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タオルで涙を拭って顔を上げると、温かい眼差しで凛ちゃんが私を見ていた。
「なんで凛ちゃんが、ここに来てくれたの?」
「鈴木さんが呼びに来てくれたんだ、莉央のことを助けてって」
「そうなんだ。あとでお礼を言わなきゃね」
玉入れに参加する仲間だ。
凛ちゃんのことが「ちょっと怖い」と話していたことがあるのに、鈴木さんも勇気を振り絞ってくれたんだ!
あのまま、誰も助けてくれないかと思ったよ~。
「なんか最近、男子から絡まれすぎじゃないか?」
前髪の乱れを指で整えてくれた。
凛ちゃんに髪を弄られるのは平気だけど、先輩に引っ張られそうになった時は鳥肌が立った。
「あの人たちがいるせいで、体育祭が憂鬱だな」
「嫌だよな」
ため息が出る。
その様子を見ていた凛ちゃんが、近くにいた男子に声を掛けた。
「なあ、競技変わってくれない? 玉入れのほうがやりたい」
まさかの提案に、私は目を丸くする。
確か棒引きに出ると聞いていたのに。
私のために?
提案を持ち掛けられた男子はニヤリと笑って、「それならチーム対抗リレーにも出てよ」と言い出した。
「凛太郎って、陸上部と同じくらい足が速いじゃん! なんでリレーに出ないのかと思ってたんだよ。リレーをやるなら玉入れ代わるよ」
足が速いなんて知らない! 意外!
男子とは授業が別だから、本気で走っているところなんて見たことがない。
「……うん、いいよ。分かった」
面倒くさそうな表情なのに、凛ちゃんは承諾した。
こちらに視線を向けたと思ったら、目を細める。
「練習の時も、本番も、俺が居るから大丈夫だよ」
「凛ちゃ~ん!」
わあ、と思わず声を上げる。
優しすぎる! いつか恩返しするからね。
胸の中で密かに決意していると、グラウンドのランニングを終えたテニス部員たちの姿を見つけた。
部活動と体育祭の特訓で、グラウンドには人が溢れている。気付かないだろうなと思ったのに、偶然にも凪くんがこちらを向いたので、どきりとする。そっと手を振ってみる。
周りの目もあるからか、控えめに小さく頭を下げられた。その様子が可愛くて、このやり取りにきゅんきゅんする。
「莉央が絡まれやすくなったのは、恋をしてるからかもな」と、ぽつりと凛ちゃんが呟く。
え?と聞き返す。
「恋してるから、いちだんと可愛くなったよ」
「へっ!?」
まさかの評価にびっくりする。
そうなんだ? そんなふうに見えるんだ?
両手でゆっくりと頬を包んでみる。
触っても、見た目のことなんて分からないんだけど。
「寄ってくるのが、ろくでもない奴ばっかりで心配だ。凪くんにも相談してみたら?」
「ええ!? 迷惑……じゃない?」
「男っていうのは頼られることで悪い気はしない。むしろ、好きな子なら嬉しいくらい」
実体験を語るような口振りで、あんまり凛ちゃんの恋バナは聞いたことがないけど、そういう経験があるってことなんだろうな。
凛ちゃんは面倒見が良くて、いつも私を助けてくれて、人から頼られるのが好きっていうのは想像できるかも。
「あれ? 凪くんがこっちに近づいて来てないか?」
確かに。周りに何かを告げる様子を見せた後、凪くんはこちらに向かって小走りにやって来た。
周囲が色めき立つ空気に変わるのを肌で感じる。あれだけオーラがキラキラしていたら、目を奪われちゃうよね、分かる。
ぽーっと見惚れていたら、目の前で立ち止まった。
「お疲れ様」と声を掛けられる。
「特訓してるの? どう順調?」
「うん、まあ……」
全く何も順調じゃないけど、反射的に頷いてしまった。
微妙なニュアンスが伝わったのか、「何かあったの?」と心配されてしまう。
凛ちゃんが言っていたように、頼るなら今なのかな?
タイミングとしては間違っていないと思う。
「ちょっとだけ、先輩たちに絡まれてしまって。最近そういうのが多いかなって……」
「えっ! 大丈夫?」
「凛ちゃんたちが助けてくれたら大丈夫」
先輩たちの様子を思い出すと沈んだ気持ちになる。
チラッと凛ちゃんのほうを見たあと、凪くんは「こんにちは」と言った。
「莉央ちゃんのことを助けてくれてありがとうございます」
「俺はたいしたことはしてない。莉央は絡まれやすいみたいだから、小笠原くんも気をつけてやって」
「……言われなくても、そのつもり」
あれ?
にこにこしているのに、凪くんの雰囲気がいつもと違うような?
違和感の正体を考えるけど、うーん、気のせいかな?
「莉央ちゃんと仲が良いよね」
「別に、普通だよ」
えええ! 私が一番仲が良いのは凛ちゃんだと思っているのに、普通なのか……そうか……。
ショックを受けていると、凛ちゃんが浮かない表情で私を見てきた。何か言いたげだけど、何も言わない。
その様子に、モヤモヤとしたものが胸に広がる。
「自己紹介が遅れたけど、小笠原凪です」
「うん、莉央からよく話は聞いてる。長谷部凛太郎です。安心して、普通の友達だから」
また普通……。
「凛ちゃんのことは親友だと思っていたのに……」悲しくて、思わず本音が溢れる。
「……ねっ、こんな感じだから」とか意味の分からないことを凪くんに言っているし。急に凛ちゃんが宇宙人になったみたいだ。
凪くんと凛ちゃんはお互いに何か言いたげな視線を交わしているし、本当に訳が分からない。分かっていないのは私だけみたい?
むすっとした顔になっているだろう私を見て、凪くんが「そうだ、思い出した」と言う。
「莉央ちゃん。今日は一緒に帰らない?」
「うん、帰る!」
「誘おうと思って来たんだ。じゃあ、俺は部室の掃除をしたら終わりだから、莉央ちゃんの特訓が終わるのを待ってるよ」
まさかのお誘いに気持ちがパッと切り替わる。
放課後に一緒に帰るとか、少女漫画みたい。夢見ていた一つだ。
「ゆっくりでいいからね。靴箱のところで待ってるね」
春の風のような暖かさを私の胸に残し、凪くんは部室棟の方へと去って行った。後ろ姿も素敵。
「あのさ、莉央」
気まずそうに凛ちゃんが口を開いた。
「なんで凛ちゃんが、ここに来てくれたの?」
「鈴木さんが呼びに来てくれたんだ、莉央のことを助けてって」
「そうなんだ。あとでお礼を言わなきゃね」
玉入れに参加する仲間だ。
凛ちゃんのことが「ちょっと怖い」と話していたことがあるのに、鈴木さんも勇気を振り絞ってくれたんだ!
あのまま、誰も助けてくれないかと思ったよ~。
「なんか最近、男子から絡まれすぎじゃないか?」
前髪の乱れを指で整えてくれた。
凛ちゃんに髪を弄られるのは平気だけど、先輩に引っ張られそうになった時は鳥肌が立った。
「あの人たちがいるせいで、体育祭が憂鬱だな」
「嫌だよな」
ため息が出る。
その様子を見ていた凛ちゃんが、近くにいた男子に声を掛けた。
「なあ、競技変わってくれない? 玉入れのほうがやりたい」
まさかの提案に、私は目を丸くする。
確か棒引きに出ると聞いていたのに。
私のために?
提案を持ち掛けられた男子はニヤリと笑って、「それならチーム対抗リレーにも出てよ」と言い出した。
「凛太郎って、陸上部と同じくらい足が速いじゃん! なんでリレーに出ないのかと思ってたんだよ。リレーをやるなら玉入れ代わるよ」
足が速いなんて知らない! 意外!
男子とは授業が別だから、本気で走っているところなんて見たことがない。
「……うん、いいよ。分かった」
面倒くさそうな表情なのに、凛ちゃんは承諾した。
こちらに視線を向けたと思ったら、目を細める。
「練習の時も、本番も、俺が居るから大丈夫だよ」
「凛ちゃ~ん!」
わあ、と思わず声を上げる。
優しすぎる! いつか恩返しするからね。
胸の中で密かに決意していると、グラウンドのランニングを終えたテニス部員たちの姿を見つけた。
部活動と体育祭の特訓で、グラウンドには人が溢れている。気付かないだろうなと思ったのに、偶然にも凪くんがこちらを向いたので、どきりとする。そっと手を振ってみる。
周りの目もあるからか、控えめに小さく頭を下げられた。その様子が可愛くて、このやり取りにきゅんきゅんする。
「莉央が絡まれやすくなったのは、恋をしてるからかもな」と、ぽつりと凛ちゃんが呟く。
え?と聞き返す。
「恋してるから、いちだんと可愛くなったよ」
「へっ!?」
まさかの評価にびっくりする。
そうなんだ? そんなふうに見えるんだ?
両手でゆっくりと頬を包んでみる。
触っても、見た目のことなんて分からないんだけど。
「寄ってくるのが、ろくでもない奴ばっかりで心配だ。凪くんにも相談してみたら?」
「ええ!? 迷惑……じゃない?」
「男っていうのは頼られることで悪い気はしない。むしろ、好きな子なら嬉しいくらい」
実体験を語るような口振りで、あんまり凛ちゃんの恋バナは聞いたことがないけど、そういう経験があるってことなんだろうな。
凛ちゃんは面倒見が良くて、いつも私を助けてくれて、人から頼られるのが好きっていうのは想像できるかも。
「あれ? 凪くんがこっちに近づいて来てないか?」
確かに。周りに何かを告げる様子を見せた後、凪くんはこちらに向かって小走りにやって来た。
周囲が色めき立つ空気に変わるのを肌で感じる。あれだけオーラがキラキラしていたら、目を奪われちゃうよね、分かる。
ぽーっと見惚れていたら、目の前で立ち止まった。
「お疲れ様」と声を掛けられる。
「特訓してるの? どう順調?」
「うん、まあ……」
全く何も順調じゃないけど、反射的に頷いてしまった。
微妙なニュアンスが伝わったのか、「何かあったの?」と心配されてしまう。
凛ちゃんが言っていたように、頼るなら今なのかな?
タイミングとしては間違っていないと思う。
「ちょっとだけ、先輩たちに絡まれてしまって。最近そういうのが多いかなって……」
「えっ! 大丈夫?」
「凛ちゃんたちが助けてくれたら大丈夫」
先輩たちの様子を思い出すと沈んだ気持ちになる。
チラッと凛ちゃんのほうを見たあと、凪くんは「こんにちは」と言った。
「莉央ちゃんのことを助けてくれてありがとうございます」
「俺はたいしたことはしてない。莉央は絡まれやすいみたいだから、小笠原くんも気をつけてやって」
「……言われなくても、そのつもり」
あれ?
にこにこしているのに、凪くんの雰囲気がいつもと違うような?
違和感の正体を考えるけど、うーん、気のせいかな?
「莉央ちゃんと仲が良いよね」
「別に、普通だよ」
えええ! 私が一番仲が良いのは凛ちゃんだと思っているのに、普通なのか……そうか……。
ショックを受けていると、凛ちゃんが浮かない表情で私を見てきた。何か言いたげだけど、何も言わない。
その様子に、モヤモヤとしたものが胸に広がる。
「自己紹介が遅れたけど、小笠原凪です」
「うん、莉央からよく話は聞いてる。長谷部凛太郎です。安心して、普通の友達だから」
また普通……。
「凛ちゃんのことは親友だと思っていたのに……」悲しくて、思わず本音が溢れる。
「……ねっ、こんな感じだから」とか意味の分からないことを凪くんに言っているし。急に凛ちゃんが宇宙人になったみたいだ。
凪くんと凛ちゃんはお互いに何か言いたげな視線を交わしているし、本当に訳が分からない。分かっていないのは私だけみたい?
むすっとした顔になっているだろう私を見て、凪くんが「そうだ、思い出した」と言う。
「莉央ちゃん。今日は一緒に帰らない?」
「うん、帰る!」
「誘おうと思って来たんだ。じゃあ、俺は部室の掃除をしたら終わりだから、莉央ちゃんの特訓が終わるのを待ってるよ」
まさかのお誘いに気持ちがパッと切り替わる。
放課後に一緒に帰るとか、少女漫画みたい。夢見ていた一つだ。
「ゆっくりでいいからね。靴箱のところで待ってるね」
春の風のような暖かさを私の胸に残し、凪くんは部室棟の方へと去って行った。後ろ姿も素敵。
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気まずそうに凛ちゃんが口を開いた。
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