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それからすぐに日奈子は話をつけてくれたようで、2週間後にはヒモ男くん(仮名)が家にやって来ることになった。
日曜日のお昼というタイミングなので、朝から念入りに部屋の掃除をした。
1LDKで狭いけど条件を飲んでくれているなら大丈夫だろう。
炬燵に入り、のんびりと待っていた。
ピンポーンと音が鳴り、インターホンのカメラを確認する。
これがヒモ男くんの第一印象となるわけだから、どんな人かとドキドキした。
「……これは」と思わず呟く。
赤い頭髪のモデルみたいなルックスの男が立っていた。
甘い顔立ちで優しそうだけど、ちょっとイケメンすぎるのでは……?
「まあ、いいか」
このルックスだからヒモとして成立しているのだと納得できる。目の保養になって素晴らしい。
あまり待たせないようにドアを開けた。
「いらっしゃいませ」とまるでお店のように出迎えてしまったけど、何が正解か分からない。
ヒモ男くんは「こんにちは」と微笑み、その声まで良かったから、ちょっとドキッとした。
……ちょっと年上かな?
当日のお楽しみということで日奈子からは何の情報も貰っていなかった。
大学時代の先輩ということだけ。
「外は寒かったでしょう。こちらで暖まってください」
炬燵に入るように促せば、横に立っていたヒモ男くんが「敬語……」と呟いた。
「ん?」
「敬語じゃなくていい」
「……なるほど」
じゃあ、やめよう。
それにしてもスタイルがいいな。
まじまじと観察してしまうけど、一級品過ぎて部屋の中で浮いている。
温かいお茶を入れ、ついでに会社の先輩から貰った温泉まんじゅうも出すことにした。
「じゃあ、まずは自己紹介でも。野崎春花です。社会人2年目で事務職をしています」
「春花ちゃん」
いきなりの名前呼び。
ちょっと驚いたけど「春花ちゃんです」と頷いておく。この距離感がヒモとして素晴らしい。
チラリと目を見て、相手を促す。
「前島健太郎。年齢は25。家事の手伝いは少しできると思う。半年間よろしくね、春花ちゃん」
「前島さん」
「健太郎でいいよ。健くんとかあだ名でもいいけど」
「じゃあ、健太郎くんで」
名前は真面目そうなのにな。
身近に赤い髪がいないので、綺麗に染められたそれを見つめてしまう。うちにあるシャンプーで大丈夫かな?
よく見たら耳にピアスが数個開いてるんだ。
「健太郎くんの荷物ってそれだけ?」
持ってきていたのはボストンバッグが一つだけ。
「春花ちゃんの家のものを使わせてもらうけど大丈夫?」
「うん、なんでも使ってね」
一応、お箸や食器は今回のために新調してある。
彼が手に持っているマグカップも新しく買ったものだった。
「平日の昼間はいないけど、好きに過ごしていいから。これが合鍵ね」
エイのキーホルダーが付いた鍵を渡す。
「エイ……」
「水族館が好きで。私のはマナティーなんだ。かわいいでしょう?」
自慢げに見せれば、「かわいい」と呟いていた。
こちらを愛しげに見つめるその表情……健太郎くんも水族館好きなのかも。これは共通点として嬉しい限りだ。
「どんな人が来るのかなって緊張してたけど、健太郎くんって意外と落ち着いているし、話しやすくて良かったよ」
素直に感想を述べれば、眉を下げられた。ん?
「……気に入ってもらえた? 合格?」
不安が見えて、ヒモ男は相手の機微を気にするんだなと思った。
だから安心させるように微笑み、「健太郎くんが来てくれて良かった」と伝える。
「……そう」
ちょっと照れくさそうにしているのが可愛かった。
日曜日のお昼というタイミングなので、朝から念入りに部屋の掃除をした。
1LDKで狭いけど条件を飲んでくれているなら大丈夫だろう。
炬燵に入り、のんびりと待っていた。
ピンポーンと音が鳴り、インターホンのカメラを確認する。
これがヒモ男くんの第一印象となるわけだから、どんな人かとドキドキした。
「……これは」と思わず呟く。
赤い頭髪のモデルみたいなルックスの男が立っていた。
甘い顔立ちで優しそうだけど、ちょっとイケメンすぎるのでは……?
「まあ、いいか」
このルックスだからヒモとして成立しているのだと納得できる。目の保養になって素晴らしい。
あまり待たせないようにドアを開けた。
「いらっしゃいませ」とまるでお店のように出迎えてしまったけど、何が正解か分からない。
ヒモ男くんは「こんにちは」と微笑み、その声まで良かったから、ちょっとドキッとした。
……ちょっと年上かな?
当日のお楽しみということで日奈子からは何の情報も貰っていなかった。
大学時代の先輩ということだけ。
「外は寒かったでしょう。こちらで暖まってください」
炬燵に入るように促せば、横に立っていたヒモ男くんが「敬語……」と呟いた。
「ん?」
「敬語じゃなくていい」
「……なるほど」
じゃあ、やめよう。
それにしてもスタイルがいいな。
まじまじと観察してしまうけど、一級品過ぎて部屋の中で浮いている。
温かいお茶を入れ、ついでに会社の先輩から貰った温泉まんじゅうも出すことにした。
「じゃあ、まずは自己紹介でも。野崎春花です。社会人2年目で事務職をしています」
「春花ちゃん」
いきなりの名前呼び。
ちょっと驚いたけど「春花ちゃんです」と頷いておく。この距離感がヒモとして素晴らしい。
チラリと目を見て、相手を促す。
「前島健太郎。年齢は25。家事の手伝いは少しできると思う。半年間よろしくね、春花ちゃん」
「前島さん」
「健太郎でいいよ。健くんとかあだ名でもいいけど」
「じゃあ、健太郎くんで」
名前は真面目そうなのにな。
身近に赤い髪がいないので、綺麗に染められたそれを見つめてしまう。うちにあるシャンプーで大丈夫かな?
よく見たら耳にピアスが数個開いてるんだ。
「健太郎くんの荷物ってそれだけ?」
持ってきていたのはボストンバッグが一つだけ。
「春花ちゃんの家のものを使わせてもらうけど大丈夫?」
「うん、なんでも使ってね」
一応、お箸や食器は今回のために新調してある。
彼が手に持っているマグカップも新しく買ったものだった。
「平日の昼間はいないけど、好きに過ごしていいから。これが合鍵ね」
エイのキーホルダーが付いた鍵を渡す。
「エイ……」
「水族館が好きで。私のはマナティーなんだ。かわいいでしょう?」
自慢げに見せれば、「かわいい」と呟いていた。
こちらを愛しげに見つめるその表情……健太郎くんも水族館好きなのかも。これは共通点として嬉しい限りだ。
「どんな人が来るのかなって緊張してたけど、健太郎くんって意外と落ち着いているし、話しやすくて良かったよ」
素直に感想を述べれば、眉を下げられた。ん?
「……気に入ってもらえた? 合格?」
不安が見えて、ヒモ男は相手の機微を気にするんだなと思った。
だから安心させるように微笑み、「健太郎くんが来てくれて良かった」と伝える。
「……そう」
ちょっと照れくさそうにしているのが可愛かった。
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