一般人の関ヶ原〜すぐに知ったかぶりする俺が西軍を勝たせようと決心した結果どうなるかというお話〜

とんぼ

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江戸陥落

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軍議が開かれる。

明日秀忠軍に総攻撃をしかけるべし、という意見と、一度態勢を立て直し様子を見るべしという意見が飛び交った。

しかしどちらも決め手に欠く状況で、何はともあれ明日の相手の出方を見ようということになった。

さすがの琴子も歴史にない戦の見通しは立たず、悔しそうに黙っていた。

軍議が終わり解散すると三成さんは重元君に感謝の意を伝え金を贈ろうとした。
しかし重元君は「感謝の気持ちなら主君へ」と固辞して松尾山に帰った。

西軍の大勝利にもかかわらず空気がどことなく重かった。
それは吉川広家が討死したことだけが原因ではないように思えた。

夜が明ける。
秀忠軍は昨日のまま中山道を押さえている。
秀忠軍の全面には福島、黒田、細川、藤堂などが態勢を立て直し陣を敷いている。

左近さんが言うには「退くに退けんのだろう」ということだった。
琴子にどういう事か聞くと、家康側も西軍がどう動くかわからない、その上下手に退けば福島、黒田等が反旗を翻し噛みついてくるかもしれず身動きがとれなくなっているということだった。
…なるほど。

その日は1日両軍とも動きはなかった。

軍議ではまた様子見が決まり、睨み合いが続きそうな具合になってきた。

夜半に三成さんの本陣が俄に騒がしくなる。

俺は寝床を抜け出して様子を見に行く。

陣幕をめくると、そこには信じられない人がいた。
その人は三成さんの前に跪いて何かを報告しているようだった。

「紫乃さん!?」

そう、そこには江戸で敵に撃たれたはずの紫乃さんがいたのだ。

「あら。太助様、ごきげんよう」
紫乃さんはこちらに笑顔を向ける。

「紫乃とやら!よく知らせてくれた!上杉殿にくれぐれもよろしく伝えてくれ」
三成さんが興奮気味に言うと紫乃さんは礼をする。

「紫乃さん…死んだんじゃ…」
俺は紫乃さんに近づきながら声をかける。

「あれくらいでは死にませんわ。まぁ、ちょこっと痛かったですけどね」
紫乃さんは脇腹をさするようにする。

「さて、太助様とはいろいろお話ししたいのですが、すぐに戻らないといけませんわ」
紫乃さんは妖しく微笑む。

「何かあったの?」
「治部少輔様にお聞きになってくださいませ。では、失礼します」
俺の問いを軽く受け流すと紫乃さんは夜の闇に消えていった。

「何があったんですか?」
いつの間にか起き出してきた琴子が三成さんに話しかけている。

「あぁ…江戸が落ちた」
三成さんは事も無げに言う。

『江戸が!?』
俺と琴子の声がハモる。

江戸といえば家康の本拠地だ、そこが落ちたということは家康には帰る場所が無くなる。

「あぁ。3日前の事のようだ。上杉殿がやってくれた。宇都宮で結城秀康と決戦し、これを討ち取った」

「結城秀康を…それで関東の防壁は潰えましたか…すると…」
三成さんの言葉を琴子が引き取る。

「あぁ。それを知った伊達が最上領に出兵。後顧の憂いが無くなった上杉は全軍で関東に進軍、その勢いのまま江戸を手中に収めた。今は関東の周辺を全て切り従えようとしているとのことだ」
三成さんは力無く頷く。
…何か…勝ったのに嬉しくなさそうだな。

「伊達は剣呑だな…」
三成さんが小さく呟いた。

「殿!今すぐ家康本陣に夜襲をかけましょう!」
左近さんが武装して鼻息荒く近付いてくる。

「いや、この情報は家康にも届いているはず。と、すれば家康はもう同じ場所にはいるまいよ。残っているのは何も知らされていない福島や黒田の兵だけだ。戦るだけ無駄だ。皆を休ませろ。私も寝る」
三成さんはそう言うと陣幕を出ていってしまった。

「なんか三成さん元気ないね…」
俺の呟きに左近さんも琴子も頷いた。

翌朝日が昇ると果たして三成さんの言う通りであった。
秀忠軍は姿を消し、残された福島、黒田などの諸隊は進退に窮まっている様子が見て取れた。

三成さんは軍使を立て福島正則をはじめとした東軍諸将に対して降伏を勧告した。
総大将を失った東軍の諸将はこれを受け入れ武装を解除した。

こうして関ヶ原の戦いは西軍の勝利で終わった。
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