31 / 53
秀秋ちゃんを救え!
しおりを挟む
「…まさか…そんな。小早川金吾様が女子だった、だと?」
左近さんが絶句する。
「そのような歴史的事実は無いはず…いや若くして亡くなっていることに関係が…?」
琴子は考え込む。
「お兄ちゃん…まさか。その人も可愛いとか色っぽいとかなんじゃ…」
すずは疑いの目で見てくる。
「ぎくっ…」
あの後重元君の案内で屋敷を抜け出した俺と小次郎はちょうど門前払いを食らってとぼとぼ歩く琴子と左近さんに会った。
何はともあれ逃げるべし、とすずと合流し、大坂を出て山中でやっと腰を落ち着けた。
小早川秀秋との顛末を話した琴子と左近さんの反応がこれだ。
「とにかく!秀秋ちゃんを助けないと!あのままじゃ死んじゃうって!」
「そうだぜ!顔色なんか青っちょろくて、本当に死んじまいそうだぜ」
俺の言葉に小次郎が同意する。
「むむ…他家の事に首を突っ込むのは避けたいところだな」
左近さんは腕を組む。
「それも小早川家当主が女子とは…下手したら改易になる話ですね」
琴子も難しい顔だ。
…こいつらは秀秋ちゃんを見てないからこんな酷いことが言えるんだ。あんな可愛い娘がピンチなんだぞ!
「三成さんに相談しよう!」
「まぁ…そうだな。まずは殿に」
「ですね」
俺の言葉に左近さんと琴子が頷いて皆で立ち上がる。
「なるほど…話はわかった…悩ましいところだな…」
三成さんは俺達の話を聞くや顎に手を置き思案する。
「殿。どうされますか?」
「うむ。秀頼君と会えなかった以上伊達は諦めるしかあるまいな」
左近さんの問いかけに三成さんは気のない返事をする。
「それはわかりました。それで、どうされます?」
「どうとは?何についてだ?」
再度の問いかけに三成さんは左近さんをちらっと見る。
「小早川家の事情に首を突っ込んでまでその女子を助けるべきかどうかということです!」
左近さんは三成さんの気のない返事に多少強めに言う。
「左近…何を言ってるのだ。助けるに決まっている。私が悩んでいるのはどのように助けるかだ」
三成さんは不思議そうな顔で左近さんを見る。
左近さんは呆気に取られている。
「しかし…金吾様を助けても石田家には何も得がない。どころか小早川と拗れたり徳川家康に当家を攻撃する口実を与えることになります!」
左近さんが気を取り直して反論する。
「それは些末なことだ。太閤殿下の御親戚が下郎どもに虐げられている。そんなことは許されない。それが年若い女子であれば尚更だ。看過できん」
三成さんは事も無げにそう返事する。
「と、同時に史実になっている小早川の土壇場の裏切り。あれがその稲葉と平岡という家老の企みであればそれを回避することができるかもしれないな」
大谷さんが呟く。
…確かにそうだ。もし小早川の実権を握っているのが2人の家老であれば秀秋ちゃんには指揮権はなかったはず。だとすれば2人の家老を排除できれば小早川家の動き自体が変わる。
「それは…そうですが…」
左近さんは納得がいかないようだ。
「左近。石田の家を守ろうとしてくれているのはよくわかる。しかし汚名を着て後世に残っても仕方ないのだ。それならば名を残さず死ぬのみだ」
三成さんは微笑みを浮かべて左近さんを諭す。
「ははっ!」
左近さんは手をついて平伏した。
「…さて。とはいえどうしたものか。左近の言う通り迂闊に他家の事に首を突っ込むわけにもいかんな…」
「うむ…徳川にもこちらの動きを知られたくない…が。小早川殿は今大坂にいる。難しいな…」
三成さんと大谷さんは腕を組み考え込む。
「あの…おねさん…太閤さんの奥さんにお願いしてみたら?」
思いつきで言ってみる。
「…高台院様か…」
「…あり。だな」
三成さんと大谷さんが顔をあげる。
「小早川殿は高台院様の実の甥。それがそのような不遇をかこっていると知れば必ずやお力をお貸しくださるだろう」
三成さんが頷いている。
「あぁ。しかも高台院様にはさすがの徳川家康も口出しはできん。絶妙な人選だ」
大谷さんも頷く。
「問題はどのようにして高台院様にお願いするか…だな。私達の言うことを信じてもらえるかどうか」
「証拠を見つけるしかあるまいな…」
「とはいえ証拠など…」
「うむ…」
三成さんと大谷さんはまたも腕を組んで黙り込む。
「あの…2人の家老が秀秋ちゃんを虐めてるところをその高台院様に見てもらえばいいんじゃないですか?その目で見れば信じるしかないでしょ?」
俺の言葉に2人は渋い顔をする。
「高台院様はご高齢だ。小早川の屋敷に忍び込めなどとは言えぬ…」
三成さんの言葉に大谷さんが頷く。
「なら高台院様が信用している人に見てもらうとか…」
「孝蔵主殿か…こちらもまた年を召されているな」
三成さんは俯く。
「いや。孝蔵主殿の娘ならばあるいは」
大谷さんが顔をあげる。
「娘?孝蔵主殿は未婚で子はないはずだが」
三成さんが首を捻る。
「うむ。表向きはな。しかし密かに子を宿し娘を1人産んでいる。ちょうど殿下が関白に就任された頃だ」
「…あったな。孝蔵主殿が体調を崩されたと里に返されておった…その時に産んだ子か」
「そうだ。だから年の頃も丁度いい。嫁に出していなければ高台院様にお仕えしている可能性が高い」
…ダメだ三成さんと大谷さんの会話本当にわからん。
「よし。まずは高台院様に文を書く…左近!足労だが今度は京だ。高台院様に届け協力をあおいでくれ!」
三成さんはそう言うや文机を出して硯に向かった。
左近さんが絶句する。
「そのような歴史的事実は無いはず…いや若くして亡くなっていることに関係が…?」
琴子は考え込む。
「お兄ちゃん…まさか。その人も可愛いとか色っぽいとかなんじゃ…」
すずは疑いの目で見てくる。
「ぎくっ…」
あの後重元君の案内で屋敷を抜け出した俺と小次郎はちょうど門前払いを食らってとぼとぼ歩く琴子と左近さんに会った。
何はともあれ逃げるべし、とすずと合流し、大坂を出て山中でやっと腰を落ち着けた。
小早川秀秋との顛末を話した琴子と左近さんの反応がこれだ。
「とにかく!秀秋ちゃんを助けないと!あのままじゃ死んじゃうって!」
「そうだぜ!顔色なんか青っちょろくて、本当に死んじまいそうだぜ」
俺の言葉に小次郎が同意する。
「むむ…他家の事に首を突っ込むのは避けたいところだな」
左近さんは腕を組む。
「それも小早川家当主が女子とは…下手したら改易になる話ですね」
琴子も難しい顔だ。
…こいつらは秀秋ちゃんを見てないからこんな酷いことが言えるんだ。あんな可愛い娘がピンチなんだぞ!
「三成さんに相談しよう!」
「まぁ…そうだな。まずは殿に」
「ですね」
俺の言葉に左近さんと琴子が頷いて皆で立ち上がる。
「なるほど…話はわかった…悩ましいところだな…」
三成さんは俺達の話を聞くや顎に手を置き思案する。
「殿。どうされますか?」
「うむ。秀頼君と会えなかった以上伊達は諦めるしかあるまいな」
左近さんの問いかけに三成さんは気のない返事をする。
「それはわかりました。それで、どうされます?」
「どうとは?何についてだ?」
再度の問いかけに三成さんは左近さんをちらっと見る。
「小早川家の事情に首を突っ込んでまでその女子を助けるべきかどうかということです!」
左近さんは三成さんの気のない返事に多少強めに言う。
「左近…何を言ってるのだ。助けるに決まっている。私が悩んでいるのはどのように助けるかだ」
三成さんは不思議そうな顔で左近さんを見る。
左近さんは呆気に取られている。
「しかし…金吾様を助けても石田家には何も得がない。どころか小早川と拗れたり徳川家康に当家を攻撃する口実を与えることになります!」
左近さんが気を取り直して反論する。
「それは些末なことだ。太閤殿下の御親戚が下郎どもに虐げられている。そんなことは許されない。それが年若い女子であれば尚更だ。看過できん」
三成さんは事も無げにそう返事する。
「と、同時に史実になっている小早川の土壇場の裏切り。あれがその稲葉と平岡という家老の企みであればそれを回避することができるかもしれないな」
大谷さんが呟く。
…確かにそうだ。もし小早川の実権を握っているのが2人の家老であれば秀秋ちゃんには指揮権はなかったはず。だとすれば2人の家老を排除できれば小早川家の動き自体が変わる。
「それは…そうですが…」
左近さんは納得がいかないようだ。
「左近。石田の家を守ろうとしてくれているのはよくわかる。しかし汚名を着て後世に残っても仕方ないのだ。それならば名を残さず死ぬのみだ」
三成さんは微笑みを浮かべて左近さんを諭す。
「ははっ!」
左近さんは手をついて平伏した。
「…さて。とはいえどうしたものか。左近の言う通り迂闊に他家の事に首を突っ込むわけにもいかんな…」
「うむ…徳川にもこちらの動きを知られたくない…が。小早川殿は今大坂にいる。難しいな…」
三成さんと大谷さんは腕を組み考え込む。
「あの…おねさん…太閤さんの奥さんにお願いしてみたら?」
思いつきで言ってみる。
「…高台院様か…」
「…あり。だな」
三成さんと大谷さんが顔をあげる。
「小早川殿は高台院様の実の甥。それがそのような不遇をかこっていると知れば必ずやお力をお貸しくださるだろう」
三成さんが頷いている。
「あぁ。しかも高台院様にはさすがの徳川家康も口出しはできん。絶妙な人選だ」
大谷さんも頷く。
「問題はどのようにして高台院様にお願いするか…だな。私達の言うことを信じてもらえるかどうか」
「証拠を見つけるしかあるまいな…」
「とはいえ証拠など…」
「うむ…」
三成さんと大谷さんはまたも腕を組んで黙り込む。
「あの…2人の家老が秀秋ちゃんを虐めてるところをその高台院様に見てもらえばいいんじゃないですか?その目で見れば信じるしかないでしょ?」
俺の言葉に2人は渋い顔をする。
「高台院様はご高齢だ。小早川の屋敷に忍び込めなどとは言えぬ…」
三成さんの言葉に大谷さんが頷く。
「なら高台院様が信用している人に見てもらうとか…」
「孝蔵主殿か…こちらもまた年を召されているな」
三成さんは俯く。
「いや。孝蔵主殿の娘ならばあるいは」
大谷さんが顔をあげる。
「娘?孝蔵主殿は未婚で子はないはずだが」
三成さんが首を捻る。
「うむ。表向きはな。しかし密かに子を宿し娘を1人産んでいる。ちょうど殿下が関白に就任された頃だ」
「…あったな。孝蔵主殿が体調を崩されたと里に返されておった…その時に産んだ子か」
「そうだ。だから年の頃も丁度いい。嫁に出していなければ高台院様にお仕えしている可能性が高い」
…ダメだ三成さんと大谷さんの会話本当にわからん。
「よし。まずは高台院様に文を書く…左近!足労だが今度は京だ。高台院様に届け協力をあおいでくれ!」
三成さんはそう言うや文机を出して硯に向かった。
0
あなたにおすすめの小説
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~
bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。
日本の運命を変えた天才少年-日本が世界一の帝国になる日-
ましゅまろ
歴史・時代
――もしも、日本の運命を変える“少年”が現れたなら。
1941年、戦争の影が世界を覆うなか、日本に突如として現れた一人の少年――蒼月レイ。
わずか13歳の彼は、天才的な頭脳で、戦争そのものを再設計し、歴史を変え、英米独ソをも巻き込みながら、日本を敗戦の未来から救い出す。
だがその歩みは、同時に多くの敵を生み、命を狙われることも――。
これは、一人の少年の手で、世界一の帝国へと昇りつめた日本の物語。
希望と混乱の20世紀を超え、未来に語り継がれる“蒼き伝説”が、いま始まる。
※アルファポリス限定投稿
天竜川で逢いましょう 〜日本史教師が石田三成とか無理なので平和な世界を目指します〜
岩 大志
歴史・時代
ごくありふれた高校教師津久見裕太は、ひょんなことから頭を打ち、気を失う。
けたたましい轟音に気付き目を覚ますと多数の軍旗。
髭もじゃの男に「いよいよですな。」と、言われ混乱する津久見。
戦国時代の大きな分かれ道のド真ん中に転生した津久見はどうするのか!!???
そもそも現代人が生首とか無理なので、平和な世の中を目指そうと思います。
武蔵要塞1945 ~ 戦艦武蔵あらため第34特別根拠地隊、沖縄の地で斯く戦えり
もろこし
歴史・時代
史実ではレイテ湾に向かう途上で沈んだ戦艦武蔵ですが、本作ではからくも生き残り、最終的に沖縄の海岸に座礁します。
海軍からは見捨てられた武蔵でしたが、戦力不足に悩む現地陸軍と手を握り沖縄防衛の中核となります。
無敵の要塞と化した武蔵は沖縄に来襲する連合軍を次々と撃破。その活躍は連合国の戦争計画を徐々に狂わせていきます。
【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記
糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。
それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。
かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。
ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。
※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる