寂しさを埋めるために飼ったヒモは、思っていたのと違う危険生物でした。

音央とお

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ヒモ男が甲斐甲斐しいせいで、最近のお昼は手作り弁当を持たされている。

「そんなに凝ったものじゃないよ」と健太郎くんは言うけど、上手く残った食材で調理されているのが伝わってくる内容だった。

お弁当があるおかげで、お店でのランチやコンビニでの買い物が減り、金銭的にも助かってしまう。

「お金足りているのかな……」

周りに誰もいないことをいいことに、会社で独り言を漏らす。
定期的に渡してはいるけど、こんな使い方をしていたら、遊べていないのでは?

日中はどこかに出かけたりしているみたいで、遊びに使うお金はあるのかな?
誰かに奢ってもらっている?

「そんなの、私の役割なのに」

見えない誰かに、勝手に嫉妬する。
私だって、健太郎くんを甘やかして墜落させたいのに!

1ヶ月以上経つのに、まだ健太郎くんの遠慮は解けてないのかな? 
自分が情けなくなってくる。

安心して甘やかせられるほど稼いでいないのは確かで、うちの会社は副業禁止というわけではないから、何か探そうかな? 

「……ん?」

スマホを見ていると、日奈子からのメッセージが届いた。
休日にランチはどう?というお誘いだった。
ちょっと相談してみようかな。



*   *   *



ヒモを飼いたいと告白したあのカフェテラス。
ここで全てが始まったんだなと思い返しながら、日奈子を前にして数日間考えていた計画を口にした。

「夜職デビューしようと思うんだ」

コーヒーを飲んでいた日奈子はカップを乱暴に置き、「待て待て待て!」と叫んだ。

「今、なんて言った?!」

「ガールズバーで働こうかと」

夜職では通じなかったかな?と具体的なものを挙げてみた。

「……えっと、もしかして、それは先輩絡み?」

「そう! もっと健太郎くんに貢げるようになりたくて!」

親指を立てて見せれば、顔をしかめられた。
日奈子のその反応も分かるんだけど。

「てっとり早く稼ぐにはそれしかないかなって。ずっと健太郎君といるわけではないし、急いで稼がないと。長いと思っていたのにさ、4ヶ月ちょっとしかないんだよ?」

「……先輩がついていれば大丈夫だと思ったのに。本当におもしれー女過ぎて恐怖を感じる」

「ん? なんて?」

何か呟いているけどよく聞こえなかった。
頭を押さえながら、日奈子は「ちょっと考え直そうか」と私を諭すように話しかけてくる。

「先輩が働けとか言った?」

「ううん、自己判断」

「だよね……。お金欲しがってるの?」

「全然。たぶん遠慮されてるんだと思うんだ」

「いや、そこはさ、本人に確かめてみなよ」

そうは言われても。健太郎くんは本音を言ってくれない気がする。
ヒモならお金が欲しいはずなのに。

「最初の条件で、あんまり渡せないって言ってあるから大丈夫のはずよ?」

「あんまりの認識がズレてるかもじゃん。これっぽっちと思ってなかったのかも」

「なんでそんな極端になるかな……」

日奈子は深く息を吐いた。

「ちょっと、この話は保留ね。ぜったいに! 黙って働かないこと!」

「……えー」

「勝手に働き始めたら、縁を切るからね」

そこまで言われたら逆らえない。
渋々だけど頷いておいた。



(Side 健太郎)

平山とランチだと言って春花は出かけてしまった。
特にやることもないので、鈍った体を走らせることにした。2時間ほど走って家に戻ると、平山からのメールが届いていた。

……珍しいな。

要件は春花のことだろうとは察していたが、その内容に目を疑った。

「……は?」

誰にも聞かせられないような声が出た。

ガールズバー? 春花が?

あの笑顔を男に振りまくのか?
あれは、そんな安売りするものではない。

――どこで間違えた?

自分の態度を振り返り、一度でも春花にそんな考えをさせたことを後悔した。



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