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3.ライルside①
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「おい、ライル。急いで追いかけろ!婚約なくなっちまうぞ!?」
かけられた声に、理解はできるが体が動かない。
「リード侯爵が奥方と一人娘を溺愛しているのは有名な話だ。リード侯爵家に益のない婚約であるなら尚更、解消の話は進むぞ。なにぼーっとしているんだ!自分のことだろう!?早く行け!」
「・・っ、あぁ。」
ユーリアとは8年間、婚約関係が続いていた。確かに妹みたいな感覚もあるが、嫌いなわけではない。さっきは調子に乗りすぎて余計なことを言ってしまった。しかも、当のユーリアに聞かれるなんて・・。
教室を出ようと出入口に向かったとき、
「ライル様、婚約がなくなると聞こえてきましたわ。私との婚約を考えて頂けませんでしょうか?以前パーティーでお見かけしてからずっと、お慕い申し上げておりました。」
声をかけてきたのは、同じ学年のアリア・オージェ。伯爵家の末娘だったはず。あまりマナーが身についていないと噂のある令嬢だ。なるほど、確かに特に交流をもった記憶はないが、自分の名前を気安く呼ぶなど馴れ馴れしい。しかし、今しがたの会話を聞いていたらしい彼女に、確認しなければ。
「オージェ嬢。私の名ではなく家名で呼んでほしい。あと聞きたいのだが、・・どこで聞いていたんだ?」
「二つとなりの私のクラスからですわ。私のほかにも何名かいましたし、きいていたのは私だけではありませんわ。」
と、名呼びを否定され拗ねた態度を取りつつ、答えてくれた内容に嫌な汗が出てきた。
一体、何人に聞かれていたんだ!?
「先ほどの我々の会話は、忘れて頂きたい。私は、ユーリアとの結婚を望んでいるんだ。調子に乗って、おかしな会話をした私が悪い。ユーリア含め、君にも聞かせてしまったが、ユーリア以外考えられないんだ。だから・・」
オージェ嬢との婚約など考えられない、そうはっきり伝えようと言葉を続けようとしたとき。
「まぁ。。私のことを好みど真ん中だとおっしゃってくださったのも、おかしなことだったと?」
現れたのは、シェリー・トラヴィス嬢。まさかの本人に聞かれていたなんて・・最悪だ!
「シェリー様!今は私がライル様とお話ししているんです。入ってこないでください!」
オージェ嬢、私はもう話したくはない。
「オージェ様、許可なく名や愛称を呼ばないよう私たちからも何度申し上げたかしら。いい加減、私も、他のものも辟易していますのよ。この事については連盟で後日、ご実家に抗議させて頂きます。」
「っ、同じ学園の生徒でしょう!?仲良くしたいだけよ!」
「あなたはその考え方がおかしいのです。学園とはいえ、どのような場であるのかもう一度学んでからいらしてほしいわ。」
「っ、なんですって!?」
ぽんぽん行き交う言葉の応酬に、立ち尽くすしかない自分が情けない。
「あとその感情に任せた話し方。社交に出る前にもう一度確認した方がよろしいわよ。」
さすがはトラヴィス嬢。私を含め、みんなの言いたいことを言ってくれている。この彼女の気質も、男性だけでなく同性の女性からも好かれている理由だろうか。
「・・っ、失礼しますわ!」
オージェ嬢は自身の分の悪さを感じたのか、足早に去っていく。
一難去って安堵しつつ、まだ一難残っていることにため息が出そうだ。
どうにか場を納めるために言葉をさがす。
「・・トラヴィス嬢、助けて頂き感謝する。しかもあなたを話題にした会話まで聞かせてしまった、申し訳なかった。」
と、頭を下げて謝罪した。
「あなたは私の憧れなのです。見目麗しく文武両道で、わたしにとっては高嶺の花でして・・。稚拙な表現をしてしまい、ご不快だったことでしょう。本当に申し訳ありませんでした。」
家の家格は私の方が上だが、トラヴィス家の方が歴史の長い名家だ。失礼なことは出来ない。
かけられた声に、理解はできるが体が動かない。
「リード侯爵が奥方と一人娘を溺愛しているのは有名な話だ。リード侯爵家に益のない婚約であるなら尚更、解消の話は進むぞ。なにぼーっとしているんだ!自分のことだろう!?早く行け!」
「・・っ、あぁ。」
ユーリアとは8年間、婚約関係が続いていた。確かに妹みたいな感覚もあるが、嫌いなわけではない。さっきは調子に乗りすぎて余計なことを言ってしまった。しかも、当のユーリアに聞かれるなんて・・。
教室を出ようと出入口に向かったとき、
「ライル様、婚約がなくなると聞こえてきましたわ。私との婚約を考えて頂けませんでしょうか?以前パーティーでお見かけしてからずっと、お慕い申し上げておりました。」
声をかけてきたのは、同じ学年のアリア・オージェ。伯爵家の末娘だったはず。あまりマナーが身についていないと噂のある令嬢だ。なるほど、確かに特に交流をもった記憶はないが、自分の名前を気安く呼ぶなど馴れ馴れしい。しかし、今しがたの会話を聞いていたらしい彼女に、確認しなければ。
「オージェ嬢。私の名ではなく家名で呼んでほしい。あと聞きたいのだが、・・どこで聞いていたんだ?」
「二つとなりの私のクラスからですわ。私のほかにも何名かいましたし、きいていたのは私だけではありませんわ。」
と、名呼びを否定され拗ねた態度を取りつつ、答えてくれた内容に嫌な汗が出てきた。
一体、何人に聞かれていたんだ!?
「先ほどの我々の会話は、忘れて頂きたい。私は、ユーリアとの結婚を望んでいるんだ。調子に乗って、おかしな会話をした私が悪い。ユーリア含め、君にも聞かせてしまったが、ユーリア以外考えられないんだ。だから・・」
オージェ嬢との婚約など考えられない、そうはっきり伝えようと言葉を続けようとしたとき。
「まぁ。。私のことを好みど真ん中だとおっしゃってくださったのも、おかしなことだったと?」
現れたのは、シェリー・トラヴィス嬢。まさかの本人に聞かれていたなんて・・最悪だ!
「シェリー様!今は私がライル様とお話ししているんです。入ってこないでください!」
オージェ嬢、私はもう話したくはない。
「オージェ様、許可なく名や愛称を呼ばないよう私たちからも何度申し上げたかしら。いい加減、私も、他のものも辟易していますのよ。この事については連盟で後日、ご実家に抗議させて頂きます。」
「っ、同じ学園の生徒でしょう!?仲良くしたいだけよ!」
「あなたはその考え方がおかしいのです。学園とはいえ、どのような場であるのかもう一度学んでからいらしてほしいわ。」
「っ、なんですって!?」
ぽんぽん行き交う言葉の応酬に、立ち尽くすしかない自分が情けない。
「あとその感情に任せた話し方。社交に出る前にもう一度確認した方がよろしいわよ。」
さすがはトラヴィス嬢。私を含め、みんなの言いたいことを言ってくれている。この彼女の気質も、男性だけでなく同性の女性からも好かれている理由だろうか。
「・・っ、失礼しますわ!」
オージェ嬢は自身の分の悪さを感じたのか、足早に去っていく。
一難去って安堵しつつ、まだ一難残っていることにため息が出そうだ。
どうにか場を納めるために言葉をさがす。
「・・トラヴィス嬢、助けて頂き感謝する。しかもあなたを話題にした会話まで聞かせてしまった、申し訳なかった。」
と、頭を下げて謝罪した。
「あなたは私の憧れなのです。見目麗しく文武両道で、わたしにとっては高嶺の花でして・・。稚拙な表現をしてしまい、ご不快だったことでしょう。本当に申し訳ありませんでした。」
家の家格は私の方が上だが、トラヴィス家の方が歴史の長い名家だ。失礼なことは出来ない。
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