理想とは違うけど魔法の収納庫は稼げるから良しとします

水野(仮)

文字の大きさ
17 / 50

協力

しおりを挟む
水のワイバーンで少し移動した先に草原があったので地ならしした後に宿を置き、その日は眠った。
水の精霊が魔物避けの魔法を使ってくれたらしく、目が覚めるまで襲われることはなかった。

「城を収納したのはやり過ぎだったかも知れない」

起きたらやり過ぎだったと後悔してしまった。
王様たちも流石に庇ってくれないかも…。

「返しても許してくれないと思うわよ」
「そうだろうなぁ」
「だから気にしないで良いと思うわ」

やってしまったことは消えないしな。
城は何処かの森にでも捨てるなり、武器として魔物にぶつけたりしよう。高いところから落とせば地竜も潰れると思うし。



街道の上を帝国に向かって飛んでいる。
水のワイバーンに追い付く馬とか無いだろうし、昨日城の中を見た限りでは空を飛ぶ騎獣も無かったから追い付かれないと思う。
街道から離れて迷子になる方が怖いし。

「下で呼んでるわよ」

騎馬兵が200くらい?
首都に向かってるのか?

「よく聞こえるな、さすが精霊」
「まあね」

得意げな顔がなかなか可愛い。

「なんて言ってるかわかる?」
「城を消したのは君かと言ってるわね」
「は?」

なんで知ってる?

「どうするの?」
「気になることも有るし、話を聞いてみようと思う」



少し離れた所に降りてみる。

「2人で頼む! 大勢で来られたら話を聞かずに逃げる!」
「了解したー!」

なんか王子様っぽいのとその護衛みたいのがやってくる。

「紹介や事情は要らない、目的だけ頼む」
「わかった。君は昨日城を消した」
「ああ」
「戻すことは可能か?」
「可能だ」
「我々が首都を取り戻した後に城が必要なので戻して欲しい、ただとは言わない」
「了解した、それと代金は要らない」
「要らない?」
「俺はこれを返して欲しかっただけだ、城はついでだ」

王様が俺の身分を保証する為に持たせた硬貨を投げ渡す。
2人で硬貨を確認し、なんか気まずそうな顔をする。
しまった! 他国に知られてしまった! コイツ消さないと! とかじゃないよな?

「君はサーシャ王国の騎士か」
「騎士ではないが王直属ではある」

貴族になる時にそんなこと言ってたし。

「君のこれからの予定を聞きたい」
「帝国へ行く」
「帝国に行く使者を拘束しようとしたのか兄上は…」

小声だけど聞こえました。

護衛ぽい人と小声で相談してる、ちょっと暇。

「20日後くらいに首都に来られるだろうか?」
「何事も無ければ」
「それまで城を預かっていてもらえるか?」
「少し不安がある。なので首都の近くに置いておくと言うのはどうか?」
「置いておくとは?」
「攻めるなら拠点があった方が良いのでは? 目の前に奪われた城が現れたら城の主人だった者は穏やかではいられないだろう」
「君は城を自由に移動させることが出来るのか? その場に無くても?」
「ああ」

驚いた顔で少し止まった後に動きだし、護衛と顔を見合わせて頷く。

「よろしく頼む」
「では、全員を首都の近くまで運ぼう。城を置く場所はそれから決めてくれ」
「は?」

相手が納得するまで説明するのは面倒なので許可を取らずに収納する。



「首都まで歩いて10分くらいのとこに出せば良いのかな?」
「まずかったら何か言われるでしょ」
「それもそうだな」

騎馬を全員街道に出す。

「城の近くに運ぶとは?」
「ここがそうだ」
「は?」

首都の壁を指さす。

「これは…」
「君は転移魔法が使えるのか?」
「だから王直属にされた」

答えない。
勘違いするならそれで良い。

「サーシャ王国と帝国の距離が無くなるのか…」 

いや、無くならないけどね? 収納だしね? 訂正しないけどね?

「城はどこへ出す? 森の木なら気にしなくて良い」
「ここで良い」
「わかった」

街道沿いの木を収納した後に整地して城を置く。地上部分だけしか持ってきてないので平地に置くだけなら簡単。
元の場所に置くのはめんどくさそうだな…、無料で引き受けたのは気前良過ぎたかも…。



「首都に入る門の扉は取り外した方が攻めやすいか?」
「そんなこともできるのか」

城を置いた後、都市に入りやすい方が良いかなと思って門を外すか訊いたら驚かれたのだが。
城を運べるの知っててそこ驚くものなのか?

「いや、そこまでは良い」
「そうか。なら我らは行く」
「手間をかけた」
「なに、隣国が混乱しては我らも影響を受けるからな」

水のワイバーンを出して乗り帝国に向かう…前に気になっていたことを聞く。

「そう言えば、なぜ離れた所に居たのに城が無くなったのを知っていた? 俺の事もだ」
「城内に俺の部下が居る。そいつは俺に声を届けることが出来る」
「なるほど」

遠くに居る相手に声を届けるスキルが有るのか、便利だな。
ん、城の中に居たなら収納しただろうし使えるようになってるかも知れないな。でも使うと複数のスキルを使えることが知られてしまうかも…、使わない方が良さそうだな。

「それでは20日くらい後に」
「ああ、世話になった」

半日遅れたがまぁ良いか。



「あの若さでどれだけのことが出来るのだ彼は」
「転移だけではなさそうですね、水の飛竜は魔道具でしょうか?」
「彼の力を使えば他国の城に兵を送り込めると思うか?」
「出来ないとは思えませんね」
「そうか」
「兵を送り込まなくても城を真上に転移させて落とすだけで終わります。城は後から作るなり他所から転移させれば良いでしょう」
「…まいったな、このまま兄上に王で居てもらおうかな」
「それは無理なようですね、白旗が振られてます」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。

☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。 前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。 ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。 「この家は、もうすぐ潰れます」 家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。 手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。

「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます

七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。 「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」 そう言われて、ミュゼは城を追い出された。 しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。 そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……

【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます

まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。 貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。 そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。 ☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。 ☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

A級パーティから追放された俺はギルド職員になって安定した生活を手に入れる

国光
ファンタジー
A級パーティの裏方として全てを支えてきたリオン・アルディス。しかし、リーダーで幼馴染のカイルに「お荷物」として追放されてしまう。失意の中で再会したギルド受付嬢・エリナ・ランフォードに導かれ、リオンはギルド職員として新たな道を歩み始める。 持ち前の数字感覚と管理能力で次々と問題を解決し、ギルド内で頭角を現していくリオン。一方、彼を失った元パーティは内部崩壊の道を辿っていく――。 これは、支えることに誇りを持った男が、自らの価値を証明し、安定した未来を掴み取る物語。

卒業パーティでようやく分かった? 残念、もう手遅れです。

ファンタジー
貴族の伝統が根づく由緒正しい学園、ヴァルクレスト学院。 そんな中、初の平民かつ特待生の身分で入学したフィナは卒業パーティの片隅で静かにグラスを傾けていた。 すると隣国クロニア帝国の王太子ノアディス・アウレストが会場へとやってきて……。

掃除婦に追いやられた私、城のゴミ山から古代兵器を次々と発掘して国中、世界中?がざわつく

タマ マコト
ファンタジー
王立工房の魔導測量師見習いリーナは、誰にも測れない“失われた魔力波長”を感じ取れるせいで奇人扱いされ、派閥争いのスケープゴートにされて掃除婦として城のゴミ置き場に追いやられる。 最底辺の仕事に落ちた彼女は、ゴミ山の中から自分にだけ見える微かな光を見つけ、それを磨き上げた結果、朽ちた金属片が古代兵器アークレールとして完全復活し、世界の均衡を揺るがす存在としての第一歩を踏み出す。

本物の聖女じゃないと追放されたので、隣国で竜の巫女をします。私は聖女の上位存在、神巫だったようですがそちらは大丈夫ですか?

今川幸乃
ファンタジー
ネクスタ王国の聖女だったシンシアは突然、バルク王子に「お前は本物の聖女じゃない」と言われ追放されてしまう。 バルクはアリエラという聖女の加護を受けた女を聖女にしたが、シンシアの加護である神巫(かんなぎ)は聖女の上位存在であった。 追放されたシンシアはたまたま隣国エルドラン王国で竜の巫女を探していたハリス王子にその力を見抜かれ、巫女候補として招かれる。そこでシンシアは神巫の力は神や竜など人外の存在の意志をほぼ全て理解するという恐るべきものだということを知るのだった。 シンシアがいなくなったバルクはアリエラとやりたい放題するが、すぐに神の怒りに触れてしまう。

処理中です...