原作を知らない作品の悪役令嬢として転生してしまった私

水野(仮)

文字の大きさ
2 / 3
ルート:永遠の愛を誓おう

主人公の捕食対象と会いました

しおりを挟む
13歳のお披露目会を息子のアルフリードとして行うことを決めた父と巫山戯るなと激昂した母による屋敷を半壊させる程の夫婦喧嘩から三ヶ月後、母の妊娠が発覚した。
魔力を使い尽くした後も滾った血は鎮まらなかったらしく、私やお姉様達それと使用人にも聞こえていると言うのに燃え盛っていたからなぁ(遠い目)。
「お母様が苦しんでる! 助けに行かないと!」と冗談で言ってみたら、私を行かせないようにと皆んなが協力してたのは面白かったです。
それにしても、魔法の有る世界の夫婦喧嘩はヤバイわ。

男としてお披露目を行うことを渋々認めた母は条件を付けた。貴族の子息としても貴族令嬢としても完璧にこなせるようにと。
ナイスアイデアと思った男として生きる選択は自由な時間を大幅に減らし、印刷魔法について考える時間が無くなった…。
やっぱり女としてだけ生きようかなぁ、でもそれだと婚約破棄からの追放イベントとかが発生してしまう可能性が有るし。
せめて婚約者になる公爵子息の名前を思い出せれば…、王子が主人公の女に紹介した時しか名前呼ばなかったので覚えていないんだよ、親友ならもっと連呼しろよ王子。

それから半年くらい経って母が男児を産んだ。
待望の跡継ぎ男子誕生に家族に親戚一同大喜び、もちろん私も! 「男として生きるのなら跡を継ぐのはアルになるのかな…」とボソッと父が言ってるの聞いてからは男児誕生を誰よりも願ったよ、当主とかめんどくさいことこの上ないからね!
これで次期当主になる心配は回避、後は婚約者になることを回避だ!



10歳になり儀式を受けた。
儀式では下級中級魔法は全属性で火属性は上級の焔魔法に適性があることと、魔法制御と魔力操作と言う能力を持っているのがわかった。
この数年間独学でやり繰りしてたことが能力として身に付いたのかな。焔まで使えるのは指パッチンで炎を飛ばす練習をしてたからなのか温水シャワー魔法を毎日使ってたからなのか。

この結果を見て父が魔法の先生を呼んでくれると言うので今から楽しみである。

「何を教えたら良いのかわかりません」

魔法の先生が初日そんなことを言って辞めた。
なんでだよ! 両親が夫婦喧嘩で使った魔法を先生に見て貰っただけなのに!

その後魔法の先生は頼まれることがないままだった。
パパンは目を逸らしながら、代わりに服を作ってあげるからとか言い出したのでバーテンみたいな男物の衣装を頼んだ。
いや、戦闘スタイルが格闘技よりな私はお嬢様衣装だと動き難いし暴れると色々見えたりしちゃうのでスーツっぽいのが欲しかったのよ。
流石にお嬢様がジャージはダメだし、この家の主人の親族としては執事や騎士と重なる衣装になるわけにも行かないしさ。貴族男の服もなんか無駄が多くて動いてると引っかかるから嫌なのよね。

儀式を受けた後、父や母の友人が近い年齢の子を連れて会いにくるようになった。
儀式を受ける前の子は他家の子と会わせないと言ったルールが有るようで、儀式前に姉の友人たちが訪ねてきた時などは部屋から出ないようにと言われることもあったのよね。
その理由は説明されなかったけれど、儀式でわかる内容次第では処分されたりするのかも。貴族とは魔法が使える特別な人らしいので、儀式で魔法の才能が無いとわかったら貴族として扱われなくなるくらいはあってもおかしく無いわね。



「はぁ、アルテミス様が本当に男性でいらしたら良いのに」

最近、そんなことを言われる機会が増えた。
バーテン姿をし始めた頃はそんなことを言われたりしなかったのだが、12歳を過ぎた辺りからぽつぽつと言われ始めた。
本来胸に行くべき栄養素が身長に入っているようで、同じ歳の男性よりも高いのが原因だろうか…。

女は父親に似るって言うからか、顔の作りも父よりなんだよね。
父は得意な魔法が氷属性なのもあって、氷の貴公子と言われて学園でモテていたそうだ。
その時の姿絵を見せてもらったけど、確かに似ているような気もする…が、それって女としてはどうなんだ? 美形男子似の女子って結婚相手の男はキツく無い? もしかして婚約の話とか全く来ないのはそれが理由? 意図せずフラグ回避しちゃった? 

それにしてもパパンが氷の貴公子とか言われていたなんてね。
家の中ではそんな雰囲気全く無いし。



今年13歳になる貴族子女が一同に集まるお披露目会場へは男の姿で行くことにした。
一応ドレスも作って貰ったのだが、男装が標準になっていたからかドレス姿での動きを忘れてしまっていたのだ。
最初は渋った両親たちも父を相手にダンスをした際の動きを見て諦めた。それはそれで女として傷つくのだけども…。

家族はともかく、他家の人から変な目で見られるかな…と不安に思っていたが、わりと好意的に受け入れられたと思う。
ダンスの時間は男役として令嬢たちと踊り続けたし、男? 近寄ってこないからどうでも良いわ。

踊り続けて疲れたので飲み物を貰ってテラスで涼んでいると歳の近い男に話しかけられた。
もしかしたら私の婚約相手になる公爵子息かも知れない。
ゲーム中ではドレスを着た私が涼んでいてそこで彼と出会い関係を重ねて婚約をするとかなのかも?
恋愛をしての婚約だったなら、主人公の女に靡く婚約者を見て良い気はしないだろうしな。

「お前、女なのにカッコいいな」
「女性だからこそさ、理想の男性像を演じるんだからかっこ良くもなる」
「なるほどな」
「反対に、理想の女性像を持つ男性は可愛い女性を演じれるのかも知れないね」
「はは、それは面白そうだな」
「意外とドレスが似合うかもよ」
「本当か?」
「冗談だ」

そして後日、王子との婚約話が来た…何故だ?! 王子の相手は公爵家の女だっただろう!
お披露目の時に何人かの候補の中から王子が気に入った相手を選んだらしいのだけれど、私は男装して踊ってただけで王子の相手なんかしてなかったのに!



今日はお城に来ている。
婚約の話は断ったけど、友人として招きたいと言うなら断るのは失礼に当たるので。
今日はドレスだ。そうしなさいと母が言うので。
あの時はスーツでも良くて今回はダメな理由がわからない、貴族社会のルール? 

「よう、良く来たな」
「あの時の。貴方も呼ばれてたの?」
「いや、オレはここに住んでるんだ」
「へ~」

お前が王子なのかよ!

「今日はドレスなんだな、意外と似合っているぞ」
「登城する時は正装をしなさいと母に言われてね、お披露目は男装でも良かったのによくわからないな」
「おそらくだが、あの時は仮装として扱われたのだろう。他にも変わった衣装を身に付けた者が居たからな。まぁ、お披露目する令嬢が男装したのは初めてだと思うがな」
「なるほど、そう言うことか。城に仮装をして入っても良いってのは無さそうだものな」
「そう言うことだ」
「次に来るときはスーツでも良いかと、お前の父親に話しといてくれないか?」
「ドレス姿も似合ってると思うがな、そんなに嫌なのか?」
「嫌ではないんだが、落ち着かない。それに言葉が女になりそうだ」

彼は何かがツボに刺さったのが、吹き出してしばらく笑い続けた。

「ドレスなんだから、女の言葉でも良いじゃないか」
「…おかしくはないか? 私は女に見えているか?」
「その姿で男だと思う奴は居ないだろう、スーツ姿の時でも俺には女に見えたぞ」
「そうか。…やはり無理があったんじゃないパパン」
「何が無理なんだ?」

私が男装を始めた経緯を王子…と思われる少年に話す。
どうでも良いけど、自己紹介してないけど良いのかしら? 暗黙の了解ってやつ? まぁ、父親に話をしとけって言った時点でお前が王子で父親が王なのはわかってるぞって言ったようなもんだしね。

「相当追い詰められてたんだな、侯爵は…」
「まあね。今思うと跡継ぎとかどうするのよって話だし」
「女同士で子供は出来ないからなぁ」
「ホントよね、弟が産まれて良かったとしみじみ思うわよ」

私と王子のお茶会?は結局自己紹介をすることなく終わった。
母に仕込まれた貴族らしい挨拶とか言葉遣いを1度も使わなかったけど大丈夫よね? お付きの人たちも特に何も言わなかったし。

**

「あれが貴方の言った娘なのね」
「ええ、面白いでしょう」
「そうね。侯爵家の令嬢としてはどうかと思うけど」
「調べたところによると、格闘術と魔法の才能が高く侯爵家の騎士団に混ざり魔物の間引きを行っているのだとか」
「女に生まれたのが惜しいわ、男だったら私が嫁いでも良かったのに」
「姉上は理想が高過ぎですよ」
「貴方と違って相手は好きに選んで良いって言われてるんだもの、理想の相手と結ばれたいじゃない?」
「…そうですね」
「彼女は無理よ、諦めなさい。公爵家に近い年齢の娘が数人居る以上候補にはなれても王妃には絶対になれないわ」
「分かってはいるのですがね」
「まぁ、気持ちはどうしようもないからね。側室にならなれるでしょうが、それを彼女が求めるとは思わないわ」
「そうですね」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

メインをはれない私は、普通に令嬢やってます

かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・ だから、この世界での普通の令嬢になります! ↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

「俺が勇者一行に?嫌です」

東稔 雨紗霧
ファンタジー
異世界に転生したけれども特にチートも無く前世の知識を生かせる訳でも無く凡庸な人間として過ごしていたある日、魔王が現れたらしい。 物見遊山がてら勇者のお披露目式に行ってみると勇者と目が合った。 は?無理

乙女ゲームの悪役令嬢、ですか

碧井 汐桜香
ファンタジー
王子様って、本当に平民のヒロインに惚れるのだろうか?

お前は家から追放する?構いませんが、この家の全権力を持っているのは私ですよ?

水垣するめ
恋愛
「アリス、お前をこのアトキンソン伯爵家から追放する」 「はぁ?」 静かな食堂の間。 主人公アリス・アトキンソンの父アランはアリスに向かって突然追放すると告げた。 同じく席に座っている母や兄、そして妹も父に同意したように頷いている。 いきなり食堂に集められたかと思えば、思いも寄らない追放宣言にアリスは戸惑いよりも心底呆れた。 「はぁ、何を言っているんですか、この領地を経営しているのは私ですよ?」 「ああ、その経営も最近軌道に乗ってきたのでな、お前はもう用済みになったから追放する」 父のあまりに無茶苦茶な言い分にアリスは辟易する。 「いいでしょう。そんなに出ていって欲しいなら出ていってあげます」 アリスは家から一度出る決心をする。 それを聞いて両親や兄弟は大喜びした。 アリスはそれを哀れみの目で見ながら家を出る。 彼らがこれから地獄を見ることを知っていたからだ。 「大方、私が今まで稼いだお金や開発した資源を全て自分のものにしたかったんでしょうね。……でもそんなことがまかり通るわけないじゃないですか」 アリスはため息をつく。 「──だって、この家の全権力を持っているのは私なのに」 後悔したところでもう遅い。

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

悪役令息の継母に転生したからには、息子を悪役になんてさせません!

水都(みなと)
ファンタジー
伯爵夫人であるロゼッタ・シルヴァリーは夫の死後、ここが前世で読んでいたラノベの世界だと気づく。 ロゼッタはラノベで悪役令息だったリゼルの継母だ。金と地位が目当てで結婚したロゼッタは、夫の連れ子であるリゼルに無関心だった。 しかし、前世ではリゼルは推しキャラ。リゼルが断罪されると思い出したロゼッタは、リゼルが悪役令息にならないよう母として奮闘していく。 ★ファンタジー小説大賞エントリー中です。 ※完結しました!

処理中です...