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薄っすらと積もった雪の道を、足跡が踏み荒らしていく。
その音に耳を傾けながら、黒鉄直は口元を緩めた。
今年は珍しく雪の多い冬で、直の足取りは自然と軽いものになっていた。その後ろを彼の幼馴染みである山田が付いて行くが、慣れない雪道に慎重になってしまう。
「直ー! そんなに急ぐと転ぶぞ? ……ったく、怖いもの知らずめ」
迷いのない足取りで進んでいた直は足を止めた。
空から新たな雪が散り始める。
音もなくひらひらと舞い降りてくるそれに、直は瞬きをして見つめる。一瞬何かを考えた素振りに山田が怪訝な顔をしていると、大きな口が上を向いて開かれ、雪は音もなく飲み込まれた。
「ちょっ、お前! 雪って汚いって言うぞ!?」
慌てる山田に対し、それが聞こえていないような顔で直は首を傾げた。
「美味しそうだったけど、冷たいだけだった」
それだけ呟いて、直はまた足早に雪を踏み鳴らした。
* * *
同じように整えられた制服の中で、直は一際目立つ存在だった。
周りよりも大きな背丈、あまり表情の変わらない顔立ちは作り物のような精巧さと言われている。性別を問わず、廊下を歩くだけで視線を集めてしまう。
「うわー、靴下がベチョベチョになった」
教室に入ると、山田は靴下を脱いだ。
指先は赤くなっている。
「お前は大丈夫だった?」
「うん」
「あんだけ躊躇なく歩いていたのに? なんで慎重な俺だけ……」
窓際の席である直は、大粒の雪が落ちてくるのを頬杖をつきながら眺めている。
教室の中のざわめきなど気にせず、まるで聞こえるはずのない雪の音に耳を傾けているように見える。
やがて、ホームルームのチャイムが鳴り、担任が1人の少女とともに教室へと入ってきた。
チョークの走る音に生徒たちは釘付けになる。
羽山雪乃
そこでやっと、直の視線は教壇へと向けられる。
――雪だ。
「羽山です、よろしくお願いします」
か細い声の転校生は、透き通るような白さの少しふっくらした少女だった。色素の薄い前髪は眉の上で切りそろえられ、大きな瞳をより一層印象的にさせている。
直は頬杖をやめ、少しだけ身を乗り出した。
――白くて、綺麗で、美味そう。
浮かんだ欲望を飲み込むように、喉が鳴る。
新しい異物に教室の中は色めき立ち、その音を拾う者はいなかった。
その音に耳を傾けながら、黒鉄直は口元を緩めた。
今年は珍しく雪の多い冬で、直の足取りは自然と軽いものになっていた。その後ろを彼の幼馴染みである山田が付いて行くが、慣れない雪道に慎重になってしまう。
「直ー! そんなに急ぐと転ぶぞ? ……ったく、怖いもの知らずめ」
迷いのない足取りで進んでいた直は足を止めた。
空から新たな雪が散り始める。
音もなくひらひらと舞い降りてくるそれに、直は瞬きをして見つめる。一瞬何かを考えた素振りに山田が怪訝な顔をしていると、大きな口が上を向いて開かれ、雪は音もなく飲み込まれた。
「ちょっ、お前! 雪って汚いって言うぞ!?」
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「美味しそうだったけど、冷たいだけだった」
それだけ呟いて、直はまた足早に雪を踏み鳴らした。
* * *
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「うわー、靴下がベチョベチョになった」
教室に入ると、山田は靴下を脱いだ。
指先は赤くなっている。
「お前は大丈夫だった?」
「うん」
「あんだけ躊躇なく歩いていたのに? なんで慎重な俺だけ……」
窓際の席である直は、大粒の雪が落ちてくるのを頬杖をつきながら眺めている。
教室の中のざわめきなど気にせず、まるで聞こえるはずのない雪の音に耳を傾けているように見える。
やがて、ホームルームのチャイムが鳴り、担任が1人の少女とともに教室へと入ってきた。
チョークの走る音に生徒たちは釘付けになる。
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直は頬杖をやめ、少しだけ身を乗り出した。
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浮かんだ欲望を飲み込むように、喉が鳴る。
新しい異物に教室の中は色めき立ち、その音を拾う者はいなかった。
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