聖女は傭兵と融合して最強唯一の魔法剣士になって好き勝手に生きる

ブレイブ31

文字の大きさ
48 / 60
設立編

—第35章:ヴェルヴェットの閃き

しおりを挟む
舗装された面は光を反射し、彼らの前方へとまっすぐに延びていた。道の両側には、背の高い草が風に揺れ、時折小鳥たちが空を舞う姿が見られた。

しかし、魔王国の領内に近づくにつれ、道は徐々に荒れ始めた。舗装が途切れ、瓦礫や小石が目立つようになり、まるで彼らの前に立ちふさがるかのように険しい表情を見せていた。

しかしアモンがハンドルを握りしめ爆走する。揺れる車内では、心の中に不安を感じる元騎士が一人。

しかしそれをよそに、酒を飲んでいる女が一人、ヴェルヴェットだった。特にやることもないので、朝から晩までギアカーの席に横になってグータラ寝ては酒を飲むのを繰り返していた。

誰かが注意をするのかと思いきや、アモンも片手に酒を持ち、飲みながら運転をしていた。

そしてたまにいる小悪魔のような小さな悪魔をゲラゲラ笑いながらひき逃げしていく。

「ちょっとアモン、轢く時はちゃんと言ってよね、振動でお酒がこぼれるでしょ!」

「いや、まず酒飲みながら運転するのを注意しないか?」

一人だけ正常な判断をするレオン。しかしここは魔王軍の領地内だ。正常な判断をしたからといって生き延びられる確率が高くなるというのか、そういう意味では何かがいたら危ないので止まるべきとなるだろう。

しかしだ、ここで何かいたから止まるというのは非常に危険な行為なのだ。止まった瞬間に目の前に悪魔がいた場合、その瞬間にいきなり襲われる。だから轢き殺すのが正解なのだ。

「ねぇ、アモン、そろそろお酒が切れるんだけど、ちょっとそこらへんのお店で調達できないの?」

「いや、無茶言うなよ。そこらへんに酒を売ってる店なんてねーよ。というか店自体ないからな。あっても、のんびり人間が買い物してたら速攻殺されるぞ。だからこっちから強盗するしか。ってそうじゃない。まぁ、とにかく諦めろ」

「ヴェルヴェット、自分がどこに向かってるのかわかってるのか?魔王国だぞ?酒も飲んでるし危険だ、いったんここはマリアに変わった方が…」

「マリアに変わっても酔ったままよ、体1つなんだし。というか、こんな状態で変わったらマリアはお酒の耐性がないから吐くんじゃない?」

「な…やめろ!絶対にマリアに変わるなよ、わかったな!」

レオンが異常に焦る。それはそうだ。好きな女性のそのような姿なんて誰も見たくないだろう。

「じゃあ、地図を見てあとどのくらいか確認して」

レオンに残りの距離を計算させる。

「もうだいぶ進んだな、かなり近いはずだ。このままだとおそらくあと3時間ほどで到着するはずだ」

「お、もうちょっとね。じゃあそれまで寝てるから、着いたら起こしてね」

そう言いつつ目を閉じて気持ちのいい夢の中に入っていく。

「着いてもしばらく起こすなよ、こいつ絶対俺様が休憩してねーことわかってねーから」

アモンが悪態をつきながら運転を続ける。

しばらくして、大悪魔ベルフェゴールが住むと言われている家に到着する。

レオンはアモンの言う通り、しばらくヴェルヴェットを起こさなかった。アモンのことは好きではないが、長時間運転をしてくれていたのだ、これで休憩なしというのはさすがに忍びない。

レオンが目の前の家を見て呟く。

「でかいにはでかいが…思ったより普通の家だな。もっと屋敷的なもかとおもっていた」

家の周りを気づかれないように隠れながら一周回って観察する。

大悪魔ベルフェゴールの家は、その外観からして異彩を放っていた。普通の人間の家とは一線を画し、ゆったりとしたサイズ感で、周囲の風景に圧倒的な存在感を与えている。暗い石で造られた壁は、冷たく無機質な印象を与え、見る者に恐れを抱かせる。

家の入り口は特に目を引いた。重厚な木製の扉は、まるでベルフェゴールの身長に合わせるかのように、2.5メートルほどの高さがあった。重々しい装飾が施され、まるで彼の怠惰な性格を象徴するかのように、ゆったりとした威圧感を醸し出している。扉の隙間からは、薄暗い内部がうっすらと見え隠れしている。

「ベルフェゴールには部下がいない。いても指示しないで寝てるだけだしな。いても意味がない。

だから今も部屋の中のベッドにでも寝っころがってるだろうさ」

「ん…ああ、もう着いたの?」

寝っ転がっていたまだ眠そうなヴェルヴェットが眠たい目をこすりながら背伸びと欠伸をして起きてくる。

「やっと起きたか。今、ベルフェゴールの家を一周して観察してきたんだが、全く悪魔の気配がない。アモンの話だと部下を誰もつけていないようだが、どうやら本当らしい」

そう言い、レオンが家の一室を指さす。

「そこの窓からベッドと何かの足のようなものが見えた。おそらくベルフェゴールだろう、どうする?」

「寝込みを襲う」

「え?」

「え?」

アモンとレオンが二人同時に声を上げる。どうやら予想外だったようだ。

「何をそんなに驚いてるの。別に殺すつもりはないわよ。ただその攻撃で抵抗できないくらい痛めつけるってだけよ」

—ヴェルヴェットは有情ですね、とても慈愛溢れる行動だと思います

だんだんと慈愛の境界線がわからなくなってきた。すると、そこへアモンが言ってくる。

「会話もせずいきなり攻撃しかけるってか、悪魔みてーなやつだな」

「あたしたちが手に余る相手だったらどうするのよ。逃げたとして本当に逃げられるの?わからないでしょ、だから寝込みを襲うのよ」

それを聞いて「なるほど」とレオンは納得する。レオンにも騎士道というものがあるはずだが、その物差しは悪魔には同じようには使わないようだ。それともマリアに危険が及ぶ可能性があると思ったからか、あたしの意見を肯定する。

「アモン、聞きたいんだけど。ベルフェゴールがもし死ぬことになったら素直に主従の誓いをするともう?」

「するだろうな。いくら怠惰な悪魔っていってもさすがに死にたくはないだろう。そうなるくらいならどんな性格の悪いやつが主人になろうが致し方なしってやつだ」

「誰かのこと言ってる?」

もしかしてあたしのこと言ってるのか、訝しげな顔になるが、アモンはやれやれといった顔でこちらを見てくる。確信犯だ。あとで覚えていろと心の中で舌打ちする。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

追放された【才能鑑定】スキル持ちの俺、Sランクの原石たちをプロデュースして最強へ

黒崎隼人
ファンタジー
人事コンサルタントの相馬司が転生した異世界で得たのは、人の才能を見抜く【才能鑑定】スキル。しかし自身の戦闘能力はゼロ! 「魔力もない無能」と貴族主義の宮廷魔術師団から追放されてしまう。 だが、それは新たな伝説の始まりだった! 「俺は、ダイヤの原石を磨き上げるプロデューサーになる!」 前世の知識を武器に、司は酒場で燻る剣士、森に引きこもるエルフなど、才能を秘めた「ワケあり」な逸材たちを発掘。彼らの才能を的確に見抜き、最高の育成プランで最強パーティーへと育て上げる! 「あいつは本物だ!」「司さんについていけば間違いない!」 仲間からの絶対的な信頼を背に、司がプロデュースしたパーティーは瞬く間に成り上がっていく。 一方、司を追放した宮廷魔術師たちは才能の壁にぶつかり、没落の一途を辿っていた。そして王国を揺るがす戦乱の時、彼らは思い知ることになる。自分たちが切り捨てた男が、歴史に名を刻む本物の英雄だったということを! 無能と蔑まれた男が、知略と育成術で世界を変える! 爽快・育成ファンタジー、堂々開幕!

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?

木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。 追放される理由はよく分からなかった。 彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。 結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。 しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。 たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。 ケイトは彼らを失いたくなかった。 勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。 しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。 「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」 これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。

だから聖女はいなくなった

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
「聖女ラティアーナよ。君との婚約を破棄することをここに宣言する」 レオンクル王国の王太子であるキンバリーが婚約破棄を告げた相手は聖女ラティアーナである。 彼女はその婚約破棄を黙って受け入れた。さらに彼女は、新たにキンバリーと婚約したアイニスに聖女の証である首飾りを手渡すと姿を消した。 だが、ラティアーナがいなくなってから彼女のありがたみに気づいたキンバリーだが、すでにその姿はどこにもない。 キンバリーの弟であるサディアスが、兄のためにもラティアーナを探し始める。だが、彼女を探していくうちに、なぜ彼女がキンバリーとの婚約破棄を受け入れ、聖女という地位を退いたのかの理由を知る――。 ※7万字程度の中編です。

処理中です...