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設立編
—第25章:レオンの激情
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夜も更けた頃、宿舎の前の修練場で、一人修練を続ける男の姿があった。
レオンだ。彼はこの時間になっても休憩もせず、剣を振り続けている。
「ハッ! ハッ!」
気合いの入った声と共に剣が振り下ろされる。まっすぐで迷いのない剣だ。その姿は一心不乱に剣の稽古をしている男そのものといった印象だが、レオンの頭の中は違った。
あの夜、ヴェルヴェット(マリアだったが)に慈しみの心で語りかけられたことを何度も思い出している。その度に心に熱いものがこみ上げ、さらに翌朝の彼女の寝起きの笑顔までも思い出す。
以来、ヴェルヴェットに会う度に冷静でいられなくなった自分がいる。彼女の近くにいるだけで心臓が早鐘のように鳴り始め、稽古に集中できない。いつまでこの状態が続くのかと、考えながらも剣を振り続けていると、正門横の小さな門がキイと音を立てて開いた。
そこにはヴェルヴェットがいた。どうやら宿舎に帰ってきたらしい。最近、彼女はよく出かけては遅くに帰ってくる――断じて、毎回見張っているわけではなく、あくまで偶然、そう、偶然気づいているだけだ。
ヴェルヴェットに挨拶をしようと、稽古を止めて彼女に近づく。しかし、途中で足がピタリと止まった。
「ヴェ、ヴェルヴェット…そいつは」
震える指でその男を指差す。
「ああ、こいつは私のパーティの新しい仲間だ。よろしく頼む」
静寂が流れる。誰も口を開かない静かな沈黙だ。しかし、この静寂も束の間、夜の静寂を破るように、レオンの怒声が響いた。
「な、なにを言っているんだ! そんなのダメに決まってるだろう!」
「いや、ダメって言われても…もう登録してきちゃったし。それに、なんであんたにそんなこと言われなきゃいけないんだ?」
ヴェルヴェットは呆れた口調で言い返すが、確かにごもっともだ。だが、理屈ではない。理論など一切関係ない、断じて許せないのだ。
「お前、俺と勝負しろ! 俺に負けるような男なら、必要ないだろう!」
もう滅茶苦茶だ。自分でも何を言っているのか分からないが、とにかく怒っていることだけは確かだ。
「いや、勝負って…夜も遅いし、しかもそいつ今武器を持ってないけど」
ヴェルヴェットは呆れたように言う。
「ぐぬ…なら宿舎から剣を持ってくる! ちょっと待ってろ!」
レオンは踵を返して宿舎に戻ろうとする。
「ああ、そうだ。名前はアモンって言うんだけど、家がないからこいつも宿舎に住まわせてほしい」
その言葉にピタリと足を止め、アモンと呼ばれた男に向き直り、ズンズンと歩み寄ると、唐突に胸ぐらを掴んで持ち上げる。
「貴様ぁ!ヴェルヴェットのパーティに勝手に入っておいて、言うに事欠いてヴェルヴェットの部屋に住まわせてくれだと!よくもそんな口が聞けたなぁ!」
「いや、それ言ったのはあたしだし…しかも同じ部屋じゃなくて別だ」
胸ぐらを掴まれても動じないアモンもアモンだが、こんな筋肉質で重そうなアモンを軽々と持ち上げているレオンもレオンだ。ヴェルヴェットは「筋肉馬鹿ばっかりだな」と呆れたように思った。
「お前、さっきから黙って聞いていれば好き勝手に怒鳴り散らしやがって、うるさいんだよ」
アモンはレオンの両手を無理やり引き剥がすと、勢いよくレオンを殴りつける。その行動に火がつき、レオンも力いっぱいアモンを殴り返した。
何事かと他の騎士たちが外に出てきて、二人の様子を伺う。
「なにやってんだ…男は何か気に食わないことがあるとすぐこれね」
—神の愛は、時に痛みを伴うもの。しかし、その痛みは成長の証でもあります。
マリアの謎めいた言葉を無視し、理解不能な二人の殴り合いも意に介さず、ヴェルヴェットはテクノバーグの屋敷へと歩いていった。
レオンだ。彼はこの時間になっても休憩もせず、剣を振り続けている。
「ハッ! ハッ!」
気合いの入った声と共に剣が振り下ろされる。まっすぐで迷いのない剣だ。その姿は一心不乱に剣の稽古をしている男そのものといった印象だが、レオンの頭の中は違った。
あの夜、ヴェルヴェット(マリアだったが)に慈しみの心で語りかけられたことを何度も思い出している。その度に心に熱いものがこみ上げ、さらに翌朝の彼女の寝起きの笑顔までも思い出す。
以来、ヴェルヴェットに会う度に冷静でいられなくなった自分がいる。彼女の近くにいるだけで心臓が早鐘のように鳴り始め、稽古に集中できない。いつまでこの状態が続くのかと、考えながらも剣を振り続けていると、正門横の小さな門がキイと音を立てて開いた。
そこにはヴェルヴェットがいた。どうやら宿舎に帰ってきたらしい。最近、彼女はよく出かけては遅くに帰ってくる――断じて、毎回見張っているわけではなく、あくまで偶然、そう、偶然気づいているだけだ。
ヴェルヴェットに挨拶をしようと、稽古を止めて彼女に近づく。しかし、途中で足がピタリと止まった。
「ヴェ、ヴェルヴェット…そいつは」
震える指でその男を指差す。
「ああ、こいつは私のパーティの新しい仲間だ。よろしく頼む」
静寂が流れる。誰も口を開かない静かな沈黙だ。しかし、この静寂も束の間、夜の静寂を破るように、レオンの怒声が響いた。
「な、なにを言っているんだ! そんなのダメに決まってるだろう!」
「いや、ダメって言われても…もう登録してきちゃったし。それに、なんであんたにそんなこと言われなきゃいけないんだ?」
ヴェルヴェットは呆れた口調で言い返すが、確かにごもっともだ。だが、理屈ではない。理論など一切関係ない、断じて許せないのだ。
「お前、俺と勝負しろ! 俺に負けるような男なら、必要ないだろう!」
もう滅茶苦茶だ。自分でも何を言っているのか分からないが、とにかく怒っていることだけは確かだ。
「いや、勝負って…夜も遅いし、しかもそいつ今武器を持ってないけど」
ヴェルヴェットは呆れたように言う。
「ぐぬ…なら宿舎から剣を持ってくる! ちょっと待ってろ!」
レオンは踵を返して宿舎に戻ろうとする。
「ああ、そうだ。名前はアモンって言うんだけど、家がないからこいつも宿舎に住まわせてほしい」
その言葉にピタリと足を止め、アモンと呼ばれた男に向き直り、ズンズンと歩み寄ると、唐突に胸ぐらを掴んで持ち上げる。
「貴様ぁ!ヴェルヴェットのパーティに勝手に入っておいて、言うに事欠いてヴェルヴェットの部屋に住まわせてくれだと!よくもそんな口が聞けたなぁ!」
「いや、それ言ったのはあたしだし…しかも同じ部屋じゃなくて別だ」
胸ぐらを掴まれても動じないアモンもアモンだが、こんな筋肉質で重そうなアモンを軽々と持ち上げているレオンもレオンだ。ヴェルヴェットは「筋肉馬鹿ばっかりだな」と呆れたように思った。
「お前、さっきから黙って聞いていれば好き勝手に怒鳴り散らしやがって、うるさいんだよ」
アモンはレオンの両手を無理やり引き剥がすと、勢いよくレオンを殴りつける。その行動に火がつき、レオンも力いっぱいアモンを殴り返した。
何事かと他の騎士たちが外に出てきて、二人の様子を伺う。
「なにやってんだ…男は何か気に食わないことがあるとすぐこれね」
—神の愛は、時に痛みを伴うもの。しかし、その痛みは成長の証でもあります。
マリアの謎めいた言葉を無視し、理解不能な二人の殴り合いも意に介さず、ヴェルヴェットはテクノバーグの屋敷へと歩いていった。
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