手で触れた液体をお酒にする変な能力を手に入れだけどわりとなんとかなりそうです

水野(仮)

文字の大きさ
7 / 18

お誘い

しおりを挟む
この世界の龍は何種類か居るらしい。
彼女が乗ってきたのは所謂西洋型で羽根の生えたトカゲの親分みたいなものだ、火も吐くらしい。
他には東洋型の長いタイプの龍とかも居るらしいがこちらは人前に出ることはあまりない。
人に化けることが出来るらしく、もしかしたらその辺を歩いてるかも知れないらしいが見分けることは出来ないので自己紹介してくれないとわからない。



龍に乗ってやってきたのは叔父の娘なのだそうな。
お供も連れずにお姫様が来るのは如何なものかと思うのだが、龍に乗って旦那を探し回った人の娘だと思い出したら問題ない気もした。
そんなドラゴン娘が何をしにきたのかと言うと、俺を迎えに来た。

「姉上の結婚式に貴方のお酒を振る舞いたいの!」

と言うことらしい。

進路を決めなければいけない大事な時期に親戚とは言え他国に行くのはなぁ…。

「龍王国を見てみるのも良いかも知れないわね」

何故か母が乗り気だ。

「でも、まだ成人前の子を1人で他国に行かせるのは…」

父は反対のよう。
龍には2人しか乗れないそうで、ドラゴン娘が1人で来たのは俺を乗せて帰る予定だかららしい。
だから俺が行くなら1人だけになる。

「守ってくれるのでしょう?」
「当然よ」

姉上も反対しない様子。
決まりかな、うちは俺も含めて男が弱い。
年下の姉上にアウアウしてる兄上を見ることも有るくらいだし。

「わかりました、行くことにします」
「やった!」
「ただし、誰からも何からも守ってください」
「何からも?」
「闘いを挑んでくるような馬鹿とか酒が気に入ったからこの国にいろと要求してくるアホとか、それが貴女の親でもです」

ありそうだもんな、その手の話。
力を見せてみろとか言ってくる従兄弟とかさ、居るか知らないけど。
温度変化はまだうまく扱えないし、酒化したら殺しちゃうので今のところは戦いを回避するしかないんだよね。

「それは、善処してみるわ」

善処じゃダメなんだよなぁ。

「必ずこの家に帰すと約束しないなら行きません」
「わかった、約束する」
「絶対ですよ」
「私の龍に誓うわ!」
「?」

なんか椅子から立ち上がりキリッとした顔で変なポーズ取ったけど、龍に誓う意味がわからないのでここに居る全員がよくわかってない顔をしている。
もちろん俺も。
周りを見て恥ずかしそうに椅子に座り直すドラゴン娘をみんなで見守る。
代表して兄上が質問してくれるようだ。

「龍王国では龍に誓うことに重要な意味があるのかい?」
「あのね、龍王国の王族が龍に誓うって言うのは、何があっても約束を守るってことなの」
「なるほど。それには何か由来とかあるのかな?」
「龍王国の初代王が龍を国に迎え入れるときに龍に誓ったのが始まりと言われているの」
「そうなんだ、それと同じことを弟を守る為にしてくれるんだね」
「はい」
「そうか、それなら安心だね」

なんか、ドラゴン娘が兄上をキラキラした目で見ている気がする…。

「あの、貴方は御結婚していらっしゃるのですか?」
「恥ずかしながらこの歳でも婚約者も居なくてね」
「そうですか!」

お決まりですか。

「私もまだ決まっていません! 私はどうですか!」

両親が乗り気で兄も満更でもなかったらしく婚約が決まった。
龍王国の王族では本人が良ければ両親の反対とかはないそうだ。
強い男が必ずしも好きだと言うことでもないとも聞いた。

「お姉ちゃんに任せて! 必ず帰してみせるわ!」

王家が圧力をかけて邪魔していると言われていた兄上の婚約はこうしてあっさり決まった。
龍王国と繋がりを作る為に兄上が狙われていたみたいなんだよね。
王族で兄上の妻を作ろうと励んでいたそうなんだけど男ばかり何人も産まれて跡目争いが大変らしいと仲の良い騎士に聞いた。父に後ろ盾になって欲しいと何人かから誘われたが森の警備を疎かに出来ないと断った事もあるのだとか。
うちが森に蓋してるから魔物被害が少ないのは事実だからね、王子もその辺はわかってるのだろう。

なんにしても適齢期入ってた兄上に相手が出来て良かった良かった。

*****
☆龍王国
龍王国は王族の力が強過ぎて国内貴族や隣国王室と婚姻し家同士の繋がりを強化するといった考えがない。

城で働く人の中には連れてこられる男が哀れな生贄にすら見え、みんな優しく接するのだとか。
彼らの多くは代々の女王に付き合わされて戦う男たちを見ているから。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです

NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた

一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫

むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

処刑回避のために「空気」になったら、なぜか冷徹公爵(パパ)に溺愛されるまで。

チャビューヘ
ファンタジー
「掃除(処分)しろ」と私を捨てた冷徹な父。生き残るために「心を無」にして媚びを売ったら。 「……お前の声だけが、うるさくない」 心の声が聞こえるパパと、それを知らずに生存戦略を練る娘の、すれ違い溺愛物語!

処理中です...