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第1章
#3 坂道のゴブリンとスライム
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朝早く。
忙しそうな音がする。
トントン!と木を叩く音や、ゴブリン達の声が聞こえる。
「おい!違うって!その木はこっちだ!」
「おい!喧嘩するな!連携しっかり取れ!」
「お前…どうやったらそんな泥だらけになるんだよ…」
「その木はこっちだって言ってんだろ!!」
突如、この世界に呼び出された男。
ユウは今、村の建設に勤しんでいる。
ゴブリンは知能が高くないので、作業をさせるのも一苦労だ。
「はぁー…ようやくか…」
昨日、バカっぽい勇者御一行が前の村にやってきた。
バカっぽい魔法使いの女が、バカみたいに魔法を打つせいで前村はほぼ壊滅。
とても住めるような状態じゃなかった。
バカな勇者達を倒したが行く当てもなかったので、仕方なくこいつらと一緒に行動している。
この世界に付いて分からない事も多いので、情報収集のついでだ。
前の村が壊滅したので、再建を考えたが、またバカが襲ってきてもめんどくさい。
だからあの村を離れる事にして、新しい場所で村を作っている。
「よーし!飯にしよう!」
ゴブリンは知能が高くない。
だから作業に時間がかかる。
1週間程掛かったが、ようやく簡単な家が3つ完成した。
俺が1つの家を使い、族長と他8匹のゴブリン、3匹のスライムで2つの家を使うって配分。
めちゃくちゃ快適って訳じゃないが雨風は十分凌げる。
そしてこの世界では、魔物も魔物を食う。
足が6本ある豚や、ツノの生えたデカいリスも居た。
最初は食うのに戸惑いを感じたがこれが意外と美味い。
適度に脂が乗っていて肉自体に味がある。
他にも山菜や木の実などもあり、全然食べれる物ばかりだった。
その為、食事には満足している。
これらの食料だが、基本的にはゴブリンたちが取って来てくれる。
元々群れで動くゴブリンなので、多勢無勢。一斉に襲い掛かり魔物を狩ってくる。
奴らなりに考えた狩猟方法だ。
で、スライムだがこいつらは意外と便利でな。
スライムの体液には毒を中和させる効力があり、毒のある薬草や木の実をスライムの中に入れると無毒の状態で吐き出される。
一度体内に取り込んだものを食べるってのに抵抗はあったが、それも日数とともにどうでも良くなった。
後、こいつらは褒めてやるとプルルンと震える。
可愛い。
そう言えば、前の村からこの場所に来る途中、馬車の残骸に遭遇したんだ。
辺りには馬の死体と、破れた服があり、血痕も付いていたが、既に乾燥していた。
馬車の中は食料だけを狙われたような感じで、その他の金品や道具等はそのまま。
馬車にはハイゴルンレア。と書かれていた。
まぁ、ここを通ろうとした商人が、魔物に襲われたんだろう。
ただ、この馬車では貴重な収穫が沢山あった。
古いコンパスと懐中時計。それに地図。農道具や手入れされた剣や槍もあった。
それに魔道書と思われるものも。
これ幸いとありがたく貰って行ったよ。
特に地図と農道具はありがたい。
この世界の地理がわかる上に、農業が出来る。
まぁ農業の知識はあんまないから試行錯誤は絶対必要だが…
それでもうまくいけば生活が楽になる。
かもしれない。
一先ず、農道具の使い方をゴブリンに教えて作物を作らせる。
地図はこの近辺のものだった。
地図には比較的大きな街が2つある。
1つは地図の北側に。
もう1つは地図の中心から北西側にある。
俺たちが居るのは地図の中心から南側。
東から南へと移動してきた。
この馬車の持ち主はどちらかの街から東へ移動中に魔物襲われたんだろうと予測を立てた。
北と北西にある街は魔物の住処か人が住んでるのか分からない。ただ、東側には恐らく人間の住む街があるのだろう。
俺はゴブリン達に、北と東には行くなと伝えた。
万が一の為だ。
後に開拓して行きたいがまだその時ではない。
で、懐中時計は残念ながら壊れていた。
時間は、10時15分を示したまま動かない。
何か仕掛けはないかなーと思って色々触ってみたが特になし。
いつか直せるか試してみる。
剣や盾、槍などの武器はゴブリンに持たせる。
現在は、剣3本、盾が2つに、槍が2本だ。
ゴブリンの中でも体が大きいやつには剣と盾を、小さいやつには槍を持つように指示した。
ずっと木の棒だったみたいなので素直に喜んでいたよ。
むしろよくそれで戦ってたなお前ら。
どっかの勇者みたいだぞ。
木の棒って。おなべの蓋も持っていれば完璧だった。
最後に、魔道書だ。
A3用紙くらいの大きさに、辞書並みのぶ厚さ。
濃い黄色い表紙に、魔法陣みたいなのが書かれている。
ぺらぺらとめくってみたが何と書いてるのか全くわからん。
ただ、イラストが付いていてこんな感じで魔法出すんだよ~的な事を書いてるんだろうなーってのは分かった。
こちらに関してはじっくり時間をかけて攻略していく予定だ。
もしまたあんなバカっぽい勇者が現れて殺されそうになった時、自衛出来るものがないとな。
あのバカっぽい魔法使いっぽい女は何もないところから火の玉を出していた。
恐らくアレが魔法なんだろうな。
実際この目で見ている。
この世界は魔法という概念がある。
まぁ、概念があるってだけで、それを使えるかどうかはまた別の話なんだがな。
でも、時々思う。
あのバカっぽい魔法使いの女が使えたんだから、俺でも使えるんじゃね…?
って。
だってあの魔法使いの女、バカっぽくなかった?
////////////////////////////
日が沈み、ゴブリン達は火を焚いた。
松明を持ってみんな踊っている。
今日はお祭りだ。
家が3つ完成し、村として形になったから。
建国記念日って感じ。
今日の為に用意した肉や魚や山程の山菜をみんなで食べる。
達成感はあるよ。
そりゃゼロから家を3つも作ったんだからな。
ゴブリンも喜んでるし、スライムも楽しそう。
表情がわからんが…
ここに酒があればよかったんだけどなーと思いつつ夜空を見上げる。
大きな月が2つ。
木の間から見える。
ここに来て1週間程経った。
未だに現実世界に関する情報はなし。
むしろ、非現実的な事が増すばかり。
でも、帰ることを諦めた訳じゃない。
前に進む事を決めた。
ここで生き抜き、元いた世界に帰る為。
今日は俺も騒ごう。
肉や魚を片手に、こいつらと踊ろう。
その前にだ。
「聞け!皆の者!」
ゴブリン達が一斉にユウを見る。
「これよりここを我等の城とする!」
ゴブリン達はおぉー!目を輝かせた。
「この村に名前をつける!」
ゴブリン達は更におぉー!!と目を輝かせる。
「その名は…マサラヴィレッジ!!」
一瞬沈黙が流れた後、ゴブリン達の歓声が上がった。
どうやら皆気に入ったようだ。
マサラヴィレッジ!マサラヴィレッジ!と反復して叫ぶ。
ユウはウンウンと頷く。
演説は大成功を収めた。
その日は朝までお祭りが続いた。
名前、それでいいのかゴブリン達よ。
そこにいた全員が欠陥だった。
そこにいた全員がネーミングセンス0だった。
…
…
…
…
村の端で1匹のゴブリンが涙を流していた。
「主人様ありがとうございます…マサラヴィレッジ…良い村をありがとうございます…」
…
…
…
マサラヴィレッジ!マサラヴィレッジ!
マサラヴィレッジ!マサラヴィレッジ!
…
…
おまけ
「6本足豚」
忙しそうな音がする。
トントン!と木を叩く音や、ゴブリン達の声が聞こえる。
「おい!違うって!その木はこっちだ!」
「おい!喧嘩するな!連携しっかり取れ!」
「お前…どうやったらそんな泥だらけになるんだよ…」
「その木はこっちだって言ってんだろ!!」
突如、この世界に呼び出された男。
ユウは今、村の建設に勤しんでいる。
ゴブリンは知能が高くないので、作業をさせるのも一苦労だ。
「はぁー…ようやくか…」
昨日、バカっぽい勇者御一行が前の村にやってきた。
バカっぽい魔法使いの女が、バカみたいに魔法を打つせいで前村はほぼ壊滅。
とても住めるような状態じゃなかった。
バカな勇者達を倒したが行く当てもなかったので、仕方なくこいつらと一緒に行動している。
この世界に付いて分からない事も多いので、情報収集のついでだ。
前の村が壊滅したので、再建を考えたが、またバカが襲ってきてもめんどくさい。
だからあの村を離れる事にして、新しい場所で村を作っている。
「よーし!飯にしよう!」
ゴブリンは知能が高くない。
だから作業に時間がかかる。
1週間程掛かったが、ようやく簡単な家が3つ完成した。
俺が1つの家を使い、族長と他8匹のゴブリン、3匹のスライムで2つの家を使うって配分。
めちゃくちゃ快適って訳じゃないが雨風は十分凌げる。
そしてこの世界では、魔物も魔物を食う。
足が6本ある豚や、ツノの生えたデカいリスも居た。
最初は食うのに戸惑いを感じたがこれが意外と美味い。
適度に脂が乗っていて肉自体に味がある。
他にも山菜や木の実などもあり、全然食べれる物ばかりだった。
その為、食事には満足している。
これらの食料だが、基本的にはゴブリンたちが取って来てくれる。
元々群れで動くゴブリンなので、多勢無勢。一斉に襲い掛かり魔物を狩ってくる。
奴らなりに考えた狩猟方法だ。
で、スライムだがこいつらは意外と便利でな。
スライムの体液には毒を中和させる効力があり、毒のある薬草や木の実をスライムの中に入れると無毒の状態で吐き出される。
一度体内に取り込んだものを食べるってのに抵抗はあったが、それも日数とともにどうでも良くなった。
後、こいつらは褒めてやるとプルルンと震える。
可愛い。
そう言えば、前の村からこの場所に来る途中、馬車の残骸に遭遇したんだ。
辺りには馬の死体と、破れた服があり、血痕も付いていたが、既に乾燥していた。
馬車の中は食料だけを狙われたような感じで、その他の金品や道具等はそのまま。
馬車にはハイゴルンレア。と書かれていた。
まぁ、ここを通ろうとした商人が、魔物に襲われたんだろう。
ただ、この馬車では貴重な収穫が沢山あった。
古いコンパスと懐中時計。それに地図。農道具や手入れされた剣や槍もあった。
それに魔道書と思われるものも。
これ幸いとありがたく貰って行ったよ。
特に地図と農道具はありがたい。
この世界の地理がわかる上に、農業が出来る。
まぁ農業の知識はあんまないから試行錯誤は絶対必要だが…
それでもうまくいけば生活が楽になる。
かもしれない。
一先ず、農道具の使い方をゴブリンに教えて作物を作らせる。
地図はこの近辺のものだった。
地図には比較的大きな街が2つある。
1つは地図の北側に。
もう1つは地図の中心から北西側にある。
俺たちが居るのは地図の中心から南側。
東から南へと移動してきた。
この馬車の持ち主はどちらかの街から東へ移動中に魔物襲われたんだろうと予測を立てた。
北と北西にある街は魔物の住処か人が住んでるのか分からない。ただ、東側には恐らく人間の住む街があるのだろう。
俺はゴブリン達に、北と東には行くなと伝えた。
万が一の為だ。
後に開拓して行きたいがまだその時ではない。
で、懐中時計は残念ながら壊れていた。
時間は、10時15分を示したまま動かない。
何か仕掛けはないかなーと思って色々触ってみたが特になし。
いつか直せるか試してみる。
剣や盾、槍などの武器はゴブリンに持たせる。
現在は、剣3本、盾が2つに、槍が2本だ。
ゴブリンの中でも体が大きいやつには剣と盾を、小さいやつには槍を持つように指示した。
ずっと木の棒だったみたいなので素直に喜んでいたよ。
むしろよくそれで戦ってたなお前ら。
どっかの勇者みたいだぞ。
木の棒って。おなべの蓋も持っていれば完璧だった。
最後に、魔道書だ。
A3用紙くらいの大きさに、辞書並みのぶ厚さ。
濃い黄色い表紙に、魔法陣みたいなのが書かれている。
ぺらぺらとめくってみたが何と書いてるのか全くわからん。
ただ、イラストが付いていてこんな感じで魔法出すんだよ~的な事を書いてるんだろうなーってのは分かった。
こちらに関してはじっくり時間をかけて攻略していく予定だ。
もしまたあんなバカっぽい勇者が現れて殺されそうになった時、自衛出来るものがないとな。
あのバカっぽい魔法使いっぽい女は何もないところから火の玉を出していた。
恐らくアレが魔法なんだろうな。
実際この目で見ている。
この世界は魔法という概念がある。
まぁ、概念があるってだけで、それを使えるかどうかはまた別の話なんだがな。
でも、時々思う。
あのバカっぽい魔法使いの女が使えたんだから、俺でも使えるんじゃね…?
って。
だってあの魔法使いの女、バカっぽくなかった?
////////////////////////////
日が沈み、ゴブリン達は火を焚いた。
松明を持ってみんな踊っている。
今日はお祭りだ。
家が3つ完成し、村として形になったから。
建国記念日って感じ。
今日の為に用意した肉や魚や山程の山菜をみんなで食べる。
達成感はあるよ。
そりゃゼロから家を3つも作ったんだからな。
ゴブリンも喜んでるし、スライムも楽しそう。
表情がわからんが…
ここに酒があればよかったんだけどなーと思いつつ夜空を見上げる。
大きな月が2つ。
木の間から見える。
ここに来て1週間程経った。
未だに現実世界に関する情報はなし。
むしろ、非現実的な事が増すばかり。
でも、帰ることを諦めた訳じゃない。
前に進む事を決めた。
ここで生き抜き、元いた世界に帰る為。
今日は俺も騒ごう。
肉や魚を片手に、こいつらと踊ろう。
その前にだ。
「聞け!皆の者!」
ゴブリン達が一斉にユウを見る。
「これよりここを我等の城とする!」
ゴブリン達はおぉー!目を輝かせた。
「この村に名前をつける!」
ゴブリン達は更におぉー!!と目を輝かせる。
「その名は…マサラヴィレッジ!!」
一瞬沈黙が流れた後、ゴブリン達の歓声が上がった。
どうやら皆気に入ったようだ。
マサラヴィレッジ!マサラヴィレッジ!と反復して叫ぶ。
ユウはウンウンと頷く。
演説は大成功を収めた。
その日は朝までお祭りが続いた。
名前、それでいいのかゴブリン達よ。
そこにいた全員が欠陥だった。
そこにいた全員がネーミングセンス0だった。
…
…
…
…
村の端で1匹のゴブリンが涙を流していた。
「主人様ありがとうございます…マサラヴィレッジ…良い村をありがとうございます…」
…
…
…
マサラヴィレッジ!マサラヴィレッジ!
マサラヴィレッジ!マサラヴィレッジ!
…
…
おまけ
「6本足豚」
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