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第五章
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帰ってからも宙の無言の圧力は続いていて、どうしたら機嫌が直るのかばかり考えてしまう。
優しいのがいい、居心地悪いのは苦しい……。
「モカ」と冷たさは少し和らいだ声で呼ばれ、弾けるように顔を上げる。
宙は薄ら笑みを浮かべながら言う。
「今度から早めに言えよ。付いていくし、ネットで取り寄せてもいい」
「……うん」
「あと、変なのに絡まれんな」
変なの……? ヨウスケくんは別に変ではない。
普通の見た目の同窓生だ。
でも、宙に不機嫌でいて欲しくないから、黙ってうなずいた。
* * *
環がちっとも夢に出てきてくれなくなって、昔の夢ばかり見ていた。
まだお母さんたちが生きていた頃の。
「……ぐすっ」
ぬるま湯を張った浴槽の中で、きっかけも分からずに涙があふれてきた。最近は毎日こうだ。
ひとしきり泣いたら出ることにしている。
定位置であるソファーに戻ろうとすると、ゲーミングチェアに座っていた宙が珍しく寝息を立てていた。
目つきの悪さが隠されている寝顔はあまり怖くない。それどころか、懐かしさを覚える。
ソファーの上からブランケットを持ってきて、そっと掛ける。
……私の先を歩く宙は、いつだって凄い人だった。
大人たちは「流石」「宙に任せていれば安心」と口にして、子どもたちにとっては「宙が言うなら正しい」と憧れを抱くような。
私も同じ気持ちだったし、同時によく分からない人でもあった。
宙の行う決断は私の理解が追いつく前にどんどん進んでいくから。
ふと視線を移したモニターには、夜の街の様子が映っていた。
見覚えのある場所だけど、この人の往来に宙が何を見ているのかは分からない。
「どうした?」
いつの間にか起きていたらしい。
凄むような顔つきに狼狽えそうになるけど、別に怒っている訳ではなさそうだった。
「……別に」
このまま会話を終えても良かったけど、気になっていることを伝える。
「ちゃんと横になって寝たら?」
「お前が知らないだけで寝てる」
それがいつなのか全く知らない。私より遅く寝て、早く起きてる。それは不気味ですらあった。
宙はずっと私の前を歩いていくんだろうな……そんなことが頭に浮かんだ。
「おやすみ」と言い残して私は眠りにつく。
……夢の中でいいから、環に会いたいと願うけど……きっと叶わない。
優しいのがいい、居心地悪いのは苦しい……。
「モカ」と冷たさは少し和らいだ声で呼ばれ、弾けるように顔を上げる。
宙は薄ら笑みを浮かべながら言う。
「今度から早めに言えよ。付いていくし、ネットで取り寄せてもいい」
「……うん」
「あと、変なのに絡まれんな」
変なの……? ヨウスケくんは別に変ではない。
普通の見た目の同窓生だ。
でも、宙に不機嫌でいて欲しくないから、黙ってうなずいた。
* * *
環がちっとも夢に出てきてくれなくなって、昔の夢ばかり見ていた。
まだお母さんたちが生きていた頃の。
「……ぐすっ」
ぬるま湯を張った浴槽の中で、きっかけも分からずに涙があふれてきた。最近は毎日こうだ。
ひとしきり泣いたら出ることにしている。
定位置であるソファーに戻ろうとすると、ゲーミングチェアに座っていた宙が珍しく寝息を立てていた。
目つきの悪さが隠されている寝顔はあまり怖くない。それどころか、懐かしさを覚える。
ソファーの上からブランケットを持ってきて、そっと掛ける。
……私の先を歩く宙は、いつだって凄い人だった。
大人たちは「流石」「宙に任せていれば安心」と口にして、子どもたちにとっては「宙が言うなら正しい」と憧れを抱くような。
私も同じ気持ちだったし、同時によく分からない人でもあった。
宙の行う決断は私の理解が追いつく前にどんどん進んでいくから。
ふと視線を移したモニターには、夜の街の様子が映っていた。
見覚えのある場所だけど、この人の往来に宙が何を見ているのかは分からない。
「どうした?」
いつの間にか起きていたらしい。
凄むような顔つきに狼狽えそうになるけど、別に怒っている訳ではなさそうだった。
「……別に」
このまま会話を終えても良かったけど、気になっていることを伝える。
「ちゃんと横になって寝たら?」
「お前が知らないだけで寝てる」
それがいつなのか全く知らない。私より遅く寝て、早く起きてる。それは不気味ですらあった。
宙はずっと私の前を歩いていくんだろうな……そんなことが頭に浮かんだ。
「おやすみ」と言い残して私は眠りにつく。
……夢の中でいいから、環に会いたいと願うけど……きっと叶わない。
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