いきなり魔界に呼び出された俺は、魔界一しょぼい村の主人になった!

Chiaki

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第1章

#7 ゴブリン!きみにきめた!

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3匹の斥候に剣と盾を持たせ、森の中に来た。

目の前にいるのは凶暴な熊のような魔物。

見た目は熊のようだが、前足は長く関節も2つある。
下顎から大きな牙が2本生えており、爪も長い。

奴は今、狩った獲物を食べている最中だ。

ゴブリンに目配りをし、俺たちはゆっくりと風下から近づく。

「いいか、手筈通りにやってみろ。」

ユウの一言にゴブリン達は頷き、散らばった。

それぞれ各々のポジションに着き、ユウの合図も待つ。

3匹がポジションに着いたのを確認すると、ユウは小さく手を挙げ、ゴブリンに合図をした。

それを見たゴブリンの1匹が石を投げ熊の気を逸らす。

投げた石は木にあたりコツンと音を立てた。
その音に熊が反応する。
音の鳴った方向を向き、気配を感じ取っているようだ。

他2匹のゴブリンはゆっくりと熊に近づく。
もう一度石を投げ、熊の注意をさらに引いた。
2回目の音が鳴った方に熊が向いた瞬間、1匹のゴブリンが駆け出す。
熊との距離が程よく近くなった辺りでジャンプし、飛びかかる。
持っていた剣を熊の肩に突き刺し血しぶきが飛んだ。

不意打ちを食らった熊は雄叫びを上げ体を大きく揺らした。
刺したゴブリンも堪らず退散。
剣は刺さったままになり、盾だけになった。

クマは体制を整え直してゴブリンと向き合う形を取る。
牙を剥き出しにし威嚇する熊。

盾だけゴブリンに気を取られてる今、もう1匹のゴブリンが走り出し、足の腱を切り裂いた。

熊は再度、痛みで叫んだ。

熊が後ろを振り返ったのを確認し、盾だけゴブリンは刺さったままの剣に向かってジャンプ。
そのままさらに深く剣を突き刺す。

その間、石を投げていたゴブリンは移動。
熊の死角を陣取る形で移動する。

剣が深く突き刺さった肩の痛みに雄叫びを上げるが、足元にいたゴブリンにもう片方の足の腱も切り裂かれる。

両脚の腱を切られた熊はそのまま前に倒れこんだ。

その瞬間、最後まで待機していたゴブリンが駆け出し熊の額に剣を突き刺した。

刺した所から血が吹き出し、熊は白目を向く。

「よっし!やった!」

見事熊を討ち取ることに成功した。

ゴブリン達は剣を高々に上げ、喜びを表している。

ユウも熊に近づき、意識を確かめる。
熊は見事に死んでおり、舌が口から出ていた。

「よくやったお前たち!いい連携だったぞ!」

ゴブリンたちは嬉しそうに踊っている。

上場の出来だ。
犠牲は出ると思ったが、みな無傷で勝利した。
ポンコツだと思っていたが、意外とやるじゃないか。

ゴブリンを見ながらユウはそう思った。

仕留めた熊はその場で血抜きを行い、何個かに切り分けて村へ持ち帰る。

3匹のゴブリンは嬉しそうに村へと向かう。

「さて…と。俺の推測が正しければ、戦闘を繰り返す事によって進化される。」

ユウは後ろから3匹のゴブリンを見つめる。

「おい、お前ら」

その声にゴブリン達は反応し振り返る。

「なんか体に変化とかないか?こう力が湧き出る感じとか」

ゴブリンは頭の上にハテナマークを乗せた。

「い、いえ…何も…だよな?」

「お、おう…体調は絶好調です」

「俺も絶好調です!」

ふむ…まだ経験値が足りないか…?
それとも戦闘での進化は間違いなのか…?

いくつかの疑問を頭に抱え込む。
考え事をしていたが、

「主人さま?」

ゴブリンのその声で我に帰る。

「あ、あぁ、そうか絶好調か。そりゃ良かった。さぁ、村へ戻ろう。」

ユウはゴブリン達を引いて村へと戻った。



ーーーーーその夜

食事も終え、ユウは家で考え事をしていた。

すると、扉をノックする音が聞こえる。

コンコン。

「主人様、お待たせ致しました。」

聞こえたのは族長の声。

ユウは族長を家に入れた。

「呼び出してすまんな。まぁそこへ座ってくれ。」

族長は地図を挟むように、ユウの前に座った。

松明の火がゆらゆらと揺れる室内。
その灯りが部屋と2人を照らす。

「それで、お話と言うのは?」

それなんだがな。
ユウは族長の目を見た後、地図に目を下ろした。

「その周辺、もしくは前の村周辺で強い魔物がいる場所を知らないか?」

族長はその言葉に少し驚いたが、すぐにいつも通りの顔になり口を開いた。

「それでしたら、前の村から南。この村から東の方のこの辺りに“魂狩りのリーパー”が居ます。」

族長は地図を指差して言う。

「斥候が見つけた墓地の北側か…」

「そうです。以前、村の1匹がそのリーパーを見たと…報告が上がっています。」

なるほど。
まぁリーパーと言われてもどんなのかはわからんが…

「リーパー…か。強いのか?」

「さぁ、どうでしょう。戦った事がないもので。しかし、目撃したゴブリンは恐ろしいモノを見た、と。背筋が凍るような、見つかると命はないと、そう思ったらしいです。」

恐ろしいモノを見た…ねぇ…。
幽霊やその類のもんか?
魔物も十分その類のもんだと思うが…
見つかると命がないとは大袈裟な。
本能的にリーパーを拒絶したのか?
野生の勘的な何かで…

「ですので、我々はその近辺に近付かないようにしておりました。勿論、我々以外の魔物も。その周辺には近付こうとはしなかった。」

ふむ…
ユウはその言葉を聞いて考え込む。

周辺の魔物も近付かない程、異質な存在。
本能的に拒絶するような…

「成る程、大体分かった。明日、直接見たゴブリンにもう少し詳しい話を聞いてみるよ。」

そう言い、族長を帰らせた。

ユウは地図を見ながら、今聞いた話を思い出す。

「背筋が凍る程の魔物か…」

松明の火がゆらゆらと揺れる。
1人になった部屋を仄かに照らして。

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