黒の書を持って呼ばれた12人の賢者たち

水野(仮)

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悟りの三賢者と余りの賢者

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「私にも一本貰えませんか?」
「はいよ」
「すいません」

タバコを咥え一緒に渡されたライターで火を付ける。
やめる時まで吸っていたものと違う銘柄だが悪くない。

「あんた、若いのに美味そうに吸うね」
「そうですか? 久しぶりなので自分じゃどんな風に吸ってるのかわからないですね」
「禁煙してたんか?」
「ええ、吸ってた銘柄が発売中止になりましてそのままタバコも辞めました」
「なにを吸ってたんだ?」
「峰です」
「懐かしいな、俺も昔は吸ってたわ」

そのまま煙草吸いながら話していると、年配のご婦人が近づいて来た。

「こんにちは」
「はい、こんにちは」
「貴女も気が付いたらここへ?」
「ええ、こんなものを持ってここに居ましたよ」
「私もです」
「俺もだ」

御婦人はノートを、俺と煙草をくれたおじさんはワープロだ。

「こつこつと書いてたんですけど、結婚が決まってそれっきり。旦那や相手の親に見つかると恥ずかしいので燃やしたんですがね」
「俺は壊れてしまってそれっきりだな、パソコンで読み込めるのかもしらねーがフロッピーにカビ生えてたからそのままだったわ」
「うちも似たようなものですね」
「小説家になろうと努力したんだがな、収入が安定すると気持ちも萎んだわ」
「私もです」

遅めの自己紹介をし、ここへ来る前の話などをする。
タバコを貰った山下さんも佐々木さんも何故ここにいるのかわからないそうだ。

「そう言う久保田さんは?」
「私もわからないですね、駅から出てコンビニで秋味買おうと考えてたらここに居ました」
「秋味良いな。普段は一番搾りかい?」
「ええ」
「やはり麒麟だよな」

山下さんとは趣味が合いそうだ。

「佐々木さんはワインとか飲んでそうだな」
「そんな雰囲気ありますね」
「いえいえ、普通にいいちことかを飲みますよ」
「いいちこ」
「見た目から想像出来ない名前が出ましたね」



「孤独だ…」

懐かしい気持ちで手元のノートを読んでたうちにグールプが出来てしまっていた。
しかも入る隙間が無さそう。
会ってすぐ普通に話せるとかコミュ強過ぎるだろ…。
て言うか、なんでこんな状況で普通に話しているんだ。
いや、思えば俺も変だな。
いつの間にか知らない場所に居たってのに持ってたノートを読み始めるとかしないだろ。

「何か細工をされているのか?」

俺だけ1人なのもそのせいか? そのせいだろう? そのはずだろ?

*****

久保田 作家志望だった 37歳 中華料理店勤務
山下 作家志望だった 52歳 タクシー運転手
佐々木 作家志望だった 48歳 御婦人
ぼっち 孤独 29歳 コンビニ店員

続かない…。
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