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翌日は土曜日だったらしくお父さんがあれこれと買い込んできた。
寝床に使う籠、トイレにおもちゃ、それにエサ皿。少年は喜んでそれらを並べている。
この父親は少し息子に甘過ぎるのではないか、と思うが私が快適に過ごせるのだから文句は無い。
それにしてもこの家には母親はいないのだろうか?全く姿を見ない。
しかし家の中は綺麗に片付いており男やもめとも思えないな。
「ミケ!遊ぼう」
私がキョロキョロとリビングを観察していると少年が私を抱き上げる。
「ミケ!今日は校庭が雨でぐちゃぐちゃだからサッカーは中止なんだよ。残念」
「サッカーは楽しいよ。僕はあんまり上手じゃないから試合には出られないけど、練習してるだけでも楽しいんだ」
「3年生と4年生でチームだからさ、どうしても4年生の方がレギュラーに選ばれるんだよ」
ということは、この少年は今小学校の3年生らしい。確かにあまりサッカーは上手そうじゃないな…何となくだけれど。
「ほら!葵!遊んでばかりいないで、宿題はやったのか?」
父親に怒られて少年はしぶしぶ私を放すと自室に入っていった。
葵という少年の名を聞いたとき胸にチクリと棘が刺さったような痛みが走った気がしたが、気のせいだと思った。
「ただいまー!」
そのまた翌日の昼過ぎ、女の人の声が帰宅を告げる。
「あ!お母さんだ」
葵君は私を抱き上げて玄関に走る。
玄関にはキャスターバッグのコロコロを雑巾で拭いているスーツ姿の女の人がいた。
「お母さん!お帰りなさい!」
「葵!ただいまー!お、それがお父さんが勝手に許可した子猫だね?可愛いねぇ~」
お母さんは葵君の頭を撫でた後私の顎を撫でる。
「きゅうきゅう」
反射的に喉が鳴ってしまう…悔しい。
というかちゃんとお母さんいたんだね、よかった。
「お帰り」
お父さんも玄関まで出迎える。
「あなた、急な出張でごめんねー」
お母さんがキャスターバッグを持ち上げようとするのをお父さんが代わって持ち上げる。
夜ご飯はお母さんが作ったハンバーグをみんなで食べていた。私には適温のミルクが出された。膜も張っていない。お母さんはさすが、よくわかっているな。
ミルクをたくさん飲んだからか身体が動くようになってきた。
私は籠から足を踏み出してリビングを歩き回る。
「あ!ミケが元気になった!」
ハンバーグを頬張った葵君が気付いて指をさすとお父さんもお母さんも笑顔を向けてくれる。
どうやら私は運が良いらしい。素敵な家族に拾われた。
「ところで、ミケのことちゃんと病院に連れて行ったの?」
お母さんがお父さんに聞くとお父さんは首を傾げる。
「ん?元気になったんだから良いだろ?」
「ダメだよ。何か病気持ってるかもしれないし、ダニとかノミがついてるかもしれないんだから。ミケだってかわいそうでしょ?」
「そういうもんなのか?知らなかった」
「もう…明日私早く帰れそうだから仕事の後に連れて行くよ」
「ありがとう、助かるよ」
お父さんが頭を下げるとお母さんは溜息を吐きながらも笑顔だった。
寝床に使う籠、トイレにおもちゃ、それにエサ皿。少年は喜んでそれらを並べている。
この父親は少し息子に甘過ぎるのではないか、と思うが私が快適に過ごせるのだから文句は無い。
それにしてもこの家には母親はいないのだろうか?全く姿を見ない。
しかし家の中は綺麗に片付いており男やもめとも思えないな。
「ミケ!遊ぼう」
私がキョロキョロとリビングを観察していると少年が私を抱き上げる。
「ミケ!今日は校庭が雨でぐちゃぐちゃだからサッカーは中止なんだよ。残念」
「サッカーは楽しいよ。僕はあんまり上手じゃないから試合には出られないけど、練習してるだけでも楽しいんだ」
「3年生と4年生でチームだからさ、どうしても4年生の方がレギュラーに選ばれるんだよ」
ということは、この少年は今小学校の3年生らしい。確かにあまりサッカーは上手そうじゃないな…何となくだけれど。
「ほら!葵!遊んでばかりいないで、宿題はやったのか?」
父親に怒られて少年はしぶしぶ私を放すと自室に入っていった。
葵という少年の名を聞いたとき胸にチクリと棘が刺さったような痛みが走った気がしたが、気のせいだと思った。
「ただいまー!」
そのまた翌日の昼過ぎ、女の人の声が帰宅を告げる。
「あ!お母さんだ」
葵君は私を抱き上げて玄関に走る。
玄関にはキャスターバッグのコロコロを雑巾で拭いているスーツ姿の女の人がいた。
「お母さん!お帰りなさい!」
「葵!ただいまー!お、それがお父さんが勝手に許可した子猫だね?可愛いねぇ~」
お母さんは葵君の頭を撫でた後私の顎を撫でる。
「きゅうきゅう」
反射的に喉が鳴ってしまう…悔しい。
というかちゃんとお母さんいたんだね、よかった。
「お帰り」
お父さんも玄関まで出迎える。
「あなた、急な出張でごめんねー」
お母さんがキャスターバッグを持ち上げようとするのをお父さんが代わって持ち上げる。
夜ご飯はお母さんが作ったハンバーグをみんなで食べていた。私には適温のミルクが出された。膜も張っていない。お母さんはさすが、よくわかっているな。
ミルクをたくさん飲んだからか身体が動くようになってきた。
私は籠から足を踏み出してリビングを歩き回る。
「あ!ミケが元気になった!」
ハンバーグを頬張った葵君が気付いて指をさすとお父さんもお母さんも笑顔を向けてくれる。
どうやら私は運が良いらしい。素敵な家族に拾われた。
「ところで、ミケのことちゃんと病院に連れて行ったの?」
お母さんがお父さんに聞くとお父さんは首を傾げる。
「ん?元気になったんだから良いだろ?」
「ダメだよ。何か病気持ってるかもしれないし、ダニとかノミがついてるかもしれないんだから。ミケだってかわいそうでしょ?」
「そういうもんなのか?知らなかった」
「もう…明日私早く帰れそうだから仕事の後に連れて行くよ」
「ありがとう、助かるよ」
お父さんが頭を下げるとお母さんは溜息を吐きながらも笑顔だった。
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