のんびりダンジョン

水野(仮)

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異世界の海とテレビに出た探索者

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「ここが異世界海」
「アゼル海と言われているところですね」

海に名前が有るのか…いや、特に変なことじゃないしむしろ普通なことか。

この前ふと、海と山が近くにあることを望んで叶えて貰ったのに戦いの日々とダンジョンや街に関わってて1度も行くことがなかったなと思って、近くの海を見に来た。

あの神のことだからなんかしらのオチが有るんじゃないかと思ってたんだけど、今のところ普通だ。
海面まで100メートルくらいある断崖絶壁でまともに降りる場所がないくらいは覚悟してたが、普通に砂浜や岩場などが有り夏の暑い日なんかに来ると楽しめそうな感じだ。

「この海に詳しい子って居る?」 
「おそらく居ないと思いますよ、森を越えて海に出るのは難しいですし」
「…そうね」

また森か。
各国を分断し、草原を取り囲むように出来ていた強い魔物が生息する森は何なのかしらね? 辛気臭いマスターが何かしらしていたのかしら? それとも他に理由が? 

「塔の街がある辺りって、昔から草原だったの?」
「古代都市の伝説みたいのが有ったはずですよー」
「古代都市?」
「多種多様な種族が住む大きな都市で、交易も盛んだしてたね。それが一夜にして消えてしまい、各国に繋がる道も一緒に消えたので取り残された私たちはわずかな食料を確保する為に殺し合ったのです」
「? どう言うこと?」
「私はその都市に住んで居たので。あの時は何故都市が消えたのかわかりませんでしたが、今なら理由はわかります」
「都市が消えた理由は何なの?」
「都市を作ったダンジョンマスターが殺されて新しいマスターがダンジョンを作る為に真っ新にしたんだと思います」
「…成る程、街道とかもダンジョンの機能で作ったならあり得るか」

私がコアに何か有れば塔や町が消滅するか。
全く考えなかったわけではないけれど、そんなに気にもしてなかったわね。

「私は出歩くのを自重した方が良いのかな?」
「半分とは言え神様なマスターが地上に居る誰かに害されるとは思えないですねー」
「私もそう思います」
「それもそうね」



「あの森の先にある海岸のわりには危険な生物とか居なそうね、あウニみっけ」
「そうですね」
「水着に着替えて海に潜ってみたら何かあるかな?」
「水着には良い思い出が…ウッ」
これは無理そうね…。

水際でパチャパチャ遊んだり、ビーチベッド出してだらだらしたりして時間潰してたら、周りの偵察に行ってたクリスが帰って来た。

「あの木が邪魔でここからは見えませんが島が有りましたよー」 
「大きさはどれくらい?」
「遠目から見ただけで正確にはわかりませんが、塔の街くらい有るかも知れませんねー」

探索は…しなくても良いか。
そこまで手を広げる理由も意味も無いしね。

「他に面白いものは有った?」
「下半身が魚の人が居たくらいですかね、いきなり攻撃されたので撃ち殺しましたが」
「そんなのが居るの…。う~ん、襲われても嫌だし帰りましょうか」
「そうですね」
「はい」



海に行ったからなのか、出せる魔物の種類とかが増えていた。
53階の海フロアへ行って色々出してるが、普通のウニとかカニにしか見えない魔物は食べたくなるので危険だ。

と言うか、実際食べてしまったが。

「人型じゃないとはいえ、配下の魔物を食べると言うのはなんかモヤっとするわね、美味しいけど」
「気にしたら負けなの」
「そんなことを気にしていたら、お骨様のダンジョンから持ち帰るお肉は食べられないですよ?」
「そうなんだけどさぁ…」

なんだろうね、この気持ち。

53階はシルの水着撮影などでも使われたところで、海に囲まれた南国の無人島をイメージして作られている。
他の子が作ったので細かいところは知らないけれど、ダンジョンらしさは全くしない。
ただ、半分より上の死亡率高め設定なフロアなので探索者の人たちには気を付けてくださいと心の中で助言する。
フロアの入り口付近に咲いているハイビスカスに似た綺麗な花の花粉には遅効性の麻痺毒が混ざっていて、そこを抜けたところにはバスケットボールくらいある硬い木の実を投げてくる木、毒を持つ蜂や蚊などが居る。
麻痺毒で身体が思うように動かないところに殺意盛り合わせな攻撃されたら初見だと対応し切れず全滅とかしちゃうんじゃ…。
まぁ、私たちは攻撃対象じゃないから良いんだけど。

「見た目だけなら良いところよね」
「ええ、私も初めて来た時はそう思いましたね」
「もう水着撮影とかしないんなら、そんなに気にすることもないんじゃない?」
「まだそんなに日も経ってないので…」
「街のモニターでもまだやってますからねー」
「そういえばそうだったわね」
「まだ、流れているんですか…」
「他のを流そうとは考えてるらしいんだけど、日本のだと字幕とか必要だしね。なんにしようかと考え中らしいよ?」
「2階のSASUKE風のを多角撮影したもので良いんじゃないですかー?」
「あー、そんなのでも良いか」
「出来れば、それでお願いします。少しでも私が映る時間が短くなればそれで…」



「シルバーウルフのスレイさんですよね! 私ファンなんです! 握手して下さい!」
「本当だ! スレイだ!」
「モニターよりカッコいいかも!」
「私も握手してください!」

知らない間に塔のモニター?とやらに俺が出ているらしく、最近知らない連中に取り囲まれることがある。
なんでも俺は現在最速クリア保持者とかで探索者だけでなくこの街で有名なんだとか。

俺は戦士や魔法使いのように戦闘をするようなことはなく、これから向かう先に罠が無いか調べたり、偵察した情報を持ち帰るようなことを主にやっていて目立ったことが無かった。
同じ人狼族の中では戦士として活躍することのない俺を馬鹿にするような連中も居て居心地が悪いこともあり、戦わなくても身体能力が高ければ稼げると聞いてこの都市に来た。
森の中に出来た道を通ってる時は、そんな場所あるわけがないとかなんでこんな森に1人で来たんだ俺はとか思っていたのだけれど、今は来て良かったと本当に思っている。

「ところで、良い加減俺の尻尾を撫で回すのやめてくれない?」
「良いじゃない減るもんじゃないし」
「俺の気持ちが減るわ」
「また奢ってあげるから我慢しといてよスレイ」
「人狼族の尻尾って無闇に触ったらダメって説明したよな俺」
「まあまあ、触りたくなる素晴らしい尻尾ってことで」
「はぁ…アヤカは俺と結婚する気ないんだろ?」
「無いわね」
「ハッキリ言われると凹むなぁ…」
「落ち込んだなら呑みましょうよ。新しい樽開けるって話を聞いて今から見に行くところなのよ」
「誰のせいだ誰の。まぁ、新しい酒のお試しには付き合わせてもらうけどよ」

アヤカはこの街で情報屋みたいなことをやってる女で、今この街や塔で起きていることを知りたかったら彼女に聞けと言われている。
顔も広くて俺じゃ普通に会えないような人たちとも仲が良く、ギルド長などとも話しているのを見かける。
俺とは塔3階の繁華街で知り合い、味の好みが近いことから何処かからか持ち込まれた知らない食い物の試食を頼まれたりすることも多い。
悪い奴じゃないし一緒にいるとわりと楽しいんだが、気を抜くと野生の本能が彼女から離れろと叫ぶんだよな、なんでだろうな。

「今度のお酒は林檎で作ったらしいよ」
「林檎の酒?! 贅沢品かよ!」
「林檎の買取値段を維持するのに大量消費する方法をと考えてお酒の材料にしたんだって」
「は~、金持ちの考えることはわからんわ」
「あんたは買取額が安くならなくてラッキーとだけ思ってりゃ良いのよ」 
「それもそうだな」
「気にするのはそのお酒の味だけにしとけってね」
「違いない」
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