせず、だらだらと馬車の中で過ごす。
さらに30分ほどが過ぎ、跡地の近くまできて、ある感覚を覚える。アモンがさらに近くにきているようで、しかも向かっている方向が同じだ。
まさかな。たまたま進む方角にいるだけで、近いといってもこれだけ広大な森だ。そんな偶然があるわけがない。しかし、次第にその確信が高まっていく。
「もしかして、同じところ向かってるるのでは?」
手に汗が滲んできた。こちらは大所帯だ。もしアモンが見つかったら間違いなく捕まって殺されるだろう。先に走って向かって「逃げろ」と言うべきだろうか?いや、散々サボって何もしてこなかったのに、いきなりそんな行動を取るのはあまりにも不自然すぎる。
何かの拍子で契約がバレるかもしれない。そもそもアモンは単独なのか?いや、「偉いやつの命令で調査」とかなんとか言っていた気がする。そんな何日もかかるようなことを一人にやらせるだろうか?
不用意に向かっていけば、不意打ちを食らうかもしれない。上位の悪魔がいた場合、命の危険がある。その可能性がある以上、アモンが危険だからといって無闇に突撃するわけにはいかない。
「アモンもあたしが来ていることに気づいているはずだ」
それにかけるしかない。つまり、お互いに空気を読もう、ということだ。
手を組んで初めて神に祈りを捧げた。
「どうかアモンとあたしを救ってください」
—いや、神に悪魔の無事を祈らないでください…
祈りを捧げつつも、非情にもその時は近づいていった。
先日の王との謁見を思い出す。
<<いえ、そうではなくてですね…たぶん私たちが大悪魔ヘルマルクを滅ぼした際の痕跡です>>
もともとインチキがバレたんじゃないかと思いながらだったが、自分たちのせいだと知り完全に固まってしまった。しかし、よくよく考えればバレるはずがない。あのことを知っているのはあたしたちだけであり、森の跡はとても人間の仕業には見えないからだ。
むしろこれは幸運だと思っていい。勝手に森を破壊しただけであり、正体もわからない者が何かの実験をしたとかではないのだ。
誰もいないはずだ。つまり、自分は寝ているだけでいい。悪魔退治でインチキして豪遊しながら、さらに恩賞さえがっぽりもらえるのだ。これは高運以外の何物でもない。鼻歌でも歌いながら馬車に揺られる。
「アモンのやつも出かけてるし、ちょうどいいわね。あいつは偉い奴にこき使われてるだろうけど」
アモンが必死に仕事をしている様子を想像し、笑いが込み上げてくる。一応アモンが先に帰ってくることを予想して置き手紙はしてある。もし他の者が偶然読んでしまっても問題ないように「しばらく出かける」くらいしか書いていない。
まぁ、なんとなくの居場所もわかるし、帰ってきそうなタイミングになったら気づくだろう。などと思っていると、歩いている傭兵から声がかかる。
「お頭、調査団のやつらの話ですと、あと1時間ほどで着くらしいですぜ」
「そう、ご苦労様」
そう言って手をひらひらとさせて答える。今に至るまでやったことといえば、このくらいだ。最初こそ編成について指示されたが、「バランスよく散らばれ」と言っただけで、あとは馬車に寝転がって、たまに来る連絡をこうして聞くだけだ。
人間、やる気がなくなるととことんやらないものだなと思いながら、惰性を貪る。
先ほど仕事関係でアモンのことを思い出し、意識を集中させてみる。思った以上に近い位置にいるようだ。
「結構距離はあるけど、思ったより近くにいるわね。まぁ、こちらは魔王国に近づいてるんだし、そうなるか」
特に気にもせず、だらだらと馬車の中で過ごす。
さらに30分ほどが過ぎ、跡地の近くまできて、ある感覚を覚える。アモンがさらに近くにきているようで、しかも向かっている方向が同じだ。
まさかな。たまたま進む方角にいるだけで、近いといってもこれだけ広大な森だ。そんな偶然があるわけがない。しかし、次第にその確信が高まっていく。
「もしかして、同じところ向かってるるのでは?」
手に汗が滲んできた。こちらは大所帯だ。もしアモンが見つかったら間違いなく捕まって殺されるだろう。先に走って向かって「逃げろ」と言うべきだろうか?いや、散々サボって何もしてこなかったのに、いきなりそんな行動を取るのはあまりにも不自然すぎる。
何かの拍子で契約がバレるかもしれない。そもそもアモンは単独なのか?いや、「偉いやつの命令で調査」とかなんとか言っていた気がする。そんな何日もかかるようなことを一人にやらせるだろうか?
不用意に向かっていけば、不意打ちを食らうかもしれない。上位の悪魔がいた場合、命の危険がある。その可能性がある以上、アモンが危険だからといって無闇に突撃するわけにはいかない。
「アモンもあたしが来ていることに気づいているはずだ」
それにかけるしかない。つまり、お互いに空気を読もう、ということだ。
手を組んで初めて神に祈りを捧げた。
「どうかアモンとあたしを救ってください」
—いや、神に悪魔の無事を祈らないでください…
祈りを捧げつつも、非情にもその時は近づいていった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
追放された【才能鑑定】スキル持ちの俺、Sランクの原石たちをプロデュースして最強へ
黒崎隼人
ファンタジー
人事コンサルタントの相馬司が転生した異世界で得たのは、人の才能を見抜く【才能鑑定】スキル。しかし自身の戦闘能力はゼロ!
「魔力もない無能」と貴族主義の宮廷魔術師団から追放されてしまう。
だが、それは新たな伝説の始まりだった!
「俺は、ダイヤの原石を磨き上げるプロデューサーになる!」
前世の知識を武器に、司は酒場で燻る剣士、森に引きこもるエルフなど、才能を秘めた「ワケあり」な逸材たちを発掘。彼らの才能を的確に見抜き、最高の育成プランで最強パーティーへと育て上げる!
「あいつは本物だ!」「司さんについていけば間違いない!」
仲間からの絶対的な信頼を背に、司がプロデュースしたパーティーは瞬く間に成り上がっていく。
一方、司を追放した宮廷魔術師たちは才能の壁にぶつかり、没落の一途を辿っていた。そして王国を揺るがす戦乱の時、彼らは思い知ることになる。自分たちが切り捨てた男が、歴史に名を刻む本物の英雄だったということを!
無能と蔑まれた男が、知略と育成術で世界を変える! 爽快・育成ファンタジー、堂々開幕!
冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる
みおな
恋愛
聖女。
女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。
本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。
愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。
記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
だから聖女はいなくなった
澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」
レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。
彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。
だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。
キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。
※7万字程度の中編です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる