聖女は傭兵と融合して最強唯一の魔法剣士になって好き勝手に生きる

ブレイブ31

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設立編

—第18章:大きな誤算

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馬車がゴトゴトと揺れる中で、両手を頭の上で組み、枕にしてぼーっとしている。

先日の王との謁見を思い出す。

<<いえ、そうではなくてですね…たぶん私たちが大悪魔ヘルマルクを滅ぼした際の痕跡です>>

もともとインチキがバレたんじゃないかと思いながらだったが、自分たちのせいだと知り完全に固まってしまった。しかし、よくよく考えればバレるはずがない。あのことを知っているのはあたしたちだけであり、森の跡はとても人間の仕業には見えないからだ。

むしろこれは幸運だと思っていい。勝手に森を破壊しただけであり、正体もわからない者が何かの実験をしたとかではないのだ。

誰もいないはずだ。つまり、自分は寝ているだけでいい。悪魔退治でインチキして豪遊しながら、さらに恩賞さえがっぽりもらえるのだ。これは高運以外の何物でもない。鼻歌でも歌いながら馬車に揺られる。

「アモンのやつも出かけてるし、ちょうどいいわね。あいつは偉い奴にこき使われてるだろうけど」

アモンが必死に仕事をしている様子を想像し、笑いが込み上げてくる。一応アモンが先に帰ってくることを予想して置き手紙はしてある。もし他の者が偶然読んでしまっても問題ないように「しばらく出かける」くらいしか書いていない。

まぁ、なんとなくの居場所もわかるし、帰ってきそうなタイミングになったら気づくだろう。などと思っていると、歩いている傭兵から声がかかる。

「お頭、調査団のやつらの話ですと、あと1時間ほどで着くらしいですぜ」

「そう、ご苦労様」

そう言って手をひらひらとさせて答える。今に至るまでやったことといえば、このくらいだ。最初こそ編成について指示されたが、「バランスよく散らばれ」と言っただけで、あとは馬車に寝転がって、たまに来る連絡をこうして聞くだけだ。

人間、やる気がなくなるととことんやらないものだなと思いながら、惰性を貪る。

先ほど仕事関係でアモンのことを思い出し、意識を集中させてみる。思った以上に近い位置にいるようだ。

「結構距離はあるけど、思ったより近くにいるわね。まぁ、こちらは魔王国に近づいてるんだし、そうなるか」

特に気にもせず、だらだらと馬車の中で過ごす。

さらに30分ほどが過ぎ、跡地の近くまできて、ある感覚を覚える。アモンがさらに近くにきているようで、しかも向かっている方向が同じだ。

まさかな。たまたま進む方角にいるだけで、近いといってもこれだけ広大な森だ。そんな偶然があるわけがない。しかし、次第にその確信が高まっていく。

「もしかして、同じところ向かってるるのでは?」

手に汗が滲んできた。こちらは大所帯だ。もしアモンが見つかったら間違いなく捕まって殺されるだろう。先に走って向かって「逃げろ」と言うべきだろうか?いや、散々サボって何もしてこなかったのに、いきなりそんな行動を取るのはあまりにも不自然すぎる。

何かの拍子で契約がバレるかもしれない。そもそもアモンは単独なのか?いや、「偉いやつの命令で調査」とかなんとか言っていた気がする。そんな何日もかかるようなことを一人にやらせるだろうか?

不用意に向かっていけば、不意打ちを食らうかもしれない。上位の悪魔がいた場合、命の危険がある。その可能性がある以上、アモンが危険だからといって無闇に突撃するわけにはいかない。

「アモンもあたしが来ていることに気づいているはずだ」

それにかけるしかない。つまり、お互いに空気を読もう、ということだ。

手を組んで初めて神に祈りを捧げた。

「どうかアモンとあたしを救ってください」

—いや、神に悪魔の無事を祈らないでください…

祈りを捧げつつも、非情にもその時は近づいていった。
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